【完結】カイルとシャルロットの冒険 ~ドラゴンと魔剣~

神谷モロ

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第一章 プロローグ

第9話 機械魔剣ベヒモス①

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 突然、後方から爆音が聞こえた。
 それも、雷の様な轟音だった。

 帰宅途中だった俺は来た道を振り返ると魔法学院の校舎が燃えている。
 何が起こった?

 次の瞬間、青白い光の線が魔法学院の教員搭を貫いた。

 嘘……だろ! 教員搭が燃えている?
 あの耐魔法レンガの塊である、要塞ともいえる魔法学院でも最も堅牢な搭が?

 だれが! 青白い光の発生源に目を凝らす。
 それは今にも崩れそうな魔法学院の教室棟の上にいた。 

 巨大な生き物が教室棟の上に立っている、まさかドラゴン?

 なら、あの青白い光はドラゴンブレスだ。

 ドラゴンは次々とドラゴンブレスを放つ。
 あの場所は学生寮があるはず。次々と建物が爆発し炎上していく。

 この時間、皆眠っているはず。……死んだ。何人も何人も。
 俺は、逃げないと、俺が駆けつけても何の役にも立たない。
 逃げないと。

 くそ!

 俺は震える脚を両手で叩くと、魔法学院に向かって全力で走った。

 ドラゴンは王城に向かって飛んでいった。
 よし、今のうちに、誰か、誰か一人でも助けることができれば。

 だが、近づくにつれ、熱風が俺の肌を焼く。
 俺は弱気になった。
 これでは、もう誰も生きていないかもしれない。

 せめて一人でもいい。生きていてくれ。


 絶望とはこういう感情なのだろう。

 魔法学院は瓦礫になっていた。
 すべての建物は崩れ落ち、ここが本当に魔法学院かと思うほどに何もない。
 教室棟も職員搭も図書館も。それに学生寮も跡形もなかった。
 あるのは燃える瓦礫と煙と、吐き気を催す臭いだけだった。

 この煙はよくない。頭がおかしくなる。
 俺は煙から逃げるように庭園の中央に向かった。

 そこには大きな建物は無く。庭園を飾るモニュメントや銅像や花壇に背の低い街路樹があるだけだった。

 ここは被害が少ない。一部のモニュメントはドラゴンブレスによって崩れ瓦礫と化していたが。
 ほとんど無傷だった。

 それに燃える物がないのか、空気は比較的ましだった。

 俺は深呼吸をする。
 これからどうするか。

 目の前の瓦礫を見ながら考える。
「……たすけ……て、誰か、……助けて」

 声が聞こえる。

 生きてる!

 俺は目の前の瓦礫をどかす。
 
 なんの才能の無い俺でもこの瓦礫をどかすくらいの腕力はある。
 俺の役にも立たないオーガの血が役に立っている。
 このくらいの瓦礫、何の問題もない。

 次々と瓦礫を持ち上げる。
 どこだ、急がないと。

 慎重に、声はこの下から聞こえた。
 俺は大きな石の板をどかす。
 これのおかげで彼女はつぶされずに済んだのだろう。

 石の板をどかすと、上半身が覗いた。
 月明かりに照らされていたため視界は良好だ。

 そこには綺麗な金髪と白い肌のよく知った女の子がいた。
  

「シャルロット! よかった、生きててよかった」

「……うるさいったら。でも、やっと私を名前で呼んだわね……」

 彼女の意識ははっきりしているようだった。
 俺は彼女の下半身を埋め尽くしている瓦礫をどかす。

「無事でよかった。今、助ける」

「無事……そうね、幸いにも致命傷は避けたのかしら。呼吸はできるし血も吐いてないから。
 けど……痛みを感じない、最初は凄く痛くて気絶するかと思ったけど。
 今はなんか、暖かいというか、寒いというか、なんか下半身が濡れてるのよ、あはは、私12才になってもお漏らししちゃったかしら、情けない」

 
 ……俺はシャルロットの目を隠した。

 シャルロットの両足がない。彼女は自身の生暖かい血だまりに横たわっていたのだ。

 息はある。

 でも、これではもう……。

 俺の回復魔法では無理だ。
 くそ! 俺に魔法の才能があれば。

 俺は必死で止血をする。
 その際に傷口に触れたせいで再び激痛を感じたのか、絶叫の後にすぐに彼女は意識を失った。

 俺の初級回復魔法では間に合わない、なんとか血を止めないと。

 建設現場での仕事帰りが幸いしたのか工具箱からロープを取り出し欠損した部位を硬く縛る。

 なんとか、これで出血は止まったか、あとは医療魔術の先生か宮廷魔術師か、……いや、皆死んでしまってるだろう。

 何かないのか? 

 俺は死に物狂いで周囲の瓦礫を探す。何か治療に仕える、ポーションでもなんでもいい、何かないのか。
 瓦礫の中から、大きな剣が出てきた。その周囲には見覚えのある楽器ケースの破片。

 剣? 剣なのか? 確かに形は剣だが、それにしては巨大すぎる。
 ……そうか、これが学院長がオークションで手に入れたという二十番の魔剣。

 魔剣ということは魔力がある。もしかしたらこの展開を覆す何かがあるはずだ。

 地面に刺さった二十番の魔剣、機械魔剣『ベヒモス』を抜く。
 
 重い、これが剣だって? 重すぎだろ。
 だが、関係ない。俺は両手で柄を握り、全力で剣を空に掲げて叫んだ。

「たのむ! なんでもいい! 天才の作った最強の魔法の武器なんだろ! たのむよ、助けてくれ!」
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