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第八章 ダンスパーティー
第124話 反省文
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冬のベラサグンは日が暮れるのが早い。
いくつかの街灯が雪の積もった道を照らし出していた。
ルカ・レスレクシオンの邸宅は学園の側にある比較的裕福な人々が住まう住宅街にある。
ニコラスの住む邸宅と同じく、そこまでの豪邸ではないが数名のゲストなら寝泊まりできるくらいの部屋数と大きさの家だ。
「はっはっは、やはり来たか。それに引きこもりのマーガレット教授までお越しくださるとはのう、今夜は雪かの?」
「引きこもりのお主にだけは言われたくないわい。それに今夜も雪だ」
マーガレットはルーシーとソフィア、セシリアを連れてルカの邸宅に訪れていた。
ルカはグプタでの船の開発に一段落ついたのか、しばらくの長期休暇を楽しんでいる。
普段は研究に没頭するルカだが休むときにはしっかり休む。それが次の発明品へのインスピレーションに繋がるのだ。
セバスティアーナは全員のコートを受け取り、雪を払うと暖炉近くにあるハンガーにかける。
それと同時に人数分のお茶を用意した。
冷えた体に温かい飲み物はありがたい。
流石は完璧メイドである。
ルカは読んでいた本を閉じると、目の前の暖炉に薪をくべていた。
部屋全体は丁度良い暖かさだ。
しばらくはお茶を楽しみ、体が温まるといよいよ本題に入る。
「さてとルカよ、今日はこの後にまだ客がくる。その前にルーシーの宿題を手伝ってほしいんだよ」
ルーシーは少し照れくさそうにカバンから紙とペンを取り出す。
「あん? 宿題? 吾輩は宿題などやったことないぞ、なぜなら吾輩は天才だからな。まあ……反省文なら山ほど書いたがな、わっはっは」
その言葉で、ルーシーの表情はパァーっと明るくなった。
「ルカさん、いいえルカ師匠。私に反省文の書き方を教えてください!」
「うん? ……ぷっ、あっはっは。ルーシーちゃん何かやらかしたのか?
ぶふっ! 吾輩は弟子は取らんが、今回は喜んでお主を弟子に迎えようではないか! ……で何をやらかした? 学園の塔でも吹き飛ばしたか?」
ルカは大喜びで快諾した。
ルーシーとしてはこれほど心強いことはない。
「さすがに建物を吹き飛ばしたりはしてません。ちょっと壁に穴を空けてしまいまして……」
いったいルカは過去に何をやらかしたのか気になるが、それは後々聞けばいい。
早速、師匠のレクチャーを受ける。
「よいか、ルーシーちゃんよ。反省文とは気持ちよりも文章の美しさじゃ。
美しい文章には勝手に気持ちが生まれてくるものじゃ。そして、いかに反省しているかを先生方にアピールする必要がある。
そしてその文書は学園に保存される。所謂、記録文書というやつじゃな。故に名作でないといかん。
書き出しはまず、自分がやったことを簡単に書く、この辺はどうでもよい。
コツは次だの、自分はいかに愚かであったかを反省しつつ。今後はどう改善していくかが重要。
まあ、そうじゃな、友人とのエピソードなど、創作を交えつつできるだけエモい感じで書くのが肝じゃな。
この辺はテンプレートがあるからのう、どれ、いくつか書き出してやろう。これを切り貼りすれば立派なものが書ける。
もっとも前後の繋がりに違和感があってはならんぞ。後はそうじゃな――」
さすがは反省文のプロ、問題児ルカ・レスレクシオンである。
様々な謝罪の言葉が次から次へと出てくる。
「な、なるほど、勉強になります」
ルーシーは圧倒されっぱなしだった。
「おいおい、ルカ。いい加減なことを教えるんじゃないよ。心を込めて書かないと反省文の意味がないだろうが」
マーガレットはさすがにやり過ぎだとたしなめる。
「アホか、そういうのはラブレターとか家族への手紙だけでよいわい。反省文にいちいち心なんて込めたら直ぐに心を無くすぞい」
「そう思うのはお前さんだけじゃて。まあ、私は聞かなかったことにしてやろう。で、ルーシーよ、反省文は書けそうかい?」
「はい、後は私だけで何とかなりそうです」
「それはよい。もうすぐイレーナ先生がやってくる、それまでに書き上げて提出するとよい」
「ふぇ? イレーナ先生が?」
「それにオリビアも来るよ。少し話があるからな」
意外なゲストにソフィアもセシリアも驚きを隠せない。
「オリビア陛下が? ……そういえば陛下はニコラス殿下の事件を捜査してるんでしたわね」
「うむ、その通りさ。お主等もニコラス殿下とは特に仲が良いだろうし、話を聞くのも良いだろう。あの無名仙人が捕まえた犯人から何やら情報を得たらしいしな」
いくつかの街灯が雪の積もった道を照らし出していた。
ルカ・レスレクシオンの邸宅は学園の側にある比較的裕福な人々が住まう住宅街にある。
ニコラスの住む邸宅と同じく、そこまでの豪邸ではないが数名のゲストなら寝泊まりできるくらいの部屋数と大きさの家だ。
「はっはっは、やはり来たか。それに引きこもりのマーガレット教授までお越しくださるとはのう、今夜は雪かの?」
「引きこもりのお主にだけは言われたくないわい。それに今夜も雪だ」
マーガレットはルーシーとソフィア、セシリアを連れてルカの邸宅に訪れていた。
ルカはグプタでの船の開発に一段落ついたのか、しばらくの長期休暇を楽しんでいる。
普段は研究に没頭するルカだが休むときにはしっかり休む。それが次の発明品へのインスピレーションに繋がるのだ。
セバスティアーナは全員のコートを受け取り、雪を払うと暖炉近くにあるハンガーにかける。
それと同時に人数分のお茶を用意した。
冷えた体に温かい飲み物はありがたい。
流石は完璧メイドである。
ルカは読んでいた本を閉じると、目の前の暖炉に薪をくべていた。
部屋全体は丁度良い暖かさだ。
しばらくはお茶を楽しみ、体が温まるといよいよ本題に入る。
「さてとルカよ、今日はこの後にまだ客がくる。その前にルーシーの宿題を手伝ってほしいんだよ」
ルーシーは少し照れくさそうにカバンから紙とペンを取り出す。
「あん? 宿題? 吾輩は宿題などやったことないぞ、なぜなら吾輩は天才だからな。まあ……反省文なら山ほど書いたがな、わっはっは」
その言葉で、ルーシーの表情はパァーっと明るくなった。
「ルカさん、いいえルカ師匠。私に反省文の書き方を教えてください!」
「うん? ……ぷっ、あっはっは。ルーシーちゃん何かやらかしたのか?
ぶふっ! 吾輩は弟子は取らんが、今回は喜んでお主を弟子に迎えようではないか! ……で何をやらかした? 学園の塔でも吹き飛ばしたか?」
ルカは大喜びで快諾した。
ルーシーとしてはこれほど心強いことはない。
「さすがに建物を吹き飛ばしたりはしてません。ちょっと壁に穴を空けてしまいまして……」
いったいルカは過去に何をやらかしたのか気になるが、それは後々聞けばいい。
早速、師匠のレクチャーを受ける。
「よいか、ルーシーちゃんよ。反省文とは気持ちよりも文章の美しさじゃ。
美しい文章には勝手に気持ちが生まれてくるものじゃ。そして、いかに反省しているかを先生方にアピールする必要がある。
そしてその文書は学園に保存される。所謂、記録文書というやつじゃな。故に名作でないといかん。
書き出しはまず、自分がやったことを簡単に書く、この辺はどうでもよい。
コツは次だの、自分はいかに愚かであったかを反省しつつ。今後はどう改善していくかが重要。
まあ、そうじゃな、友人とのエピソードなど、創作を交えつつできるだけエモい感じで書くのが肝じゃな。
この辺はテンプレートがあるからのう、どれ、いくつか書き出してやろう。これを切り貼りすれば立派なものが書ける。
もっとも前後の繋がりに違和感があってはならんぞ。後はそうじゃな――」
さすがは反省文のプロ、問題児ルカ・レスレクシオンである。
様々な謝罪の言葉が次から次へと出てくる。
「な、なるほど、勉強になります」
ルーシーは圧倒されっぱなしだった。
「おいおい、ルカ。いい加減なことを教えるんじゃないよ。心を込めて書かないと反省文の意味がないだろうが」
マーガレットはさすがにやり過ぎだとたしなめる。
「アホか、そういうのはラブレターとか家族への手紙だけでよいわい。反省文にいちいち心なんて込めたら直ぐに心を無くすぞい」
「そう思うのはお前さんだけじゃて。まあ、私は聞かなかったことにしてやろう。で、ルーシーよ、反省文は書けそうかい?」
「はい、後は私だけで何とかなりそうです」
「それはよい。もうすぐイレーナ先生がやってくる、それまでに書き上げて提出するとよい」
「ふぇ? イレーナ先生が?」
「それにオリビアも来るよ。少し話があるからな」
意外なゲストにソフィアもセシリアも驚きを隠せない。
「オリビア陛下が? ……そういえば陛下はニコラス殿下の事件を捜査してるんでしたわね」
「うむ、その通りさ。お主等もニコラス殿下とは特に仲が良いだろうし、話を聞くのも良いだろう。あの無名仙人が捕まえた犯人から何やら情報を得たらしいしな」
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