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第六章 帰省
第99話 帰省⑨
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ルーシー堂々の凱旋。
船着場から生まれ故郷の土を踏む。
「お父様、お母様。ルーシーただいま戻りました!」
「お帰り、ルー。しばらく見ないうちにすっかり大人になったな。
クリス、心配なかったろう? ルーはどこでも上手くやっていけるってな」
「ええ、そうね、あなたの言うとおりだった。
もしかしたらルーシーには友達ができないんじゃないかって、少し心配だったけど本当によかったわ。
……そう言えばその服。オリビア学園の制服かしら? とっても素敵。いいわね、私は学園に行ったことがないから憧れるわ」
ルーシーは船が着くまでに制服に着替えていたのだ。
両親の前でくるりと回る。
そして、いつもソフィアがやっているようにスカートをつまみ膝を曲げて見せる。
「ふっふっふ。素敵でしょう? 最初は面倒だったけど着慣れてみると、これはこれでありっていうか。なんならお母様も着てみますか?
実はもう一着持ってきています。お父様もきっと喜ぶと思いますよ?」
「えー。ルーシーそういうのはマニアックっていうか。もう、学園で何を学んだのよ。でもクロードが見たいって言うなら着てみてもいいかしら」
クリスティーナはまんざらでもないような表情だ。
いつの間にかルーシーの身長は母親と同じくらいになっていた。もともと小柄な母だが、ルーシーにとって厳しい母はもっと大きな印象があったのだ。
そのせいか、ルーシーは母に近づいている喜びを感じる。
今に思えば母は厳しかったわけではない。
学園での生活を経験して改めて気付いたのだ。
母の言ってたことは全て一般常識だった。
オリビア学園で、友人たちがルーシーの行動を母と同じように注意してくれたのでそれに気付くことが出来たのだ。
ルーシーは母に対する苦手意識はいつの間にか無くなった。
これからは母ともっといい関係が築ける、そう思ったのだ。
「姉さん、お帰りなさい。すっかりオリビア学園の学生さんって感じだね。気品が出てるよ」
「……誰? この赤毛のノッポさん」
両親の隣に立つ赤毛の好青年をみてルーシーはそっけない態度を取る。
「もう、姉ちゃんは相変わらずなんだから、実の弟を忘れるなんて酷いや!」
「あはは、うそうそ。でも、レオの方が酷いぞ! 私の知らない間に身長は追い越されるわ、声が変になるわ。お説教が必要だ!」
「ぷっ。姉ちゃんは相変わらずで安心したよ。てっきり都会かぶれでお嬢様口調で喋りだすんじゃないかって心配だったんだ」
すっかり成長した弟を前に感慨にふけるルーシー。
「おう! レオ。たしかにお前、身長伸びたよな。見違えたぜ。まさか俺の事は忘れてないよな?」
「うふふ、ジャン君ったら。レオ君が忘れるわけないよー。でもすっかり大人になったねー。これは女の子がほっとけないって感じー? あんなに可愛かったレオ君がイケメンになっちゃたよー」
「ジャン君にアンナちゃん。お久しぶりです。二年ぶりですね。あ、そうだ。ご両親は仕事でここには来れないそうです。相変わらず忙しそうですね」
「ああ、高速船の量産が始まったって言ってたからな。稼ぎ時だよ。おかげで俺もバイトを止めてこうして帰省できたんだ。
じゃあ、俺も久しぶりに両親との感動の再会でもすっかな。アンナ行くぞ!」
「あ、ジャン君、まってよー。あ、皆さん、このあと一緒に食事でもどうですか? 私達はいつものレストランにいるから皆もきてねー。ソフィアちゃん達も宿が決まったら来てくれると嬉しーなー」
「わかったー。いつものレストランね。……ということはきっとあいつが来るか……まあ、この際どうでもいい。むしろ今こそって感じだ。ふふふ、待ってろよベアトリクス」
ルーシーは魔法使いとして成長した姿を何よりもベアトリクスに見せたかったのだ。
「……ルーシー、できればお客様の紹介をしてくれると嬉しんだけど……」
クリスティーナはルーシーにそっと告げる。
ニコニコしながら今までのやり取りを見ていたソフィア親子。
お客様の紹介をするのをすっかり忘れていたルーシーはしまったと思い、姿勢を正す。
「あ、はい。お母様。ではご紹介します。お手紙で何度か書いてましたよね。親友のソフィア・レーヴァテインさん、そしてご両親のカイルさんとシャルロットさんです。
えっと、もう一人セシリアさんを紹介したいんですけど、今はまだ船内でお仕事があるらしいので――」
ルーシーの話を遮り、クリスティーナは少し動揺した様子でシャルロットに話しかける。
「シャルロット・レーヴァテイン……。やはり、そうでしたか」
「え? お母様、どういうことですか? お知り合いだったんですか?」
「クリス。大丈夫か?」
「クロード、大丈夫。ちょっと動揺しただけ。シャルロット・レーヴァテイン、やっと貴女に会うことができました。
私はクリスティーナと申します。貴方とは遠縁の親戚になりますね。なんといっていいか、私は貴女たちに謝りたいとずっと思っていたの」
「クリスティーナ、ここでは止めましょう。私達はもう子供ではないのです。
謝るのは勘弁してください……そうね、ここはグプタ。リゾート地なんだから、食事が終わったら大人達で夜の街に繰り出しましょう。面倒くさい話はお酒がないと、でしょ?」
ルーシーとしては二人の間で何があったのか気にはなる。が、あまり面白そうな話ではないし、大人たちの話に興味はなかった。
だが、ソフィアと血の繋がりがあるというのは少し嬉しい情報だった。
船着場から生まれ故郷の土を踏む。
「お父様、お母様。ルーシーただいま戻りました!」
「お帰り、ルー。しばらく見ないうちにすっかり大人になったな。
クリス、心配なかったろう? ルーはどこでも上手くやっていけるってな」
「ええ、そうね、あなたの言うとおりだった。
もしかしたらルーシーには友達ができないんじゃないかって、少し心配だったけど本当によかったわ。
……そう言えばその服。オリビア学園の制服かしら? とっても素敵。いいわね、私は学園に行ったことがないから憧れるわ」
ルーシーは船が着くまでに制服に着替えていたのだ。
両親の前でくるりと回る。
そして、いつもソフィアがやっているようにスカートをつまみ膝を曲げて見せる。
「ふっふっふ。素敵でしょう? 最初は面倒だったけど着慣れてみると、これはこれでありっていうか。なんならお母様も着てみますか?
実はもう一着持ってきています。お父様もきっと喜ぶと思いますよ?」
「えー。ルーシーそういうのはマニアックっていうか。もう、学園で何を学んだのよ。でもクロードが見たいって言うなら着てみてもいいかしら」
クリスティーナはまんざらでもないような表情だ。
いつの間にかルーシーの身長は母親と同じくらいになっていた。もともと小柄な母だが、ルーシーにとって厳しい母はもっと大きな印象があったのだ。
そのせいか、ルーシーは母に近づいている喜びを感じる。
今に思えば母は厳しかったわけではない。
学園での生活を経験して改めて気付いたのだ。
母の言ってたことは全て一般常識だった。
オリビア学園で、友人たちがルーシーの行動を母と同じように注意してくれたのでそれに気付くことが出来たのだ。
ルーシーは母に対する苦手意識はいつの間にか無くなった。
これからは母ともっといい関係が築ける、そう思ったのだ。
「姉さん、お帰りなさい。すっかりオリビア学園の学生さんって感じだね。気品が出てるよ」
「……誰? この赤毛のノッポさん」
両親の隣に立つ赤毛の好青年をみてルーシーはそっけない態度を取る。
「もう、姉ちゃんは相変わらずなんだから、実の弟を忘れるなんて酷いや!」
「あはは、うそうそ。でも、レオの方が酷いぞ! 私の知らない間に身長は追い越されるわ、声が変になるわ。お説教が必要だ!」
「ぷっ。姉ちゃんは相変わらずで安心したよ。てっきり都会かぶれでお嬢様口調で喋りだすんじゃないかって心配だったんだ」
すっかり成長した弟を前に感慨にふけるルーシー。
「おう! レオ。たしかにお前、身長伸びたよな。見違えたぜ。まさか俺の事は忘れてないよな?」
「うふふ、ジャン君ったら。レオ君が忘れるわけないよー。でもすっかり大人になったねー。これは女の子がほっとけないって感じー? あんなに可愛かったレオ君がイケメンになっちゃたよー」
「ジャン君にアンナちゃん。お久しぶりです。二年ぶりですね。あ、そうだ。ご両親は仕事でここには来れないそうです。相変わらず忙しそうですね」
「ああ、高速船の量産が始まったって言ってたからな。稼ぎ時だよ。おかげで俺もバイトを止めてこうして帰省できたんだ。
じゃあ、俺も久しぶりに両親との感動の再会でもすっかな。アンナ行くぞ!」
「あ、ジャン君、まってよー。あ、皆さん、このあと一緒に食事でもどうですか? 私達はいつものレストランにいるから皆もきてねー。ソフィアちゃん達も宿が決まったら来てくれると嬉しーなー」
「わかったー。いつものレストランね。……ということはきっとあいつが来るか……まあ、この際どうでもいい。むしろ今こそって感じだ。ふふふ、待ってろよベアトリクス」
ルーシーは魔法使いとして成長した姿を何よりもベアトリクスに見せたかったのだ。
「……ルーシー、できればお客様の紹介をしてくれると嬉しんだけど……」
クリスティーナはルーシーにそっと告げる。
ニコニコしながら今までのやり取りを見ていたソフィア親子。
お客様の紹介をするのをすっかり忘れていたルーシーはしまったと思い、姿勢を正す。
「あ、はい。お母様。ではご紹介します。お手紙で何度か書いてましたよね。親友のソフィア・レーヴァテインさん、そしてご両親のカイルさんとシャルロットさんです。
えっと、もう一人セシリアさんを紹介したいんですけど、今はまだ船内でお仕事があるらしいので――」
ルーシーの話を遮り、クリスティーナは少し動揺した様子でシャルロットに話しかける。
「シャルロット・レーヴァテイン……。やはり、そうでしたか」
「え? お母様、どういうことですか? お知り合いだったんですか?」
「クリス。大丈夫か?」
「クロード、大丈夫。ちょっと動揺しただけ。シャルロット・レーヴァテイン、やっと貴女に会うことができました。
私はクリスティーナと申します。貴方とは遠縁の親戚になりますね。なんといっていいか、私は貴女たちに謝りたいとずっと思っていたの」
「クリスティーナ、ここでは止めましょう。私達はもう子供ではないのです。
謝るのは勘弁してください……そうね、ここはグプタ。リゾート地なんだから、食事が終わったら大人達で夜の街に繰り出しましょう。面倒くさい話はお酒がないと、でしょ?」
ルーシーとしては二人の間で何があったのか気にはなる。が、あまり面白そうな話ではないし、大人たちの話に興味はなかった。
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