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第五章 学園編2
第85話 キャンプ実習⑩
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肉の焼けるに匂いがキャンプ場に広がる。
「うーん、おいしいー。やっぱお肉の王様は牛肉、これは譲れない」
こんがりと焼やけたジューシーな肉をあっという間に一皿ぺろりと平らげるルーシー。
「ルーシーさん。この間は鳥肉が王様だとおっしゃってましたわ。それに、もう食べてしまったの? 野菜も取らないと健康に良くありませんわ」
まるでお母さんのようにルーシーの口の周りをハンカチで拭うソフィア。
「えへへ、それは大丈夫。牛さんは毎日牧草を食べてるから、そんな牛さんのお肉も野菜なのだ! たぶん。
それよりも、もう一皿お代わりを貰いにいかないと」
ルーシーはアウトドアの経験を通じてグプタでの日々を思い出したのか、行動が少しだけ幼くなっていた。
だが、そんなルーシーの無邪気な姿を見て、これが本来の彼女なのだと一同はほっこりとした気持ちになった。
キャンプ場中央では大きなグリルの上で次から次へと焼かれる肉が生徒たちの皿に盛られていく。
「おう、お嬢、そろそろ来ると思ってましたぜ。ほれ、焼きたてっす。熱いっすから火傷しないように気をつけて食べてくださいっす」
アランは、大量の肉をひたすら網に乗せて、焼けたら生徒達に配る係のようだ。
「ほれ、ルーシー。野菜も取らなきゃ駄目じゃないか。これも農家さんからの差し入れだ、好き嫌いは失礼だよ」
マーガレットがルーシーの皿に大量の野菜を乗せる。
「むー、マーガレット先生、余計なことを……」
ルーシーはぼやきながらもテントの前に戻る。
「お帰りなさい。あら、野菜たっぷりね、なんだかんだでちゃんと野菜も食べるから偉いわ」
「そんなつもりじゃないんだけど。……って皆は何食べてるの?」
「ああ、これ? セシリアさんが教えてくれたのよ。こういう料理があるって言ってね。
パンに切れ目を入れて、その中に野菜と肉を詰めて食べるんですって。これならルーシーさんでも野菜が食べれるでしょ?」
皆が美味しそうにそれを口に運ぶ姿を見ると、早速ルーシーはパンにナイフで切れ目を入れ、肉と野菜を挟んで口に運ぶ。
瞬間、ルーシーに電流が走る。
「おいしい! これはサンドウィッチとは違って肉の脂がパン全体にしみ込んで、そして野菜のシャキシャキ感がアクセントになってて、とにかくおいしい!」
「もう、喋るのか食べるのかどちらかにしてくださいまし」
「ルーシー。野菜食べれて偉い。まかない料理だけど、喜んでもらえて嬉しい」
セシリアは相変わらず無表情であるが静かにブイサインをして感情を表現する。
「単体では肉が圧勝だけど、こうして合わさると、どれも欠かせないんだって、肉と野菜とパンのコンビネーション攻撃。料理ってすごいね! これなら野菜だっていくらでも食べれるよ」
ルーシーはガツガツと食べながら、いまいちな食レポをし続けたのだった。
◆◆◆
「ははは、数とは力よ。それにどうだ、異なる魔物同士が俺と魂を共有した結果、見事なコンビネーション攻撃をしているだろう。どうだ騎士クロード。恐れおののくがいい」
クロードに繰り返し魔物の波状攻撃を仕掛けるヘイズ。
今までの魔物では有り得ない行動だった。防御力の高いサソリの魔物デスイーターが中央に固まり、その両翼を素早い狼の魔物グリムハウンドが牽制攻撃を仕掛けてくる。
いずれも魔物の魂が具現化した亡霊であり、個々の戦闘力は低いが、まるで人間の様に陣形を組みクロードを包囲殲滅せんとにじり寄る。
だがクロードとてやられてばかりではない。
何度か攻撃を掻い潜り、術者であるヘイズの首を落とした。
魔物を操る者を倒せば戦いは終わるはずである。
だが、そのたびにヘイズの胴体からは新たな首が再生する。
それは人間の首ではない、生え変わるたびに別の魔物の首がクロードを嘲笑うのだ。
クロードにダメージは無い、だが疲労は確実に蓄積していく。
「言っただろうが、俺には数千の魂のストックがあると。これが呪いのドラゴンロードから得た力よ。光栄に思え。お前の魂も俺の物にしてやるのだからな!」
次の瞬間、クロードの剣は空から飛来したデザートウィングによって弾き飛ばされた。
「油断したな。魔物は陸だけではないぞ? ふっ、詰みだな。さてと、これで貴様の魂を奪う準備は整った。
その高潔な魂。ありがたく俺の糧とさせて頂く。極大呪術『ソウルスティール』!」
クロードめがけて、禍々しい黒い煙の様な魔法が放たれる。
魔封じの剣を失ったクロードは無防備だった。
「ここまでか……」
クロードは諦めたように、その場に棒立ちになる。だが……。
「うむ、お主はここまでのようだの。お疲れだクロードよ。後は私に任せるとよい。それにこいつは人間が相手にしていい輩ではないわ」
呪術『ソウルスティール』はクロードの前に現れたベアトリクスに命中するも、何事もなかったかのように霧散して消えた。
「臭い、実に臭いのう。その魔法、憶えがある。何とも呪い臭いその魔法。……哀れな子よの。ルシウスに見捨てられ、それでも奴の力にすがりつく、みっともない屍よ」
「現れたな、海のドラゴンロード・ベアトリクス。この時を待っていた。それに最早ルシウスなど関係ない。
あえて言うなら、その残滓を回収しに来ただけだ。大人しく差し出せば見逃してやるぞ? 偉大なる海のドラゴンロードよ」
「うーん、おいしいー。やっぱお肉の王様は牛肉、これは譲れない」
こんがりと焼やけたジューシーな肉をあっという間に一皿ぺろりと平らげるルーシー。
「ルーシーさん。この間は鳥肉が王様だとおっしゃってましたわ。それに、もう食べてしまったの? 野菜も取らないと健康に良くありませんわ」
まるでお母さんのようにルーシーの口の周りをハンカチで拭うソフィア。
「えへへ、それは大丈夫。牛さんは毎日牧草を食べてるから、そんな牛さんのお肉も野菜なのだ! たぶん。
それよりも、もう一皿お代わりを貰いにいかないと」
ルーシーはアウトドアの経験を通じてグプタでの日々を思い出したのか、行動が少しだけ幼くなっていた。
だが、そんなルーシーの無邪気な姿を見て、これが本来の彼女なのだと一同はほっこりとした気持ちになった。
キャンプ場中央では大きなグリルの上で次から次へと焼かれる肉が生徒たちの皿に盛られていく。
「おう、お嬢、そろそろ来ると思ってましたぜ。ほれ、焼きたてっす。熱いっすから火傷しないように気をつけて食べてくださいっす」
アランは、大量の肉をひたすら網に乗せて、焼けたら生徒達に配る係のようだ。
「ほれ、ルーシー。野菜も取らなきゃ駄目じゃないか。これも農家さんからの差し入れだ、好き嫌いは失礼だよ」
マーガレットがルーシーの皿に大量の野菜を乗せる。
「むー、マーガレット先生、余計なことを……」
ルーシーはぼやきながらもテントの前に戻る。
「お帰りなさい。あら、野菜たっぷりね、なんだかんだでちゃんと野菜も食べるから偉いわ」
「そんなつもりじゃないんだけど。……って皆は何食べてるの?」
「ああ、これ? セシリアさんが教えてくれたのよ。こういう料理があるって言ってね。
パンに切れ目を入れて、その中に野菜と肉を詰めて食べるんですって。これならルーシーさんでも野菜が食べれるでしょ?」
皆が美味しそうにそれを口に運ぶ姿を見ると、早速ルーシーはパンにナイフで切れ目を入れ、肉と野菜を挟んで口に運ぶ。
瞬間、ルーシーに電流が走る。
「おいしい! これはサンドウィッチとは違って肉の脂がパン全体にしみ込んで、そして野菜のシャキシャキ感がアクセントになってて、とにかくおいしい!」
「もう、喋るのか食べるのかどちらかにしてくださいまし」
「ルーシー。野菜食べれて偉い。まかない料理だけど、喜んでもらえて嬉しい」
セシリアは相変わらず無表情であるが静かにブイサインをして感情を表現する。
「単体では肉が圧勝だけど、こうして合わさると、どれも欠かせないんだって、肉と野菜とパンのコンビネーション攻撃。料理ってすごいね! これなら野菜だっていくらでも食べれるよ」
ルーシーはガツガツと食べながら、いまいちな食レポをし続けたのだった。
◆◆◆
「ははは、数とは力よ。それにどうだ、異なる魔物同士が俺と魂を共有した結果、見事なコンビネーション攻撃をしているだろう。どうだ騎士クロード。恐れおののくがいい」
クロードに繰り返し魔物の波状攻撃を仕掛けるヘイズ。
今までの魔物では有り得ない行動だった。防御力の高いサソリの魔物デスイーターが中央に固まり、その両翼を素早い狼の魔物グリムハウンドが牽制攻撃を仕掛けてくる。
いずれも魔物の魂が具現化した亡霊であり、個々の戦闘力は低いが、まるで人間の様に陣形を組みクロードを包囲殲滅せんとにじり寄る。
だがクロードとてやられてばかりではない。
何度か攻撃を掻い潜り、術者であるヘイズの首を落とした。
魔物を操る者を倒せば戦いは終わるはずである。
だが、そのたびにヘイズの胴体からは新たな首が再生する。
それは人間の首ではない、生え変わるたびに別の魔物の首がクロードを嘲笑うのだ。
クロードにダメージは無い、だが疲労は確実に蓄積していく。
「言っただろうが、俺には数千の魂のストックがあると。これが呪いのドラゴンロードから得た力よ。光栄に思え。お前の魂も俺の物にしてやるのだからな!」
次の瞬間、クロードの剣は空から飛来したデザートウィングによって弾き飛ばされた。
「油断したな。魔物は陸だけではないぞ? ふっ、詰みだな。さてと、これで貴様の魂を奪う準備は整った。
その高潔な魂。ありがたく俺の糧とさせて頂く。極大呪術『ソウルスティール』!」
クロードめがけて、禍々しい黒い煙の様な魔法が放たれる。
魔封じの剣を失ったクロードは無防備だった。
「ここまでか……」
クロードは諦めたように、その場に棒立ちになる。だが……。
「うむ、お主はここまでのようだの。お疲れだクロードよ。後は私に任せるとよい。それにこいつは人間が相手にしていい輩ではないわ」
呪術『ソウルスティール』はクロードの前に現れたベアトリクスに命中するも、何事もなかったかのように霧散して消えた。
「臭い、実に臭いのう。その魔法、憶えがある。何とも呪い臭いその魔法。……哀れな子よの。ルシウスに見捨てられ、それでも奴の力にすがりつく、みっともない屍よ」
「現れたな、海のドラゴンロード・ベアトリクス。この時を待っていた。それに最早ルシウスなど関係ない。
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