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第五章 学園編2
第71話 休日③
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ゴンドラから降りる一同、船頭さんにチップを渡すと。セシリアは振り返り深々とお辞儀をした。
「先程はうちのストーカーがご迷惑をおかけしました」
セシリアはこれでもかと頭を下げ謝罪する。
「そ、そんなことないよ、セシリアさんは悪くないし、頭を上げてください。でもびっくりしちゃった。まさか先帝陛下がいらっしゃるなんて。
ドキドキしたよねー、噂通りに素敵な人でビックリしちゃた。私もああいう人になりたいなー」
リリアナは必死にフォローをするが、セシリアパパのフォローはさすがにできなかった。
他人の親とは言え、過度な過保護である。ルーシーも自分の父親があそこまでだと嫌いになってしまうのかも……。
複雑な心境ではあったが、空腹でそれ以上は頭が回らなかった。
ぎゅるぎゅるとルーシーのお腹が鳴る。
セシリアもそれにつられ表情がほころぶ。
「うふふ、ルーシーさんも限界のようですね、では早速屋台巡りをしましょう。迷惑をおかけしましたのでここは私に奢らせてください。軍資金はばっちりです」
セシリアの手には金貨が三枚。
「父上との約束ですので。今日は遠慮なく奢らせてください。迷惑料も兼ねてますので皆さん遠慮なく行きましょう」
そう言う事なら、ということで一同は屋台巡りを始める。
「ねえ、あのお肉の串焼き、私食べてみたいですわ。あれはお父様とお母様が冒険してたときには必ず食べてたって聞いてますの」
「あれは牛肉ですね。脂の焼ける匂いが食欲をそそります。皆さまよろしいですね」
ルーシーとて牛肉は大好物だ。それにベラサグンには牧草地帯があるため云わば牛肉の本場である。
「ソフィアさん! 新鮮な牛肉って塩だけで美味しいでしょ? 私、グプタでは香辛料まみれのお肉しか食べてないから楽しみ!」
「はい、お塩だけで食べれるお肉は本当に美味しいんですのよ? お値段もそれなりですけど……」
「お二方、お目が高いですね。軍資金も充分です。では本場の牛肉の串焼きを堪能してみるとしましょうか」
セシリアはさすがだった、料理屋の娘だけあって鼻が利く。
「……あの屋台がベストです。ではさっそく究極の牛肉串を堪能しましょうか」
一同は人でごった返した屋台に消えていった。
◇◇◇
水上レストランにて。
「さてとノイマン。卿の弁明を聞きましょうか?」
「いやー、先帝陛下。弁明とは心外ですな。私は一途に娘を心配してですな」
思わぬ食事会にたじろぐノイマン。
優雅に紅茶の香りを楽しむオリビア陛下。だがその目はすっかり縮こまった元部下に向けられていた。
それでも彼女は蔑むわけでもなく。久しぶりのやり取りに懐かしさを覚えた優しい目であった。
「しかし、陛下。こんなところで、私と会うためにセシリアの策に乗ったわけでもありませんでしょう? なにか別にお話でもあるのですか?」
そう、この場所は極秘に話をするのに最適であるからだ。
「ええ、相変わらず察しがよくて助かるわ。そうね、この間、一番下の孫のニコラスが事件に巻き込まれてね」
オリビアはニコラスが起こした魔法道具の事件をノイマンに話す。
「なんですと? それは一大事では……」
「そうね、私も親友から連絡を受けたときには驚いたわ。息子は国政で忙しいからこの件は私が預かることにしました」
「なるほど、それで私にも、それとなく網を張れとをおっしゃるのですね?」
「ええ。もちろん手が空いた時で構わないわ。まあ貴方はそういうの得意でしょうから、つい期待してしまいますが……」
ノイマンとて今は爵位のない民間人である。命令という訳でもないしオリビアとて市民に対して強制できる立場にはない。
「ふむ、検討させていただきます……。ところで親友とはどなたですか? ルカ殿ではないようですが……」
「ふふふ、ルカは相変わらず発明にご執心ですし。この件では協力は得られないでしょう。
ですが、もう一人いるのです。私が学生だった頃、エフタル王国魔法学院に留学していた時に親友になった子がいてね。
名はマーガレット・シャドウウィンド 。
今は我が学園の教授を努めているわ。彼女もルカに匹敵する天才でね、本当ならエフタルの宮廷魔法使いになるはずだったのを私がカルルクに帰国する際にスカウトしたのよ。
魔法技術が未熟なカルルクでぜひ教師になってほしいって。
当時の彼女は随分と高飛車で、そのままエフタルで闇の魔法の研究をしたいってごねてたけど、ならカルルクで教授待遇、それに授業も選択科目だけに免除して好きにしていいわってね。
あの頃は私も彼女も若かった。ルカは辺境伯の地位を約束されてたからスカウトは無理だったけど……ほんと懐かしいわ。
あらいけない。年寄りの悪い癖だわ昔話になるとつい長話をしてしまって」
「いえ、お気になさらず、陛下の話は昔から長いですから。しかし、マーガレット・シャドウウィンド教授ですか……。ふむ、なるほど……」
ノイマンは顎に手を当てて考え込む。
「あら、貴方もご存じだったかしら?」
「いいえ、先日セシリアちゃんが珍しく尊敬できる先生だと言ってたもので……。
であるなら、私にも関係性ができましたな。いいでしょう、このノイマン。自身の能力をもって全力で協力させて頂きましょう」
その日、ニコラスが怪しい魔法道具を購入したという魔法道具屋に皇室騎士団から抜き打ちの査察が入った。
だが店主をはじめとする従業員全てがもぬけのからであり証拠となりそうな書類は一切残されていなかった。
それを予想していたオリビアはかつての優秀な部下であるノイマンに相談を持ち掛けたのだった。
「先程はうちのストーカーがご迷惑をおかけしました」
セシリアはこれでもかと頭を下げ謝罪する。
「そ、そんなことないよ、セシリアさんは悪くないし、頭を上げてください。でもびっくりしちゃった。まさか先帝陛下がいらっしゃるなんて。
ドキドキしたよねー、噂通りに素敵な人でビックリしちゃた。私もああいう人になりたいなー」
リリアナは必死にフォローをするが、セシリアパパのフォローはさすがにできなかった。
他人の親とは言え、過度な過保護である。ルーシーも自分の父親があそこまでだと嫌いになってしまうのかも……。
複雑な心境ではあったが、空腹でそれ以上は頭が回らなかった。
ぎゅるぎゅるとルーシーのお腹が鳴る。
セシリアもそれにつられ表情がほころぶ。
「うふふ、ルーシーさんも限界のようですね、では早速屋台巡りをしましょう。迷惑をおかけしましたのでここは私に奢らせてください。軍資金はばっちりです」
セシリアの手には金貨が三枚。
「父上との約束ですので。今日は遠慮なく奢らせてください。迷惑料も兼ねてますので皆さん遠慮なく行きましょう」
そう言う事なら、ということで一同は屋台巡りを始める。
「ねえ、あのお肉の串焼き、私食べてみたいですわ。あれはお父様とお母様が冒険してたときには必ず食べてたって聞いてますの」
「あれは牛肉ですね。脂の焼ける匂いが食欲をそそります。皆さまよろしいですね」
ルーシーとて牛肉は大好物だ。それにベラサグンには牧草地帯があるため云わば牛肉の本場である。
「ソフィアさん! 新鮮な牛肉って塩だけで美味しいでしょ? 私、グプタでは香辛料まみれのお肉しか食べてないから楽しみ!」
「はい、お塩だけで食べれるお肉は本当に美味しいんですのよ? お値段もそれなりですけど……」
「お二方、お目が高いですね。軍資金も充分です。では本場の牛肉の串焼きを堪能してみるとしましょうか」
セシリアはさすがだった、料理屋の娘だけあって鼻が利く。
「……あの屋台がベストです。ではさっそく究極の牛肉串を堪能しましょうか」
一同は人でごった返した屋台に消えていった。
◇◇◇
水上レストランにて。
「さてとノイマン。卿の弁明を聞きましょうか?」
「いやー、先帝陛下。弁明とは心外ですな。私は一途に娘を心配してですな」
思わぬ食事会にたじろぐノイマン。
優雅に紅茶の香りを楽しむオリビア陛下。だがその目はすっかり縮こまった元部下に向けられていた。
それでも彼女は蔑むわけでもなく。久しぶりのやり取りに懐かしさを覚えた優しい目であった。
「しかし、陛下。こんなところで、私と会うためにセシリアの策に乗ったわけでもありませんでしょう? なにか別にお話でもあるのですか?」
そう、この場所は極秘に話をするのに最適であるからだ。
「ええ、相変わらず察しがよくて助かるわ。そうね、この間、一番下の孫のニコラスが事件に巻き込まれてね」
オリビアはニコラスが起こした魔法道具の事件をノイマンに話す。
「なんですと? それは一大事では……」
「そうね、私も親友から連絡を受けたときには驚いたわ。息子は国政で忙しいからこの件は私が預かることにしました」
「なるほど、それで私にも、それとなく網を張れとをおっしゃるのですね?」
「ええ。もちろん手が空いた時で構わないわ。まあ貴方はそういうの得意でしょうから、つい期待してしまいますが……」
ノイマンとて今は爵位のない民間人である。命令という訳でもないしオリビアとて市民に対して強制できる立場にはない。
「ふむ、検討させていただきます……。ところで親友とはどなたですか? ルカ殿ではないようですが……」
「ふふふ、ルカは相変わらず発明にご執心ですし。この件では協力は得られないでしょう。
ですが、もう一人いるのです。私が学生だった頃、エフタル王国魔法学院に留学していた時に親友になった子がいてね。
名はマーガレット・シャドウウィンド 。
今は我が学園の教授を努めているわ。彼女もルカに匹敵する天才でね、本当ならエフタルの宮廷魔法使いになるはずだったのを私がカルルクに帰国する際にスカウトしたのよ。
魔法技術が未熟なカルルクでぜひ教師になってほしいって。
当時の彼女は随分と高飛車で、そのままエフタルで闇の魔法の研究をしたいってごねてたけど、ならカルルクで教授待遇、それに授業も選択科目だけに免除して好きにしていいわってね。
あの頃は私も彼女も若かった。ルカは辺境伯の地位を約束されてたからスカウトは無理だったけど……ほんと懐かしいわ。
あらいけない。年寄りの悪い癖だわ昔話になるとつい長話をしてしまって」
「いえ、お気になさらず、陛下の話は昔から長いですから。しかし、マーガレット・シャドウウィンド教授ですか……。ふむ、なるほど……」
ノイマンは顎に手を当てて考え込む。
「あら、貴方もご存じだったかしら?」
「いいえ、先日セシリアちゃんが珍しく尊敬できる先生だと言ってたもので……。
であるなら、私にも関係性ができましたな。いいでしょう、このノイマン。自身の能力をもって全力で協力させて頂きましょう」
その日、ニコラスが怪しい魔法道具を購入したという魔法道具屋に皇室騎士団から抜き打ちの査察が入った。
だが店主をはじめとする従業員全てがもぬけのからであり証拠となりそうな書類は一切残されていなかった。
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