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第五章 学園編2
第67話 夕食②
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ウェイトレスさんに案内され大きなテーブルに座る6人。
「な、なあ、アベルにゴードン。お前達はこういった食堂に来た経験はあるか?」
緊張するニコラス。外食の経験はあると言っていたが、やはりこのような冒険者達が集う食堂兼酒場は初めてのようだ。
「殿下、我々も初めてですよ。テーブルマナーとか、この場合はどうしたらよいのか分かりません。ルーシーさん、我らはどうしたらよいでしょうか?」
平民とはいえルーシーだって冒険者のテーブルマナーなど知らない。グプタのレストランは現地の客以外はほとんどがセレブだ。むしろ貴族のそれに近い。
このようにゲラゲラと笑い声が聞こえてくるレストランは初めて来た。
だがソフィアは平然としていた。
「うふふ、皆さん。冒険者にはテーブルマナーは必要ありませんわ。マナーというよりかは一般常識さえあればいいのです。酔っぱらって他人に突っかからない。喧嘩しないってところかしら」
「さ、さすがはレーヴァテイン。魔物との最前線であるタラス出身だけはあるな」
ソフィアの故郷、カルルク帝国の最北端であるタラスは冒険者が多い。首都の貴族と違いさすがの風格である。
もう一人、すまし顔でメニューを見ているセシリアは静かに声を上げる。
「まあ、ソフィアさんの言うとおりですのであまり緊張せずに。逆に貴族的なテーブルマナーではここの料理は食べられませんよ? 量的に。
あ、皆さんは苦手な物とか有りますか? ここは魔物の料理がメインですので。虫系も普通にでます」
虫と聞いてルーシーは砂漠のオアシス都市で食べた巨大なサソリ。デスイーターを食べたのを思い出した。
かなりの大味だったが海老に近く、香り高い。調味料さえしっかりしていれば、内陸でも魚介類の味を堪能できるのだと知って感動したものだ。
「はい! 私、デスイーターが食べたいです! あれは故郷の味を思い出して私は好きです!」
ルーシーは手を上げ、セシリアにリクエストする。
「え? デスイーターってあれだよな。巨大なサソリの……」
男性陣の顔は青くなる。
「おや、ルーシーさん。気が合いますね。デスイーターは魔物の中でももっとも美味しいと言われる種族の一つです。私も大変好みです。ソフィアさんはどうですか?」
「私は、そうですね。お母様が嫌いでしたので、私は食べたことがありませんの。でもお二人が美味しいっていうならぜひ頂いてみたいわ」
「なら、決まりですね。ほら、あとは殿下達ですよ? ……しょうがないですね。虫系が嫌なら、デザートウィングのステーキで良いですか?」
「あ、ああ。砂漠の怪鳥か。それなら俺も食べたことがある。でもあれは硬かったな……」
「ふふ、そこは問題ありません。殿下は本物の魔物料理を食べたことが無いんですよ。ちょうど良い機会です、貴族の方々も本物の魔物料理というのが何かお見せしましょう」
さすがは父親の経営する店なのだろう。自信満々だ。
――料理が届く。
やはり大皿に山盛りだった。
なるほど、このボリューム、冒険者に好まれる訳だと納得する。
「よーし! クノイチ亭のデスイーターのお味はいかに!」
ルーシーは早速、甲殻類の香り漂うデスイーターの香草バター焼きを頬張る。
やはり旨い。口いっぱいに幸せが広がる。
デスイーターの肉はグプタ産の海老にはだいぶ劣る。
だが、ここはさすが首都ベラサグン。近郊に広大な牧草地帯があり、上質なバターや鮮度の良い香草をふんだんに使っているため食材の欠点を補って余りあるのだ。
どの土地でも調理の仕方しだいで美味しいものは食べれるのだ。
男性陣は思いっきり頬張る女性陣を見ると少し安心して、自分の皿に目をやる。
ニコラスはデザートウィングのステーキにナイフを入れる。ナイフは力を入れずともすっと肉の中に入っていった。
「なに! これがあの怪鳥デザートウィングだというのか。この柔らかさ。ありえない」
フォークに肉を刺し口に運ぶニコラス。
「う、うまい。なぜだ。このとろけるような食感。そして複雑なうま味が口に広がる。
セシリア。君の父上は一流のシェフなのだな。知らなかった、こんなに旨い料理は王宮でも食べたことがない」
「殿下、それはさすがに言い過ぎです。あと、父上はシェフではありません。ここのシェフもうちで雇う前は冒険者相手に味よりも量を優先に料理を出していた普通の料理人です。
ちなみにこのレシピを考えたのは母上です。父上は人材の確保や、物流網の開拓や各店舗の経営をしています」
「……そうか。セシリア・ノイマン。もっと早く気付くべきだった。君の父上は元カルルク帝国宰相で、稀代の政治家。
祖母であるオリビア・カルルクの右腕と呼ばれた。あの変人宰相ノイマン……失礼。祖母はずっとそう読んでいたので、つい」
「いいえ、お構いなく。母上も父上のことはストーカーだと言っていましたので気にしてません。事実そうなのでしょう……」
ニコラスとセシリアの会話を聞いてルーシーは思った。
そういえばお母様もエフタル共和国の政治家だったと聞いていた。ではお母様はストーカーだったのだろうか。
たしかにお母様はお父様にべったりである。近所の人達は自分の両親は未だにラブラブで、まるで新婚さんみたいでうらやましいと言っていた。
……なるほど、それがストーカーなのだろう。意味は分からないけどセシリアさんの両親も仲がいいのは間違いない、それは良い事だと思った。
「な、なあ、アベルにゴードン。お前達はこういった食堂に来た経験はあるか?」
緊張するニコラス。外食の経験はあると言っていたが、やはりこのような冒険者達が集う食堂兼酒場は初めてのようだ。
「殿下、我々も初めてですよ。テーブルマナーとか、この場合はどうしたらよいのか分かりません。ルーシーさん、我らはどうしたらよいでしょうか?」
平民とはいえルーシーだって冒険者のテーブルマナーなど知らない。グプタのレストランは現地の客以外はほとんどがセレブだ。むしろ貴族のそれに近い。
このようにゲラゲラと笑い声が聞こえてくるレストランは初めて来た。
だがソフィアは平然としていた。
「うふふ、皆さん。冒険者にはテーブルマナーは必要ありませんわ。マナーというよりかは一般常識さえあればいいのです。酔っぱらって他人に突っかからない。喧嘩しないってところかしら」
「さ、さすがはレーヴァテイン。魔物との最前線であるタラス出身だけはあるな」
ソフィアの故郷、カルルク帝国の最北端であるタラスは冒険者が多い。首都の貴族と違いさすがの風格である。
もう一人、すまし顔でメニューを見ているセシリアは静かに声を上げる。
「まあ、ソフィアさんの言うとおりですのであまり緊張せずに。逆に貴族的なテーブルマナーではここの料理は食べられませんよ? 量的に。
あ、皆さんは苦手な物とか有りますか? ここは魔物の料理がメインですので。虫系も普通にでます」
虫と聞いてルーシーは砂漠のオアシス都市で食べた巨大なサソリ。デスイーターを食べたのを思い出した。
かなりの大味だったが海老に近く、香り高い。調味料さえしっかりしていれば、内陸でも魚介類の味を堪能できるのだと知って感動したものだ。
「はい! 私、デスイーターが食べたいです! あれは故郷の味を思い出して私は好きです!」
ルーシーは手を上げ、セシリアにリクエストする。
「え? デスイーターってあれだよな。巨大なサソリの……」
男性陣の顔は青くなる。
「おや、ルーシーさん。気が合いますね。デスイーターは魔物の中でももっとも美味しいと言われる種族の一つです。私も大変好みです。ソフィアさんはどうですか?」
「私は、そうですね。お母様が嫌いでしたので、私は食べたことがありませんの。でもお二人が美味しいっていうならぜひ頂いてみたいわ」
「なら、決まりですね。ほら、あとは殿下達ですよ? ……しょうがないですね。虫系が嫌なら、デザートウィングのステーキで良いですか?」
「あ、ああ。砂漠の怪鳥か。それなら俺も食べたことがある。でもあれは硬かったな……」
「ふふ、そこは問題ありません。殿下は本物の魔物料理を食べたことが無いんですよ。ちょうど良い機会です、貴族の方々も本物の魔物料理というのが何かお見せしましょう」
さすがは父親の経営する店なのだろう。自信満々だ。
――料理が届く。
やはり大皿に山盛りだった。
なるほど、このボリューム、冒険者に好まれる訳だと納得する。
「よーし! クノイチ亭のデスイーターのお味はいかに!」
ルーシーは早速、甲殻類の香り漂うデスイーターの香草バター焼きを頬張る。
やはり旨い。口いっぱいに幸せが広がる。
デスイーターの肉はグプタ産の海老にはだいぶ劣る。
だが、ここはさすが首都ベラサグン。近郊に広大な牧草地帯があり、上質なバターや鮮度の良い香草をふんだんに使っているため食材の欠点を補って余りあるのだ。
どの土地でも調理の仕方しだいで美味しいものは食べれるのだ。
男性陣は思いっきり頬張る女性陣を見ると少し安心して、自分の皿に目をやる。
ニコラスはデザートウィングのステーキにナイフを入れる。ナイフは力を入れずともすっと肉の中に入っていった。
「なに! これがあの怪鳥デザートウィングだというのか。この柔らかさ。ありえない」
フォークに肉を刺し口に運ぶニコラス。
「う、うまい。なぜだ。このとろけるような食感。そして複雑なうま味が口に広がる。
セシリア。君の父上は一流のシェフなのだな。知らなかった、こんなに旨い料理は王宮でも食べたことがない」
「殿下、それはさすがに言い過ぎです。あと、父上はシェフではありません。ここのシェフもうちで雇う前は冒険者相手に味よりも量を優先に料理を出していた普通の料理人です。
ちなみにこのレシピを考えたのは母上です。父上は人材の確保や、物流網の開拓や各店舗の経営をしています」
「……そうか。セシリア・ノイマン。もっと早く気付くべきだった。君の父上は元カルルク帝国宰相で、稀代の政治家。
祖母であるオリビア・カルルクの右腕と呼ばれた。あの変人宰相ノイマン……失礼。祖母はずっとそう読んでいたので、つい」
「いいえ、お構いなく。母上も父上のことはストーカーだと言っていましたので気にしてません。事実そうなのでしょう……」
ニコラスとセシリアの会話を聞いてルーシーは思った。
そういえばお母様もエフタル共和国の政治家だったと聞いていた。ではお母様はストーカーだったのだろうか。
たしかにお母様はお父様にべったりである。近所の人達は自分の両親は未だにラブラブで、まるで新婚さんみたいでうらやましいと言っていた。
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