53 / 151
第四章 学園編1
第53話 闇の魔法に対する防衛術
しおりを挟む
どうやら『闇の魔法に対する防衛術』の授業の教室は学園の地下にあるようだった。
ルーシーとソフィアは階段を降り、地図に記載されている教室のある場所まで来た。
地下に教室というのに少し違和感を覚えたが、そう書いてあるのでそうなのだろう。
そして目的地に着く。
教室の入り口にはこう書かれていた。
古代魔法研究室。担当教員マーガレット・シャドウウィンド教授。
教室ではなかった。
「あれ? 古代魔法研究室? 場所を間違えたのかしら」
ソフィアはもう一度シラバスを確認する。
どうやら間違いないようだった。
軽くノックをすると中から声が聞こえた。
「……入っといで」
緊張しながらも扉を開く。
部屋の中央には応接用のソファとテーブル。
両サイドの壁際には棚があり、その上には様々な魔法道具と思われる古い物品がずらっと並んでいた。
ルーシーがきょろきょろと周りを見回していると、ソフィアは一歩前に進み、スカートを両手でつまみ、膝を少し曲げお辞儀をした。
「シャドウウィンド教授。私達、選択必修の科目、闇の魔法に対する防衛術を受けるため来ましたが、ここでよろしかったでしょうか?」
書類仕事をしていたのか教授はペンを机に置き。メガネを外すとこちらに顔を向けた。
マーガレット・シャドウウィンド教授の外見は白髪で皺だらけの顔であった。
所謂、おばあちゃん先生であったが、それでも目の光はまだまだ現役と言わんばかりにキラキラと輝いている。
「ああ、そうだったね、もうそんな時間かね。さてと、今年の一年生はお嬢ちゃん二人だけかね……。
人気が無いのはしょうがないが、今年は新記録かな? ……ニコラス殿下は来ると思っていたのだがね」
ソフィアとて、さすがに二人しか履修していない不人気な授業だとは思わなかった。
だが、ニコラスに関しては事情が違う。
「それですが、殿下は今日は欠席でして。でもシャドウウィンド教授はニコラス殿下とはお知り合いだったんですか?」
「あら、欠席なのかい? なら、まだ来てくれるかもだね。
そうさね、殿下とは趣味があってね、殿下は魔法道具屋の常連なのさ。そこで良く話をするよ。趣味友達と言ったところか。
殿下は、今となっては利用価値のない古代の魔法道具に関しても、若いのに良く調べている。だから彼は入学したらここに来ると思ってたんだが。少し残念だね。
……さてと、学生は二人か、どうしたものかな。
まあ、二人とも今日は初日だし、自己紹介も兼ねて、お茶でもしようじゃないか。あと、私のことはマーガレットと呼んでくれ、私は自分の姓があまり好きではない」
そういうと彼女は棚からティーセットを取り出す。古い魔法道具だろうか、不思議なデザインのティーポットに魔法で水を注ぐ。
あっという間にお湯が沸く。お茶を沸かすだけの魔法道具である。
「こういうレトロなアイテムが私は好きなのさ。さてと、お嬢さん方。さっそくだが、なぜ闇の魔法の授業を受けたいんだい? 外で使ったら逮捕されるぞ? 意味のない学問だし、実際このとおり閑古鳥だ」
ルーシーとソフィアは互いに顔を見合わせ、頷きながら返事をした。
「それはもちろん、このソフィア・レーヴァテインは闇の深淵を覗きたいからです!」
「同じく、ルーシー・バンデルは闇と呪いの魔法使いになるためです!」
マーガレット先生は一瞬きょとんとしたが、直ぐに大声で笑った。
「はっはっは。そうかそうか、お主たちもそうか。面白い。
実は私もな。闇と呪い、これらの深淵を覗きたくてな、この学問を探求しておるのだ。
よし、では今日は軽く、この研究室にあるヤバめの魔法道具をいくつか見せてやろう。
もちろん触ったりすることは許さん、何が起きるか分からん代物ばかりだしな。
例えばあそこにある首飾りは【奴隷の首輪】と言ってな、一度はめてしまったら術者以外に外すことはできない、恐ろしい呪いのアイテムであった。
まあ、先代のオリビア陛下の時代に廃止されたから、再び生産されることはないだろう。だが、今ではあれも古美術品としてはそれなりに価値がある」
ルーシーは圧倒されっぱなしだった。そして楽しかった。オリビア学園はグプタでは一生知ることができない知識で溢れていたのだ。
だから今日欠席したニコラス殿下に申し訳なく思った。
帰り道にて。
「ねえ、ソフィアさん。殿下のお家にいってみない? 私が嫌いみたいだけど、私だって初級魔法を使えるようになった。
私が気に入らないのは魔法が使えない事でしょ? でも今は違うし、お話すれば殿下は戻ってくるかもしれない。マーガレット先生の話では殿下は悪い人ではなさそうだし。
それに、せっかく趣味が合うんだったら、ぜひ闇の魔法の授業に参加してもらわなきゃ」
「あら、そうかしら? 殿下が怒ってたのは別の理由に思えるけど。……まあ、殿下の邸宅は知ってるし。
私としても殿下には今までの誹謗中傷をルーシーさんに謝罪してもらわなきゃって思ってたから、ちょうど良いわね、一緒に行きましょう」
ルーシーとソフィアは階段を降り、地図に記載されている教室のある場所まで来た。
地下に教室というのに少し違和感を覚えたが、そう書いてあるのでそうなのだろう。
そして目的地に着く。
教室の入り口にはこう書かれていた。
古代魔法研究室。担当教員マーガレット・シャドウウィンド教授。
教室ではなかった。
「あれ? 古代魔法研究室? 場所を間違えたのかしら」
ソフィアはもう一度シラバスを確認する。
どうやら間違いないようだった。
軽くノックをすると中から声が聞こえた。
「……入っといで」
緊張しながらも扉を開く。
部屋の中央には応接用のソファとテーブル。
両サイドの壁際には棚があり、その上には様々な魔法道具と思われる古い物品がずらっと並んでいた。
ルーシーがきょろきょろと周りを見回していると、ソフィアは一歩前に進み、スカートを両手でつまみ、膝を少し曲げお辞儀をした。
「シャドウウィンド教授。私達、選択必修の科目、闇の魔法に対する防衛術を受けるため来ましたが、ここでよろしかったでしょうか?」
書類仕事をしていたのか教授はペンを机に置き。メガネを外すとこちらに顔を向けた。
マーガレット・シャドウウィンド教授の外見は白髪で皺だらけの顔であった。
所謂、おばあちゃん先生であったが、それでも目の光はまだまだ現役と言わんばかりにキラキラと輝いている。
「ああ、そうだったね、もうそんな時間かね。さてと、今年の一年生はお嬢ちゃん二人だけかね……。
人気が無いのはしょうがないが、今年は新記録かな? ……ニコラス殿下は来ると思っていたのだがね」
ソフィアとて、さすがに二人しか履修していない不人気な授業だとは思わなかった。
だが、ニコラスに関しては事情が違う。
「それですが、殿下は今日は欠席でして。でもシャドウウィンド教授はニコラス殿下とはお知り合いだったんですか?」
「あら、欠席なのかい? なら、まだ来てくれるかもだね。
そうさね、殿下とは趣味があってね、殿下は魔法道具屋の常連なのさ。そこで良く話をするよ。趣味友達と言ったところか。
殿下は、今となっては利用価値のない古代の魔法道具に関しても、若いのに良く調べている。だから彼は入学したらここに来ると思ってたんだが。少し残念だね。
……さてと、学生は二人か、どうしたものかな。
まあ、二人とも今日は初日だし、自己紹介も兼ねて、お茶でもしようじゃないか。あと、私のことはマーガレットと呼んでくれ、私は自分の姓があまり好きではない」
そういうと彼女は棚からティーセットを取り出す。古い魔法道具だろうか、不思議なデザインのティーポットに魔法で水を注ぐ。
あっという間にお湯が沸く。お茶を沸かすだけの魔法道具である。
「こういうレトロなアイテムが私は好きなのさ。さてと、お嬢さん方。さっそくだが、なぜ闇の魔法の授業を受けたいんだい? 外で使ったら逮捕されるぞ? 意味のない学問だし、実際このとおり閑古鳥だ」
ルーシーとソフィアは互いに顔を見合わせ、頷きながら返事をした。
「それはもちろん、このソフィア・レーヴァテインは闇の深淵を覗きたいからです!」
「同じく、ルーシー・バンデルは闇と呪いの魔法使いになるためです!」
マーガレット先生は一瞬きょとんとしたが、直ぐに大声で笑った。
「はっはっは。そうかそうか、お主たちもそうか。面白い。
実は私もな。闇と呪い、これらの深淵を覗きたくてな、この学問を探求しておるのだ。
よし、では今日は軽く、この研究室にあるヤバめの魔法道具をいくつか見せてやろう。
もちろん触ったりすることは許さん、何が起きるか分からん代物ばかりだしな。
例えばあそこにある首飾りは【奴隷の首輪】と言ってな、一度はめてしまったら術者以外に外すことはできない、恐ろしい呪いのアイテムであった。
まあ、先代のオリビア陛下の時代に廃止されたから、再び生産されることはないだろう。だが、今ではあれも古美術品としてはそれなりに価値がある」
ルーシーは圧倒されっぱなしだった。そして楽しかった。オリビア学園はグプタでは一生知ることができない知識で溢れていたのだ。
だから今日欠席したニコラス殿下に申し訳なく思った。
帰り道にて。
「ねえ、ソフィアさん。殿下のお家にいってみない? 私が嫌いみたいだけど、私だって初級魔法を使えるようになった。
私が気に入らないのは魔法が使えない事でしょ? でも今は違うし、お話すれば殿下は戻ってくるかもしれない。マーガレット先生の話では殿下は悪い人ではなさそうだし。
それに、せっかく趣味が合うんだったら、ぜひ闇の魔法の授業に参加してもらわなきゃ」
「あら、そうかしら? 殿下が怒ってたのは別の理由に思えるけど。……まあ、殿下の邸宅は知ってるし。
私としても殿下には今までの誹謗中傷をルーシーさんに謝罪してもらわなきゃって思ってたから、ちょうど良いわね、一緒に行きましょう」
2
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~
夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】
「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」
アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。
理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。
もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。
自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。
王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると
「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」
オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが……
アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。
そして今日も大きなあの声が聞こえる。
「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」
と
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる