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第二章 船旅
第18話 クルーズ船の旅①
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「すっごーい、見て見てルーシーちゃん。街があんなにちっちゃくなってるよ!」
船は静かな波の上をゆっくりと進んでいた。
ルーシー達は船尾に立って、出発したばかりの港を見つめていた。港の建物や人々は、まるで豆粒のように小さく見えた。
ルーシーは海に出るのは初めてだった。
「くっ、奴のテリトリーに来てしまった。だがいい眺めには違いない。……あ! あそこにいるのはお父様!」
「え? ルーシーちゃんのパパ? どこ?」
港に見える赤毛の男性は間違いなく父親だ。
船はかなり沖の方に来ているため人の見分けはつかないが、ルーシーはシルエットだけで大好きな父親だとわかる。
そして父親と向かい合う一人、全体に青いシルエットの女性。ベアトリクスだ。
父は警備隊長をしている仕事柄ベアトリクスと一緒にいることが多い。
「ち、またあの女か。許してやったとはいえ、……余りお父様にまとわりつくなよ……」
「えー? ルーシーちゃん女神様と仲直りしたんじゃないの?」
「アンナちゃんよ。確かに仲直りはしたが、私は馴れ馴れしくするつもりはないのだ、わっはっは」
船は進む。心地よい潮風は彼女たちを祝福するかのようにスカートを優雅に揺らす。
「おーい、二人とも、こんなとこにいないで船内を冒険しようぜ。せっかくのクルーズ船なんだぜ?」
ルーシー達は今、豪華クルーズ船「レスレクシオン号」に乗っている。
◇◇◇◇◇
時は遡る。
いつもの塾の帰りにて。ジャンはやや興奮気味にルーシー達に話しかけた。
「ふふふ、聞いて驚けよ! 父ちゃんの知り合いから特別にクルーズ船のチケットをもらったんだ。4人分あるから友達誘って行って来いって」
ジャンの父親は船大工である。クルーズ船の製造にも関わっていたため特別にチケットをもらったのだった。
本来なら家族で行くはずだったが。ジャンの家族は仕事が忙しく、子供達で行ってきなさいと譲ってもらったそうだ。
「すっごーい、クルーズ船ってとっても豪華なんでしょ? はっ! どうしよう、着る服がないわ!」
「おいおい、着る服ってなんだよ。お前服着てるじゃんか」
「もう、ジャン君は何もわかってない。これ一等客室のチケットでしょ? こんな服じゃだめだよ」
クルーズ船、一等客室のチケット、それはセレブに許された娯楽だ。
子供だとしても相応しい服がある。アンナは何も知らないジャンに数分にわたって説教をした。
「お、おう。そうなのか? 服なんて清潔なら何でもいいんじゃないのか?」
「だめだって、ジャン君、今から服を買いにいかなきゃ」
ジャンは職人の息子ということもあって専門知識はあるし、頭もいい、算数はルーシーよりも得意だ。
しかし一般教養といったところで時々ポンコツになる。
そこをうまくフォローするのはアンナであった。
彼女は勉強は苦手な方で、普段おっとりした性格であるが、料理や裁縫は得意で、実に家庭的である。
この二人はお似合いだと、ルーシーはニヤニヤしながら二人のやり取りを見ていた。
「姉ちゃん、どうしよう。僕らそんなにいい服もってないよ」
弟の発言で他人事ではないと気づくルーシーだったが……解決策はある。
そして、大人らしく余裕の態度で弟に返す。
「そういうことならレオ、お父様に相談するのよ。いいこと? 私がお父様に相談するから、お母様にはしぶしぶ了承するようにしなきゃ。お母様は……ちょっとケチだから」
大人であるルーシーは父親から衣装代を出してもらうという結論に出たのだった……。
船は静かな波の上をゆっくりと進んでいた。
ルーシー達は船尾に立って、出発したばかりの港を見つめていた。港の建物や人々は、まるで豆粒のように小さく見えた。
ルーシーは海に出るのは初めてだった。
「くっ、奴のテリトリーに来てしまった。だがいい眺めには違いない。……あ! あそこにいるのはお父様!」
「え? ルーシーちゃんのパパ? どこ?」
港に見える赤毛の男性は間違いなく父親だ。
船はかなり沖の方に来ているため人の見分けはつかないが、ルーシーはシルエットだけで大好きな父親だとわかる。
そして父親と向かい合う一人、全体に青いシルエットの女性。ベアトリクスだ。
父は警備隊長をしている仕事柄ベアトリクスと一緒にいることが多い。
「ち、またあの女か。許してやったとはいえ、……余りお父様にまとわりつくなよ……」
「えー? ルーシーちゃん女神様と仲直りしたんじゃないの?」
「アンナちゃんよ。確かに仲直りはしたが、私は馴れ馴れしくするつもりはないのだ、わっはっは」
船は進む。心地よい潮風は彼女たちを祝福するかのようにスカートを優雅に揺らす。
「おーい、二人とも、こんなとこにいないで船内を冒険しようぜ。せっかくのクルーズ船なんだぜ?」
ルーシー達は今、豪華クルーズ船「レスレクシオン号」に乗っている。
◇◇◇◇◇
時は遡る。
いつもの塾の帰りにて。ジャンはやや興奮気味にルーシー達に話しかけた。
「ふふふ、聞いて驚けよ! 父ちゃんの知り合いから特別にクルーズ船のチケットをもらったんだ。4人分あるから友達誘って行って来いって」
ジャンの父親は船大工である。クルーズ船の製造にも関わっていたため特別にチケットをもらったのだった。
本来なら家族で行くはずだったが。ジャンの家族は仕事が忙しく、子供達で行ってきなさいと譲ってもらったそうだ。
「すっごーい、クルーズ船ってとっても豪華なんでしょ? はっ! どうしよう、着る服がないわ!」
「おいおい、着る服ってなんだよ。お前服着てるじゃんか」
「もう、ジャン君は何もわかってない。これ一等客室のチケットでしょ? こんな服じゃだめだよ」
クルーズ船、一等客室のチケット、それはセレブに許された娯楽だ。
子供だとしても相応しい服がある。アンナは何も知らないジャンに数分にわたって説教をした。
「お、おう。そうなのか? 服なんて清潔なら何でもいいんじゃないのか?」
「だめだって、ジャン君、今から服を買いにいかなきゃ」
ジャンは職人の息子ということもあって専門知識はあるし、頭もいい、算数はルーシーよりも得意だ。
しかし一般教養といったところで時々ポンコツになる。
そこをうまくフォローするのはアンナであった。
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この二人はお似合いだと、ルーシーはニヤニヤしながら二人のやり取りを見ていた。
「姉ちゃん、どうしよう。僕らそんなにいい服もってないよ」
弟の発言で他人事ではないと気づくルーシーだったが……解決策はある。
そして、大人らしく余裕の態度で弟に返す。
「そういうことならレオ、お父様に相談するのよ。いいこと? 私がお父様に相談するから、お母様にはしぶしぶ了承するようにしなきゃ。お母様は……ちょっとケチだから」
大人であるルーシーは父親から衣装代を出してもらうという結論に出たのだった……。
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