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第二章 船旅
第17話 将来の夢②
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夢、私の夢はなんだろうか。
ルーシーはぼんやりと将来について考える。
とりあえず魔法を学びたいし大都市にある学校というやつに行ってみたい。
最初はハインドが拗れた原因を探ろうと思い、学校に通うのも悪くないと思った程度のことだった。
ルーシーはこの小さな港町で一生を過ごすのにぼんやりとだが違和感を憶えていた。
きっと両親がこの街の生まれではないからだろう。
両親はエフタル出身だったが、いろんな国を渡り歩き最終的にこのグプタに居を構えた。
たまに両親は様々な外国の話を子供たちに聞かせていたためルーシーはぼんやりとだが憧れの様なものを感じていたのだ。
ぼけーっと、窓の外に映る海岸線を眺めながら、順番に語る子供たちの夢を聞きながら物思いにふけっていた。
「次はどなたの夢を聞きましょう。そうだ、ル、レオンハルト君にお願いしようかしら」
ルーシーと言いかけて言い直すブラウン先生。
この手の話は過去何度かあったが、いつもルーシーの番は最後だった。
ジャンが言うには私は落ちなのだと言っていたのを思い出す。
もはやドラゴンロードになるなどとは言わない。
なぜならばベアトリクス公認のドラゴンロードとして認められたのだから。
しかし、今にして思えば昔の私は随分と恥ずかしいことを言っていたのか、と自らを省みる。
今の私は立派な大人なのだと、緊張して立ち上がる弟を見ながら姉としての余裕と包容力を示すためにやさしく声を掛けるのだ。
「レオ、頑張んなさいね」
「う、うん。頑張るよ」
レオンハルトは随分と緊張している。
ジャンが余りに堂々と語るものだからプレッシャーに感じているのだろう。
そう思うと姉としてもっと優しくしないといけない、今まで眷属扱いした分優しくしようと思った。
――実際は、妙にしおらしい姉を見て薄気味悪さを覚えるレオンハルトであった。
レオンハルトは少し深呼吸して、自分の思いを教室の皆に聞こえるように少し大きめの声で言った。
「僕の夢は。騎士になることです! 父上はかつて王女様の護衛騎士として仕え、魔剣を授かるほどの立派な騎士だったそうです。今は王国は無いですが僕は父上のようになりたいです」
レオンハルトは父がかつて王国の騎士だったことを知っている。
本当にそうだったかは確かめることはできないが、母は幼いレオンハルトに毎日父親の英雄譚を聞かせていた。
憧れるのは当然の結果だろう。
そして最近は剣の修行も付けてもらっている。
だが、グプタでは騎士という階級はない。
弟も外国に行くことになるのだろうか。
真っすぐなレオンハルトの言葉はわいわいと賑やかな教室をぴしっと引き締めた。
語り終わった頃には周りから拍手が沸きおこる。レオンハルトは照れくさそうに席に座った。
ルーシーは思った。弟は立派な騎士になるだろう。お父様のように……。
感慨にふけていると、ジャンが茶化すように声を上げた。
「よし、次はいよいよ落ち担当のルーシーだな。あれだろ? なんだっけ、呪いの――
「――魔法使いに私はなる!」
ジャンを遮るように言葉を発するルーシー。
「なんだよ、呪いの魔法使いって、いかがわしすぎるだろ」
「ちがーう、呪いはジャン君が言ったから被っただけでしょ! 私は偉大な魔法使いになるのよ!」
周りがガヤガヤと騒ぎ出す。
呪いの魔法使いはさておき、偉大な魔法使いは立派な夢だ。
ブラウン先生は満面の笑みで言った。
「あらあら、素敵ですね。ルーシーさんも大人になったということですね。とても素晴らしい夢ですよ。ついにドラゴンロードは卒業ですね」
「うむ、先生。私はもう公認のドラゴンロードなのだ! だから二つ名が欲しい。……うーん。……そうだ! ジャン君のアイデアいただき。我は呪いの魔法使い、ルーシーである!」
「姉ちゃん……それは、それだけは止めてよ。前より酷くなってる。それは絶対に却下だよ」
「ルーシーちゃん、私もレオ君に賛成。それだとルーシーちゃん、悪いおばあちゃん魔女みたいだよ……」
「ぐぬぬ、アンナちゃんに言われてはしょうがないか。なら、闇の魔法使い……」
「同じじゃないか! 闇とか呪いとか不吉だからやめなよ。それにまだ魔法使いじゃないでしょ? ゆっくり考えなって、ね?」
「ふむ、しょうがない。なら先にレオの二つ名を決めてやろう。ふふふ。じつは、前から考えていたのだ。レオ、お前はドラゴンの騎士となるのだ!」
「……それは、ちょっとカッコいいけど、はずかしいよ、実力が伴って無いし……」
否定はするが満更でもない表情のレオンハルト。
「いやなのか? なら呪いの騎士……闇の騎士でもいいかも」
「……ドラゴンでいいです」
こうして子供たちは将来を語り合い今日の授業は終わった。
ルーシーはぼんやりと将来について考える。
とりあえず魔法を学びたいし大都市にある学校というやつに行ってみたい。
最初はハインドが拗れた原因を探ろうと思い、学校に通うのも悪くないと思った程度のことだった。
ルーシーはこの小さな港町で一生を過ごすのにぼんやりとだが違和感を憶えていた。
きっと両親がこの街の生まれではないからだろう。
両親はエフタル出身だったが、いろんな国を渡り歩き最終的にこのグプタに居を構えた。
たまに両親は様々な外国の話を子供たちに聞かせていたためルーシーはぼんやりとだが憧れの様なものを感じていたのだ。
ぼけーっと、窓の外に映る海岸線を眺めながら、順番に語る子供たちの夢を聞きながら物思いにふけっていた。
「次はどなたの夢を聞きましょう。そうだ、ル、レオンハルト君にお願いしようかしら」
ルーシーと言いかけて言い直すブラウン先生。
この手の話は過去何度かあったが、いつもルーシーの番は最後だった。
ジャンが言うには私は落ちなのだと言っていたのを思い出す。
もはやドラゴンロードになるなどとは言わない。
なぜならばベアトリクス公認のドラゴンロードとして認められたのだから。
しかし、今にして思えば昔の私は随分と恥ずかしいことを言っていたのか、と自らを省みる。
今の私は立派な大人なのだと、緊張して立ち上がる弟を見ながら姉としての余裕と包容力を示すためにやさしく声を掛けるのだ。
「レオ、頑張んなさいね」
「う、うん。頑張るよ」
レオンハルトは随分と緊張している。
ジャンが余りに堂々と語るものだからプレッシャーに感じているのだろう。
そう思うと姉としてもっと優しくしないといけない、今まで眷属扱いした分優しくしようと思った。
――実際は、妙にしおらしい姉を見て薄気味悪さを覚えるレオンハルトであった。
レオンハルトは少し深呼吸して、自分の思いを教室の皆に聞こえるように少し大きめの声で言った。
「僕の夢は。騎士になることです! 父上はかつて王女様の護衛騎士として仕え、魔剣を授かるほどの立派な騎士だったそうです。今は王国は無いですが僕は父上のようになりたいです」
レオンハルトは父がかつて王国の騎士だったことを知っている。
本当にそうだったかは確かめることはできないが、母は幼いレオンハルトに毎日父親の英雄譚を聞かせていた。
憧れるのは当然の結果だろう。
そして最近は剣の修行も付けてもらっている。
だが、グプタでは騎士という階級はない。
弟も外国に行くことになるのだろうか。
真っすぐなレオンハルトの言葉はわいわいと賑やかな教室をぴしっと引き締めた。
語り終わった頃には周りから拍手が沸きおこる。レオンハルトは照れくさそうに席に座った。
ルーシーは思った。弟は立派な騎士になるだろう。お父様のように……。
感慨にふけていると、ジャンが茶化すように声を上げた。
「よし、次はいよいよ落ち担当のルーシーだな。あれだろ? なんだっけ、呪いの――
「――魔法使いに私はなる!」
ジャンを遮るように言葉を発するルーシー。
「なんだよ、呪いの魔法使いって、いかがわしすぎるだろ」
「ちがーう、呪いはジャン君が言ったから被っただけでしょ! 私は偉大な魔法使いになるのよ!」
周りがガヤガヤと騒ぎ出す。
呪いの魔法使いはさておき、偉大な魔法使いは立派な夢だ。
ブラウン先生は満面の笑みで言った。
「あらあら、素敵ですね。ルーシーさんも大人になったということですね。とても素晴らしい夢ですよ。ついにドラゴンロードは卒業ですね」
「うむ、先生。私はもう公認のドラゴンロードなのだ! だから二つ名が欲しい。……うーん。……そうだ! ジャン君のアイデアいただき。我は呪いの魔法使い、ルーシーである!」
「姉ちゃん……それは、それだけは止めてよ。前より酷くなってる。それは絶対に却下だよ」
「ルーシーちゃん、私もレオ君に賛成。それだとルーシーちゃん、悪いおばあちゃん魔女みたいだよ……」
「ぐぬぬ、アンナちゃんに言われてはしょうがないか。なら、闇の魔法使い……」
「同じじゃないか! 闇とか呪いとか不吉だからやめなよ。それにまだ魔法使いじゃないでしょ? ゆっくり考えなって、ね?」
「ふむ、しょうがない。なら先にレオの二つ名を決めてやろう。ふふふ。じつは、前から考えていたのだ。レオ、お前はドラゴンの騎士となるのだ!」
「……それは、ちょっとカッコいいけど、はずかしいよ、実力が伴って無いし……」
否定はするが満更でもない表情のレオンハルト。
「いやなのか? なら呪いの騎士……闇の騎士でもいいかも」
「……ドラゴンでいいです」
こうして子供たちは将来を語り合い今日の授業は終わった。
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