3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

文字の大きさ
上 下
112 / 133
エピソード3

フェイタルフェイト10/31

しおりを挟む
 アースイレブンの対流圏を抜け、地上に再びレッドワーフの揚陸用舟艇が降りる。

 周辺で唯一の降下可能なポイントは塩湖周辺の砂浜である。
 後部ハッチから装甲車が展開される。
 同時にレッドドワーフのメンバーは軍隊さながらの機敏な動きで、一瞬で陣地を構築した。 

 アースイレブンは自然保護区である。
 霊子レーダーを始めとした通信機器の使用は禁止されている。
 そんな中で彼らに許されたのは、脳波パッシブセンサーにて周囲の状況を探ることである。

 脳波パッシブセンサーは電波を発しない環境に配慮した民間用のセンサーだ。
 生物が放つ脳波の揺らぎをキャッチするため、有害な電波は発しない。
 自然保護団体が好んで使う唯一のハイテク機器である。

 ちなみに脳波は微弱である為、精度は低い。
 だが、敵の奇襲を防ぐためなら充分な性能である。

「センサーに反応なし。視界は良好、この辺には連中は居ないようだな……」

「団長、足跡がありましたぜ!」

 団員の一人が地面に踏まれた大きな足跡を発見する。

「でかした! ふむ、これか……たしかにデカいな。それにブーツの様な形だ、生き物のもんじゃねぇな……これは本当にマードックの旦那の言う通りかもしれんな。
 違法の人造人間か……連中とんだ下衆野郎のようだ。ぶっ殺してやる!」
 
 足跡からは明らかな二足歩行の生き物、足跡のサイズと歩幅から考えると身長は三メートル以上はあると思われる。

 そしてその足跡は森林の獣道を抜け大きな洞窟の入口まで続いていた。

「やはり、ここが奴らのアジトってことか……装甲車が入るには少し狭いか。
 おい! 散らばってる連中を呼び戻せ、十中八九連中のアジトはここだ、マードックの旦那はどう思う?」

「うむ、足跡からして、おそらくはここに潜んでいるに違いない。この巨大な足跡は一人分だしな、大きさからして俺達の見た奴に違いないだろう」

「おし、なら決まりだ。
 おい! ベネット! サリー! クック! お前等、部下共数人連れて中を見てこい! あくまで偵察だぞ?」

「へへへ、団長。敵が仕掛けてきたらどうしますかい?」

「バレないようにしろって言ってんだよ。まあ見つかったらお前等の好きにするといいさ。あくまで上品に頼むぜ?」

「へっへっへ、俺はいつでも上品さ。もちろん団長たちの分も残しておくからよ」

 団員達はそれぞれの武器を持ち、洞窟の奥へと消えていった。

「ねえ、マードック、私達も行った方が良いんじゃない? アイツ等、偵察する気ゼロよ?」

「たしかにな、作戦に支障がでると不味いな。団長殿、俺達も偵察に行かせてらうがいいか?」

「すまねぇ、頼むぜ。……まったく、あいつらは血の気が多くていけねえや。さてと俺達は全員集合させないとな。信号弾をあげろ!」


 ◇◇◇


 地上から大きな花火が上がった。
 それは木々の隙間を抜けてカラフルな煙の花火がさく裂するのが見えた。

「おっ! 地上から信号弾だ! アイちゃんあれはどういう意味?」

『はい、集合の合図ですね。おそらく敵のアジトを見つけたのだと思います。皆であつまって総攻撃、といったところでしょうね』

「うーん、しかし地上は木に隠れて全然見えないな。やはり光学カメラだと限界があるか……。
 でも霊子レーダーは使っちゃダメだし……これって縛りきつくない?」

『いいえ、地上戦においてはそれほどの問題はありません。
 彼等は脳波パッシブセンサーを使っています。
 精度はいまいちですが、それでも生物の脳波を感知することができます。
 もっとも軍隊では不採用ですが、それでも大体の敵の位置は分かるので彼等の様な自然保護団体が使うには十分な性能でしょう』

「なるほどな、電波を出さなくても案外何とかなるもんだな。ちなみにアマテラスにはないの?」

『ある訳ないですよ。あれは彼等の様なちょっと特殊な考えを持つ人達しか使用しませんし。所詮はガラパゴス的な技術ですので……』

 同じくブリッジで地上を観察していたミシェルさんは思うことがあるのか、そっと席を立つ。

「イチローさん。私、その脳波パッシブセンサーに心当たりが、というか実はこの船内にもあるかもです!」

「まじで? アイちゃんは無いって言ってるぜ?」

 アマテラスの船全体を管理しているアイちゃんが無いと言ったら絶対に無いはずなのだが……はて。

「ですから、ほら、あれです。シースパイダーですよ。
 この間のクラゲ事件の時に使いましたよね。
 たしかカタログにそんな機能があるって書いてた気がします。
 海洋調査は環境を汚さないエコでクリーンなシースパイダーって書いてましたから絶対に装備してるはずです!」

 ……なるほど、それは充分可能性がある。

「ナイスだミシェルさん。よーし、たしかシースパイダーは倉庫に入ってたっけ。
 サンバ君! ミシェルン! 緊急事態だ! シースパイダーを起動するぞ! 貨物搬入デッキに全員集合だ!
 ……アイちゃん、すまんな。ちょっと監視は一人でお願いできない? 埋め合わせはするからさ」

『マスター、ダメですよ。監視には原則、人がついていないといけません。ルールがありますし』

「ちょっとだけだよ。それに俺はアイちゃんを人として信用してるってば、割とマジで。すぐ戻るからさ、じゃあよろしく!」

『まったく……、ほんとマスターはたらしなんですから』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

【なろう440万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

処理中です...