3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

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エピソード2

カニパーティー2/8

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 福祉船アマテラスは現在、アーススリーの海洋上空にいる。
 本来なら蟹漁の漁船で賑わうはずの漁業水域であるが。
 現在は海洋調査の為、一隻の漁船もない。

 ミシェル・クロスロードはレポートの提出と今後の仕事の打ち合わせの為、船長室に来ていた。

 もちろん、アイちゃんも、ミシェルンも同席している。いかがわしいことはない。
 そう言えば某政治家なんかは密室で女性と会う時は必ず第三者か、女性を同席させると聞いたことがある。

 世知辛い世の中だ。おっと、今がそうだとは言わないが自己防衛ってな、大事なことだ。

 というか、ぶっちゃけ18歳の女性と面と向かって会話した経験なんて俺の人生において一度もないのだ。
 精一杯の俺を理解してほしいものだ……。

「はい、スズキ……さん。書類は一通り拝見しました。近年、著しい漁獲量の減少に関する本格的な調査ということですね」

「うむ、アーススリー行政区ではお手上げということで、なぜか俺達が派遣されたそうだ。ちなみにこの船には海洋調査をする設備は一切ない。
 なぜなら、この船、アマテラスは元宇宙戦艦。
 そして観光船を経て福祉船となった。だが残念ながら海洋調査の経験は全くないのだ。
 だが、とにかく頑丈で大きな民間船は後にも先にもアマテラスだけだということで、今回は白羽の矢が立ったということだ」

「はい、それで明日、海洋調査用の設備が本艦に届くと言う事ですね。しかし、なぜ宇宙戦艦なんでしょうか」

「それについては私がお答えしましょう。
 まず、なぜ宇宙戦艦なのかについては、マスターがおっしゃる通り、とにかく頑丈であるということですね。
 地元の漁師の証言を真に受けるわけではありませんが。
 かなり大型の海洋生物がいるため、民間船では万が一があると言うことです」

 そう、今回の仕事、海洋調査に関しては事前情報を合わせると色々ときな臭いのだ

 ニュースでは特産品のブラックロッククラブの漁獲量が激減しているとしか言っていない。
 普通ならば気候変動や海流の流れ、天敵の存在を調査するのが当然である。
 だが、それくらいの調査ならとっくにアーススリーの政府がやっている。

 しかしいずれも異常なし。

 あえて言うなら海域全体の海洋生物が減少しているのだ。
 だが気候変動などの異常はここ数年観測されてはいない。

 では天敵の存在が候補に挙がる。大型で肉食の魚やタコなどであるが。それすらも数を減らしているのだ。

 現地の漁師たちもお手上げ。海に異常はない。

 だが、一部の漁師たちの間で、こんなうわさが広がっている。


 漁師Aの証言。
『オ、オラは見ただ、船よりもでかいタコの悪魔がいるだ。そいつは海から頭を出したと思ったらすぐに海中に引っ込んじまったんだ』

 漁師Bの証言。
『オラも確かに見たぞ、証拠は動画に取ったけどよ、そのデータだけすっぽり消えてたぞ。あれはカメラにハッキングするすげぇやつだ。オラわくわくすっぞ』

 漁師Cの証言。
『オラも見ただよ、でも他の仲間たちはオラが嘘をついているって言ってただよ。オラ嘘ついてねぇだ、オラがブーステッドヒューマンだからって皆差別してるだよ』


「……らしいんだけど。うーん、惜しいかな。
 今のところ、これらの証言が最も信ぴょう性が高いそうだ。
 アイちゃんはどう思う? オラが思うに、ダイオウイカとかそんなやつだと思うんだけど。ほら地球にもクラーケンの伝説とかあるだろ?」

「はい、マスターの言う事に一理はありますけど。本当にダイオウイカなら、既に発見されてもいいはずです。
 それに彼らが嘘をついている方が確率的に上です。現に同じ船に乗った人間は全員見てないそうではないですか。
 肝心の動画も取れてないってことはワンチャン、炎上ねらいで有名になろうと企てている輩かもしれませんよ?
 実際、乗員達や彼らの漁船は全くの無傷なんですから、海の悪魔と遭遇はさすがにちょっと荒唐無稽かと……」

「……うーむ、つまり、あれか。
 結局のところ全然分からないってことだな。なるほど、だから俺達の仕事になる訳ね。
 俺達は便利屋じゃないんだけど」

「マスター、そこは我々にしかできない仕事だとおもって頑張りましょうよ。
 探偵みたいで楽しいじゃないですか。それにもし本当にダイオウイカみたいなモンスターだったら民間の調査船なんてすぐに転覆してしまいますし。
 じっくり海を見ながら時間を過ごすのも健康的じゃないですか? ボランティアのクロスロード様にもこの船に慣れてもらうにはちょうど良いかと思います」

 たしかにな、宇宙ギャングとの銃撃戦とか、オタク兄弟のセクハラ攻撃に比べれば天国だな。


 翌日。

 アマテラスに地球から海洋調査の機器を乗せた小型輸送船が到着した。

 小型とはいえ全長200メートル以上はある超光速輸送船。
 大手通販サイトガンジスなどが良く利用する民間では最も足の速いの宇宙船だ。

 俺達は荷物受け入れのために貨物搬入デッキまで降りる。

 エアロックを開くと、そこにはタイトスカートのスーツを着こなした金髪でスタイル抜群の女性がいた。

「あれ? クリステルさん? どうしたんですか? 休暇はまだのはずですけど」

「イチローおじさん、お久しぶりです。
 実は仕事でアーススリーにしばらく滞在することになりまして、ついでですから荷物も我々で運んでしまおうと思ったんですよ」

「そうだったんですか。ということは……」

 俺と同行していたミシェルさんは少し後ずさる。

「パパ……いいえ、クロスロード議員が来てるってことですか?」

「はい、そうですね。病院ではあまり時間が取れませんでした。
 それが心残りで議員自ら小型輸送船の業務の視察と称して自らここまでいらしたのですよ。
 もっとも、アーススリーで仕事があるのは本当のことです。ですが一時間くらいは時間がありますので、是非もう一度会いたいとのことですが……」 

「…………。」

 ミシェルさんは何も言わない。

 この場にクリステルさんしかいないということは、まだ輸送船内にクロスロード上院議員がいるのだろう。

 積荷の運搬をロボットたちに指示をしているのもあるが、いきなり顔を出すのを躊躇している節がある。

 複雑な家庭環境なのだろう。俺には理解できないが、なんとか間を取り持たなければ。

「あの、クリステルさん。すいませんがもう少し時間をいただけませんか? ミシェルさんにはまだ少し時間が必要だと思います」

「……なるほど、それもそうですね。では我々は一週間ほどアーススリーに滞在しています。せめて食事でも……というのがクロスロード議員の希望です。
 まあ、そうでなくともこれからも時間はたっぷりあるのですから、強制はしません。
 では、イチローおじさん。荷物の受け渡しの手続きをしましょう」

 クリステルさん達は手早く輸送船から荷物を下ろすと、すぐにアーススリーの首都へ向かい飛び去った。

「……まあ、クリステルさんの言った通りだ。時間はたっぷりあるし、チャンスはいつでもある。気を負う必要はないさ」

「…………」

 うーん、なんとかなるのだろうか。まあ時間の問題だと思いたいところだ。
 現状はいい方向に向かっているのは間違いないのだから。

「マスター。積み込んだ荷物ですが早速中身を確認しましょう。事前の情報よりも少し多い気がしますので」

「ああ、そうだな、クロスロードさんにも手伝ってもらおうじゃないか」

 この時俺は思った。同じ苗字、親子だから当たり前だが……ついこの間までは親権の問題で別の苗字だったのだ。
 俺は少し無神経だった。

「あ、クロスロードって苗字が長くて言いにくいから、これからは名前で呼ばせてもらうよ。
 ミシェルさんも俺の事はイチローと呼んでくれて構わないよ。
 じゃあミシェルさん、まずはそっちのコンテナから確認しよっか」

「……はい、分かりました。イチローさん」
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