3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

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エピソード2

シンドローム24/27

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「さっすがミシェランちゃん。蜘蛛の糸ってどうやって操ってるのかな? 私もモンスターはやったことあるけど、手足の動きが上手くできなくって。なんかコツはあるのかなー?」

「インフィさん、コツと言われてもですー。なんとなくですー。生まれたときから足は最初から八本あったのですー」

 おい、ミシェルン。それ以上はバレるだろうが!

「……ふむ、なるほど。最初からあった……?
 そうか! そうあるべきとイメージするのか。やはりミシェランちゃんは天才……異形モンスターで初のランカーが誕生するかも。ふっふっふ」

 インフィはぶつぶつと言っている。誤解が結構いい方向になっているのかもだな。平穏そのもの。

 しかし、俺達が罠を前に足を止めてから数分が経つ。 

「おいおい、サンバ君、どうした? トラップ解除のスキルは上げたんじゃないのか?」

「それですが、船長さん。ちょっとスキルポイントが足りませんで……。
 実はカンストにはなってないんでやんす。
 アイテム蒐集のスキルを先にカンストさせてしまったっすよ、ぐへへ」

「うん? つまりどういう事だって?」

「ぐへ……へ。つまりは失敗っす……。罠解除のスキルレベルが足りてなかったっす。
 ローグが唯一活躍できるはずの場所で……く、くやしい。でも……アイテム蒐集スキルはカンストしたんですー! レアアイテムを店売りしてゴールドを稼いでいたんっす!」

「お、おう、それは分かるよ。死にスキルをカンストなんてモチベーションが持たないよな」

 それにアイテム蒐集には助けられたのは事実、サンバを叱らないでやろう……。

【罠解除に失敗しました。ランダムテレポーター発動!】

 ダンジョンの床に光り輝く魔法陣が浮かび上がる。

【…………。『職業:マシーン』を別のフロアに強制テレポートします】

 なんだそれ!

 うお、眩しい!

 真っ白な光に包まれた。

 …………。

 ……。

 光が止むと、そこは大きなフロアだった。
 墳墓ということには違いない。
 石材で出来た壁に苔の生え具合など、先ほどまで居た通路とそれほど変わらないように見えた。

「どうやら私達だけが、別のフロアに飛ばされてしまったようですね。
 ランダムテレポーターの罠はその名の通り、ランダムに各職業を選択し強制テレポートを発動させる厄介な罠です。
 今回は私達マシーンに発動したようですね」

 なるほど、パーティーをバラバラにする罠ってことね。
 嫌らしい物を考えるものだ。

 しかも薄気味悪い地下墳墓のダンジョンでだ。

 ゲームクリエイターの意地悪さが伺える。
 
 もし俺が一人だったらと思うとぞっとする。
 今回は偶然にもマシーンはもう一人いるのだが。

 いや、それもマズくないか?
 俺は今犯人と二人っきりなのだ。

 ……いったい何を話せばいいか。
 ヤバい、緊張してきた。
 
「スズキさん、安心してください。
 このクエストには攻略方法はいくつかありまして。
 まあ、一番の正攻法はローグの罠解除スキルレベルをカンストさせることだったのですが……。

 他はどれも少し強引な方法になりますがあるにはあるのです。
 まずは同じ種族だけでパーティーを編成するとかですね、そうすればテレポーターに引っ掛かっても全員で移動するだけですので問題ありません。
 テレポートの運によりますが、ボスまでのショートカットが出来る場合があるのですよ。
 あとは、これも強引な手段ですが、別れたメンバーの誰かで強引にボスを倒してしまえばパーティーがバラバラでもクエスト攻略完了になります。
 私たちはこれをやるとしましょう。向こうのパーティーにはスサノオさんがいます。そしてここには私がいますから。
 それにここでクエストリタイアしたら、せっかく経験値を稼いだミシェランちゃんが可哀そうですし」

 うん、良い人なんだよなー。
 本当にこの人が爆弾テロの犯人なんだろうか……。

 いやいや、証拠は揃っているらしいし、冤罪の線は100パーセント無いそうだ。

 さて、どうしたものか。
 もちろんクエストはクリアするのはもちろんだが、本来の仕事が問題なのだ。

 俺一人で何とか話をしなければならないのだ。
 しかし、この状況、ある意味チャンスか? 一対一で会話が出来る場面はそうそうない。

「では、スズキさん。スサノオさん達にメッセージを。私達はHPと武器の使用回数が続く限りボス攻略を目指しますと」

「お、おう。ではさっそくメッセージをっと『……アイちゃん、俺は無事だ、インフィさんと同じ場所にテレポートされたみたいだ。
 これから俺達だけでボス攻略を目指す、アイちゃん達も独自に攻略を続けてくれ。パーティー的にはそっちの方が完成されてるし期待してるぜ!
 あと、せっかくスサノオさんが居るんだから、ミシェルンは死ぬなよ? 経験値が台無しだしな。せっかくだからレベリングをとインフィさんが言ってたぜ……あとは――』」

「アイちゃん……ですか。仲がいいのですね……まるで新婚さんみたい……」

「――うん? なんか言いました? 会話中で聞き取れなかったのですが」

「いいえ、なんでもありません。では行きましょうか、道中は出来るだけ弾薬を節約しましょう。
 私のメイン武器のビームソードも使用回数がありますし、ボス用に温存したいところです。当面はアサルトアーマーで殴り殺していきますね」

 インフィはさすがランカーである。
 出てくるスケルトンやゾンビをパンチやキックでバラバラにしていく。
 オプション装備であるアサルトアーマーの効果である。

 ちなみに俺が殴ってもダメージはでない、装備に銃剣を装着すれば接近戦も出来るらしいが、本来はパンチ等の体術にはダメージ判定はないのだ。

 俺もちょっとアサルトアーマーが欲しくなった。

 順調にフロアから別の通路を抜け、また別のフロアへ侵入する。
 たまに出てくる、ちょっと強いモンスター。
 魔法系のアンデッド、リッチーは俺のガトリング砲でハチの巣にしてやった。

 魔力0のマシーンは魔法攻撃にめっぽう弱い。見つけたら弾薬を惜しまずに瞬殺あるのみである。

「なんかモンスターは弱いですね。正直拍子抜けっていうか」

「スズキさん。ほんとにそう思います? ローグの居ないこの状況だと、これから攻略するのに三時間位を覚悟しないといけませんよ?
 ちなみにこのダンジョンで攻略に失敗したパーティーは喧嘩になり解散したというのは割と聞きますし」

「うげ。それは、別の意味で怖いダンジョンだ」
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