3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

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エピソード2

シンドローム18/27

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 集合時刻になる。

 俺達は街のポータル前にいるのでテレポートでやってきたのだろう。
 装備こそ違えど見た目は俺そっくり。
 というかマシーンだな。

 事前に受けた情報通り、正真正銘の犯人だ。
 皮肉にも俺と同じ職業のマシーンだとは思わなかった。

 ないはずの喉がごくりと音を立てる。

「この度は敬愛するスサノオ殿のパーティーに招集いただき感謝申し上げます。
 さっそくですがメンバーに加えてください。有効の証としてステータスオープンさせていただきます。自己紹介はその後で」

 名前:インフィニット・プロヴィデンス
 職業:マシーン
 レベル:0
 HP:2541
 力:1942
 素早さ:3891
 防御:2990
 魔力:0

 右手装備:GE02A1-ハイゲイン・ビームソード(+20)
 左手装備:GER1000-プラズマショットガン(+6)
 背面装備:NASA2001-高機動ブースター(+19)
 オプション装備:BTS2-近接戦闘アサルトアーマー(+10)


 ……なるほどね。マシーンも接近戦タイプになれるのか。
 レベルは上がらないけど装備次第でやれることが変化するマシーンも結構面白いかもしれんな。

 ちなみに(+○○)の部分は強化レベルである。
 所持品の装備ステータスを少しだけ上昇させる効果がある。

 ちなみに+6を越えると一定の確率で武器破損のリスクがあるそうだ。
 上限は+20まで。

 そこまでの上昇効果はないけれど、エンドユーザーのモチベーションの一つという事らしい。

 スサノオには、なぜやらないかと聞いたが答えは簡単だった「コスパが悪いのでパスでござる」とのこと。

 なるほど、たしかにこういうギャンブル要素は射幸心を煽るのだろう。
 理解した。こいつは間違いなく生身の人間で、その本気度からおそらくガチの廃ゲーマーだろう。

 マシーンだというのに最適装備である遠距離武器を装備せず、さらには接近戦用の装備とブースターへのこだわりが半端ないのだ。

 まあ俺だって理解できる。
 皆とは違う、自分だけの装備か。
 人と違うというだけで高揚感を得られるのだろう。

 例えるなら、皆の推しの子がセンターのあの子なら、俺はまだ誰も知らないこの子を応援するって感じだな。
 なるほど、ならこいつは俺と気が合うかもしれない。
 やや強引だが、フレンドリーに接するには相手を理解することからってね。

「おっと、インフィニット・プロヴィデンスさん、わざわざステータス開示ありがとうございます。では俺も……」

 そう、俺だって負けてない。ゲームプレイ時間こそ100時間を満たないが、そこそこやったし。
 課金ブーストもあるし、なにより仲間たちのおかげで俺はここまで強くなれた。


 名前:レイザー・スズキ
 職業:マシーン
 レベル:0
 HP:2958
 力:1212
 素早さ:1012
 防御:3012
 魔力:0

 両手装備:GAU-19M 12.7ミリガトリング砲
 背面装備:アロンダイト 30ミリチェーンガン
 オプション装備:ヤタガラス 精密誘導ミサイル


 どや! 俺だって負けてないぜ!

 人から貰った装備にどやる俺だが、相手にとっては関係ないこと。

 初対面だからこそインパクトを与えねばならぬのだ。
 なめられたら終わりだ。

「へえ、射撃特化に最新のイベントアイテム『ヤタガラス』を装備とは。
 おっと、自己紹介がまだでしたね。私はインフィニット・プロヴィデンスと申します。気軽にインフィとお呼びください」

 普通の挨拶だった。どんな奴かとちょっと緊張してたが……。
 まあそりゃそうだ、いくら悪人だからって「我こそは悪人である、ふっはっは」とはならないだろう……。

「こちらこそよろしくお願いします。スサノオさんの知り合いでイチロー・スズキといいます」

「えっ!」

 今度は相手の方が度肝を抜かれたようである。 

「マスター、ここはネットゲームですよ? リアルネームで名乗るのはマナー違反です!」

「え? 俺、そんなこと言ったっけ?」

「あはは! これはこれは。レイザー・スズキさんはネトゲ経験は案外浅いのですね? それともずっと身内パーティーですか? スサノオさんとはリアルフレンドとかですか?」

 くそっ、まずいぞ。リアルネームを知られた。

 ……だがそれがどうした。
 俺のリアルネームを知らない日本人などいない! 
 イチロー・スズキの名前、なめてもらっては困るぜ。
 
「ま、まあな。ずっとこいつらとやってたから。つい本名を名乗ってしまった……忘れてくれ」

「いえいえ、覚えやすい名前ですから忘れることはできませんね。……代わりにと言ってはなんですがこちらもリアルネームを名乗らないと――」

「いや、インフィさん、それは大丈夫です。それに覚えやすいってことは、どこにでもある名前ですのでお気になさらず。
 実は昔から有名人の名前と同じで苦労したんですよ、ハハハ」

(マスター。せっかく犯人の名前を知るチャンスだと言うのに、よろしかったんですか?)

(いや、これが切っ掛けで警戒心も持たれてはだめだ。それと、個人通信も止めておこう。表情で感づかれてもまずいしな)

 もちろん、マシーンの俺には表情はないが、それとない仕草で感づかれる可能性は否定できない。

「おや、そちらのソーサラー殿。安心してください。私はゲームには本気です。リアルネームを他人にさらすなどという無作法なことは致しません」

 やはり感づかれたか。個人通信の微妙な間と表情でなんとなく気付くものだ。流石はネトゲ上級者。
 これは一筋縄ではいかないか。

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