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第2章.父と子と“処分したはずのモノ”
112.これから待ち受けるもの
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☆
[レオ]
《コモン》
【呼吸】【生命維持】【瞬発型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【直感】【忍耐】
【初級剣術】【初級盾術】【初級拳闘術】…………
※魔物《コモン》
【スマッシュキック】【毒生成】【巻きつき】【擬態】【潜水】【ホーンアタック】【嗅覚】
【針刺し】【忠誠】【帰巣本能】【威嚇】
《コア》
【自制】【中級魔力操作】【気配軽減】
【騎乗技術】【威圧耐性】【悪臭耐性】【行儀作法】
※魔物《コア》
【急速回復】
【飛行】【空中静止(ホバリング)】【麻痺毒】【熱耐性】
【掘削】【強聴覚】【強化爪】
《レア》
【損傷転嫁〈2〉】【先見〈1〉】
※魔物《レア》
【酸素魔素好循環〈3〉】【自在制御〈4〉】
【軟化・硬化〈3〉】【体内収納〈3〉】
【ぶちかまし〈3〉】【刺突〈4〉】【突撃〈3〉】【破砕噛〈2〉】
【位置掌握〈2〉】【隠匿〈2〉】【洞察〈2〉】
【毒耐性・中〈2〉】【強毒生成〈1〉】【求心力〈1〉】
【水上跳躍〈3〉】【多重突き〈2〉】
《ユニーク》
――
※魔物《ユニーク》
【スキル吸収〈1〉】【スキル譲渡〈1〉】【忘我狂戦〈1〉】
☆
キューズに帰ってしばらく。
俺とマリアは、ベルナールのギルマス室に呼ばれた。“その後”の顛末を聞くためだ。
王都の調査団による捜査は難航した。
俺の『声写しの魔道具』からの情報と、ベルクの爺さんが仕入れた書類をもってしても、情報が巧妙に遮断されていたとのこと。
例えば、リンガー・ロウブロー個人の隠し鉱山は見つけて没収できたけど、“大望を抱く”傍系王族は特定できなかった、と。『傍系』ってのが厄介で、王家に近しく権力も握っている者から没落って言ってもいいくらい落ちぶれてる者まで数十じゃ利かないくらいいるらしいからな……。
んで、リンガー・ロウブローの件。
リンガーは、まだまだ有った隠し財産を差し出して助命と減刑を願い出たけど……辛うじて苦痛の少ない斬首刑になった程度。
家は取り潰し。
嫡子とはいえ成年を迎えていないスカムは助命を許されたけど、“欲望丸出しの異常行動”を矯正するために教会の施設送りになったそうだ。一時的に収容された貴族牢では、床や壁相手に腰を振り続けていたらしい。
“アレ”――【性欲常態化】――がある限り治らねえだろうな……さようなら、スカム。
そんでそんで!
領主・エトムント様、領都オクテュス冒険者ギルド、キューズの冒険者ギルド、三者からの指名依頼の報酬が(ちゃんと)出て、領主様からは特別報酬も貰った。
新しい小盾を買っても、結構余るくらいは貰ったぞ。
その余る金を、どうしようかってえと――。
☆
「ねえ、レオ。もうちょっとしたら、お部屋を移ってもいいかもしれない……かも」
「部屋?」
いつだったか、ロウブロー領の事件発覚前。でぶ双子どもが勇んで依頼を受けていった後ら辺。
食堂で食事を終えた時に、マリアが少しドギマギしながら言ってきた。
部屋って、この宿のことだよな?
ここには“帝国”を抜け出て以来、俺とマリアの部屋の二部屋を月借りって形で毎月更新しながら泊まってる。
月借りの値段は、冒険者割引きのおかげで毎日泊まった場合の三分の二くらいで済む。
領都への護衛依頼が続いた時はちょっともったいなく感じるけど、それでも掃除してもらえるし部屋に(貴重品じゃない)私物を置きっ放しにしとけるので納得して借りてるんだ。
その部屋を移るって……どういうこと?
俺がピンときてないのを感じ取ったのか、マリアは俺に頷いて見せながら続ける。
「うん。二人で頑張って、情報料とか褒賞とか色々もらってお金が貯まる時もあるけど、武具が壊れて買い直したりするじゃない? 私も……一気に二つも使える属性が増えたから、それの『巻物』を買わなきゃいけないし」
「ロウブロー親子の【初級水魔法】と【初級風魔法】のことか? 俺にはさっぱり使えねえ魔法だから、マリアに受け取ってもらったけど。そうだな……もっと安い宿を探すってか?」
「それだったら……ふ、二人で一つの部屋を借りた方が……いいかな? なんて」
うおおおおおおっ!
お、思ってもない提案!
“帝国”のクズ小屋ではマリアと一緒だったけど、それはチルとか“その他大勢”とも一緒だったからな……。
マリアと本当の意味で二人っきりになれる部屋かぁ。いいじゃないか!!
「それに、宿屋さんじゃなくても……小さくてもお家を借りられたら……台所でご飯も作れるし……」
うっおおおおおおおおっ!
マリアの手料理っ!!
もしかして――。
『おかえり、レオ。先にお風呂にする? ご飯にする? それとも……』
なんてことが?!
――無えか。一緒に冒険して、一緒に帰るんだから……。
でも、俺とマリアの家……二人だけの甘い生活、か……ぐふふ。
☆
――ってなことに使えるかな? なんて思ってたけど……。
いつもの宿の、いつもの俺の部屋にマリアと帰ると――。
ササッ、ササッ!
「…………」
ササッ、サッ!
「おい、サシャ! チョロチョロ動くなよ、くすぐったいだろ?」
「ふぎゅっ」
俺の首から肩から顔面や頭にも、張り付いて動き回るモモンガ娘を掴んで引き離す。
マリアと一緒に考えて、サシャって名付けたんだ。
一応、冒険者登録して三人で行動してる。寝泊まりする部屋は、主人に頼んでマリアの部屋にしてな。
「痛っ、こら、髪の毛を掴むなって」
「ぬぐぐぅ、サシャは離れたくないのです!」
「わ、分かったから! 髪の毛は放して、頼むから」
サシャの面倒をみるって決めた日以来、俺にひっついて離れないんだ……。
なんとか冒険者として現場にいる時や食事時、トイレ、それに寝る時は離れるように約束……命令じゃなく、“約束”してくれたんでいいけど。
――いや、良くない。基本くすぐったいし、たまに視界が塞がるし、暑苦しいし。
でも、サシャが日に日に肉付きが良くなっていくのを直接感じて、嬉しい気持ちもある。
まあ、三人の生活になっても、家を借りようと思えばできるんだけど……。
実は、俺達に王都行きの話が出てるんだ。
その理由の大部分はサシャに関係するんだけど。
サシャの“隷従印”を消す手段が王都にある、かもしれないそうだから。
王都にある教会だ。
そこにいる大司教の【聖術】っつうスキルで取り除けるかもしれない、ってさ。
けど、サシャが獣人だっつうのと、その大司教がとんだ“食わせ者”で、【聖術】を使ってくれるっつう確証は無いそうだけど……。
まあ、いざとなりゃ、【聖術】がどんなものか知って、大司教に会って直に触れて【スキル吸収】しちまうってほうほうもあるし。
ひと悶着もふた悶着もありそうだぜ。
そして、他には冒険者ランクの昇級試験のためや、俺のスキル集めのため。
所変われば魔物も変わるってことで、オクタンス領と離れた地域では生息する魔物が変わるらしい。
王都周辺にはここにはいない魔物だらけだし、王都の冒険者ギルドには、他の地域からの依頼も集まるらしいからな。
俺の成長に期待してるオクタンス様のご配慮、だそうだ。
問題は、いくつ糞スキルを掴まされるか、だな。
でも、ご配慮とはいえ、しっかり『オクタンス子爵家“騎士級”冒険者パーティー』って唾を付けられてるけど……。
オクタンス家から自家の騎士と同等の信頼を獲得してる冒険者であるから、他の貴族はちょっかい掛けるなよって意味らしい。
事件のニオイがプンプンするんだけど?
“騎士級”を戴くなんて、滅多にはいない光栄なことだとは言われるけど……。
違うとは分かっていても、リンガー・ロウブローの言ってた“手駒の格”どうのこうのが思い出されて複雑な感じだ。
さらには、サシャの『獣化したまま』っつう“謎”が残ってる。
一説によれば、獣人の獣化は相当な負荷状態が続く、まさに命を削る技。
サシャは戦闘には向かないモモンガ種族だけど、それでも獣化したままで普通に生きていられるのは、全種族の獣人の頂点である『獣王』クラスしかいないそうだ。しかもサシャは排斥されるくらいの“色無し”。
もしかしたら、これが一番の災難を持ってくるかもしれねえ。
どれが、どの順番で俺達に振りかかってくるか分からねえが……ただでは済まねえだろうな……。
と、とにかく!
「いざ、王都へ行くぞ!」
「うん!」
「はいなのです!」
俺達の冒険は続くぜ!
(完)
[レオ]
《コモン》
【呼吸】【生命維持】【瞬発型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【直感】【忍耐】
【初級剣術】【初級盾術】【初級拳闘術】…………
※魔物《コモン》
【スマッシュキック】【毒生成】【巻きつき】【擬態】【潜水】【ホーンアタック】【嗅覚】
【針刺し】【忠誠】【帰巣本能】【威嚇】
《コア》
【自制】【中級魔力操作】【気配軽減】
【騎乗技術】【威圧耐性】【悪臭耐性】【行儀作法】
※魔物《コア》
【急速回復】
【飛行】【空中静止(ホバリング)】【麻痺毒】【熱耐性】
【掘削】【強聴覚】【強化爪】
《レア》
【損傷転嫁〈2〉】【先見〈1〉】
※魔物《レア》
【酸素魔素好循環〈3〉】【自在制御〈4〉】
【軟化・硬化〈3〉】【体内収納〈3〉】
【ぶちかまし〈3〉】【刺突〈4〉】【突撃〈3〉】【破砕噛〈2〉】
【位置掌握〈2〉】【隠匿〈2〉】【洞察〈2〉】
【毒耐性・中〈2〉】【強毒生成〈1〉】【求心力〈1〉】
【水上跳躍〈3〉】【多重突き〈2〉】
《ユニーク》
――
※魔物《ユニーク》
【スキル吸収〈1〉】【スキル譲渡〈1〉】【忘我狂戦〈1〉】
☆
キューズに帰ってしばらく。
俺とマリアは、ベルナールのギルマス室に呼ばれた。“その後”の顛末を聞くためだ。
王都の調査団による捜査は難航した。
俺の『声写しの魔道具』からの情報と、ベルクの爺さんが仕入れた書類をもってしても、情報が巧妙に遮断されていたとのこと。
例えば、リンガー・ロウブロー個人の隠し鉱山は見つけて没収できたけど、“大望を抱く”傍系王族は特定できなかった、と。『傍系』ってのが厄介で、王家に近しく権力も握っている者から没落って言ってもいいくらい落ちぶれてる者まで数十じゃ利かないくらいいるらしいからな……。
んで、リンガー・ロウブローの件。
リンガーは、まだまだ有った隠し財産を差し出して助命と減刑を願い出たけど……辛うじて苦痛の少ない斬首刑になった程度。
家は取り潰し。
嫡子とはいえ成年を迎えていないスカムは助命を許されたけど、“欲望丸出しの異常行動”を矯正するために教会の施設送りになったそうだ。一時的に収容された貴族牢では、床や壁相手に腰を振り続けていたらしい。
“アレ”――【性欲常態化】――がある限り治らねえだろうな……さようなら、スカム。
そんでそんで!
領主・エトムント様、領都オクテュス冒険者ギルド、キューズの冒険者ギルド、三者からの指名依頼の報酬が(ちゃんと)出て、領主様からは特別報酬も貰った。
新しい小盾を買っても、結構余るくらいは貰ったぞ。
その余る金を、どうしようかってえと――。
☆
「ねえ、レオ。もうちょっとしたら、お部屋を移ってもいいかもしれない……かも」
「部屋?」
いつだったか、ロウブロー領の事件発覚前。でぶ双子どもが勇んで依頼を受けていった後ら辺。
食堂で食事を終えた時に、マリアが少しドギマギしながら言ってきた。
部屋って、この宿のことだよな?
ここには“帝国”を抜け出て以来、俺とマリアの部屋の二部屋を月借りって形で毎月更新しながら泊まってる。
月借りの値段は、冒険者割引きのおかげで毎日泊まった場合の三分の二くらいで済む。
領都への護衛依頼が続いた時はちょっともったいなく感じるけど、それでも掃除してもらえるし部屋に(貴重品じゃない)私物を置きっ放しにしとけるので納得して借りてるんだ。
その部屋を移るって……どういうこと?
俺がピンときてないのを感じ取ったのか、マリアは俺に頷いて見せながら続ける。
「うん。二人で頑張って、情報料とか褒賞とか色々もらってお金が貯まる時もあるけど、武具が壊れて買い直したりするじゃない? 私も……一気に二つも使える属性が増えたから、それの『巻物』を買わなきゃいけないし」
「ロウブロー親子の【初級水魔法】と【初級風魔法】のことか? 俺にはさっぱり使えねえ魔法だから、マリアに受け取ってもらったけど。そうだな……もっと安い宿を探すってか?」
「それだったら……ふ、二人で一つの部屋を借りた方が……いいかな? なんて」
うおおおおおおっ!
お、思ってもない提案!
“帝国”のクズ小屋ではマリアと一緒だったけど、それはチルとか“その他大勢”とも一緒だったからな……。
マリアと本当の意味で二人っきりになれる部屋かぁ。いいじゃないか!!
「それに、宿屋さんじゃなくても……小さくてもお家を借りられたら……台所でご飯も作れるし……」
うっおおおおおおおおっ!
マリアの手料理っ!!
もしかして――。
『おかえり、レオ。先にお風呂にする? ご飯にする? それとも……』
なんてことが?!
――無えか。一緒に冒険して、一緒に帰るんだから……。
でも、俺とマリアの家……二人だけの甘い生活、か……ぐふふ。
☆
――ってなことに使えるかな? なんて思ってたけど……。
いつもの宿の、いつもの俺の部屋にマリアと帰ると――。
ササッ、ササッ!
「…………」
ササッ、サッ!
「おい、サシャ! チョロチョロ動くなよ、くすぐったいだろ?」
「ふぎゅっ」
俺の首から肩から顔面や頭にも、張り付いて動き回るモモンガ娘を掴んで引き離す。
マリアと一緒に考えて、サシャって名付けたんだ。
一応、冒険者登録して三人で行動してる。寝泊まりする部屋は、主人に頼んでマリアの部屋にしてな。
「痛っ、こら、髪の毛を掴むなって」
「ぬぐぐぅ、サシャは離れたくないのです!」
「わ、分かったから! 髪の毛は放して、頼むから」
サシャの面倒をみるって決めた日以来、俺にひっついて離れないんだ……。
なんとか冒険者として現場にいる時や食事時、トイレ、それに寝る時は離れるように約束……命令じゃなく、“約束”してくれたんでいいけど。
――いや、良くない。基本くすぐったいし、たまに視界が塞がるし、暑苦しいし。
でも、サシャが日に日に肉付きが良くなっていくのを直接感じて、嬉しい気持ちもある。
まあ、三人の生活になっても、家を借りようと思えばできるんだけど……。
実は、俺達に王都行きの話が出てるんだ。
その理由の大部分はサシャに関係するんだけど。
サシャの“隷従印”を消す手段が王都にある、かもしれないそうだから。
王都にある教会だ。
そこにいる大司教の【聖術】っつうスキルで取り除けるかもしれない、ってさ。
けど、サシャが獣人だっつうのと、その大司教がとんだ“食わせ者”で、【聖術】を使ってくれるっつう確証は無いそうだけど……。
まあ、いざとなりゃ、【聖術】がどんなものか知って、大司教に会って直に触れて【スキル吸収】しちまうってほうほうもあるし。
ひと悶着もふた悶着もありそうだぜ。
そして、他には冒険者ランクの昇級試験のためや、俺のスキル集めのため。
所変われば魔物も変わるってことで、オクタンス領と離れた地域では生息する魔物が変わるらしい。
王都周辺にはここにはいない魔物だらけだし、王都の冒険者ギルドには、他の地域からの依頼も集まるらしいからな。
俺の成長に期待してるオクタンス様のご配慮、だそうだ。
問題は、いくつ糞スキルを掴まされるか、だな。
でも、ご配慮とはいえ、しっかり『オクタンス子爵家“騎士級”冒険者パーティー』って唾を付けられてるけど……。
オクタンス家から自家の騎士と同等の信頼を獲得してる冒険者であるから、他の貴族はちょっかい掛けるなよって意味らしい。
事件のニオイがプンプンするんだけど?
“騎士級”を戴くなんて、滅多にはいない光栄なことだとは言われるけど……。
違うとは分かっていても、リンガー・ロウブローの言ってた“手駒の格”どうのこうのが思い出されて複雑な感じだ。
さらには、サシャの『獣化したまま』っつう“謎”が残ってる。
一説によれば、獣人の獣化は相当な負荷状態が続く、まさに命を削る技。
サシャは戦闘には向かないモモンガ種族だけど、それでも獣化したままで普通に生きていられるのは、全種族の獣人の頂点である『獣王』クラスしかいないそうだ。しかもサシャは排斥されるくらいの“色無し”。
もしかしたら、これが一番の災難を持ってくるかもしれねえ。
どれが、どの順番で俺達に振りかかってくるか分からねえが……ただでは済まねえだろうな……。
と、とにかく!
「いざ、王都へ行くぞ!」
「うん!」
「はいなのです!」
俺達の冒険は続くぜ!
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