禁忌だろうが何だろうが、魔物スキルを取り込んでやる!~社会から見捨てられ、裏社会から搾取された物乞い少年の(糞スキル付き)解放成り上がり譚~

柳生潤兵衛

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第1章.物乞いから冒険者へ

25.領都への護衛依頼と【自制】

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 ギルドの受付で、マリアの冒険者登録を済ませる。
 新しい冒険者証、待ちに待った冒険者の証を受け取ったマリアの嬉しそうな横顔をニヤニヤ眺めていると――。

「ところでアンタら、明日からの遠征依頼を受けないかい?」

 フレーニ婆さんが、依頼書をぴらぴらと振りながら尋ねてきた。

「「遠征?」」

 遠征って……遠くまで行く依頼だよな。魔物を倒しに行くとかか?

「まぁ、軽い遠征だね。馬車で二日も掛からない領都までだからね」
「「領都!」?」

 マリアの方が俺より早く反応して、カウンターに身を乗り出したけど……。
 領都ってなんだ? って訊いて、マリアにも婆さんにも呆れられた。

 領都ってのは領主様のお屋敷がある、領地で一番大きな都市だって。キューズの何倍もデカイって!
 オクタンス子爵様の領地のオクテュスって言うのが領都で、キューズから西に馬車で一日半から二日の距離だそうだ。

 今回の依頼は、領主様の御用商会の馬車護衛。キューズからオクテュスの一往復の護衛。

「馬車二台の五日おきの定期便を一往復だから、明日から二日掛けて領都に着いたら翌日一日休みがあって、また二日掛けてにキューズに帰ってくるんだ」

 この定期便には、“領都から一往復”の冒険者が二組と“キューズから一往復”の冒険者が二組、合計四組の護衛が就くそうだ。
 護衛が多いな? なんて思ったら、売り物だけでなく領主様と代官の間の連絡も担っているそうで、領主様からの補助金もあるから護衛を多く雇えているらしい。

 そんなことより、キューズの何倍もデカイっていう町ってんなら――。

「マリア、いきなり念願の“大きな町”に行くチャンスだぞ、受けるか?」

 婆さんの言葉に目を輝かせて聞き入っているマリアに確認する。
 返事は分かりきってるけど。

「うんっ! レオ、わたし受けたい!」

 マリアの即答で、俺らは依頼を受けることにする。


「でもさフレーニさん? そんな大事そうな依頼をFランクの俺らが受けていいのか?」

 頭の悪い俺でも、実力は別にしてFランクの冒険者に来る依頼じゃないって思うぞ?

 そんな俺の疑問に婆さんは――。

 そもそも領主様が絡む依頼を掲示板には貼り出さない。
 ギルドマスターのベルナールやサブマスターの婆さんが実力をよく知っていて、人格的にも信頼のおける冒険者に打診する。
 今回は、日程が合わないパーティーがいて、俺らに白羽の矢が立った。

 ――って軽い口調で説明してきた。

「なーに、アンタらを初参加させるってことで、アタシらが一番信頼しているパーティーを付けるから心配ないさ」

 ……ピンと来てしまった。
 たぶん、っていうか絶対“あの”Cランクのパーティーだろ……。
 今回もベルナールが強引に決めたのかな?
 そうじゃなきゃいいな。さすがに怨まれるぞ、俺?

「Cランクの子らだから、勉強させてもらいな」

 本当に、そうでした。
 Cランクのパーティーの皆様、ごめんなさい。
 そして、今さらだけど……この町ってCランク以上の冒険者っていないそうだ。

 喜んでいいのか悪いのか、複雑な気持ちでいる俺に、婆さんの口からいい知らせが。

「それにね、レオは今日からEランクだよ。この三か月、毎日依頼をこなしたから昇格には十分さね」

 やっ、やったあー!!
 外に出られなくても、そしてマリアと別行動になって寂しくても、毎日頑張って良かった!


 そして、婆さんから遠征に必要な物を教えてもらって、今日はそれを買い揃えて終わりにする。
 今回の遠征は途中の村に泊まる場所があるけど、道中の魔物の出方によっては野営もあり得るそうだからな。

 いや、やっぱりその前にスキルを確認しとこう!

 ☆
[レオ]
《コモン》
【呼吸】【生命維持】【瞬発型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【直感】
【忍耐】【初級剣術】【初級盾術】…………
 ※
【自然回復】【スマッシュキック】【毒生成】【巻きつき】【擬態】【潜水】
【ホーンアタック】【嗅覚】

《コア》
【毒耐性・弱】【自制】
 ※
 ――

《レア》
 ――
 ※
【闘争本能〈3〉】【酸素魔素好循環〈3〉】【自在制御〈3〉】
【軟化・硬化〈2〉】【体内収納〈2〉】
【ぶちかまし〈2〉】【刺突〈2〉】【突撃〈1〉】【破砕噛〈2〉】
【位置掌握〈1〉】【隠匿〈1〉】【洞察〈1〉】

《ユニーク》
 ――
 ※
【スキル吸収〈1〉】【スキル譲渡〈1〉】
 ☆

 表示板室で、石板に浮かび出る文字を追う。
 一応アレが無いことを確認、確認……うん無い。スキル結晶になって体内収納に入ってるけど! 

 でも、アレが無くなった今、マリアに隠す必要がないので堂々と並んで見る。
 アレが無くてもマリアにドキドキするのは変わらないけどな……。

 どれどれ? 剣術に盾術が付いたか――おおっ!? 
 コアスキルがある! しかも人間の・・・だぞっ!!

 【毒耐性・弱】に【自制】。

 【毒耐性】は、俺自身の魔物スキル【毒生成】を使ったからか?

 そして【自制】……。
 思えば、あのクソ憎っくき【性欲常態化】を……ゴブリンがあんなに変貌してしまう糞スキルを、耐え抜いたんだ。
 そりゃあ自制心が付くわな……感動だよ。

「ねえレオ、何個かレベルが上がってるよ!?」
「マジで?」

 忍耐の日々を思い出してジーンとしている俺の肩を、マリアがトントンと叩いて教えてくれた。

 【自在制御〈3〉】【体内収納〈2〉】【刺突〈2〉】か。

 【自在制御】【体内収納】は、常時発動スキルで常に少しずつ経験が積み重なっていくし、【刺突】は意図的に使ってたからな。
 しかも三つがレベルアップしたのは、この数週間で倒したのがゴブリン・スライム・ホーンラビットで、そのスキル結晶を(アレ系以外)全部取り込んでたからだ。

 実は、俺はマリアとも話して――結託して? わざとギルドで壺を買ってスキル結晶を溜めてるって偽装している。
 この先、俺らが結晶を売りに出さないことを疑われるようだったら、他の町で売ったことにしようなって。

「他のレアスキルも、ウルフ系やヘビ系の魔物を狩るようになれば上がっていくだろうな」
「楽しみだね?」
「おう! で……マリアの番だな」

 俺のスキル表示を消して、マリアと場所を変わる。
 狭い表示室で、身体同士を擦りながら入れ替わる。うん、役得!

 ☆
[マリア]
《コモン》
【呼吸】【生命維持】【持久型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【思考力】
【忍耐】【初級杖術】…………

《コア》
【植物知識】【鉱物知識】【魔力操作】【自制】

《レア》
 ――

《ユニーク》
 ――
 ※
【瞬間回復〈2〉】
 ☆

「あっ! わたしにもコアスキルがあるよ!」

 マリアが声を弾ませる。
 俺も彼女と肩を合わせるように石板を覗き込む。

「お、どれどれ? コモンの【下級杖術】に、コアは【植物知識】に【鉱物知識】、おっ【魔力操作】! それに……【自制】」
「……」

 ん? マリアにも【自制】?!

 【魔力操作】【植物知識】【鉱物知識】は分かる。結構資料室で勉強したり、訓練で習ったりしてたからな。

 で……【自制】?!
 どういうことだ? まさか……俺の性欲に気付いててマリアも?
 ――いや、そんなことはないはず。きっと、違う色々なことを我慢したんだろう。うん、そういうことにしよう。

 そんなことを考えながらマリアに目を遣ると、マリアは口数が減って俯いている。耳が赤いかな?
 ちょっと気まずい感じ? になってるから、【自制】はスルーしよう……。

「そ、それにしてもマリアは凄いな。こんな短い期間に知識を付けるなんて」
「……」
「流石マリア、頼りになるぜ」
「う、うん」
「この調子で、婆さんから聞いた野営道具の買い物も頼むぜ。行こうか」
「そ、そうだね! 忘れ物が無いようにしなきゃね」
「おう! 行こっ」

 ちょっとした気まずさもあったけど、揃って買い物に行く。


 そして翌早朝、俺とマリアが護衛依頼の集合場所に行くと、いた。
 Cランクパーティーの皆さん。

 なんか……リーダーっぽい人、やつれてません?
 またギルマスから強引に押し付けられたんじゃないか……?
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