禁忌だろうが何だろうが、魔物スキルを取り込んでやる!~社会から見捨てられ、裏社会から搾取された物乞い少年の(糞スキル付き)解放成り上がり譚~

柳生潤兵衛

文字の大きさ
上 下
22 / 112
第1章.物乞いから冒険者へ

22.ギルドが大騒ぎになるし、ギルマスには尋問されるし……

しおりを挟む

「こりゃハイゴブリンじゃないかいっ!」
「――ちょっ!?」

 夕方に差し掛かって、戻ってくる冒険者でにぎわいが出始めていたギルド内に、婆さんの叫び声が響く。
 その内容に、依頼完了報告の列に並んでいた冒険者たちが更にざわついた。

「ハイゴブリンだと?!」
「マジで?」「まさかぁ」
「この辺にいるわけねえだろっ」
「遠征帰りのパーティーか?」
「いや、ガキだぞ?」
「はあ?」「どれ?」

 ギルドに戻って、大人しく列に並んで順番を待って、受付の婆さんに依頼の『薬草採取』二件の完了報告をして――。
 わ、忘れてたわけじゃないぞ! ちゃんとマリアが採ってたんだからなっ!

 そんで、ついでに・・・・ハイゴブリンの耳を出したらこれだよ……。
 婆さんが細眼鏡をずり下ろしながら叫びやがった!

「ちょっ、婆さん! シィーッ!」

 口元に人差し指をあてながら、婆さんを鎮める。
 思わず『婆さん』って呼んじゃったけど、婆さんもビックリしててそれには気付かなかったみたいだ。

「――ハッ!!」

 我に返った婆さんは、俺らが初めてギルドに来た時みたいに閉まってる窓口まで俺らを引っ張ってって、自分は物凄い早さで階段に向かった。

「そこで待ってるんだよ!」


 ……で、ギルマス。ベルナールまで登場しやがった。

「レオッ! こりゃなんだ!?」
「ホ、ホブゴブリン?」
「ホブなわけねえだろ! こりゃハイゴブリンだ!」

 ベルナールまで……声がデケエってんだよ!!
 俺は心の中で毒づきながら、表面的にはシラをきる。

「へ、へえ~、そうなんだ?」
「『そうなんだ?』じゃねえっ! ……何処にいたんだ、これ?」

 ベルナールの剣幕に、いよいよギルド中の冒険者が俺らに注目してくる。

「草の自生地?」
「はあっ?! こんなのが町の近くにいたってのか!?」

 一気にどよめきが広がってしまう。

「ちょっ、おっさん! シィーッ!」
「――ハッ!!」

 ベルナールも我に返って、今度は俺の首根っこを掴んでそのまま階段を駆け上がって行く。マリアも慌てて俺とおっさんの後を追ってきた。
 ぶらぶら吊るされながら連行される俺は、喉に服が食い込むわ息は出来ないわで危うく死ぬところだったぜ。

 ……で、ギルマスの部屋。
 恒例のソファに座らされての尋問タイム。

 けわしい表情のままのベルナールに、ハイゴブリンに遭遇した時のことを語る。主にマリアが。

『薬草を採取していて、レオが“お花を摘みに”林へ行ったら出会ったそうなんです。なんか大きいゴブリンがフラフラ歩いていたそうで、そのまま戦闘になっちゃって……御ふたりに教わったようにわたしとレオで協力して倒しました』

 説明の後半は、帰ってくる途中で俺とマリアで考えた出鱈目でたらめだ。
 マリアにも言ってねえのに、ギルドに言えるわけねえって……。俺が糞レアくそスキル【性欲常態化】を譲渡したからだ、なんて……。

 おっさんは「単体で出たのか?! しかもフラフラだったと?」って驚いていたな。
 そして、魔石を出せと凄んできた。
 その迫力には逆らえねえって……。

「お、おう……。これだ」

 俺はマリアに目配せして頷き合ってから、腰袋に手を突っ込んで【体内収納】から魔石を出す。
 空中にいきなり出すわけにはいかないからな。

 ベルナールの握りこぶし大。ゴツゴツしてるんだけど、そのゴツゴツは角が滑らかになっている。
 色はほとんど透明に近い、ちょっと墨を垂らした感じで、言われれば薄っすら黒いって程度。

「ふむ。これか……」

 俺から魔石を受け取ったおっさんは、それを窓の方に掲げたり白壁にかざしたりしてじっくりと見る。

「ほぼほぼ“から”に近いな?」

 ボソッと零したおっさんは、尚も魔石を観察した。

 魔石は、取り出した時は基本的に黒い。どの魔物の魔石でも黒い。
 その魔石に“込められている”とか”残っている”魔力の量で、黒色の濃さが変わってくるそうだ。
 
 おっさんが言ったように、空になると無色透明に近くなる。

「マリアの言う通り、このハイゴブリンは、相当疲弊していた上に二人との戦闘で死んだか……もしくは……」
「……(ごくっ)……」

 石ひとつで、色々分かるもんなんだなぁ……。
 ぽつぽつと零れてくるおっさんの呟きに、俺は冷や冷やして唾を飲み込む。膝の上で握る手にも汗がにじんでくる。

 全ての魔物には【自然回復】か、その上――【急速回復】とか――のスキルがあって、どんなに傷付いても自然に治っていく。欠損しても生えてくる。
 その時に魔石に貯めた魔力を使うので、たとえば激戦の末に倒された魔物は、回復とかに魔力を使い過ぎて魔石の色は薄くて、一瞬で倒された魔物の魔石の色は濃いままだという。

「レオとマリアに分かるように言うとだな……。あのヤセノとギススの双子は知ってるな?」
「あの“デブ”だよな?」
「……そうだ」

 その時、婆さんがお茶を持って来てくれた。
 おっさんは婆さんにもこの場に残るように言葉を掛けつつ、話を続ける。

「そのヤセノとギススの得物えものは棍棒だ。魔物を棍棒で殴って殺すタイプだ。だから、奴らの持ってくる魔石は程度が若干低かったりする」

 魔石の中に残ってる魔力が少ないから、だそうだ。
 あ、そう言えば……。

「殴るっていえば、ばぁ――フレーニさんもだよな?」
「アタシかい?」

 急に話を振られた婆さんが、自分を指差して返した後、胸を張って答える。

「アタシは一撃で命を刈るタイプの撲殺だからねっ! 魔石は綺麗なもんサ」
「「…………」へ、へぇえ~……」

 怖えー……。こぶし怖えー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

村から追放された少年は女神様の夢を見る

月城 夕実
ファンタジー
ぼくはグリーン15歳。父が亡くなり叔父に長年住んでいた村を追い出された。隣町の教会に行く事にした。昔父が、困ったときに助けてもらったと聞いていたからだ。夜、教会の中に勝手に入り長椅子で眠り込んだ。夢の中に女神さまが現れて回復魔法のスキルを貰ったのだが。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

処理中です...