禁忌だろうが何だろうが、魔物スキルを取り込んでやる！～社会から見捨てられ、裏社会から搾取された物乞い少年の（糞スキル付き）解放成り上がり譚～

第１章．物乞いから冒険者へ

１２．自分のスキルを知る方法

　気を取り直して、“フレーニさん”からスキルについて教えてもらう。
　婆さんって呼びゃあ怒りやがるからな。本当に婆さんじゃねえか……。

「スキルには、コモン・コア・レア・ユニークって分類があるのは知ってるかい？」
「ああ」「はい」

「じゃあ、コアスキルとレアスキルには、〈１〉から〈５〉までレベルが五段階あることは？」
「段階までは知らなかったけど、知ってる。……ユニークスキルには無いのか？」
「確定した情報は、未だに無いねえ。ユニークスキル自体、持ってる人間が極端に少ないしね。――でも、コモンスキルには無いって確定しているよ。だから駄スキルって呼ばれるんだよ」

　いやいや、俺は“先”があるって体感してるんだな、これが。
　そうだ！　“先”で得たスキルがコアなのかレアなのか？　までは知らないから、調べられねえかな？

「コアスキルは、レベル〈５〉が熟練すると『進化』して上位のレアスキルになる」
「うん」

　それは聞こえたな。

「レアスキルは、レベル〈５〉が熟練すると『昇華』して上位のユニークスキルになる」
「うん」

「へえ？　知ってんのかい。『進化』した時には頭の中に報せが響くんだ、告知だな。アタシは『進化』しか経験してないけどね。……『昇華』は知らん」

　あったな、告知。
　告知があった瞬間、どういったスキルなのか、頭の中に浮かんでくるんだよな。
　あとは……。

「獲得は？」
「獲得？　なんだい、そりゃ？」

　いや、頭の中に流れるだろ？　確か……【スキル吸収】と【スキル譲渡】を覚えた時に。

「ああ、駄スキルやコアスキルを覚えた時のことかい。それは告知されたことは無いね……当たり前のことだからじゃないかねえ？」

　ちょっと――てか全然違うんだけど、これ以上突っ込んで聞けば怪しまれそうだから黙っとくか。

「そ、そうなんだな。他には、なんかある？　スキルについて」
「他ねぇ……スキルの発動はどうだい？　“任意発動”と“常時発動”の二種類ある」

　おっ、知らない情報きた！

「教えてくれっ！」
「まず“任意発動”は、スキル所持者の意志や選択によって発動する。まあ、戦闘時の魔法とか技が分かりやすいかね」

　俺がボスの腕を千切った【破砕噛はさいごう】とか、手下共の蹴りに耐える時に使った【軟化・硬化】だな。軟化の方は使うのにちょっと勇気が要るけど……。

「そして“常時発動”は、全部じゃないけど生理機能とか感覚、思考力、危険の察知の類に多いねえ」

　【姿勢制御】的なヤツとか、マリアに譲渡した【瞬間回復】とかだな。
　あと！　クソ憎っくき糞ゴブリンのくそ【性欲常態化】っ！！

　これも何とかしなくちゃ、気が狂いかねない！　
　犯罪者になりかねねえからな。――ってか、帝国の連中を捕まえて閉じ込めた時点で犯罪者かも……？

「なあ？　ばぁ……フレーニさん。常時発動のスキルが“任意”になることとか、“任意”にする方法とか、あるか？」
「ばぁ？　まあいい。常時が任意に？　聞いたこたぁ無いねえ……」

　マジか……。
　でも、婆さんとかギルドの連中が知らないだけ、ってことかもしれないな。
　そうとでも考えねえと、やってらんねえ……。

「じゃ、じゃあ自分がどんなスキルを持ってるか、知る方法はあるか？」
「あるよ。ほら、あそこの部屋で調べられるよ。『表示板室』さ」

　婆さんが指差したのは、さっき使った階段の向かい側にある小部屋。てっきり掃除道具とかを入れとく物置部屋かと思ってたぜ。

「あそこか？」
「そうだよ」


　婆さんから軽く使い方の説明を聞いて、俺はマリアと一緒に小部屋に向かう。
　部屋のドアの上に表札がかけられていて、マリアもそう書いてあるって言った。
　中は……一人か、せいぜい二人でいっぱいになるようだな。

　スキルってのは冒険者にとっての武器で、気安く他人に見せるもんじゃない。
　相手がギルドの職員だって例外じゃない。
　そういうことで、部屋が設けられているそうだ。

「一緒に入ってもいいけど、中で“変なこと”するんじゃないよ！」

　背中に婆さんの声が掛かる。
　しねえしっ！　
　変なことって何だか知らないけど……いやらしいことだったら我慢できる自信が無いけど……しない！

　軋むドアを開けて、二人で入って、閉める。
　ガキの俺らでも、二人だと肌が触れ合うくらいだ。……我慢できるか、俺？

『あの部屋には石板があるから、それに触れば、触った者のスキルが石板に表示されるよ』

　中には台があって、そこに置かれた石板から出る青白い光だけが明かりになっている。

「レオ、これを触るんだっけ？」
「おう。お、俺からいくよ」

　マリアと体が触れ合ってることと、彼女の囁くような声音に心臓がバクバク跳ねる。
　他のことを考えないと、どうにかなってしまいそうだから石板に集中だっ。集中！

　俺の手のひら四つ分くらいの大きさの石板、その真ん中に手をのせる。
　手のひらから何かが吸い取られる感じがして、その後、石板がふわっと、もう一段明るくなった。
　手を離して石板を見ると……薄っすらと文字が浮かんできたぞ？！

［レオ］
《コモン》
【呼吸】【生命維持】【瞬発型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【直感】
【忍耐】…………
　※
【自然回復】【スマッシュキック】【毒生成】【巻きつき】【擬態】【潜水】【ホーンアタック】【嗅覚】

《コア》
　――
　※
　――

《レア》
　――
　※
【闘争本能〈３〉】【酸素魔素好循環〈３〉】【自在制御〈２〉】
【性欲常態化〈３〉】【軟化・硬化〈２〉】【体内収納〈１〉】
【ぶちかまし〈２〉】【刺突〈１〉】【突撃〈１〉】【破砕噛〈２〉】
【位置掌握〈１〉】【隠匿〈１〉】【洞察〈１〉】

《ユニーク》
　――
　※
【スキル吸収〈１〉】【スキル譲渡〈１〉】


（１３話へつづく）

◆◆◆一部のスキルの説明◆◆◆
【自然治癒】……人間のスキル。怪我や病気を治す力。
【自然回復】……魔物スキル。傷や部位の欠損を元に戻す力。

１３話本文で触れますが、※印の欄は魔物スキル。

魔物のレアスキル
【闘争本能】……（コモン）攻撃衝動が進化。

【酸素魔素好循環】……（コモン）呼吸が進化。酸素魔素循環とも言う。
注）人間の呼吸とは異なり、体内の魔石への魔素貯蔵や、回復などに使う時の排出の循環・効率が良くなる。

【自在制御】……（コモン）姿勢制御が進化。四足歩行以外の魔物が多く持つ。

【性欲常態化】……（コモン）繁殖衝動が進化。弱くて数の多い魔物、特にゴブリン種に見られる。

【軟化・硬化】……（コモン）粘体維持が進化。主にスライム種のスキル。
【体内収納】……（コモン）体内保持が進化。主にスライム種のスキル。

【ぶちかまし】……（コモン）体当たりが進化。
【刺突】……（コモン）ホーン・アタックが進化。角を持つ魔物のスキル。
【突撃】……（コモン）突進が進化。勢いをつけた体当たり？
【破砕噛】……（コモン）かみつきが進化。ウルフ、ヴァイパーに多いスキル。

【位置掌握】……（コモン）遠吠えが進化。仲間の位置を把握するスキル。
　　　　　　　　応用が効きそう。

【隠匿】……（コモン）忍び足が進化。ウルフ系や慎重な魔物が持つスキル。
【洞察】……（コモン）注視が進化。ウルフ系や慎重な魔物が敵を窺うスキル。