禁忌だろうが何だろうが、魔物スキルを取り込んでやる!~社会から見捨てられ、裏社会から搾取された物乞い少年の(糞スキル付き)解放成り上がり譚~

柳生潤兵衛

文字の大きさ
上 下
2 / 112
第1章.物乞いから冒険者へ

2.銅貨やスキル、お恵みください

しおりを挟む
 それから三年、俺は十二歳になった。
 名前もできた。レオだ。

 ☆
 三年前、ぶちこまれた“クズ小屋”で、俺はマリクに出会った。

 俺は生まれて初めて『色』のついた人間を見た。くすんだ世界にただ一人、なぜかマリクだけに『色』が付いていた。

 隙間だらけのボロ小屋に差し込んだ夕日に照らされてキラキラ光る一つ結びの長い金髪。
 ほんのり夕日色に染まった白い肌。
 整った顔に、俺を連れてきた手下に怯えて揺れる青い瞳。

 他にも何人も子どもがいて、そいつらはくすんだままなのに、同じようなボロボロなシャツと裾がズタズタなズボン姿なのに……マリクのあまりの美しさに俺はしばらく立ち尽くしていたっけ。

 俺が何歳なのかを教えてくれたのもマリク。
 五歳で孤児院から追い出された時に暑かったか寒かったか、季節ってもんがあるから何回巡ったか聞かれて、答えたら俺が九歳だって。マリクは俺よりも一歳下だった。

 詳しくは聞かねえけど、マリクはいいトコの子だったらしく、すごく頭がよくて物知りで、実際俺がぶっ込まれて以来色々教えてくれたっけ。
 俺よりも背が小さくて、そのくせクズ小屋に入れられている割には長い金髪はサラサラで、身体もいつも小綺麗にしていた。
 散髪だってそのマリクにしてもらってるし、言葉や洗濯とかの生活面も、孤児院で何も教えられていなかった俺はずいぶん助かってる。

 マリクのおかげで、俺の世界には少しずつ『色』も付いてきた。

 レオっていう名も、マリクが付けてくれたんだ。
 でも、それは同じ小屋の連中の間でだけの呼び方。

 “帝国”の大人達は俺らのことを「ガキ」とか「テメエ」って呼ぶし、そもそも一人ひとりを見てもいない。
 ☆

 そして今は、キューズっていう町の中心部にある冒険者ギルドの近くで物乞いをしている。

『銅貨やスキル、お恵みください』

 そう書かれた頑丈な板を首から下げ、木の皿を掲げて。

駄スキル・・・・しかねえ無能なお前は、ボスの縄張りシマで物乞いでもしてこい!』

 俺が入れられた小屋は、年格好が近い“スキル無し”だけが押し込まれる小屋。マリクもスキルが無いって事だ。
 「寝床と食い物はボスが用意して下さってんだから、お前ら能無しは必死こいて金とスキルを持って来い」って、常に恫喝されていた。

 ただ、同じように連れて来られた子どもでも、スキルを持っている奴は訓練したり“仕事”を割り振られたり、女の子は別の事をさせられているらしい。

 街では人通りの多い道を割り振られて、二人一組で物乞いをさせられる。
 朝早くから“帝国”にある畑の世話をして、人が出歩く時間になったら街へ連れられていくって毎日だ。

 “帝国”は、全部が畑ってわけではなくて、ほとんどがスキル持ちの訓練場や……“仕事”や“抗争”で出た“ゴミ”の処分に使われている。
 この三年の間にも、夜に大人達から命令されて人型の麻袋を土に埋めさせられることもあった。


 ま、そんな仕事もありつつ、メインは銅貨とスキルの物乞いだ。

 銅貨は言わずと知れた“カネ”。大人の親指の爪くらいの大きさ。十枚で小さいパン一つ、二十枚で肉の串焼き一本を買えるくらい。
 でも、一枚で銅貨十枚分の大銅貨があって、そっちの方が使う機会が多い。俺にとってはどっちも金なんだけど、大人にとっては銅貨は小銭。枚数が嵩めば重いし邪魔とさえ思われている。

 スキルは……メンド臭せえけど、四種類あるそうだ。

 まず、生きてりゃ誰でも獲得できる【コモンスキル】。
 これは“駄スキル”って言われている。『生まれて育っていく』、ただそれだけで身につくスキルだから。レベルアップもしない。
 【呼吸】なんてモンから、歩く為の【姿勢制御】、擦り傷とかがゆっくり治っていく【自然治癒】とか、挙げればキリがないくらいある。

 次に、【コアスキル】。
 普通、スキルって言えばこのコアスキル以上のことを指すらしい。
 剣なら剣、弓なら弓、魔法・算術・交渉術とか、その分野ごとにもっと深く学習・体験して会得する。

 そして、会得したコアスキルの積み重ねレベルアップや、親からの遺伝で得られる【レアスキル】。
 いま考えれば、俺の親は黒髪・黒眼の見た目の他にレアスキルが遺伝してないからって、俺を捨てたのかもな。教会の奴らもそう。

 もう一個、持ってる奴なんて滅多にいない【ユニークスキル】。
 神からの贈り物、っても言われてる。マリクもそれがどんなモンか知らねえし、想像も出来ねえって。


 スキルは、人間だけが持っているのではなくて、“魔物”も持っている。
 魔物は、体内に“魔石”と“スキル結晶”があり、肉や爪・牙・皮といった“素材”と同じく売り払って金にできる。人間は、心臓の近くにスキル結晶があるそう。

 魔物のスキル結晶はどれも同じ大きさで、銅貨よりひと回り小さい球。それぞれのスキルが結晶化しているから、魔物の種類や個体で結晶の数が違う。

 実はスキル結晶って、魔物の結晶でも人間の結晶でも、自分に取り込むことが出来るそうだ。
 球に触って『取り込む』って念じるだけでいいんだって。すると、結晶がサラサラと崩れてスキルだけが取り込まれるらしい。

 でも……魔物のスキルを持つってことは、人間を辞めて魔物に成り下がるってことだとされて忌み嫌われてるらしいし、やる奴も基本的に・・・・いないそうだ。

 例えばスライムの【粘体ねんたい維持】なんて、取り込んでも中途半端にねばつく身体になるだけらしいし。
 あ、ゴブリンの【繁殖衝動】は、露見した時の恥ずかしさに耐えられる猛者、色狂い、枯れることが恐い老人とかに需要があるって誰かが言ってたな……。

 人間のスキル結晶は、その人が持つスキルが全部ひとつの結晶に納まっているけど、人間から結晶を取り出すのすら“禁忌”だって、国が禁止している。

 でも、“帝国”みたいな闇社会の連中にはそんなの関係ない。
 親から遺伝しなかった奴が『仕事上必要だから親の死後、継承する為に取り出す』とか、商売敵しょうばいがたきや邪魔な兄弟を『殺して奪う』とかいう依頼が“帝国”にくるそうだ。


 『銅貨やスキル、お恵みください』ってのは、魔物から得たスキル結晶の余り物やカネを、善意の市民からタダで貰ってこいってこと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

村から追放された少年は女神様の夢を見る

月城 夕実
ファンタジー
ぼくはグリーン15歳。父が亡くなり叔父に長年住んでいた村を追い出された。隣町の教会に行く事にした。昔父が、困ったときに助けてもらったと聞いていたからだ。夜、教会の中に勝手に入り長椅子で眠り込んだ。夢の中に女神さまが現れて回復魔法のスキルを貰ったのだが。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...