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6.王家との話し合い
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二人とも押し黙ってしまっていたところへのノックは、返事を待たずに開かれた。
「エドワード!」
「オリヴィア!」
駆け込むように入って来たのは国王陛下と私の両親と兄。
「父上!」
「お父様お母様……お兄様まで」
わたしもエドも驚いて、立ちあがって迎える。
控えの間で報せを受けた陛下は、パーティーを一時王妃殿下とバートン殿下に任せて駆けつけたそうです。
私の家族は、兄が私の変身を見ていたらしくて、会場が騒然とする中、両親を見つけて一緒に私を探したそう。
途中で陛下と鉢合わせになって、エドの従者から執務室だろうと聞きつけて、共にこちらにいらしたと……
陛下は、わたしのバスローブ姿を見て仰天していらしたけれど、それよりもわたしも犬に変身した事を驚いていらした。
「まさかオリヴィア嬢も、犬になるとは……」
エドが、皆にひとまず座るように促していると、彼の従者がパーティー会場から礼装を回収して持って来てくれた。
私の分も回収してくれたようで、よかったわ。
「我々王家とカークランド家を含めて、色々と話さねばならないことがあるが……今日のところは招待客に箝口令を敷くしかあるまい」
国王陛下は「これ以上招待客を待たせる訳にはいかない」と、後日協議の場を設けるとしてパーティー会場に戻る事に。
エドは陛下から、今日のところはパーティーに戻らなくてもいいと告げられた。
彼は犬の姿を直接目撃されたわけではないけれど、突如姿を消したことは事実なので、好奇の目に晒されかねないものね……
まぁ、わたしは自分から進んで犬になっちゃった――それも大型犬にね! ――から、大勢の方に見られているので当然戻るなと言われる。
エドから部屋を借りてドレスを着た後は、家族と共に招待客の目につかない出入り口から屋敷に戻りました。
そして数日後、王城の一室に集まって、改めての話し合いが行われることに。
国王陛下の執務室に隣接する会議室には、陛下とエドとわたしの他に、バートン第二王子殿下とわたしの父と兄の六名。
長方形のテーブルの両端に半円のテーブルを合わせた突端の席に陛下がお座りになり、王家とカークランド家が分かれて座っています。
わたしを含むカークランド家の面々は、これまで王家に対してわたしの事を秘密にしていた負い目から、緊張感が半端じゃない!
陛下専用の会議室だから広いのだけれど、壁に並ぶ歴代国王の大きな肖像画の圧もすごい! まるで睨まれている様に感じてしまう……
後から入っていらした陛下とエドのお顔も、まともに見ることができない状態。
しばらくの沈黙に、我々カークランド側は、ただ俯くしかありません。
目なんて合わせられません! 恐くって!
給仕係によって各人の前に紅茶が置かれる――カチャ、カチャという――音だけがして、その給仕も音を立てずに出て行く。
「ウヴンッ」
しんと静まった中の陛下の咳払いに、わたし達はビクリとする。
「先日のパーティーの件だが……」
陛下も言いにくそうに話し始めるが、私の父も意を決したようで――
「その件につきましては、オリヴィアのことを黙っていて、申し訳ありませんでした。私どもで、この摩訶不思議な現象の調査と解決策を模索していたのですが、見い出せませないままでおりした……」
この際に、わたしが牧羊犬タイプの大型犬の成犬になるのだとお伝えした。
「メスです」
その情報、要ります?
お父様はなんでそういうこと言うかなぁ! ムッとしていると、陛下が父を制します。
「カークランド卿よ、よいのだ。こちらもエドワードのことをひと月も黙っておったのだ」
ひと月黙っていたのと、六年黙っていたのでは、大きく違いますけどね。
さすがにお父様も六年間とは、言い出せませんよね?
「卿がしたように、我々も侍医や教会関係者などに色々と調査させたのだ」
やはり王家でも、方々に当たってお調べになったそう。
「しかし、分かった事と言えば、エドが変身してしまう犬は、鳥類の狩猟に適した猟犬のオスの子犬だという事だけであった」
オスかメスかは結局調べるのですね……
「では、やはり……犯人と言いますか、原因は?」
「分からず終いだ」
王家もカークランド家と同じで、手掛かりを得られていないのね。
再び会議室が重い空気に包まれるけれど、エドが口を開いた。
「陛下、“彼の者”のことは?」
「おお、そうだな」
エドの言う“彼の者”とは、この件に関して有力な手掛かりを持っていそうな人物だという。
「ど、どなたですか?」
わたしも思わず身を乗り出して聞いてしまう。
陛下は、ひとつ頷くと、お教え下さる。
「太古に存在したとされている魔術。その派生の“呪術”研究の第一人者とされている、キアオラという男だ」
「エドワード!」
「オリヴィア!」
駆け込むように入って来たのは国王陛下と私の両親と兄。
「父上!」
「お父様お母様……お兄様まで」
わたしもエドも驚いて、立ちあがって迎える。
控えの間で報せを受けた陛下は、パーティーを一時王妃殿下とバートン殿下に任せて駆けつけたそうです。
私の家族は、兄が私の変身を見ていたらしくて、会場が騒然とする中、両親を見つけて一緒に私を探したそう。
途中で陛下と鉢合わせになって、エドの従者から執務室だろうと聞きつけて、共にこちらにいらしたと……
陛下は、わたしのバスローブ姿を見て仰天していらしたけれど、それよりもわたしも犬に変身した事を驚いていらした。
「まさかオリヴィア嬢も、犬になるとは……」
エドが、皆にひとまず座るように促していると、彼の従者がパーティー会場から礼装を回収して持って来てくれた。
私の分も回収してくれたようで、よかったわ。
「我々王家とカークランド家を含めて、色々と話さねばならないことがあるが……今日のところは招待客に箝口令を敷くしかあるまい」
国王陛下は「これ以上招待客を待たせる訳にはいかない」と、後日協議の場を設けるとしてパーティー会場に戻る事に。
エドは陛下から、今日のところはパーティーに戻らなくてもいいと告げられた。
彼は犬の姿を直接目撃されたわけではないけれど、突如姿を消したことは事実なので、好奇の目に晒されかねないものね……
まぁ、わたしは自分から進んで犬になっちゃった――それも大型犬にね! ――から、大勢の方に見られているので当然戻るなと言われる。
エドから部屋を借りてドレスを着た後は、家族と共に招待客の目につかない出入り口から屋敷に戻りました。
そして数日後、王城の一室に集まって、改めての話し合いが行われることに。
国王陛下の執務室に隣接する会議室には、陛下とエドとわたしの他に、バートン第二王子殿下とわたしの父と兄の六名。
長方形のテーブルの両端に半円のテーブルを合わせた突端の席に陛下がお座りになり、王家とカークランド家が分かれて座っています。
わたしを含むカークランド家の面々は、これまで王家に対してわたしの事を秘密にしていた負い目から、緊張感が半端じゃない!
陛下専用の会議室だから広いのだけれど、壁に並ぶ歴代国王の大きな肖像画の圧もすごい! まるで睨まれている様に感じてしまう……
後から入っていらした陛下とエドのお顔も、まともに見ることができない状態。
しばらくの沈黙に、我々カークランド側は、ただ俯くしかありません。
目なんて合わせられません! 恐くって!
給仕係によって各人の前に紅茶が置かれる――カチャ、カチャという――音だけがして、その給仕も音を立てずに出て行く。
「ウヴンッ」
しんと静まった中の陛下の咳払いに、わたし達はビクリとする。
「先日のパーティーの件だが……」
陛下も言いにくそうに話し始めるが、私の父も意を決したようで――
「その件につきましては、オリヴィアのことを黙っていて、申し訳ありませんでした。私どもで、この摩訶不思議な現象の調査と解決策を模索していたのですが、見い出せませないままでおりした……」
この際に、わたしが牧羊犬タイプの大型犬の成犬になるのだとお伝えした。
「メスです」
その情報、要ります?
お父様はなんでそういうこと言うかなぁ! ムッとしていると、陛下が父を制します。
「カークランド卿よ、よいのだ。こちらもエドワードのことをひと月も黙っておったのだ」
ひと月黙っていたのと、六年黙っていたのでは、大きく違いますけどね。
さすがにお父様も六年間とは、言い出せませんよね?
「卿がしたように、我々も侍医や教会関係者などに色々と調査させたのだ」
やはり王家でも、方々に当たってお調べになったそう。
「しかし、分かった事と言えば、エドが変身してしまう犬は、鳥類の狩猟に適した猟犬のオスの子犬だという事だけであった」
オスかメスかは結局調べるのですね……
「では、やはり……犯人と言いますか、原因は?」
「分からず終いだ」
王家もカークランド家と同じで、手掛かりを得られていないのね。
再び会議室が重い空気に包まれるけれど、エドが口を開いた。
「陛下、“彼の者”のことは?」
「おお、そうだな」
エドの言う“彼の者”とは、この件に関して有力な手掛かりを持っていそうな人物だという。
「ど、どなたですか?」
わたしも思わず身を乗り出して聞いてしまう。
陛下は、ひとつ頷くと、お教え下さる。
「太古に存在したとされている魔術。その派生の“呪術”研究の第一人者とされている、キアオラという男だ」
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