王都交通整理隊第19班~王城前の激混み大通りは、平民ばかりの“落ちこぼれ”第19班に任せろ!~

柳生潤兵衛

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2.“平民落ちこぼれ”の19班

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「おっ? “平民落ちこぼれ”の19班じゃねえか。なに他の班と同列で並んでやがる! お前らは俺達が報告を終えた後、最後の最後だろ? とっとと退きやがれ!」

 後ろから声が掛かり、班員の最後尾にいた俺の後襟うしろえりがグイッと掴み上げられた。

「ぐえぇっ」
「ハッ! 落ちこぼれに相応しい鳴き声じゃないか。ん~?」

 俺は前襟を掴み広げて呼吸をしやすくする。
 俺の声に気付いた班員が一斉に振り返り、俺を締め上げる男に双子が詰め寄って睨み合う。
 エヴァとベルジャナも加わろうとしているけど、双子が後ろ手で抑えてくれている。二人まで突っ掛かったら収拾がつかなくなってしまうからな……。よく止めてくれた。

「あら。うちの班長に何してくれてるの……だ?」
「ホント、いけ好かない男……だな」

 男口調に戻す意識はしているようだけど、内容が……。

 200ソンタcm超の二人が少し見下ろすだけの、これまた体格のいい男は4班の班長キヨドール・カンタス。カンタス子爵家の出身だ。
 細身ながら190ソンタ近い長身で、金髪をテカテカのオールバックに撫でつけている貴族至上主義者が、俺の後襟を掴んだまま双子を睨み返している。

「オール平民且つ無能の集まりのくせに、一丁前に俺に歯向かう気か? あ~?」

 『平民落ちこぼれ』『無能』と誹りを受けるのには理由がある。だからといって良いわけではないが。

 このボウイング王国では15歳の成人を迎える際に、全国民が魔力検査を受ける。
 簡易的な魔力検査を受けて、魔力を持っていると解かった者が王都に集められて、この時点で国に徴用される。
 その後、さらに属性診断が行われ、火・水・風・土・光のどの属性なのかが調べられる。
 大まかに魔力量と属性によって騎士団に徴用されるか、数多ある衛視隊に振り分けられるかが決まるのだ。
 光属性だけは治癒の特性があるので、教会関係者も立ち合って引き抜きの話し合いが行われることもあるらしい。

 属性がはっきりしていて魔力量が多ければ、平民であっても騎士に取り立てられて、活躍次第で貴族への道も拓けるという。

 第4班の班長・キヨドールを始め俺達は『衛視』だから、『騎士』には及ばなかった点は一緒。
 騎士に及ばないながらも、潜在能力等を考慮して警邏けいら衛視隊や各門の警備隊、通関業務隊等々へ配属されるのだが、その衛視隊の中でも交通整理隊は下層に位置する。
 その中でも俺の第19班は異端なのだ。

 まず俺は平民出身だし魔力属性が不明だしで、20年間交通整理隊のまま。

 双子の――と言っても30歳近いんだが……サンドとポルトは水属性と風属性持ちと判明しているのに、何故か小雨みたいな水魔法とつむじ風を出す風魔法しか使えないらしいのと、『性格(性別?)に難あり』の判定をくらって交通整理隊にブン投げられてきた。

 言葉少ななベルジャナは、17歳。数年前に王国に併合された超辺境の地域から、大量の魔力を保有していると鳴り物入りで王都へ来たものの、俺と一緒で属性不明、しかも無口の超人見知りで意思疎通困難の烙印を押されてうちの隊へ。

 エヴァはベルジャナのひとつ下の16歳。本来はエヴァレット・レイセオンと言って、代々優秀な土魔法師を排出しているレイセオン伯爵家の令嬢だったが、自身の魔力属性が不明と判定されて「家名に泥を塗る訳にはいかないのです」と、自ら除籍を願い出て平民身分となってこの隊に来た。

 一応全員平民な上、属性不明か微弱な属性魔法使いが集まったのが第19班なのだ。
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