22 / 30
第22話 ベルントの“死”と再結集
しおりを挟む
「ほぉう? 未来を教える令嬢か……面白いなっ!」
エミリアには、扉の先からの声には聞き覚えがなかった。
一人の若い男が入ってくる。
部屋の外には、屈強そうな男達がゾロゾロと控えている。
(もしかして……もしかしなくても皇族の方?)
帝国学舎の制服をカッチリと着こなしている。
エミリアは、以前マクシミリアン達が身に着けているのを見ていたので知っているが、その男が着る制服の帝国エンブレムの上にはゴツゴツとした騎士達の階級章みたいな物が付いていた。
長く伸ばしたピンクラベンダー色の髪を、大雑把にまとめたマンバンヘア。
朝露に濡れる若葉のような緑色の瞳。顔には笑みが浮かぶ。
(チャラそう! 軽そう!)がエミリアの第一印象だった。
「ポール! どうしてここに?」
「作戦が上手くいったようだと聞いてね。褒めてやりに来たよー」
そう言うと、ポールと呼ばれた男はマクシミリアンと握手を交わし、抱き合った。
エミリアが呆気に取られているのを見て、マクシミリアンがポールを紹介する。
「彼は私の一歳上の先輩。私はポールと呼んでいる」
「どうもー。はじめましてだね?」
「は、はじめまして。エミリアと申します」
「僕は、ハインリッヒシュテーリンデンポール・カンタラリア。親父がね? 候補を絞るのが面倒だっ! て、くっつけたんだって。せめて区切って欲しかったよね? 長いから君もポールって呼んでもいいよっ」
(き、聞いてもいないのに、ご説明くださって……。それにお喋り好きなのかしら?)
「こう見えても彼はこの国の第四皇子殿下で、巷では皇太子に最も近い皇子と言われているんだよ」
「そ、そのようなお方にお目にかかれて光栄です。殿下」
「ポールでいいってぇ!」
(軽い! ……けれど嫌では無い。とても親しみやすい殿下ね)
「そんな事よりも、エミリア嬢。そなたがマクシミリアンに、身の危険を知らせてくれたそうだな」
急にポールが真剣な表情になり、言葉づかいも変わってエミリアは驚いた。
「は、はい」
「礼を言う。我が友がこうして無事なのは君のおかげだ。ありがとう」
「とっ! とんでもございません! お言葉を賜りまして光栄でございます」
部屋が一瞬、静寂に包まれたが、それを破ったのはポールだった。
「ついでに僕のおかげでもある! ねっ? マクシミリアン」
「そうだね。ポールには大きな借りができたと思っているよ」
「いやいや、君と僕の仲じゃないか。気にしなくてもいいよ?」
「この借りはいつか必ずお返しさせてくれ」
「そう? でも貸しにするには大きすぎるんじゃない? いや……エミリア嬢で――」
「――それはダメです! 彼女はまだ……」
「まだ、なに?」
マクシミリアンは顔を赤くして俯いてしまった。
「はははっ。冗談冗談。まっ! 貸しについては、いずれって事で、な?」
ポールは、帰ろうと扉に差しかかったが、去り際にベルントに言葉をかけた。
「ベルント。一人で抱え込むのが君の悪い癖だよ。……でも君が生きていてくれてよかったよ」
「ポールも、自分の身分が故に周囲の人間を失い過ぎたんだ……。私も彼もお互いの気持ちが解かるんだよ」
ポールの背を見送りながら、マクシミリアンは寂しげに呟いていた。
ポールが去り、マクシミリアンが改めてベルントに向き合うと、ベルントが「いいのかい?」と問いかける。
「何がだい?」
「彼、エミリア嬢の前であなたの事をマクシミリアンって……」
「ん? ああ! エミリア嬢は私が王太子だって、最初から知っていたんだよ」
「ええ?」
(そういえば、セイン様はこの事を知ってらっしゃるのかしら?)
エミリアがセインの事を考えていると、彼本人が地下に案内されてきた。
「へ~。地下室なんてあるんだな? おっ! 嬢ちゃんもいたのか」
「セイン! 傷はどうだ?」
「へへっ。思ったより浅かったらしい。チョチョって縫ってもらって終わりだ。俺の反射神経ってスゲエな!」
「お前は軽く言うが、それなりに出血しているんだ。無理しないでくれよ?」
「ああ、わかってるわかってる。で? どうなってる?」
マクシミリアンは、やはりベルントは婚約者が囚われていて、父親に強要されていた事を伝える。
「……そうだったか。お前の親父もお前の性格を見抜いて脅しをかけたんだろうけど、相談してくれてもいいじゃねえか」
セインはそう言うと、二人から離れたエミリアの近くの椅子に腰かける。
「二人は続きをやってくれ」というと、セインは小声でエミリアに語りかけた。
「嬢ちゃん。殿下の事、ありがとうな。おかげで殿下の命、繋ぐ事ができたぜ。俺のはどうでもいいが、守れなかったって事にならなくて良かった……あんがとな」
「い、いえ」
マクシミリアンとベルントは向き合って座り、今は黙っている。
「さて、サンデリーヌ嬢の事は、私に任せろと言ったね?」
「ええ。お願い致します」
「……私は……ベルント、お前にも死なないで欲しいんだよ」
「殿下。このような罪を犯した人間を――私を、生かしておいてはなりません。それに、私が生きている限りサンディーの身に平穏は来ないかもしれません」
マクシミリアンはしばし考え込んで、言葉を選ぶようにゆっくりと話し始める。
「今日の襲撃の件は、既に皇子側から王国へ報せが送られているはずだ」
「はい」
「内容は、『王太子が襲撃に遭うが、撃退。王太子は無事。ただし、戦闘の際にベルント・ワグニスが王太子の盾となり死亡』だ」
「なっ! なぜ?」
「私がお前を失わない為に考えた唯一の方法が、『お前に死んでもらう』事だ」
「それにしても、私が殿下の側など……」
「いや、ワグニスは相当狡猾だし、力も持っている。――」
マクシミリアンは、もし本当の事を報せたとしても、ワグニスの勢力に揉み消されたり証拠を隠されたりして、いずれにせよ今後の調査に支障をきたすと考えた。
更に人質のサンデリーヌにも何をするか分からない。
だったらベルントが役目を果たせなかった事を悟らせるとともに、ワグニスの名誉も傷付けない事で、過度に現状を変えない方がいいと判断したという。
問題はベルントの遺体で……損傷が激しかった為、王国への移送に耐えられないので帝国の『 英雄墓地 』に埋葬し、英雄として弔ったことにする。
「ちょっと苦しい理屈だけど、実際に墓は用意したし、ワグニスにとっても名誉として利用価値があるだろう。しばらくは大人しくしてくれるかもしれない」
「殿下……。そこまでお考えだったのですか」
「そうだ。それほど私はお前の力量を認めているのだ。だから、お前には別人になって私が即位するまで、帝国で研鑽を積んで力をつけて欲しい」
「私は今日殿下の命を狙った身です。殿下はそれでもよろしいのですか?」
「ああ、だからベルント。お前もよく考えて決めてくれ」
ベルントはすぐにマクシミリアンの目を見て返事した。
「殿下にお救い頂いた命、二度目の人生こそ最後まで殿下の為に使わせて頂きます」
今度はマクシミリアンが、改めて確認するように聞く。
「私は……もちろんかなりの時間を要するだろうが、お前の父親ヴィスク・ワグニスを糾弾するつもりだ」
「……はい」
「そうなると、罪が罪なだけに、お前の肉親も罰を免れない」
「……致し方ありません」
「家族だぞ?」
「殿下、ベルント・ワグニスは死にました。サンディーでさえ、私の婚約者ではありません」
「本当にいいのだな?」
「はい」
そうしてマクシミリアンは、ワグニスを糾弾する事を決定した。
「セインは、私が再び殿下の側に戻ることを許してくれるかい?」
「心では許せねえって方が強え。でも、頭ではお前がいた方がいいってことは分かる。マックスは本当に許してるのか?」
「甘いと思われるだろうが、許す。だけど、最初に言ってくれればとは今でも思っている」
「だよな……。ま、マックスがいいって言うなら、従うまでだ。――だがっ! お前の新しい名前は、俺がこっ恥ずかしそうなのを考えてやる」
「お、お手柔らかに……」
セインも加わり、三人で今後の調査について話しをしていたが、行き詰っていた。
(大事なお話をしているけれど、上手くいかないようね。私も何か協力できればいいのだけれど……)
「殿下の陣営は、キューウェル公爵がいるとは言え、数には限りがあるし警戒もされているでしょう。スパイもいると考えた方がいい」
「じゃあどうすんだ?」
「やはり外部の協力者が必要だ……」
(レロヘス家は、父の方針で中立を守っているはず。でも、小さい小さい子爵家だし……母や妹が余計な事をしそうだし……。でも内密に父と連絡を取れれば、もしかして?)
エミリアは、マクシミリアンなら父と内密に連絡を取れるのではないかと考えて、ダメで元々と聞いてみる事にした。
「あのぉー。レロヘス家は、確か中立だったはずですけど」
三人の輪からは離れていたエミリアから発せられた言葉に、三人ともバッと彼女に注目する。
「どうだ? ベルント」
「私の記憶でも、中立というか……どの派閥も相手にしていなかったような……」
「なんだ、それ? 弱っちいって事か?」
(……そうだったの?)
エミリアには、扉の先からの声には聞き覚えがなかった。
一人の若い男が入ってくる。
部屋の外には、屈強そうな男達がゾロゾロと控えている。
(もしかして……もしかしなくても皇族の方?)
帝国学舎の制服をカッチリと着こなしている。
エミリアは、以前マクシミリアン達が身に着けているのを見ていたので知っているが、その男が着る制服の帝国エンブレムの上にはゴツゴツとした騎士達の階級章みたいな物が付いていた。
長く伸ばしたピンクラベンダー色の髪を、大雑把にまとめたマンバンヘア。
朝露に濡れる若葉のような緑色の瞳。顔には笑みが浮かぶ。
(チャラそう! 軽そう!)がエミリアの第一印象だった。
「ポール! どうしてここに?」
「作戦が上手くいったようだと聞いてね。褒めてやりに来たよー」
そう言うと、ポールと呼ばれた男はマクシミリアンと握手を交わし、抱き合った。
エミリアが呆気に取られているのを見て、マクシミリアンがポールを紹介する。
「彼は私の一歳上の先輩。私はポールと呼んでいる」
「どうもー。はじめましてだね?」
「は、はじめまして。エミリアと申します」
「僕は、ハインリッヒシュテーリンデンポール・カンタラリア。親父がね? 候補を絞るのが面倒だっ! て、くっつけたんだって。せめて区切って欲しかったよね? 長いから君もポールって呼んでもいいよっ」
(き、聞いてもいないのに、ご説明くださって……。それにお喋り好きなのかしら?)
「こう見えても彼はこの国の第四皇子殿下で、巷では皇太子に最も近い皇子と言われているんだよ」
「そ、そのようなお方にお目にかかれて光栄です。殿下」
「ポールでいいってぇ!」
(軽い! ……けれど嫌では無い。とても親しみやすい殿下ね)
「そんな事よりも、エミリア嬢。そなたがマクシミリアンに、身の危険を知らせてくれたそうだな」
急にポールが真剣な表情になり、言葉づかいも変わってエミリアは驚いた。
「は、はい」
「礼を言う。我が友がこうして無事なのは君のおかげだ。ありがとう」
「とっ! とんでもございません! お言葉を賜りまして光栄でございます」
部屋が一瞬、静寂に包まれたが、それを破ったのはポールだった。
「ついでに僕のおかげでもある! ねっ? マクシミリアン」
「そうだね。ポールには大きな借りができたと思っているよ」
「いやいや、君と僕の仲じゃないか。気にしなくてもいいよ?」
「この借りはいつか必ずお返しさせてくれ」
「そう? でも貸しにするには大きすぎるんじゃない? いや……エミリア嬢で――」
「――それはダメです! 彼女はまだ……」
「まだ、なに?」
マクシミリアンは顔を赤くして俯いてしまった。
「はははっ。冗談冗談。まっ! 貸しについては、いずれって事で、な?」
ポールは、帰ろうと扉に差しかかったが、去り際にベルントに言葉をかけた。
「ベルント。一人で抱え込むのが君の悪い癖だよ。……でも君が生きていてくれてよかったよ」
「ポールも、自分の身分が故に周囲の人間を失い過ぎたんだ……。私も彼もお互いの気持ちが解かるんだよ」
ポールの背を見送りながら、マクシミリアンは寂しげに呟いていた。
ポールが去り、マクシミリアンが改めてベルントに向き合うと、ベルントが「いいのかい?」と問いかける。
「何がだい?」
「彼、エミリア嬢の前であなたの事をマクシミリアンって……」
「ん? ああ! エミリア嬢は私が王太子だって、最初から知っていたんだよ」
「ええ?」
(そういえば、セイン様はこの事を知ってらっしゃるのかしら?)
エミリアがセインの事を考えていると、彼本人が地下に案内されてきた。
「へ~。地下室なんてあるんだな? おっ! 嬢ちゃんもいたのか」
「セイン! 傷はどうだ?」
「へへっ。思ったより浅かったらしい。チョチョって縫ってもらって終わりだ。俺の反射神経ってスゲエな!」
「お前は軽く言うが、それなりに出血しているんだ。無理しないでくれよ?」
「ああ、わかってるわかってる。で? どうなってる?」
マクシミリアンは、やはりベルントは婚約者が囚われていて、父親に強要されていた事を伝える。
「……そうだったか。お前の親父もお前の性格を見抜いて脅しをかけたんだろうけど、相談してくれてもいいじゃねえか」
セインはそう言うと、二人から離れたエミリアの近くの椅子に腰かける。
「二人は続きをやってくれ」というと、セインは小声でエミリアに語りかけた。
「嬢ちゃん。殿下の事、ありがとうな。おかげで殿下の命、繋ぐ事ができたぜ。俺のはどうでもいいが、守れなかったって事にならなくて良かった……あんがとな」
「い、いえ」
マクシミリアンとベルントは向き合って座り、今は黙っている。
「さて、サンデリーヌ嬢の事は、私に任せろと言ったね?」
「ええ。お願い致します」
「……私は……ベルント、お前にも死なないで欲しいんだよ」
「殿下。このような罪を犯した人間を――私を、生かしておいてはなりません。それに、私が生きている限りサンディーの身に平穏は来ないかもしれません」
マクシミリアンはしばし考え込んで、言葉を選ぶようにゆっくりと話し始める。
「今日の襲撃の件は、既に皇子側から王国へ報せが送られているはずだ」
「はい」
「内容は、『王太子が襲撃に遭うが、撃退。王太子は無事。ただし、戦闘の際にベルント・ワグニスが王太子の盾となり死亡』だ」
「なっ! なぜ?」
「私がお前を失わない為に考えた唯一の方法が、『お前に死んでもらう』事だ」
「それにしても、私が殿下の側など……」
「いや、ワグニスは相当狡猾だし、力も持っている。――」
マクシミリアンは、もし本当の事を報せたとしても、ワグニスの勢力に揉み消されたり証拠を隠されたりして、いずれにせよ今後の調査に支障をきたすと考えた。
更に人質のサンデリーヌにも何をするか分からない。
だったらベルントが役目を果たせなかった事を悟らせるとともに、ワグニスの名誉も傷付けない事で、過度に現状を変えない方がいいと判断したという。
問題はベルントの遺体で……損傷が激しかった為、王国への移送に耐えられないので帝国の『 英雄墓地 』に埋葬し、英雄として弔ったことにする。
「ちょっと苦しい理屈だけど、実際に墓は用意したし、ワグニスにとっても名誉として利用価値があるだろう。しばらくは大人しくしてくれるかもしれない」
「殿下……。そこまでお考えだったのですか」
「そうだ。それほど私はお前の力量を認めているのだ。だから、お前には別人になって私が即位するまで、帝国で研鑽を積んで力をつけて欲しい」
「私は今日殿下の命を狙った身です。殿下はそれでもよろしいのですか?」
「ああ、だからベルント。お前もよく考えて決めてくれ」
ベルントはすぐにマクシミリアンの目を見て返事した。
「殿下にお救い頂いた命、二度目の人生こそ最後まで殿下の為に使わせて頂きます」
今度はマクシミリアンが、改めて確認するように聞く。
「私は……もちろんかなりの時間を要するだろうが、お前の父親ヴィスク・ワグニスを糾弾するつもりだ」
「……はい」
「そうなると、罪が罪なだけに、お前の肉親も罰を免れない」
「……致し方ありません」
「家族だぞ?」
「殿下、ベルント・ワグニスは死にました。サンディーでさえ、私の婚約者ではありません」
「本当にいいのだな?」
「はい」
そうしてマクシミリアンは、ワグニスを糾弾する事を決定した。
「セインは、私が再び殿下の側に戻ることを許してくれるかい?」
「心では許せねえって方が強え。でも、頭ではお前がいた方がいいってことは分かる。マックスは本当に許してるのか?」
「甘いと思われるだろうが、許す。だけど、最初に言ってくれればとは今でも思っている」
「だよな……。ま、マックスがいいって言うなら、従うまでだ。――だがっ! お前の新しい名前は、俺がこっ恥ずかしそうなのを考えてやる」
「お、お手柔らかに……」
セインも加わり、三人で今後の調査について話しをしていたが、行き詰っていた。
(大事なお話をしているけれど、上手くいかないようね。私も何か協力できればいいのだけれど……)
「殿下の陣営は、キューウェル公爵がいるとは言え、数には限りがあるし警戒もされているでしょう。スパイもいると考えた方がいい」
「じゃあどうすんだ?」
「やはり外部の協力者が必要だ……」
(レロヘス家は、父の方針で中立を守っているはず。でも、小さい小さい子爵家だし……母や妹が余計な事をしそうだし……。でも内密に父と連絡を取れれば、もしかして?)
エミリアは、マクシミリアンなら父と内密に連絡を取れるのではないかと考えて、ダメで元々と聞いてみる事にした。
「あのぉー。レロヘス家は、確か中立だったはずですけど」
三人の輪からは離れていたエミリアから発せられた言葉に、三人ともバッと彼女に注目する。
「どうだ? ベルント」
「私の記憶でも、中立というか……どの派閥も相手にしていなかったような……」
「なんだ、それ? 弱っちいって事か?」
(……そうだったの?)
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説

【完結】傷跡に咲く薔薇の令嬢は、辺境伯の優しい手に救われる。
朝日みらい
恋愛
セリーヌ・アルヴィスは完璧な貴婦人として社交界で輝いていたが、ある晩、馬車で帰宅途中に盗賊に襲われ、顔に深い傷を負う。
傷が癒えた後、婚約者アルトゥールに再会するも、彼は彼女の外見の変化を理由に婚約を破棄する。
家族も彼女を冷遇し、かつての華やかな生活は一転し、孤独と疎外感に包まれる。
最終的に、家族に決められた新たな婚約相手は、社交界で「醜い」と噂されるラウル・ヴァレールだった―――。
踏み台令嬢はへこたれない
IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】白い結婚はあなたへの導き
白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。
彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。
何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。
先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。
悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。
運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる