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第8話 ①母親と妹、凋落
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エミリアがマックス達に助けられてリーンを脱した翌日、午後。
昨日のエミリアの様子を見て、心配になった祖父グランツ・オロロージオ男爵がレロヘス家の王都邸を訪ねた。
「あら、お義父様。急にいらっしゃるなんて、どうかなさいましたか?」
グランツの息子リンクスの妻マリアンが、何食わぬ顔で応接室にグランツを迎える。
「今日はリンクスや孫達はいないのか?」
「ええ、リンクスはまだ王城から帰っておりませんし、クリスもアデリーナも学園ですわ」
「エミリアは?」
グランツがエミリアの名前を出すと、マリアンは口角を上げて二ヤリとした。
「ああ、あの子なら放逐しましたわ」
「何っ!? り、留学に行ったのではないのか?」
「留学ですって? 何故あのような子にお金をかけてまで留学させないといけないのです?」
「では、エミリアは今どこに?」
「さぁ? 今頃どこで何をしているやら……」
マリアンは何ら後ろめたい事は無いかのように言ってのけた。
グランツは、彼女の口から語られる言葉も然ることながら、愛する孫の実母の平然とした――むしろ嬉々として語る――その態度に、怒りで戦慄いている。
そこにマリアンがトドメの一言。
「まあ、エミリアがどうなろうとも、もうレロヘス家とは関係のない事ですわ」
「何という事をしたのだっ!」
屋敷中に届いたのではと言うほど、グランツ・オロロージオの声が響く。
「い、いきなりいらして、大声を出さないで頂けますか?」
マリアンは、グランツの大声に一瞬たじろいだが、気丈に言葉を返した。
グランツはその言葉の後にマリアンが「まったく! これだから平民上がりは……」とささやいたのを聞き逃さなかった。
瞬間的に怒りを爆発させそうになったが、グランツはグッと堪える。
いくらマリアンが許されざる言動を取ったとはいえ、このレロヘス家は今や自分の息子が当主なのだ。
自分の行いが息子の迷惑にならぬようにせねばと、自重する。
(その平民上がりの男爵家に、経済的に頼り切っているのはどこの子爵家だっ!)
グランツは心の中で毒づく。
そもそもレロヘス家は、領地が小さく土地も痩せ鉱物資源にも乏しい、言わば子爵家ながら貧しかったのだ。
その上、レロヘス夫妻には一人娘のマリアンしかおらず、跡取りがいなかった。
そこに名誉貴族のオロロージオ男爵の息子リンクスとの婚姻話が持ち上がる。
グランツ・オロロージオは男爵だが、息子のリンクスはその爵位を継ぐことはできないので、平民となる定めにあった。
オロロージオ家は、腕巻き時計の発明や応用で財を成しているので、リンクスとの婚姻はレロヘス家にとって後継問題・財政事情双方で都合のいいものであった。
マリアンの両親はリンクスにレロヘス家の当主を譲り領地で隠居するのだが、その時にレロヘス家の現金の蓄えを全て持ち出すことをリンクスは許している。
そういった事もあり、現レロヘス家は結婚当初からグランツに経済的に支えられているのだが、マリアンはその事について両親から聞かされていなかった。
彼女は、子供達――グランツにとっては孫達――の学費を全額援助してもらっていたが、それも祖父であるからには当然の事と考えて憚らない。
「なんで放逐何てことになったのだ?」
「全てエミリアの身から出た錆ですわ」
「何っ?」
マリアンは、エミリアが妹のアデリーナへ執拗な嫌がらせを繰り返していたのだと説明する。
「エミリアは、自分は学院に通っているにも関わらず、放課後にわざわざ王立学園に行ってまで嫌がらせをするなんて……。アデリーナが怪我を負わされそうになった事もあるそうですよ!」
「あの子がそのような事をするわけがない!」
「証人もいるのですよ? アデリーナのご学友が沢山見ているそうです。まったく! レロヘス家の恥さらしですわ」
「エミリアにだって証人はいる! あの子は、放課後は毎日私の工房に来ていた! そのような事をする暇なんて無かったはずだ」
マリアンはグランツの言葉を鼻で笑った。
「一代貴族の証言など誰が聞きますの? アデリーナの証人はエミリアの婚約者でもあったクルーガー伯爵家のご子息や、そのご学友ですよ? みな名だたる貴族家のご令息ですのよ」
(この女め、救いようのない思考をしているな……。リンクスの奴も甘やかしておったのか?)
「本来なら、エミリアみたいな恥さらしは我が家の者の手で“処分”すべきだったのですが、アデリーナと婚約を交わされたヤミル・クルーガー様のご厚意で放逐に止めたのです」
「なっ!? 処分だと?」
「ええ、放逐とはいえ、エミリアは命を永らえたのです。ヤミル様へ感謝の印に時計の一つでもお贈りになったら?」
実際は、今回エミリアが命を繋ぐ事が出来たのは、ひとえに彼女の努力のおかげである。
一度目の“巻き戻り”では、初めて巻き戻ったという事と二か月という短期間であったため、たいした事が出来なかった。
二度目の“巻き戻り”で、エミリアは時計作りに励みつつも、何とかマリアンやアデリーナとの関係を良好にしようと試みたが叶わなかった。
そして三度目の今回、彼女はマリアンやアデリーナとの関係改善は諦めて、婚約者のヤミル・クルーガーとの接し方を変えたのだ。
婚約が決まって以降、ヤミルはもちろんクルーガー伯爵家の両親や弟妹との関係を深め、これが功を奏した形になった。
もちろん、エミリアのこの試行錯誤は、それぞれたった一度の人生を生きている彼女以外の人々には、知る由もない。
「お、お前は……なんとも思わないのか?」
グランツは怒りを堪えて、マリアンに良心の呵責は無いのか確かめる。
「いくらお義父様と言えど、『お前』とは失礼ではありませんこと? まったく! それに、アデリーナが代わりにクルーガー家に嫁げるのでなんら問題ございませんわ。レロヘス家はクリスが跡取りで、アデリーナが侯爵家との繋がりを作ってくれる。これで我が家は安泰ですわ! ほっほっほ」
「……そうか」
(リンクスとクリスには苦労をかけるだろうが、この女とアデリーナは放ってはおけん)
「安泰ならば良かった。では、これまで私が出していた孫達の学費は打ち切らせてもらおう」
王立学園の学費は高い。
王立学園は、王族や貴族令息の為の学校で、教育水準は高い。だが、学園に通う最も大きな目的は、貴族社会での人脈の形成である。
王族もいる学園で良い人脈を築ければ、実際の貴族社会に出ても有利に働くので、高額の学費を払ってでも通う価値があるとされている。
アデリーナは、完全に人脈目当てで学業は疎か。クリスは学業も優秀でありつつ、人脈も広げている。
グランツの言葉は、マリアンにとって正に寝耳に水だった。
「はあ!? 何ですって?」
「聞こえなかったか? 孫達の学費の援助は打ち切らせてもらう」
「な、な! ななな、なんでそうなるのよっ! え、え、エミリアの分だけ打ち切るのでしょう? 三分の二はそのまま援助しなさいよっ!」
マリアンは、エミリアの通う王都立の学院の学費は王立学園の十分の一以下であるのにも関わらず、グランツには「学院も学園と同じくらい掛かる」と嘘をついて、差額を自分の遊興費に充てていた。
グランツは学費の件は、工房に来ていたエミリアとの雑談の中で聞いていたが、敢えてマリアンを問い詰めるような事はしなかった。
家庭内で子供達に区別なく愛情を注いでいるのであれば、問題は無いと考えていたからだ。
だが、ここに来て子供達を区別して――特にエミリア一人にだけ厳しく――接していた事が明るみになった。
(もはやこの女には救いようがない。これまでだ。ただ……クリスは別だ)
「そうだな……。クリスはもう少しで卒業だろう?」
クリスは、エミリアほどではないし時計も作らないが、グランツの元を訪ねては色々な話をしていた。グランツの身体を気遣う優しい子だった。
「クリスの分の学費は、私が直接学園に支払おう。アデリーナの学費については私は関わらない。通わせ続けたければお前達で払えばいい」
子供達の莫大な学費をグランツに頼り切っていたマリアンは、動揺を隠せなかった。
「そんな! あ、アデリーナはあなたの可愛い孫でし――」
「――エミリアも私の可愛い孫だっ!!」
マリアンの言葉を遮るように、グランツの悲痛な叫びが屋敷に響いた。
昨日のエミリアの様子を見て、心配になった祖父グランツ・オロロージオ男爵がレロヘス家の王都邸を訪ねた。
「あら、お義父様。急にいらっしゃるなんて、どうかなさいましたか?」
グランツの息子リンクスの妻マリアンが、何食わぬ顔で応接室にグランツを迎える。
「今日はリンクスや孫達はいないのか?」
「ええ、リンクスはまだ王城から帰っておりませんし、クリスもアデリーナも学園ですわ」
「エミリアは?」
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「では、エミリアは今どこに?」
「さぁ? 今頃どこで何をしているやら……」
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グランツは、彼女の口から語られる言葉も然ることながら、愛する孫の実母の平然とした――むしろ嬉々として語る――その態度に、怒りで戦慄いている。
そこにマリアンがトドメの一言。
「まあ、エミリアがどうなろうとも、もうレロヘス家とは関係のない事ですわ」
「何という事をしたのだっ!」
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マリアンは、グランツの大声に一瞬たじろいだが、気丈に言葉を返した。
グランツはその言葉の後にマリアンが「まったく! これだから平民上がりは……」とささやいたのを聞き逃さなかった。
瞬間的に怒りを爆発させそうになったが、グランツはグッと堪える。
いくらマリアンが許されざる言動を取ったとはいえ、このレロヘス家は今や自分の息子が当主なのだ。
自分の行いが息子の迷惑にならぬようにせねばと、自重する。
(その平民上がりの男爵家に、経済的に頼り切っているのはどこの子爵家だっ!)
グランツは心の中で毒づく。
そもそもレロヘス家は、領地が小さく土地も痩せ鉱物資源にも乏しい、言わば子爵家ながら貧しかったのだ。
その上、レロヘス夫妻には一人娘のマリアンしかおらず、跡取りがいなかった。
そこに名誉貴族のオロロージオ男爵の息子リンクスとの婚姻話が持ち上がる。
グランツ・オロロージオは男爵だが、息子のリンクスはその爵位を継ぐことはできないので、平民となる定めにあった。
オロロージオ家は、腕巻き時計の発明や応用で財を成しているので、リンクスとの婚姻はレロヘス家にとって後継問題・財政事情双方で都合のいいものであった。
マリアンの両親はリンクスにレロヘス家の当主を譲り領地で隠居するのだが、その時にレロヘス家の現金の蓄えを全て持ち出すことをリンクスは許している。
そういった事もあり、現レロヘス家は結婚当初からグランツに経済的に支えられているのだが、マリアンはその事について両親から聞かされていなかった。
彼女は、子供達――グランツにとっては孫達――の学費を全額援助してもらっていたが、それも祖父であるからには当然の事と考えて憚らない。
「なんで放逐何てことになったのだ?」
「全てエミリアの身から出た錆ですわ」
「何っ?」
マリアンは、エミリアが妹のアデリーナへ執拗な嫌がらせを繰り返していたのだと説明する。
「エミリアは、自分は学院に通っているにも関わらず、放課後にわざわざ王立学園に行ってまで嫌がらせをするなんて……。アデリーナが怪我を負わされそうになった事もあるそうですよ!」
「あの子がそのような事をするわけがない!」
「証人もいるのですよ? アデリーナのご学友が沢山見ているそうです。まったく! レロヘス家の恥さらしですわ」
「エミリアにだって証人はいる! あの子は、放課後は毎日私の工房に来ていた! そのような事をする暇なんて無かったはずだ」
マリアンはグランツの言葉を鼻で笑った。
「一代貴族の証言など誰が聞きますの? アデリーナの証人はエミリアの婚約者でもあったクルーガー伯爵家のご子息や、そのご学友ですよ? みな名だたる貴族家のご令息ですのよ」
(この女め、救いようのない思考をしているな……。リンクスの奴も甘やかしておったのか?)
「本来なら、エミリアみたいな恥さらしは我が家の者の手で“処分”すべきだったのですが、アデリーナと婚約を交わされたヤミル・クルーガー様のご厚意で放逐に止めたのです」
「なっ!? 処分だと?」
「ええ、放逐とはいえ、エミリアは命を永らえたのです。ヤミル様へ感謝の印に時計の一つでもお贈りになったら?」
実際は、今回エミリアが命を繋ぐ事が出来たのは、ひとえに彼女の努力のおかげである。
一度目の“巻き戻り”では、初めて巻き戻ったという事と二か月という短期間であったため、たいした事が出来なかった。
二度目の“巻き戻り”で、エミリアは時計作りに励みつつも、何とかマリアンやアデリーナとの関係を良好にしようと試みたが叶わなかった。
そして三度目の今回、彼女はマリアンやアデリーナとの関係改善は諦めて、婚約者のヤミル・クルーガーとの接し方を変えたのだ。
婚約が決まって以降、ヤミルはもちろんクルーガー伯爵家の両親や弟妹との関係を深め、これが功を奏した形になった。
もちろん、エミリアのこの試行錯誤は、それぞれたった一度の人生を生きている彼女以外の人々には、知る由もない。
「お、お前は……なんとも思わないのか?」
グランツは怒りを堪えて、マリアンに良心の呵責は無いのか確かめる。
「いくらお義父様と言えど、『お前』とは失礼ではありませんこと? まったく! それに、アデリーナが代わりにクルーガー家に嫁げるのでなんら問題ございませんわ。レロヘス家はクリスが跡取りで、アデリーナが侯爵家との繋がりを作ってくれる。これで我が家は安泰ですわ! ほっほっほ」
「……そうか」
(リンクスとクリスには苦労をかけるだろうが、この女とアデリーナは放ってはおけん)
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王立学園の学費は高い。
王立学園は、王族や貴族令息の為の学校で、教育水準は高い。だが、学園に通う最も大きな目的は、貴族社会での人脈の形成である。
王族もいる学園で良い人脈を築ければ、実際の貴族社会に出ても有利に働くので、高額の学費を払ってでも通う価値があるとされている。
アデリーナは、完全に人脈目当てで学業は疎か。クリスは学業も優秀でありつつ、人脈も広げている。
グランツの言葉は、マリアンにとって正に寝耳に水だった。
「はあ!? 何ですって?」
「聞こえなかったか? 孫達の学費の援助は打ち切らせてもらう」
「な、な! ななな、なんでそうなるのよっ! え、え、エミリアの分だけ打ち切るのでしょう? 三分の二はそのまま援助しなさいよっ!」
マリアンは、エミリアの通う王都立の学院の学費は王立学園の十分の一以下であるのにも関わらず、グランツには「学院も学園と同じくらい掛かる」と嘘をついて、差額を自分の遊興費に充てていた。
グランツは学費の件は、工房に来ていたエミリアとの雑談の中で聞いていたが、敢えてマリアンを問い詰めるような事はしなかった。
家庭内で子供達に区別なく愛情を注いでいるのであれば、問題は無いと考えていたからだ。
だが、ここに来て子供達を区別して――特にエミリア一人にだけ厳しく――接していた事が明るみになった。
(もはやこの女には救いようがない。これまでだ。ただ……クリスは別だ)
「そうだな……。クリスはもう少しで卒業だろう?」
クリスは、エミリアほどではないし時計も作らないが、グランツの元を訪ねては色々な話をしていた。グランツの身体を気遣う優しい子だった。
「クリスの分の学費は、私が直接学園に支払おう。アデリーナの学費については私は関わらない。通わせ続けたければお前達で払えばいい」
子供達の莫大な学費をグランツに頼り切っていたマリアンは、動揺を隠せなかった。
「そんな! あ、アデリーナはあなたの可愛い孫でし――」
「――エミリアも私の可愛い孫だっ!!」
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