俺と最強白狐娘の異世界“ながら”侵攻記~スマホの『魔法大全』アプリを持って、保護した姉妹を育成しながら異世界魔王にカウンター食らわせる!~

柳生潤兵衛

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第3章 カストポルクス、真の敵。

第120話 次元転移とその先。

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「なっ! なんじゃとー!」

 ミケが驚き、あまりの衝撃にワナワナと震えている。

「ユウトー! 貴様なぜ今まで黙っておったのじゃ! 一大事ではないか!」
「一大事って……、そんな大げさな」
「大げさなものかっ! それがないと、我は……我はっ!」

 なんでミケがこんなに取り乱しているかと言うと、俺がケーキの在庫が少なくなってきた事を言ってしまったからだ。
 公都で昼食を食べて、公都の外に待たせていたピルムに合流した時――


「よし、皆揃ったし、食後のケーキじゃ!」
「いや、今のレストランでもデザート食べただろ?」
「それはそれ、これはこれじゃ」
「まったく……。これじゃ、あとひと月で無くなっちゃうぞ? ケーキ」

 で、この騒ぎだ。


「でも安心しろ。キースにも行ったが、俺のやりたい事ってのは、その解決にもなるんだ」
「何じゃそれは? 本当にケーキと関係あるのか?」
「あるっ! 【魔法大全】が〈10〉になって、ようやく使えるようになったんだ! 《次元ディメンショナル転移トランジション》をっ」

「「「[おおっ!」」」]

「よしユウトよ、すぐやるのじゃ! 今やるのじゃっ!」
「お、おう……」

 心の準備はまだだったが、体調オッケー魔力も万全、スマホも用意できた。

「よ、よし。やるぞ?」

 みんなが息を呑みコクンと頷いた。

 俺の魔法発動と、スマホでの発動の同時発動だ。それなりにいい結果が出ると思う!
 行き先は、ミケと初めて会った神社だ。あそこなら人目に付きにくいだろうし、ある程度の広さもあるからな。

「《ディメンショナル・トランジション》発動!」

 スマホが光り、俺から魔力がどんどん抜けていく感覚! ギュンギュン抜けていくぅ!

 俺の目の前の空間がユラユラ揺らめいて、その揺らめきが集約されていく。
 インクアートのように様々な色が混じり、七色の膜みたいな物になり、どんどん集約されていく。

 俺の腰ほどの高さに直径10cmほどまで集約された膜、その向こう側には……、神社!
 魔力が無くなりかけていてクラクラするが、確かに見えるぞ。

「やったぞ! 成功だっ! ミケ? 見えるか? 神社だぞ!」
「み、見えるがのぅ……。なんじゃー! このちんまいのは!」
「あっ! やべっ」

 神社が見えたのも束の間、膜は数秒で消えてしまった。

「消えた……。しかも小さかったな。……ニア、この魔法ってこんなもんなのか?」
「ユウトさん、“こんなもん”って、これ、発動できる人なんていなかったんですよ? もの凄い事ですよ?」
「でもさ、猫のペットドアより小さいんだぞ? すぐ消えたし……クラクラするし」
「ですから、クラクラも何も、発動できたというのが凄いんですっ! 熟練度が上がれば大きくなり、展開時間も延びるでしょう」

 そうだよな。次元転移門だって魔人族数千の魔力と、数千の奴隷の魔力と命と、魔法陣まで使ったんだからな。
 俺とスマホの魔力だけで、ここまでできるのが異常なのかもしれないな。

「先は長いかもしれないが、地道に熟練度を上げていこう」
「そうじゃな。よし! ケーキの為じゃ、もう一回やれ!」
「む、無理……」


 その日以降、俺達は冒険者として各地で依頼をこなしたり、たまに『 希望大陸ユウト 』へ開発の手伝いに行ったりしながら、熟練度上げの訓練も続けた。
 
 と言っても、俺は寝る前と朝一に次元転移の訓練をやらされるので、日中は魔力枯渇でヘロヘロになった役に立たないおっさんと化す。
 
 俺を見た冒険者連中からは、若い女の子を働かせて自分は働かない鬼畜と噂になった。
 ……振り出しに戻った以上の屈辱。



 俺は苦難の3週間を過ごし、ようやく次元転移の出入り口が、大きさ・持続時間、共に俺達の通過に耐え得るまでになった。頑張ったんだよ!
 その3週間の間に、ピルムも長時間の人化が可能になった。

「長かった……。そしてっ! ケーキもギリギリ持ちこたえた! ギリギリッ」

 地球への次元転移を今日に、決行場所をマッカラン大公国公都外に定め、あらかじめキースとアムートに伝えておいた。

 そしたら、キースが他国にも報せたようで、アムートのみならずゴダン・ライゼル・エティゴーヤ・リーファ・ローレッタも来ている。
 メルガンとメルティナまで来て、なぜかリーファとローレッタが2人をにらみつけている。

「みんな、別に見送りに来なくてもいいのに……。どうせこっちに戻るつもりだしさ」

「いやいや、私達はユウト殿にこの星を救ってもらったのだ。英雄を見送らない訳にはいかないさ」
「そうです。ユウト殿達には、返しきれない程の恩があるのです。……無事のお帰りをお待ちしていますよ」
「キースさん、アムートさん……。ありがとうございます」

「地球とやらの製品を土産に持って帰ってくれと頼むついである! わざわざ見送れば買って来ずにはいられまいという策略であるぞい」
「そりゃいいな? 俺にも肉でも持って来い! ガッハッハア!」
「この2人には敵わんなぁ? ウチは酒がいいでんな。日持ちもするし、いい商売になりそうやしな」
「酒ならワシらにもっ!」
「ゴダンだけじゃなくライゼルにエティゴーヤまで……。分かったよ」

「ユウトちゃ~ん! なんでアタシを連れていってくれないの~? 今でも間に合うわよ? アタシを妻として――」

 ピシャン!

「いった~~い!」
「リーファ様! もう少し女王たる自覚をお持ちください!」
「……相変わらずだな」

 ローレッタは……?
 よし、案の定、スマホを忍ばせた人形を持っているアニタを追いかけ回している。

「だ――許婚いいなずけ殿」

 ピシャーッ!

「痛っ! おい、旦那様とは言ってないだろ!」
「だいたい同じ意味じゃろっ!」

「……気をつけてね。あなた」

 バシーンッ!

「グエッ!」
「メルティナー! それもダメじゃ! 何なのじゃ2人して」
「私にだけ強くない? ……でも悪くない」

「…………」


 何だかんだ、来てくれた連中の見送りを受けた。
 彼らに危険が及ばないように距離を取って、改めてミケ・アニカ・アニタ・ピルムの顔を見渡す。

「よしっ! 転移扉作るぞ?」
「うむ!」「「うん」」[はい]

「地球に行くぞ?」
「うむっ!」「「うん」」[はい]

「ピルムは初めてだな?」
[はい]
「――おい! ユウト! いつまで焦らす気じゃ、早うせぬか!」
「お、おう」

 離れた場所で見送ってくれる連中に、改めて「じゃあ皆さん、行ってきまーす」と挨拶を送って、と。

「《ディメンショナル・トランジション》!」

 熟練度も上がり、一般的なドアのサイズで安定している。

「俺はこれを、ドコ・ディー・モドゥーアと名づけようと思う」
「――そんな事はどうでもよい!」
「……」

 俺達は前もって決めていた並び順――ミケを先頭にアニタ・アニカ・ピルム・俺の順に並び、前後ではぐれないように手を握る。

「じゃあ行こうか! みんなで地球へGO!」
「「「[ おーっ! 」」」]


******その後

 ミケを先頭に一列になって神社に出たら、急におっかない白狐がやって来て、「京から来た」だの「みけつを心配した」「貴様がみけつをそそのかしたのか!」だのと絡まれて、何とか解決したり――


 その後買い物中に家電量販店のテレビで、「本日、中央アジアを中心に各国をまとめ上げたウィローズ連邦国に核保有国が加入しました。これで、ウィローズ連邦国は軍事・経済共に超大国の仲間入りとなりました。我が日本国の今後の動向が注目されます」なんて言う、まるで浦島太郎にでもなったかのような、全く知らないニュースを見た。

 そのままテレビを見ていたら、そのウィローズ連邦の盟主が驚くべき事に一個人で、しかも元日本人だとアップで写されていて、俺とミケはそれを見て「ルクラのホテルのオーナーじゃないか!」と、またも驚いた。

 日本とか俺の地元に影響無いなら良いかと思っていたら、ソイツが何故かカストポルクスのステータスを持っていて、且つSランクスキル【カリスマ】で人心を掌握しょうあくする、野心丸出しの奴だったから懲らしめたり――


 ピルムがいるから、天然の温泉の湧く人里離れた秘境でキャンプして月を見ていた時に時に、「あれ? 次元を移動できるくらいなんだから、月なんて軽く行けるんじゃね?」と思いついた。
 実際に月に行って、突き立ってたどこかの国の旗2本? を抜いて、代わりにアニタがお絵かきしたシーツを敷いて固定して戻って来た。

 そしたら、世界の月愛好家にバレて世界中で大騒ぎになったり、月で人化が解けたピルムの足跡をネット民に発見されて、余計大騒ぎになったり――


 カストポルクスに帰ってからもみんなで他の星に転移してみたり――

 生命反応のある他の次元の星に転移して探検したり――




 スマホを手に入れて……こっちの世界に来てもう10数年経ったか。
 俺はスマホを手に入れるずっと前から思い続けてきた事があった。
 
 例え1人であっても、面白可笑しく暮らしたい、と。

 今は、一人どころか、俺とミケ・アニカ・アニタ・ピルムの5人だ!
 5人で面白可笑しく暮らせている。

「……俺は幸せ者だ」

「何じゃ、急に? ユウトも変な事を言うのう」
「ユウトさんだけじゃありませんよ? 私達も幸せ者です」
「そ~そ~。もうすぐになるんだよ? もっと幸せになれるよ?」
[はいっ! 私もそろそろ人語が話せそうです。旦那様と人語で愛の語らいを出来る日が楽しみです。きゃー!]

「そうだな。これからもみんなで面白可笑しく暮らしていこうな?」
[はいっ!]
「うんっ!」
「はい」
「もちろんじゃっ!」


                                      【完】
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