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第3章 カストポルクス、真の敵。
第101話 メルガンとメルティナ、どうする?
しおりを挟む「この鎖と首輪……。俺とスマホとアニカの光属性魔法で、色々試してみるか? あとアニタの《デリートマジック》もいいかもな」
「そうですね。皆さん高レベルの魔法を使えますしね」
ニアも否定しない所を見るに、ある程度期待はできるか……
改めてメルガンとメルティナを観察すると、それぞれに首輪がはめられている。
首輪には鎖が繋がれ、鎖は2本。
闇雲に魔法を使わないで、少し考えるか。
俺は【魔法大全】が〈9〉からしばらく上がってないから、光魔法も《ピュリフィケーション》までしか使えない。
もう少しで上がりそうな気がずっとしているんだが、なかなか上がらないんだよなぁ……
「アニカは光属性魔法のレベル、〈10〉だろ? 使えそうか?」
「《エクソシスム》と《リザレクション》ですけど……、体感としては全く使える気がしません。発動すら怪しいですよ?」
レベルや技量が高くても、魔力量の問題があるのか……最悪魔力を使うだけで発動しないって感じになるんだろうな。
それにしても《エクソシスム》って……。闇魔法が〈10〉になって使える《デモニックシフト》の対抗魔法だよな。
黒いドラゴンが暴れたり、モンスターや人心を狂わせるのも、これに近いのかもな。
「――はっ! アニタ! ちょっと」
ミケと2人で、ドラゴン姿で動けないピルムにちょっかいをかけていたアニタを呼ぶと、駆け寄ってきた。
「なあに?」
「無属性魔法〈10〉って事は、次元転移使えるんじゃないの?」
「死んじゃう! なんかねぇ……ぜったい無理そう!」
「そ、そっか。でも《デリートマジック》は大丈夫だろ?」
「うん! でも魔力をいっぱい使ってるみたい。疲れちゃう~」
色々考えている内に頭がぐちゃぐちゃになってきたので、ひとまず何かやってみる。
「アニカに《エクソシスム》を使ってもらって、スマホで《ピュリフィケーション》、その後に俺とアニタで《デリートマジック》ってのをやってみよう。何も起こらなかったら、その時また考えるわ」
俺とアニカとアニタ、3人ともブッ倒れた場合に備えて、ピルムに人化してもらってミケと一緒に俺達の護りに入ってもらう。
「じゃあやるぞ!」
打ち合わせ通りにやってみたら、なんと! 鎖がただの鎖になった。
代償にアニカとアニタがヘロヘロになったが……
鎖を破壊し、メルガンとメルティナは首輪だけになった。首輪に関しては何も変化が無いようだ。
2人の処遇に関して、大量の魔力を消費してしまい座りこんでいるアニカにもう1度確認すると、やっぱり話を聞いてから決めたいとの事だ。
アニタはヨロヨロしながら、ミケとピルムの方へ歩いていった。
自分でやっておきながら難だがメルガンの傷が酷いので、話を聞けるように少し回復してやり、2人を起こす。
「ううっ」
メルガンが呻き声を発すると、メルティナも意識を取り戻した。
「おっ! お姉様!」
「う……うっ」
メルティナがメルガンを抱き上げ、回復させているが、俺達はまだ眼中に入っていないようだ。
「気がついたようだな」
俺が声をかけると、メルティナがメルガンを守るように抱き寄せて、俺の方に目を向けた。
メルガンも意識がはっきりしてきたようだ。目もしっかりと開いている。
「……メルティナ」
「お姉様」
「俺達にはお前たちを攻撃する気は無い……今のところはな。何があったか覚えているか?」
「おぼろげだが……」
「――お姉様!」
「いいのだ、メルティナ。私は負けたのだ……」
「……お姉様ぁ」
そうしてメルガンが語り始めた。
次元転移門が閉じられた後、テミティズの裏切りに遭ってからは、テミティズに身体や思考の大部分を握られていたらしい。
「先程のハウラケアノスに鎖を握られた時に至っては、ほんの少しの意識を残してほぼ支配された」
だろうな、魔法メインであろうメルティナが物理攻撃に出る位だからな。
「その時の事も覚えているのか?」
「ああ、見えていたモノを覚えている程度だ。――だが!」
急にメルガンの声が大きくなり、少し顔を紅潮させながら言葉を続けた。
「キ! き、貴様にやられた事は、お、覚えて……いる」
所々声を上ずらせながら言うということは、よほど悔しいのだろう。
そして、メルガンは俺達に「ちょっと待っていろ!」と言って、メルティナとヒソヒソ話を始めた。
反撃の相談だったらアニカとアニタがヘタっててヤバいので、身構えておく。
メルガンは、メルティナとのヒソヒソ話を終えて、俺達に向き直った。
「キッ貴様は……わ、我らのぉ、ダッ旦那様だ!」
「……悪くない」
メルガンもメルティナも顔を真っ赤にしている。
「「…………」」
「「……はあっ!?」」
俺とアニカの声を聞き、ミケとアニタが「どうした?」とやってきた。……ピルムも駆け寄ってくる。
「こ、この男は我らの旦那様だと言ったのだ!」
「……悪くない」
耳まで真っ赤にして、何言ってるんだ?
「ほぉう? お主ら、自分の立場をわきまえずに何を言うか!」
ミケの手からはバチバチと火花が散る。
「な、なんだそれは! わ、我らはただ、我らより強き者の番になると言っているだけだ!」
「……悪くない」
「……なんだよそれっ! お前らはピルムか!」
俺は「ピルム」と言ったことで思い出した。
「おいピルム! 離れ――」
ボワンッ!
「ろぅおー!」「「きゃー」」「お姉様ー!」「おのれ~ピルムー!」「いえ~い!」
俺達は、ろくに動けない状態でピルムに弾き飛ばされたメルガンとメルティナを回収しする。
ミケはメルガンの足を掴んでズルズルと引きずって来た。
「貴様! 私を引きずるなど……何をする!」
怒るメルガンに慌ててメルティナが耳打ちした。
「何!? コイツがハウラケアノスと互角にやり合ってただと?」
埒が明かないので、肝心のダンジョンを作った経緯を聞く。
「で、お前が次元転移門を作らせたんだな?」
「あ、ああ。いつだったか、テミティズとハウラケアノスが『バハムートの魂の居場所を掴んだ』と言ってきて、おまけに禁忌中の禁忌である《ゲート・オブ・ディメンショナルトランジション》の魔法書を何処からか見つけて来たのだ」
「禁忌の魔法書……」
「そうだ。それを突きつけられれば、誰でも復讐に思い至るはずだ」
「お姉様……」
「私が魔王になって以来、一向に掴めなかったバハムートの行方――それも異なる世界だという情報を掴み、更にそこへ行く為の禁忌の魔法書まで目の前に吊り下げられたのだ。飛びつかずにはいられまい」
「お姉様……」
確かに、情報と手段を見せられると、そうなるか……
「いずれにせよ、我らの命は旦那様の手の中だ」
「……悪くない」
「ならん!」「「ダメー!」」
「そうだ、勝手に決めるな。……それと、メルティナは『お姉様』と『悪くない』しか言えないのか!」
「……悪くない♪」
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