上 下
91 / 121
第3章 カストポルクス、真の敵。

第90話 ドラゴンの人化と魔人族の異変。

しおりを挟む

「ピルムの人化になんの問題があるんだ?」
「うむ。大問題がある。のう、2人とも?」
「「うんうん」」

 アニカとアニタも大きく頷いている。

「だから、なんだよ。早く教えてくれよ」
「わかったわかった。まず、メスじゃということ。そして……どうせ同じじゃろうから、3人揃って言うぞ?」
「「うん」」
「せーの!」

「大きさじゃ」「見た目です」「なかよしになれるかな~?」

[…………]
「……。揃ってないじゃないか!」

 まぁ、ミケとアニカは近いが、アニタは仲良くなれるか心配なんだな……
 3人揃わず気まずそうなミケが、続ける。

「と、とにかく! 条件があるのじゃ!」
[条件ですか?]
「うむ! アニタより小さくなるのじゃ!」
[ええー!?]

 出会った頃より少し身長が伸びた感じがするとはいえ、120cm無いアニタよりも小さくなれって?

[私ドラゴンなんです! ユウト様の大きさにもなれるかどうか心配なのに……アニタ様より小さくだなんて!]
「今のサイズの貴様からしたら、そんなに変わらんじゃろ! やれ!」

 なんて強引なミケの論理……

[が、頑張りますけど……失敗しても怒らないでくださいね!]

 ピルムはそう言うと、目を閉じて集中しながら体に力を込めた。

 ぐっ! ググググッ、ギュ~~!

「「「「おお~!」」」」

 まずサイズが小さくなり、手足が伸び、顔も変わっていく。そして、肌も鱗からヒトの肌に近づいていく。

「「「「おお~!」」」」

 緩くウェーブがかかった茶色い髪が、身長と変わらないんじゃ? という位長い。
 ドラゴンの中でも美人と言われるのが納得できるほど、人化しても目鼻立ちが整っている。
 その目は人とは違い、透き通るような金色? 黄色? の眼球に、瞳孔が縦に長い瞳をしている。

「「おお~!」」

 俺とアニタは、ピルムの変わり様に驚く。

 だけど、やっぱり裸!!

 急いでストレージから俺のタンクトップを出して、アニタに手伝ってもらって着せると、ワンピースを着ている様になった。

 シャツを着せて一安心と思っていたが、ミケとアニカは「ぐぬぬ」という表情をしちゃってる。

「どうしたんだアニカ?」
「……すぎます」
「ん?」
「美人すぎます!」

[い、いえ! これは皆さんを見て真似たんです! 皆さんが美人ですからこうなったんです!]
「えっ!? ……そうなの?」

 ピルムの言葉にアニカも気を良くしたようだ。ちょっと赤くなったりしちゃって。

「……で、ミケは?」
「ぐぬ~! その髪の色はなんじゃ! まるでアニカ達と3姉妹ではないか!」
[色は大地の色なので変えられませんよ~]
「何ぃ!? 変えられぬのなら剃ってしまえ!」
[そんなぁ~! あ、でも人化のレベルが上がれば変えられると思いますよ。それに、高レベルになると人の言葉も話せるようになるかもしれません]

 確かに今の人化は、パッと見は人に見えるが、手足の爪はドラゴンっぽいし背中部分は鱗が残っていたし、何より……まだ大きな尻尾がある。
 もちろんドラゴンの時とは比べるべくも無く小さいが、今の身体にしては大きい。

「そんなもんかの~」
「そうだろ。ミケみたいに姿を消せるわけでもないしな」

 バイーンッ! ビリッ!

 ……ピルムの姿が元に戻ってしまい、俺のタンクトップは無残にも散ってしまった。

「「「「……」」」」
[なんか、すみません……]


 色々あったが、気を取り直して魔大陸へ向かう。

 見えているのは、魔大陸の北東部で、魔大陸の角だ。
 自然というか森もあるにはあるが、森以外には緑が少ない。草花が無い。
 基本的に大地は赤茶けていて、粘土質の大地のようだ。大きな岩もゴロゴロしていて、赤い砂も舞っている。

「ん? なんか騒ぎが起こってるな」

 魔大陸に入って早々、何かの襲撃を受けている集落を見つけた。
 黒煙や土煙りが舞い、怒声や悲鳴が響いている。

「なぁ、アレって魔人族同士だよな?」
「そのようじゃな」
「一方的に見えますよ?」
「よわい者イジメみたいだね~」

 魔人族同士、おそらく集落の者を外の者が攻め立てている。
 容赦が無く、死人も出ている。ってか、滅ぼしにかかってるな、アレは。

 認識阻害をかけて少し近づくと、声もはっきりと聞こえてきた。
 しかし、巨体のドラゴンがいるのにも気づかないなんて、改めて《オブストラクション》ってすごいな。

「やめろー! ここはメルガン様もお認めになった場所だ! 止めるんだ!」
「うるせぇ! その魔王様の命令で来てんだよ~、オレたちゃよ~。黙って死ねやー!」
「そ、そんな……」

「俺達に関係ないとはいえ、理不尽に聞こえるな」
「そうじゃのぅ。気分がいいものでは無いのう」
「助けてやるか?」
「仕方なかろう」
「よし、いくぞ! まずはピルムだ!」
[はい! ――って? え? 私だけですか?]

 ピルムが戸惑っている。

「そうだ」
[どうしてでしょう?]
「お前は俺達の力を身をもって知っているが、俺達は『決意』後のお前の力を知らないからな。早くしないと弱い方が全滅しちゃうぞ!」
[は、はい! わかりました!]

 ピルムが集落に急降下して行った。
 まずは急降下で、両者の間に割って入り(数人は踏み潰したようだが)、【大地のいばら】で広範囲を突き上げた。
 “ドラゴンの巣”で見せた棘より大きくなっている。

「おお、やるな」
「まずまずじゃ」
「あれだけ広範囲攻撃できるといいですね」
「アニタも行きたーい!」

「ぎゃぁ~! ドラゴン!」
「なんで俺達の方だけ!」
「落ち着けー! 囲んでやっちまえ~」

 体勢を立て直される前に制圧するか。

「よし! 俺達も行って、一気に制圧するぞ!」
「「「おー!」」」


 制圧自体はすぐに終わった。
 しかし、集落の者は、同族の次はヒト族とドラゴンか! と、身構えている。

「わ、我らを殺したところで何も無いぞ! ど、どういうつもりだ!」

 集落の老魔人の1人が、恐る恐る聞いてきた。

「違う違う。お前達が理不尽にやられているようだったから、出来る範囲で助けただけだよ」
「ほ、本当か!」
「本当に決まってるだろ? 嘘だったらお前達が殺されてから来てるよ」

「……それもそうだな。取り乱してすまなかった。助けてくれてありがとう」

 火が出ている所は消してやり、がれきを撤去してやって、話を聞く。

「見た限りじゃ、この集落には年寄りとか、やせ細った奴、酷いケガや部位欠損の魔人ばかりだが?」
「そうだ、力がモノを言う魔人族の社会で、元の居場所にいられなくなった者がやっと辿り着くのが、この捨てられた村だ」

「ここはそういう奴ばっかりなのか」
「そうだ。同じような集落が魔大陸の他の場所にも有るのかもしれんが、それでも多くの弱者はこの地に辿り着けすらしないがな……」
「どうりで一方的にやられていたわけだ」
「ああ、今までは、メルガン様がここの存在をお許しくださっていたが、ここひと月ほどで方針がお変りになったようで、立て続けにこのような目に遭っている」

 今日撃退できたところで、根本的な解決にはならないってことか。

「ユウトよ、コソコソしておった奴を拾ったぞ?」
「いてぇ! なにしやがるっ、この獣人が! ァアアアアアいていててて!」

 ミケが魔人を1人拾って、締め上げながらやってきた。

「この集落の魔人か?」
「いいや。ここを攻めてきた者だ」
「テメエ! 同族を売りやがったな! 覚えてやがあああああああいだだだだ!」

 俺は、刀をチラつかせながら脅しをかける。

「ちょうど良かった。色々聞きたい事があるんだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

異世界で買った奴隷がやっぱ強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
「異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!」の続編です! 前編を引き継ぐストーリーとなっておりますので、初めての方は、前編から読む事を推奨します。

処理中です...