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第3章 カストポルクス、真の敵。
第90話 ドラゴンの人化と魔人族の異変。
しおりを挟む「ピルムの人化になんの問題があるんだ?」
「うむ。大問題がある。のう、2人とも?」
「「うんうん」」
アニカとアニタも大きく頷いている。
「だから、なんだよ。早く教えてくれよ」
「わかったわかった。まず、メスじゃということ。そして……どうせ同じじゃろうから、3人揃って言うぞ?」
「「うん」」
「せーの!」
「大きさじゃ」「見た目です」「なかよしになれるかな~?」
[…………]
「……。揃ってないじゃないか!」
まぁ、ミケとアニカは近いが、アニタは仲良くなれるか心配なんだな……
3人揃わず気まずそうなミケが、続ける。
「と、とにかく! 条件があるのじゃ!」
[条件ですか?]
「うむ! アニタより小さくなるのじゃ!」
[ええー!?]
出会った頃より少し身長が伸びた感じがするとはいえ、120cm無いアニタよりも小さくなれって?
[私ドラゴンなんです! ユウト様の大きさにもなれるかどうか心配なのに……アニタ様より小さくだなんて!]
「今のサイズの貴様からしたら、そんなに変わらんじゃろ! やれ!」
なんて強引なミケの論理……
[が、頑張りますけど……失敗しても怒らないでくださいね!]
ピルムはそう言うと、目を閉じて集中しながら体に力を込めた。
ぐっ! ググググッ、ギュ~~!
「「「「おお~!」」」」
まずサイズが小さくなり、手足が伸び、顔も変わっていく。そして、肌も鱗からヒトの肌に近づいていく。
「「「「おお~!」」」」
緩くウェーブがかかった茶色い髪が、身長と変わらないんじゃ? という位長い。
ドラゴンの中でも美人と言われるのが納得できるほど、人化しても目鼻立ちが整っている。
その目は人とは違い、透き通るような金色? 黄色? の眼球に、瞳孔が縦に長い瞳をしている。
「「おお~!」」
俺とアニタは、ピルムの変わり様に驚く。
だけど、やっぱり裸!!
急いでストレージから俺のタンクトップを出して、アニタに手伝ってもらって着せると、ワンピースを着ている様になった。
シャツを着せて一安心と思っていたが、ミケとアニカは「ぐぬぬ」という表情をしちゃってる。
「どうしたんだアニカ?」
「……すぎます」
「ん?」
「美人すぎます!」
[い、いえ! これは皆さんを見て真似たんです! 皆さんが美人ですからこうなったんです!]
「えっ!? ……そうなの?」
ピルムの言葉にアニカも気を良くしたようだ。ちょっと赤くなったりしちゃって。
「……で、ミケは?」
「ぐぬ~! その髪の色はなんじゃ! まるでアニカ達と3姉妹ではないか!」
[色は大地の色なので変えられませんよ~]
「何ぃ!? 変えられぬのなら剃ってしまえ!」
[そんなぁ~! あ、でも人化のレベルが上がれば変えられると思いますよ。それに、高レベルになると人の言葉も話せるようになるかもしれません]
確かに今の人化は、パッと見は人に見えるが、手足の爪はドラゴンっぽいし背中部分は鱗が残っていたし、何より……まだ大きな尻尾がある。
もちろんドラゴンの時とは比べるべくも無く小さいが、今の身体にしては大きい。
「そんなもんかの~」
「そうだろ。ミケみたいに姿を消せるわけでもないしな」
バイーンッ! ビリッ!
……ピルムの姿が元に戻ってしまい、俺のタンクトップは無残にも散ってしまった。
「「「「……」」」」
[なんか、すみません……]
色々あったが、気を取り直して魔大陸へ向かう。
見えているのは、魔大陸の北東部で、魔大陸の角だ。
自然というか森もあるにはあるが、森以外には緑が少ない。草花が無い。
基本的に大地は赤茶けていて、粘土質の大地のようだ。大きな岩もゴロゴロしていて、赤い砂も舞っている。
「ん? なんか騒ぎが起こってるな」
魔大陸に入って早々、何かの襲撃を受けている集落を見つけた。
黒煙や土煙りが舞い、怒声や悲鳴が響いている。
「なぁ、アレって魔人族同士だよな?」
「そのようじゃな」
「一方的に見えますよ?」
「よわい者イジメみたいだね~」
魔人族同士、おそらく集落の者を外の者が攻め立てている。
容赦が無く、死人も出ている。ってか、滅ぼしにかかってるな、アレは。
認識阻害をかけて少し近づくと、声もはっきりと聞こえてきた。
しかし、巨体のドラゴンがいるのにも気づかないなんて、改めて《オブストラクション》ってすごいな。
「やめろー! ここはメルガン様もお認めになった場所だ! 止めるんだ!」
「うるせぇ! その魔王様の命令で来てんだよ~、オレたちゃよ~。黙って死ねやー!」
「そ、そんな……」
「俺達に関係ないとはいえ、理不尽に聞こえるな」
「そうじゃのぅ。気分がいいものでは無いのう」
「助けてやるか?」
「仕方なかろう」
「よし、いくぞ! まずはピルムだ!」
[はい! ――って? え? 私だけですか?]
ピルムが戸惑っている。
「そうだ」
[どうしてでしょう?]
「お前は俺達の力を身をもって知っているが、俺達は『決意』後のお前の力を知らないからな。早くしないと弱い方が全滅しちゃうぞ!」
[は、はい! わかりました!]
ピルムが集落に急降下して行った。
まずは急降下で、両者の間に割って入り(数人は踏み潰したようだが)、【大地の棘】で広範囲を突き上げた。
“ドラゴンの巣”で見せた棘より大きくなっている。
「おお、やるな」
「まずまずじゃ」
「あれだけ広範囲攻撃できるといいですね」
「アニタも行きたーい!」
「ぎゃぁ~! ドラゴン!」
「なんで俺達の方だけ!」
「落ち着けー! 囲んでやっちまえ~」
体勢を立て直される前に制圧するか。
「よし! 俺達も行って、一気に制圧するぞ!」
「「「おー!」」」
制圧自体はすぐに終わった。
しかし、集落の者は、同族の次はヒト族とドラゴンか! と、身構えている。
「わ、我らを殺したところで何も無いぞ! ど、どういうつもりだ!」
集落の老魔人の1人が、恐る恐る聞いてきた。
「違う違う。お前達が理不尽にやられているようだったから、出来る範囲で助けただけだよ」
「ほ、本当か!」
「本当に決まってるだろ? 嘘だったらお前達が殺されてから来てるよ」
「……それもそうだな。取り乱してすまなかった。助けてくれてありがとう」
火が出ている所は消してやり、がれきを撤去してやって、話を聞く。
「見た限りじゃ、この集落には年寄りとか、やせ細った奴、酷いケガや部位欠損の魔人ばかりだが?」
「そうだ、力がモノを言う魔人族の社会で、元の居場所にいられなくなった者がやっと辿り着くのが、この捨てられた村だ」
「ここはそういう奴ばっかりなのか」
「そうだ。同じような集落が魔大陸の他の場所にも有るのかもしれんが、それでも多くの弱者はこの地に辿り着けすらしないがな……」
「どうりで一方的にやられていたわけだ」
「ああ、今までは、メルガン様がここの存在をお許しくださっていたが、ここひと月ほどで方針がお変りになったようで、立て続けにこのような目に遭っている」
今日撃退できたところで、根本的な解決にはならないってことか。
「ユウトよ、コソコソしておった奴を拾ったぞ?」
「いてぇ! なにしやがるっ、この獣人が! ァアアアアアいていててて!」
ミケが魔人を1人拾って、締め上げながらやってきた。
「この集落の魔人か?」
「いいや。ここを攻めてきた者だ」
「テメエ! 同族を売りやがったな! 覚えてやがあああああああいだだだだ!」
俺は、刀をチラつかせながら脅しをかける。
「ちょうど良かった。色々聞きたい事があるんだ」
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