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第3章 カストポルクス、真の敵。
第89話 『ドラゴンの決意』って重すぎるんですけど!?
しおりを挟む俺達は“ドラゴンの巣”を発って、魔大陸に向かっている。
ユロレンシア大陸から“ドラゴンの巣”への距離よりも、“ドラゴンの巣”から魔大陸の方が近いので割とすぐに魔大陸が見えてきた。
ただ……ピルムがついて来ている。
「おのれ~! 何でついてくるんじゃ! 撃ち落とすぞ!」
[やっ! やめてください~。ドラゴンの決意なのです。どうかお願いします~!]
事ある毎にドラゴンの決意って言ってるけど何なんだ?
ミケも気になっているのか、イライラしている。
「さっきから聞いておれば、決意決意と……。その『ドラゴンの決意』って何なのじゃ!」
[えっ!? ご存じなかったのですか?]
ドラゴンの表情については詳しくないが、ピルムが意外というような驚きの顔で聞いてきた。
「知るわけなかろうが! 『ドラゴンの決意』はドラゴンのモノじゃろ! 我らに関係あるまい」
「「うんうん」」
[…………]
「ユウトよ、お主もなんか言え!」
俺に振るなよ……
「俺も気になってたんだよ。何だ? 『ドラゴンの決意』って」
すると、ピルムが大きな手の人差し指どうしを器用に合わせて、もじもじと動かしながらしゃべり出す。
[あの……その……ですね、我々ドラゴンが戦闘で完敗した時とか、命を救われたりして恩義を感じる出来事があった時にですね。――――]
ピルムが言うには、そういった時にその相手を自分が従うに相応しいと判断し、実際に従うと決めた場合、『ドラゴンの決意』が発動するそうだ。
何を言っているのか解らんが……
俺達は、ピルムらドラゴンをいとも簡単に倒した上に、溺れているところを全員助けて治療まで施した。
だからピルムは、最大限の恩義を感じ『ドラゴンの決意』をしたそうだ。
で、『ドラゴンの決意』が発動して、その決意を相手が受け入れた場合、決意が叶ったとしてそのドラゴンは1段階強くなれるそうだ。
「叶わなかったら?」
[……生命の終わりを迎えます]
「はっ!?」
[死にます。……死んじゃうんですぅっ!]
順調に空を飛びながら話していたが、自然と止まってしまう。
そして、俺達4人はみんなピルムを見る。
「「「「……重い!」」」」
「思いっきり重いじゃねえか!」
「貴様ぁー! そんな大事なこと、なに勝手に決意しとるんじゃーー!」
[だってぇ……皆さん知ってると思ってぇ]
なんたる行き違い。
「ニア、本当なのか?」
俺のポケットの中のスマホからニアが現れると、ピルムが驚いた。
[め! 女神ディスティリーニア!]
「ユウトさん、本当です。ドラゴンには本能的に備わっているようです。多くの場合は発動する機会さえ訪れませんが、事実です」
「お姉ちゃん、ピルム死んじゃうの?」
「う、うん」
「かわいそ~」
「う、うん」
「流されるでないぞ、アニカ、アニタ! こ奴はメスじゃぞ?」
「「あ、そっか……」」
メスだから何だってんだよ?
[あの~、これでも私、ドラゴンで一番のベッピンさんと言われているんです!]
「余計ならん!」
「「うんうん」」
[え~~~]
……もし断って死なれても寝覚めが悪いしなぁ、しょうがないな。
「わかったよ、連れていくよ。みんなもいいな?」
「うぬ~、仕方なかろう」
「そうですね」
「いいよ~」
みんなの同意が取れたところで、ピルムの身体が光り始めた。
[わぁ~! 力が漲ってきました!]
どうやら本当に1段階上がったようだ。
「どれ、ピルム。《アナライズ》してもいいか?」
[はい、どうぞ]
名前 : ピルム
種族 : ハイドラゴン種
年齢 : 1
レベル: 〈1〉
称号 : 決意の成就せしドラゴン
系統 : 大地
スキル: S・人化〈1〉 A・大地の棘〈5〉
「おお! おっ? ハイドラゴン? レベル1?」
「おのれ~! 我が0歳なのに……」
レベルの事や、ドラゴンとハイドラゴンがどう違うのか、ニアに聞いてみる。
「さきほど『ドラゴンの決意』が叶ったことで、1つ上の存在に成ったようですね。厳密にはダンジョンのモンスターが“成る”のとは意味が違いますけども」
「それで“ハイドラゴン”で、レベルも1なのか。でも括弧は?」
「括弧はスキルと同じで上限が10だからですが、ここからの上昇幅は大きくなるでしょう。今までのパワーやスピードを元に更に強くなるという事です」
「ピルム、今までのレベルは?」
[知りません。見てませんでしたから]
「……だろうな。ま、いいか。ついでだ、俺達もステータス確認しよう」
そういや3人のステータスって、こっちに出て来て以来見てないんじゃないか? ひと月ぶりくらいか?
名前 : ユウト ババ
種族 : 人族
年齢 : 24
レベル: 77
称号 : 世界を渡りし者 英雄
系統 : 武〈長剣〉 魔〈全〉 製作 商
スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉
A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐
B・探知〈7〉
名前 : ミケ
種族 : 白狐
年齢 : 0
レベル: 80
称号 : 世界を渡りし者 異界の神の眷族
系統 : 武〈拳・爪・獣〉 農
スキル: SS・操雷〈10〉 A・言語理解 A・感知〈4〉
C・火属性魔法〈8〉
名前 : アニカ クマル
種族 : 人族
年齢 : 10
レベル: 78
称号 : 世界を渡りし者
系統 : 武〈長柄〉 知識 魔〈光〉
スキル: A・言語理解 A・強靭〈10〉
C・槍技〈10〉 C・光属性魔法〈10〉
B・探知〈3〉 C・水属性魔法〈1〉
名前 : アニタ クマル
種族 : 人族
年齢 : 7
レベル: 79
称号 : 世界を渡りし者
系統 : 武〈短剣・弓〉 農 魔〈無〉
スキル: A・言語理解 A・感知〈10〉
C・短剣技〈10〉 C・無属性魔法〈10〉
C・風属性魔法〈1〉
「なっ!? レベルが超されてる~!」
確かアニカとアニタはレベル76だったはず……。その高レベルから2つも3つも上げるって、“氾濫”の時に倒しまくったのかな?
「それに別属性の魔法まで使えるようになってるのか?」
「できれば内緒にしてたかったですけど……」
「ミケちゃんみたいにビックリさせたかったのに~!」
「お、おう。なんか……すまん」
[ひゃ~! こんな化け物に無謀にも突っかかっていったんですね。私達……]
ピルムがばけも――モンスターだろ!
「それにしても、3人とも凄いな。ミケは順調過ぎるくらいに適性のない火属性魔法を上げているし。特にアニカとアニタは新しい魔法だもんな」
3人に言葉をかけると、照れくさそうにしている。
言っててなんだが、適性のない火魔法を上げるって……えげつない使い方してたんじゃないよな? ……聞けない!
「さて、残る問題は1つじゃ」
「どうしたんだ、ミケ?」
問題なんてあるか?
「ピルムの人化じゃ!」
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