85 / 121
第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。
第84話 フリス、降伏す。
しおりを挟む******城外、ミケ
ぼわんっ!
「ふ~、うがいしたいのじゃ。ぺっぺっ!」
「おおー!」
「ん?」
我が人の姿に戻っただけでどよめいておる。何じゃ?
「ミケ殿、よくやってくれたね。凄い活躍だね」
キースとやらまで何じゃ?
「これくらいで何を言っておるのじゃ? それよりこ奴じゃ。飛びおったぞ?」
「ぐ~~! ムー!」
「……これは、ドラゴニュートだね。龍人だ」
「龍人?」
ニアが言っておったな、この世には龍人という種族もおると。
「そう、彼らは自らもドラゴンの血を引く種族で、ドラゴンを使役する事ができるんだ。そうして、さっきみたいにドラゴンを引き連れて戦うのさ」
「こんな小さなドラゴンを使役してどうするんじゃ? 役に立たんじゃろ? のう? アニカ、アニタ」
「うん!」
「そんなことないと思いますよ、ミケさん。荷物運びくらいにはなるんじゃないでしょうか?」
我やアニカらの言ったことに、周囲の者共がいちいち驚いておる。
「……。き、君達とは価値観が違うようだね……。アニカさんも凄い活躍だったし」
「ダンジョンで戦ったのに比べたら、小さいし迫力もないですよ?」
「……」
「とにかくじゃ、こ奴を逃がすでないぞ? 何でも口を割らせぬとな」
「む~! ムーー!」
「あー、それとユウトじゃがの、このドラゴンが現れた時に、怪しい気配が城の方に行きよったから、そっちに行かせたぞ」
「怪しい気配?」
「そうじゃ。ドラゴン共より危険な感じじゃった。じゃが、ユウトなら何とかしておるじゃろ。アニタに瓦礫をどけてもらって中に行ってみよ」
「あ、ああ、分かった。アムート殿と城に入ろう」
******謁見の間、ユウト
メルティナ……
魔人族、魔王配下ナンバー2がこんな所になんでいたんだ?
しかも、鎖に繋がれていたぞ?
それに、もう1人の女。あの男……
わからん! 何か異変でもあったのか?
「おい!」
「ん?」
あ、コイツがいたんだった。忘れてた。
「何だ? フリス」
「むっ! いや、助かったぞ」
「いや、お前が死のうが別に良かったんだがな。仮面野郎がヤバい連中そうだからやっただけだ」
「とにかくだ! よくやってくれた。貴様のこれまでの余に対する無礼も許してやろう」
何言ってんだ?コイツ。
「この勢いで、城外の愚民共を蹴散らして参れ! 褒美は思うがままだぞ?」
「……。何言ってんだ、お前? 俺も城外の愚民とやらだぞ?」
「なにぃ?」
「いいから、大人しくしてろ」
この転がってる連中はどうしようか。
「貴様ぁ! 余は国王だぞ!」
「もうすぐ“元”になるんだよ、お前は。国王のまま死にたいんなら、今ここで舌を切ってやろうか? “元”をつけてでも生きていたいんだったら黙ってろ」
「ぐっ!」
廊下の方が騒がしいと思ったら、アムートとキース達が来たようだ。ぞろぞろと騎士達を連れている。
「貴様はー!」
フリスはまだ騒ぐか……
「ユウト殿、これは?」
「魔人族の3人組がやったようだ。死んではいないが、どうする? 俺が回復してみようか?」
「魔人族!? それにこれは……数が数だから、後にしようか」
「ところで、城内にはフリス派の騎士達もいただろ? どうしたんだ?」
「私達、特にミケさん達がドラゴンを簡単に倒すところを見ていたらしくてね。……近寄っただけで降伏してきたよ」
「そうだったんだ? まぁ、ミケ達ならあれくらい簡単だったろうな」
「……やっぱり、そうなんだね」
「ん?」
俺とキースが話している内に、アムートと騎士は、フリスを取り囲んで、剣を突き付けていた。
「愚王フリスよ! 貴様の愚行、このアムート・エンデランスが断罪する! 命が惜しくば、即刻降伏しを宣言し、我が父バハムートより簒奪せし王権を私に返還せよ!」
「なっ! なっ。…………こ、降伏を宣言する」
アムートや騎士達、そしてキース達も姿勢を正した。
「私アムート・エンデランスは、フリスの降伏宣言を受諾する。剣を納め、フリスを拘束せよ」
「おおーーーーー!」
アムートの宣言が、謁見の間に響き、それに呼応して、騎士達も雄叫びをあげた。
勝利の決した瞬間だ。
城内の投降者の整理も終わり、そこら中に倒れている奴らに《リカバー》をかけていく。
意識を取り戻し、茫然と周りを確認して、状況を悟って肩を落とす者。
自分は巻き込まれただけだ、いわば人質だと騒ぐ者。
ただただほっと胸を撫でおろす者。様々だ。
この連中が、どう関与しているか、はたまた本当に巻き込まれただけなのかは、おいおい判明して行くだろう。
俺のやることはここには無いので、外にいるミケ達の元へ行く。
「あっ! ユウトお兄ちゃん!」
「おー、お疲れさん。終わったようだな」
城外の民衆にも、フリスの降伏が伝えられているようで、お祭り騒ぎだ。
「おい! ユウトよ! 乗れ!」
わざわざ白狐姿になったミケが、ぶっきら棒に言ってきた。
「ん? 何だよ、急に?」
「いいから我に乗るのじゃ!」
「あのね~、みけちゃんね~、アニタを乗せてくれたから、お兄ちゃんも乗せたいんだと思うよ? ね~?」
「ち、違うわ! ……いいから乗るのじゃ!」
「お、おう」
ミケは、俺を背に乗せて、辺りを1周した。
ミケに乗っている俺を見る民衆の目よ。
まるで、遊園地やデパートで動物の乗り物に乗っている大人を見るような生温かい視線だ。
俺を降ろすと、今度は恥ずかしがるアニカも乗せて1周している。
その後に、図々しく乗ろうとしてきた奴は蹴っ飛ばされていた。
「ふ~」
「どういう風の吹き回しだ?」
巫女姿に戻ったミケに聞いてみる。
「ど、どうでもいいじゃろ! それより、ジュースをくれ! ドラゴンを操っておった奴を捕まえて、咥えて連れてきたのじゃ! うがいはしたが、ジュースで口直しじゃ」
「お、おう」
メルティナを含む、3人の魔人族の事や、バハムートの記憶では対魔王連合にいた龍人が何故魔王軍と連携する様な事になっているのか、いろいろ疑問がある。
この世界に生き、彼らと長く対峙してきたキースに聞いてみたいが、今日のこの様子ではそれどころではないだろう。
俺達は途中でゴーシュを見つけて、一旦宿に戻って休んで明日また来ると伝言を頼んで、公都に帰った。
0
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
<完結>【R18】バレンタインデーに可愛い後輩ワンコを食べるつもりが、ドS狼に豹変されて美味しく食べられちゃいました♡
奏音 美都
恋愛
原田美緒は5年下の後輩の新人、柚木波瑠の教育係を担当している。可愛いワンコな柚木くんに癒され、萌えまくり、愛でる幸せな日々を堪能していた。
「柚木くんは美緒にとって、ただの可愛い後輩ワンコ?
それとも……恋愛対象入ってるの?」
「うーーん……可愛いし、愛しいし、触りたいし、抱き締めたいし、それ以上のこともしたいって思ってるけど。これって、恋愛対象?」
「なに逆に聞いてんのよ!
それ、ただの痴女じゃんっ!! こわいなぁ、年増の痴女……」
恋に臆病になってるアラサーと可愛い新人ワンコの可愛い恋のお話、と思いきや、いきなりワンコがドS狼に豹変して翻弄されるドキドキラブコメディー。
生真面目君主と、わけあり令嬢
たつみ
恋愛
公爵令嬢のジョゼフィーネは、生まれながらに「ざっくり」前世の記憶がある。
日本という国で「引きこもり」&「ハイパーネガティブ」な生き方をしていたのだ。
そんな彼女も、今世では、幼馴染みの王太子と、密かに婚姻を誓い合っている。
が、ある日、彼が、彼女を妃ではなく愛妾にしようと考えていると知ってしまう。
ハイパーネガティブに拍車がかかる中、彼女は、政略的な婚姻をすることに。
相手は、幼い頃から恐ろしい国だと聞かされていた隣国の次期国王!
ひと回り以上も年上の次期国王は、彼女を見て、こう言った。
「今日から、お前は、俺の嫁だ」
◇◇◇◇◇
設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
それを踏まえて、お読み頂ければと思います、なにとぞ。
R-Kingdom_6
他サイトでも掲載しています。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
記憶の国のアリス
赤松帝
ファンタジー
腰丈くらいの紅葉や楓、こどもが作ったくらいの大きさの築山、ひらひらとした尾びれが綺麗な赤い金魚が優雅に泳ぐ小さな池。
お伽話の世界の様に風情のあるこじんまりとした坪庭で目覚めた時、私は一切の記憶を失っていたーー。
ミステリアスな謎に包まれた螺旋の塔を舞台に、アリスは失った記憶の欠片を拾い集めるために冒険の旅を始める。
双子のマッド・クリエイター、哲学者のハリネズミ、塔の上から飛び降りるハンプティ・ダンプティ、ベートーヴェンとモーツァルトの胸像コンビ、あべこべコウモリ、透明カメレオン、告げ口好きなお喋り九官鳥、人面甲羅亀、ふわふわクラゲ、そして記憶の門の番人タイムキーパー。
摩訶不思議な住人たちとの出会いによって、徐々に記憶の世界の秘密が解き明かされていく。
シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜
ミコガミヒデカズ
ファンタジー
気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。
以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。
とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、
「儂の味方になれば世界の半分をやろう」
そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。
瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
魔王の右腕、何本までなら許される?
おとのり
ファンタジー
カクヨムでフォロワー5000人を超える作品に若干の加筆修正を行ったものです。
表紙はAIによる自動生成イラストを使用していますので、雰囲気だけで内容とは特にシンクロしていません。
申し訳ないですが、Ver.4以降も更新する予定でしたが今後の更新はありません。続きを読みたい方はカクヨムを利用してください。
Ver.1 あらすじ
親友に誘われ始めたGreenhorn-online
ハルマはトッププレイヤーの証である魔王を目指す親友を生産職としてサポートしようと思っていた。
しかし、ストレスフリーにひとりを満喫しながら、マイペースに遊んでいただけなのに次から次に奇妙なNPCのお供が増えていく。
それどころか、本人のステータスは生産職向けに成長させているだけで少しも強くなっていないはずなのに、魔王として祭り上げられることになってしまう。
目立ちたくないハルマは仲間を前面に出しては戦いたくなかった。
生産職のDEX振りプレイヤーであるハルマは、いかにして戦うことになるのか!?
不落魔王と呼ばれるまでの、のんびりプレーが始まった。
―― ささやかなお願い ――
ゲーム内の細かい数字に関しては、雰囲気を楽しむ小道具のひとつとしてとらえてくださいますようお願いします。
現実的ではないという指摘を時々いただきますが、こちらの作品のカテゴリーは「ファンタジー」です。
行間にかんして読みにくいと指摘されることもありますが、大事な演出方法のひとつと考えていますのでご容赦ください。
公開済みのパートも、随時修正が入る可能性があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる