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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。
第84話 フリス、降伏す。
しおりを挟む******城外、ミケ
ぼわんっ!
「ふ~、うがいしたいのじゃ。ぺっぺっ!」
「おおー!」
「ん?」
我が人の姿に戻っただけでどよめいておる。何じゃ?
「ミケ殿、よくやってくれたね。凄い活躍だね」
キースとやらまで何じゃ?
「これくらいで何を言っておるのじゃ? それよりこ奴じゃ。飛びおったぞ?」
「ぐ~~! ムー!」
「……これは、ドラゴニュートだね。龍人だ」
「龍人?」
ニアが言っておったな、この世には龍人という種族もおると。
「そう、彼らは自らもドラゴンの血を引く種族で、ドラゴンを使役する事ができるんだ。そうして、さっきみたいにドラゴンを引き連れて戦うのさ」
「こんな小さなドラゴンを使役してどうするんじゃ? 役に立たんじゃろ? のう? アニカ、アニタ」
「うん!」
「そんなことないと思いますよ、ミケさん。荷物運びくらいにはなるんじゃないでしょうか?」
我やアニカらの言ったことに、周囲の者共がいちいち驚いておる。
「……。き、君達とは価値観が違うようだね……。アニカさんも凄い活躍だったし」
「ダンジョンで戦ったのに比べたら、小さいし迫力もないですよ?」
「……」
「とにかくじゃ、こ奴を逃がすでないぞ? 何でも口を割らせぬとな」
「む~! ムーー!」
「あー、それとユウトじゃがの、このドラゴンが現れた時に、怪しい気配が城の方に行きよったから、そっちに行かせたぞ」
「怪しい気配?」
「そうじゃ。ドラゴン共より危険な感じじゃった。じゃが、ユウトなら何とかしておるじゃろ。アニタに瓦礫をどけてもらって中に行ってみよ」
「あ、ああ、分かった。アムート殿と城に入ろう」
******謁見の間、ユウト
メルティナ……
魔人族、魔王配下ナンバー2がこんな所になんでいたんだ?
しかも、鎖に繋がれていたぞ?
それに、もう1人の女。あの男……
わからん! 何か異変でもあったのか?
「おい!」
「ん?」
あ、コイツがいたんだった。忘れてた。
「何だ? フリス」
「むっ! いや、助かったぞ」
「いや、お前が死のうが別に良かったんだがな。仮面野郎がヤバい連中そうだからやっただけだ」
「とにかくだ! よくやってくれた。貴様のこれまでの余に対する無礼も許してやろう」
何言ってんだ?コイツ。
「この勢いで、城外の愚民共を蹴散らして参れ! 褒美は思うがままだぞ?」
「……。何言ってんだ、お前? 俺も城外の愚民とやらだぞ?」
「なにぃ?」
「いいから、大人しくしてろ」
この転がってる連中はどうしようか。
「貴様ぁ! 余は国王だぞ!」
「もうすぐ“元”になるんだよ、お前は。国王のまま死にたいんなら、今ここで舌を切ってやろうか? “元”をつけてでも生きていたいんだったら黙ってろ」
「ぐっ!」
廊下の方が騒がしいと思ったら、アムートとキース達が来たようだ。ぞろぞろと騎士達を連れている。
「貴様はー!」
フリスはまだ騒ぐか……
「ユウト殿、これは?」
「魔人族の3人組がやったようだ。死んではいないが、どうする? 俺が回復してみようか?」
「魔人族!? それにこれは……数が数だから、後にしようか」
「ところで、城内にはフリス派の騎士達もいただろ? どうしたんだ?」
「私達、特にミケさん達がドラゴンを簡単に倒すところを見ていたらしくてね。……近寄っただけで降伏してきたよ」
「そうだったんだ? まぁ、ミケ達ならあれくらい簡単だったろうな」
「……やっぱり、そうなんだね」
「ん?」
俺とキースが話している内に、アムートと騎士は、フリスを取り囲んで、剣を突き付けていた。
「愚王フリスよ! 貴様の愚行、このアムート・エンデランスが断罪する! 命が惜しくば、即刻降伏しを宣言し、我が父バハムートより簒奪せし王権を私に返還せよ!」
「なっ! なっ。…………こ、降伏を宣言する」
アムートや騎士達、そしてキース達も姿勢を正した。
「私アムート・エンデランスは、フリスの降伏宣言を受諾する。剣を納め、フリスを拘束せよ」
「おおーーーーー!」
アムートの宣言が、謁見の間に響き、それに呼応して、騎士達も雄叫びをあげた。
勝利の決した瞬間だ。
城内の投降者の整理も終わり、そこら中に倒れている奴らに《リカバー》をかけていく。
意識を取り戻し、茫然と周りを確認して、状況を悟って肩を落とす者。
自分は巻き込まれただけだ、いわば人質だと騒ぐ者。
ただただほっと胸を撫でおろす者。様々だ。
この連中が、どう関与しているか、はたまた本当に巻き込まれただけなのかは、おいおい判明して行くだろう。
俺のやることはここには無いので、外にいるミケ達の元へ行く。
「あっ! ユウトお兄ちゃん!」
「おー、お疲れさん。終わったようだな」
城外の民衆にも、フリスの降伏が伝えられているようで、お祭り騒ぎだ。
「おい! ユウトよ! 乗れ!」
わざわざ白狐姿になったミケが、ぶっきら棒に言ってきた。
「ん? 何だよ、急に?」
「いいから我に乗るのじゃ!」
「あのね~、みけちゃんね~、アニタを乗せてくれたから、お兄ちゃんも乗せたいんだと思うよ? ね~?」
「ち、違うわ! ……いいから乗るのじゃ!」
「お、おう」
ミケは、俺を背に乗せて、辺りを1周した。
ミケに乗っている俺を見る民衆の目よ。
まるで、遊園地やデパートで動物の乗り物に乗っている大人を見るような生温かい視線だ。
俺を降ろすと、今度は恥ずかしがるアニカも乗せて1周している。
その後に、図々しく乗ろうとしてきた奴は蹴っ飛ばされていた。
「ふ~」
「どういう風の吹き回しだ?」
巫女姿に戻ったミケに聞いてみる。
「ど、どうでもいいじゃろ! それより、ジュースをくれ! ドラゴンを操っておった奴を捕まえて、咥えて連れてきたのじゃ! うがいはしたが、ジュースで口直しじゃ」
「お、おう」
メルティナを含む、3人の魔人族の事や、バハムートの記憶では対魔王連合にいた龍人が何故魔王軍と連携する様な事になっているのか、いろいろ疑問がある。
この世界に生き、彼らと長く対峙してきたキースに聞いてみたいが、今日のこの様子ではそれどころではないだろう。
俺達は途中でゴーシュを見つけて、一旦宿に戻って休んで明日また来ると伝言を頼んで、公都に帰った。
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