82 / 121
第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。
第81話 想定外の敵影。
しおりを挟む今日も朝から包囲戦。
俺達が敷いた瓦礫のせいで、相手は城から打って出ることができない。
たまに外部と連絡を取る為に、鳥を飛ばしたり、《フライ》で飛び立つ騎士がいるが、俺とミケがことごとく打ち落としている。
情報も封鎖されているのだ。
「お兄ちゃ~ん! とお~くから兵隊さんが来てるよ~! あっちー」
アニタには、上空で敵襲がないか見張ってもらっている。
そのアニタが西からの敵を報せてきた。
北西から来るのはアムートの可能性、東からはディステの可能性があるが、それ以外は敵だ。
敵襲の報せがあれば、俺達が対応し、降伏するまで殺さないように痛めつける。
朝から3回出動し、頭目を捕まえてはゴーシュに引き渡している。
「また来たよー」
「どれどれ?」
今度は、なんと遠征騎士団だ。急を聞きつけどこかから戻ってきたのだろう。100人くらいか?
一応ゴーシュに伝える。
「何ですと!? 奴らが来た? 丁度いいぞい。今までのうっぷん、ワシに晴らさせてくれい」
ゴーシュは、もはやこれ以上、今の遠征騎士団には用が無くなったのをいいことに、クズ騎士共に制裁すると息まいている。
アニタも警戒だけで暇そうだったので、俺が代わって見張りに立ち、ゴーシュとアニタが遠征騎士団に対応する。
やり過ぎにだけは注意してもらいたい……。チラチラ見物させてもらうか。
「おい! ゴーシュ! このジジイ、仕事サボりやがったと思ったらこんな所にいたのか! 早く戻れ! この愚民共を蹴散らさねえと、俺達の生活がぶち壊しだ。やるぞ!」
「……何をぬかしておる! この若造どもが!」「が~!」
「なっ!?」
クズ騎士達が、ゴーシュ1人の気迫に押される。
「ワシが長年、貴様らの様なクズ共と行動しておったのは、まさに今日この日の為だ! 腐りきったお主達の性根、叩き折ってくれる!」
「る~!」
……折るのね。叩き直すんじゃなくて、折る……ね。
「ジジイ! テメェ、何言ってやがる。お前1人と……そこの……? ガキで何ができるってんだ! ぶっ潰すぞ!」
「……いこうか、アニタちゃん」
「うん! い~よ~」
怪しいので、改めて釘をさす。
「やり過ぎ禁止だよー!」
「おう!」「は~い!」
「フー。他愛もない相手だぞい」
「ね~? すぐ泣いちゃうんだもんね~」
顔面をパンパンに腫らして、涙にくれるクズ騎士共を見ていると、まだゼンデルヴァルトの方が根性あったような気がする……
ゴーシュは、満足げに遠征騎士団の団長を引きずって戻っていく。
戦闘を見ていたゴーシュの同志が100人余りの騎士達を次々に縛りあげ連行する。
そして、昼過ぎ。3時前だろうか。
遂にアムートとキースの軍が王都に到着した。
「キース様、アムート殿下、ようこそお越し下さいました。このゴーシュ、この日が来る事を心待ちにしておりました」
「ゴーシュ、これまで長きに渡っての潜入、ご苦労さま。感謝するぞ」
「き、キース様……ありがたきお言葉!」
「ゴーシュ殿、私からも礼を言わせてもらおう。ありがとう」
「そ、そんな! ここにアムート様をお迎え出来て、感無量ですわい。さっ! あと一押しですぞ!」
アムートは捕らえていた騎士に、退位・降伏勧告の書状を持たせ、俺がフライで連れていき、騎士ごと城内に落とした。
******王城
「おい! 近衛の団長! 朝からどこからも連絡がこないではないか! どうなっておる!」
王城の謁見の間には、要人が集まっている。
王城内には、文官・メイドなど下級の職員も大勢いたが、彼ら彼女らも騎士達によって1ヵ所に留め置かれていた。
いざという時の肉の壁にする為である。
中には逃げようとして斬り殺された者もいた。
「はっ、こちらから出した鳥や騎士達はことごとく撃ち落とされてしまいました……。おそらくこちらに来た鳥も落とされておりましょう」
「なにぃ~! 貴様、それで何をひとごとのように話しておる! どうにかするのだ!」
「今のところ、中から何とかする手段がございません。外からの援軍にこじ開けてもらうしか……」
「それが3度も失敗しておるではないか!」
「それは……」
「陛下! また援軍ですぞ!」
「どこの隊だ?」
「遠征騎士団のようです」
「奴らか! よく戻ってきた! やれそうか?」
「はい。100もいますからな! 安心できましょう!」
周囲が安堵の息に包まれたのも束の間、一気に落胆に包まれることになった。
「……全滅です、陛下」
「ぐっ! なんだと~!? 100もいながら愚民共にやられるなど……、どうなっておる! 答えよ!」
「わ、私は近衛です! アレらは遠征騎士団。責任は遠征騎士団の団長に問うべきかと!」
「ぐぬぬ~」
そして、悪い事が重なる。
「陛下! アムートです! アムートの書状を持った騎士が城内に落とされました!」
「貴様! 血迷ったか? 言っておることが支離滅裂だぞ!」
「い、いえ。城外から城内に騎士が落とされたのですが、その騎士が、アムートからの書状を持たされておりました!」
「よこせ!」
『フリスに告ぐ。貴殿は即刻王権を私に返還し、城門を開放すべし。 正当なる王位継承者アムート・エンデランス』
「ぐぅ~! 生意気な! 余をここまでコケにするとは!」
フリスは対アムートとっておきの手札を切る決断をした。
「おい! 団長! 貴様の所に置いているミーナを連れて来い! そいつで活路を開くぞ!」
「はっ!」
近衛騎士団長が、部下にミーナの連行を指示する。
しかし、長く待たされて戻ってきたのは、その部下1人だった。
「どうしたのだ! 何故連れて来ぬ!? ……まさか、死んだのか?」
フリスは、一瞬マズイと考えたが、まだ死体があれば何とかなると考え直した。
「そ、それが……、いなくなっておりました」
「はああああああ? なんだと~~~?」
「ち、地下に行きましたところ……部屋には瓦礫が詰まっておりまして……、総出で取り除いたのですが、もぬけの殻でした」
フリスは、頭に血が上っているのか、血の気が引いているのか、混乱し過ぎていた。
「いいいいいい、いつからだ!」
「昨日の朝にはおったそうです……」
「夜はあ!!」
「こ、この混乱で、確認していないそうです……」
「こここの役立たずが! 首をはねよ!」
この時、フリスの思考を完全に停止させる事態が起きた。
「陛下ーー! お逃げください! ド! ドラゴンの群れが近づいています!」
「なんじゃとーーーーーーーー!」
0
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
<完結>【R18】バレンタインデーに可愛い後輩ワンコを食べるつもりが、ドS狼に豹変されて美味しく食べられちゃいました♡
奏音 美都
恋愛
原田美緒は5年下の後輩の新人、柚木波瑠の教育係を担当している。可愛いワンコな柚木くんに癒され、萌えまくり、愛でる幸せな日々を堪能していた。
「柚木くんは美緒にとって、ただの可愛い後輩ワンコ?
それとも……恋愛対象入ってるの?」
「うーーん……可愛いし、愛しいし、触りたいし、抱き締めたいし、それ以上のこともしたいって思ってるけど。これって、恋愛対象?」
「なに逆に聞いてんのよ!
それ、ただの痴女じゃんっ!! こわいなぁ、年増の痴女……」
恋に臆病になってるアラサーと可愛い新人ワンコの可愛い恋のお話、と思いきや、いきなりワンコがドS狼に豹変して翻弄されるドキドキラブコメディー。
生真面目君主と、わけあり令嬢
たつみ
恋愛
公爵令嬢のジョゼフィーネは、生まれながらに「ざっくり」前世の記憶がある。
日本という国で「引きこもり」&「ハイパーネガティブ」な生き方をしていたのだ。
そんな彼女も、今世では、幼馴染みの王太子と、密かに婚姻を誓い合っている。
が、ある日、彼が、彼女を妃ではなく愛妾にしようと考えていると知ってしまう。
ハイパーネガティブに拍車がかかる中、彼女は、政略的な婚姻をすることに。
相手は、幼い頃から恐ろしい国だと聞かされていた隣国の次期国王!
ひと回り以上も年上の次期国王は、彼女を見て、こう言った。
「今日から、お前は、俺の嫁だ」
◇◇◇◇◇
設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
それを踏まえて、お読み頂ければと思います、なにとぞ。
R-Kingdom_6
他サイトでも掲載しています。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
異世界の物流は俺に任せろ
北きつね
ファンタジー
俺は、大木靖(おおきやすし)。
趣味は、”ドライブ!”だと、言っている。
隠れた趣味として、ラノベを読むが好きだ。それも、アニメやコミカライズされるような有名な物ではなく、書籍化未満の作品を読むのが好きだ。
職業は、トラックの運転手をしてる。この業界では珍しい”フリー”でやっている。電話一本で全国を飛び回っている。愛車のトラクタと、道路さえ繋がっていれば、どんな所にも出向いた。魔改造したトラクタで、トレーラを引っ張って、いろんな物を運んだ。ラッピングトレーラで、都内を走った事もある。
道?と思われる場所も走った事がある。
今後ろに積んでいる荷物は、よく見かける”グリフォン”だ。今日は生きたまま運んで欲しいと言われている。
え?”グリフォン”なんて、どこに居るのかって?
そんな事、俺が知るわけがない。俺は依頼された荷物を、依頼された場所に、依頼された日時までに運ぶのが仕事だ。
日本に居た時には、つまらない法令なんて物があったが、今では、なんでも運べる。
え?”日本”じゃないのかって?
拠点にしているのは、バッケスホーフ王国にある。ユーラットという港町だ。そこから、10kmくらい山に向かえば、俺の拠点がある。拠点に行けば、トラックの整備ができるからな。整備だけじゃなくて、改造もできる。
え?バッケスホーフ王国なんて知らない?
そう言われてもな。俺も、そういう物だと受け入れているだけだからな。
え?地球じゃないのかって?
言っていなかったか?俺が今居るのは、異世界だぞ。
俺は、異世界のトラック運転手だ!
なぜか俺が知っているトレーラを製造できる。万能工房。ガソリンが無くならない謎の状況。なぜか使えるナビシステム。そして、なぜか読める異世界の文字。何故か通じる日本語!
故障したりしても、止めて休ませれば、新品同然に直ってくる親切設計。
俺が望んだ装備が実装され続ける不思議なトラクタ。必要な備品が補充される謎設定。
ご都合主義てんこ盛りの世界だ。
そんな相棒とともに、制限速度がなく、俺以外トラックなんて持っていない。
俺は、異世界=レールテを気ままに爆走する。
レールテの物流は俺に任せろ!
注)作者が楽しむ為に書いています。
作者はトラック運転手ではありません。描写・名称などおかしな所があると思います。ご容赦下さい。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第、直していきますが、更新はまとめてになると思います。
誤字脱字、表現がおかしいなどのご指摘はすごく嬉しいです。
アルファポリスで先行(数話)で公開していきます。
シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜
ミコガミヒデカズ
ファンタジー
気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。
以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。
とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、
「儂の味方になれば世界の半分をやろう」
そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。
瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
魔王の右腕、何本までなら許される?
おとのり
ファンタジー
カクヨムでフォロワー5000人を超える作品に若干の加筆修正を行ったものです。
表紙はAIによる自動生成イラストを使用していますので、雰囲気だけで内容とは特にシンクロしていません。
申し訳ないですが、Ver.4以降も更新する予定でしたが今後の更新はありません。続きを読みたい方はカクヨムを利用してください。
Ver.1 あらすじ
親友に誘われ始めたGreenhorn-online
ハルマはトッププレイヤーの証である魔王を目指す親友を生産職としてサポートしようと思っていた。
しかし、ストレスフリーにひとりを満喫しながら、マイペースに遊んでいただけなのに次から次に奇妙なNPCのお供が増えていく。
それどころか、本人のステータスは生産職向けに成長させているだけで少しも強くなっていないはずなのに、魔王として祭り上げられることになってしまう。
目立ちたくないハルマは仲間を前面に出しては戦いたくなかった。
生産職のDEX振りプレイヤーであるハルマは、いかにして戦うことになるのか!?
不落魔王と呼ばれるまでの、のんびりプレーが始まった。
―― ささやかなお願い ――
ゲーム内の細かい数字に関しては、雰囲気を楽しむ小道具のひとつとしてとらえてくださいますようお願いします。
現実的ではないという指摘を時々いただきますが、こちらの作品のカテゴリーは「ファンタジー」です。
行間にかんして読みにくいと指摘されることもありますが、大事な演出方法のひとつと考えていますのでご容赦ください。
公開済みのパートも、随時修正が入る可能性があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる