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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第81話 想定外の敵影。

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 今日も朝から包囲戦。
 俺達が敷いた瓦礫のせいで、相手は城から打って出ることができない。
 たまに外部と連絡を取る為に、鳥を飛ばしたり、《フライ》で飛び立つ騎士がいるが、俺とミケがことごとく打ち落としている。
 情報も封鎖されているのだ。

「お兄ちゃ~ん! とお~くから兵隊さんが来てるよ~! あっちー」

 アニタには、上空で敵襲がないか見張ってもらっている。
 そのアニタが西からの敵を報せてきた。
 北西から来るのはアムートの可能性、東からはディステの可能性があるが、それ以外は敵だ。

 敵襲の報せがあれば、俺達が対応し、降伏するまで殺さないように痛めつける。
 朝から3回出動し、頭目を捕まえてはゴーシュに引き渡している。

「また来たよー」
「どれどれ?」

 今度は、なんと遠征騎士団だ。急を聞きつけどこかから戻ってきたのだろう。100人くらいか?
一応ゴーシュに伝える。

「何ですと!? 奴らが来た? 丁度いいぞい。今までのうっぷん、ワシに晴らさせてくれい」

 ゴーシュは、もはやこれ以上、今の遠征騎士団には用が無くなったのをいいことに、クズ騎士共に制裁すると息まいている。
 アニタも警戒だけで暇そうだったので、俺が代わって見張りに立ち、ゴーシュとアニタが遠征騎士団に対応する。
 やり過ぎにだけは注意してもらいたい……。チラチラ見物させてもらうか。


「おい! ゴーシュ! このジジイ、仕事サボりやがったと思ったらこんな所にいたのか! 早く戻れ! この愚民共を蹴散らさねえと、俺達の生活がぶち壊しだ。やるぞ!」
「……何をぬかしておる! この若造どもが!」「が~!」
「なっ!?」

 クズ騎士達が、ゴーシュ1人の気迫に押される。

「ワシが長年、貴様らの様なクズ共と行動しておったのは、まさに今日この日の為だ! 腐りきったお主達の性根、叩き折ってくれる!」
「る~!」

 ……折るのね。叩き直すんじゃなくて、折る……ね。

「ジジイ! テメェ、何言ってやがる。お前1人と……そこの……? ガキで何ができるってんだ! ぶっ潰すぞ!」
「……いこうか、アニタちゃん」
「うん! い~よ~」

 怪しいので、改めて釘をさす。

「やり過ぎ禁止だよー!」
「おう!」「は~い!」



「フー。他愛もない相手だぞい」
「ね~? すぐ泣いちゃうんだもんね~」

 顔面をパンパンに腫らして、涙にくれるクズ騎士共を見ていると、まだゼンデルヴァルトの方が根性あったような気がする……
 ゴーシュは、満足げに遠征騎士団の団長を引きずって戻っていく。
 戦闘を見ていたゴーシュの同志が100人余りの騎士達を次々に縛りあげ連行する。


 そして、昼過ぎ。3時前だろうか。
 遂にアムートとキースの軍が王都に到着した。

「キース様、アムート殿下、ようこそお越し下さいました。このゴーシュ、この日が来る事を心待ちにしておりました」
「ゴーシュ、これまで長きに渡っての潜入、ご苦労さま。感謝するぞ」
「き、キース様……ありがたきお言葉!」
「ゴーシュ殿、私からも礼を言わせてもらおう。ありがとう」
「そ、そんな! ここにアムート様をお迎え出来て、感無量ですわい。さっ! あと一押しですぞ!」


 アムートは捕らえていた騎士に、退位・降伏勧告の書状を持たせ、俺がフライで連れていき、騎士ごと城内に落とした。


******王城


「おい! 近衛の団長! 朝からどこからも連絡がこないではないか! どうなっておる!」

 王城の謁見の間には、要人が集まっている。
 王城内には、文官・メイドなど下級の職員も大勢いたが、彼ら彼女らも騎士達によって1ヵ所に留め置かれていた。
 いざという時の肉の壁にする為である。
 中には逃げようとして斬り殺された者もいた。

「はっ、こちらから出した鳥や騎士達はことごとく撃ち落とされてしまいました……。おそらくこちらに来た鳥も落とされておりましょう」
「なにぃ~! 貴様、それで何をひとごとのように話しておる! どうにかするのだ!」
「今のところ、中から何とかする手段がございません。外からの援軍にこじ開けてもらうしか……」
「それが3度も失敗しておるではないか!」
「それは……」

「陛下! また援軍ですぞ!」
「どこの隊だ?」
「遠征騎士団のようです」
「奴らか! よく戻ってきた! やれそうか?」
「はい。100もいますからな! 安心できましょう!」

 周囲が安堵の息に包まれたのも束の間、一気に落胆に包まれることになった。

「……全滅です、陛下」
「ぐっ! なんだと~!? 100もいながら愚民共にやられるなど……、どうなっておる! 答えよ!」
「わ、私は近衛です! アレらは遠征騎士団。責任は遠征騎士団の団長に問うべきかと!」
「ぐぬぬ~」

 そして、悪い事が重なる。

「陛下! アムートです! アムートの書状を持った騎士が城内に落とされました!」
「貴様! 血迷ったか? 言っておることが支離滅裂だぞ!」
「い、いえ。城外から城内に騎士が落とされたのですが、その騎士が、アムートからの書状を持たされておりました!」
「よこせ!」

『フリスに告ぐ。貴殿は即刻王権を私に返還し、城門を開放すべし。 正当なる王位継承者アムート・エンデランス』

「ぐぅ~! 生意気な! 余をここまでコケにするとは!」

 フリスは対アムートとっておきの手札を切る決断をした。

「おい! 団長! 貴様の所に置いているミーナを連れて来い! そいつで活路を開くぞ!」
「はっ!」

 近衛騎士団長が、部下にミーナの連行を指示する。
 しかし、長く待たされて戻ってきたのは、その部下1人だった。

「どうしたのだ! 何故連れて来ぬ!? ……まさか、死んだのか?」

 フリスは、一瞬マズイと考えたが、まだ死体があれば何とかなると考え直した。

「そ、それが……、いなくなっておりました」
「はああああああ? なんだと~~~?」
「ち、地下に行きましたところ……部屋には瓦礫が詰まっておりまして……、総出で取り除いたのですが、もぬけの殻でした」

 フリスは、頭に血が上っているのか、血の気が引いているのか、混乱し過ぎていた。

「いいいいいい、いつからだ!」
「昨日の朝にはおったそうです……」
「夜はあ!!」
「こ、この混乱で、確認していないそうです……」
「こここの役立たずが! 首をはねよ!」

 この時、フリスの思考を完全に停止させる事態が起きた。

「陛下ーー! お逃げください! ド! ドラゴンの群れが近づいています!」
「なんじゃとーーーーーーーー!」
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