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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第77話 ミーナの発見。

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 ローレッタから逃げるように、公都の宮殿に転移。
 執務室に行って、キースに各国への伝達完了を報告して、冒険者ギルドに向かう。
 夕方というにはまだ早いし、ミケ達もギルドにいるかもしれないからな。鬼畜を見る様な視線には耐えなければならないだろうが……

 ギルドは、依頼終わりの冒険者で一杯になりつつあった。
 テーブル席で座って待つ事にする。

「き、君~。またかい? 絶対ワザとだろう?」
「ん? ――! ゼンデルヴァルト!」
「な、なんだねぇ?」
「お前のせいで、俺に変な二つ名がついたじゃねえか!」
「な! 何の事だぁい? お、落ち着いてぇ」

 ゼンデルヴァルトにとっては、完全なるとばっちりだが、俺の気が晴れる。我慢してもらおう。

「おー、ユウト! 来ておったのか」

 俺がテーブルの下で、ゼンデルヴァルトの足を安全靴で蹴り続けていたら、ちょうどミケ達が依頼から戻ったようだ。アニカは受付の列に並んでいる。

「むっ? 誰じゃ貴様?」

 同じテーブルいるゼンデルヴァルトの事は、もうミケの記憶にないらしい。

「ほれ、我らが来たんじゃ、貴様はどけ!」
「どきなさ~い」
「は、はいぃ」

 ゼンデルヴァルトは、可哀そうに席を空けさせられる。

「ところでゼンデルヴァルト、お前……新しいパーティーメンバーは見つかったのか?」
「ま、まだだけど? この僕に相応しい人員を……」
「――そんなんだからダメなんだよ。お前は大したことないんだから、探すんじゃなくて、謙虚になって誰かのパーティーに入れてもらうんだよ。な? アニタ」
「うん! 大したことない!」
「…………」

 ゼンデルヴァルトは、しばらくポツンと立っていたが、肩を落として帰っていった。

 受付に報告を終えたアニカも合流してテーブル席に着いた。

「お疲れさん、今日はどんな依頼をこなしたんだ?」
「今日も街のお手伝いをたくさんしてきましたよ」
「ユウトのために、退屈な依頼をやってやっとるんじゃ、我らに感謝するんじゃぞ?」
「バカユートお兄ちゃんのパーティーだーって言ってきたからね!」
「……はい、ありがとうございます」

 明日からの事はここではできない話なので、みんなで宿に帰る事にした。

「クンクン、また女子の匂いをさせているな」
「それはもういいから。特に今日は、俺は被害者だからな」

 夕食を済ませて、部屋でケーキを食べながら、ミケ達にアムートやこれからの王権奪還計画を話す。

「なんじゃ、我らに町の便利屋をやらせておいて、そんな面白そうな事を企んでおったのか!」
「いや、面白そうって……。とにかく、明日からは、みんなでエンデランス王国に潜入するからな。4日で救出しなくちゃいけないから、なんとか成功するように頑張るべ」
「「「おー!」」」




 王権奪還計画の第1段階発動まで、あと5日。ミーナ救出のタイムリミットは4日、ギリギリ粘っても4日半と言ったところか。
 今日は王都に行くが、その前にダイセンに寄ってみる。『花と火亭』に顔を出すためだ。
 全員に認識阻害をかけて、ダイセンの冒険者ギルドの屋根上に転移した。

「宿の朝食の時間も終わって、忙しくないと思うから行ってみよう」

 カランカラン!

「朝食は終わったよー! あら? アンタは……、お兄さんじゃないかい!」

 そう言うと、ハッとした顔をして、無言で手招きをした。

「アンタ、手配されているよ」
「やっぱり?」
「ここに来る時に誰かに見られたかい?」
「いや、大丈夫だ。ただブレンダさんの顔を見に来ただけだよ」

「人相書きが出回っていてさ、あたしゃピンときたよ、お兄さんらだって。何したんだい?」
「ん~、今の国王を怒らせた的な?」
「はっ! そりゃいいねぇ。よくやってくれたね! それで、逃げ切れるのかい?」
「ああ、それは大丈夫。でも……ブレンダさん、買い物を頼んでいい?」

 手配されている事が確定したので、ブレンダさんにお願いして、フード付きのマントを4つ露店から買って来てもらった。

「ブレンダさん、もう何日かしたら、マシな時代が始まると思うよ」
「え? 何言ってんだい? そんなの来るわきゃないだろ、今の王様でさ」

 『花と火亭』に別れを告げて王都に向かう。街に潜入したいので、《フライ》で空から行く。


 王都に着いたが、すぐには下りないで上空から王城を偵察する。
 塔なんて、そんなに無いと思っていたが、結構な数あることが判った。

 当然、城門から入れる訳ないので、空から潜入する。手配されているしな……
 マントを羽織って、フードも被る。

 ミーナの捜索は二手に分かれてする事にした。俺とミケが王城、アニカとアニタは、念の為貴族街や街なかを捜索してもらう。
 王都にも大きな教会があるのだが、そこを定期的な集合場所にした。
 昼と夕方の教会の鐘が鳴ったタイミングで教会前に集合し、情報を共有する。
 今日は、流石に成果が無く、王都の外に転移して、久々のキャンプになった。


 2日目も成果は無かった。

 そして、3日目の今日午前、ミケが見つけた。
 塔は塔だったが、上では無く地下だった。
 場所も、近衛騎士団の団舎の塔だったので、常に騎士がうろついている。

「見つけたはいいとして、環境が悪すぎじゃ。弱っておるかもしれんぞ? 年寄りじゃろ?」
「そうか……。この世界の60歳位だもんな、早めに助けたいな。今日、救出するか?」
「どう囚われておるかじゃの」
「そうだな。毎日チェックされてるんだったら、明日とか明後日の早朝まで待った方がいいんだろうけど、ここにいると知ってしまった以上は、早く助けたいし……」

 とにかく今日忍び込んで、状態を確認してから決めるか。

 3階建ての団舎の塔の屋根に転移して、3階の窓、というか明かり取りの隙間から転移で侵入する。

「随分ホコリっぽいな。」

 物置き場として使われているのか、人が立ち入った形跡がほとんどなく、湿り気のあるホコリが積もっている。

 足音を出したり足跡をつけない為に、浮遊しながらゆっくりと進む。
 普段、人の出入りのない上階を警戒する者はいないようで、1階には簡単に下りられた。
 だが、流石に1階部分と、地下へ通じる通路には騎士が立っている。

“やっぱりいるな。ミケ、雷で、奴らの気を一瞬逸らしてくれ、その隙に一気にいこう”
“了解じゃ”

 やや離れたところに雷を落としてもらい、一気に地下に下りていく。
 扉番がいたが、《スリープ》で眠らせる。
 扉には食器の渡し口が設けられていたので、そこを開くと、中から湿った空気に乗って、すえた臭いやカビ臭さがモワッと漂ってきた。
 目視できれば障害物があろうと転移できるので、そこから中を覗く。

 シュンッ!

「これはヒドイ……」

 思わずつぶやいてしまった俺の声に、微かな声が反応した。

「どなた?」

 ドクン!

 本当に微かで、力がこもっていないが、確かに聞き覚えのある声にバハムートが反応した。
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