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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。
第76話 王権奪還計画の決定と各国への再訪。
しおりを挟む一夜あけて、俺は1人で宮殿に来た。
冒険者ギルドに行ったミケ達には、できる範囲でいいから俺の汚名返上に務めてもらう様に頼んである。
キースの執務室に通されると、アムートもすでに来ていた。
人払いをし、3人でお茶を飲みながら話をする。
「ここにリストを作ったから確認してくれ」
「どれどれ」とキースから渡されたリストに目を通す。
キースとアムートが立てた『エンデランス王国、王権奪還計画』は、大きく3つの段階に分けられた。
第1段階は、アムートの出自の公表と王権奪還の意思表明。
第2段階は、エンデランス王国の包囲とフリスへの退位勧告、諸侯への降伏勧告。
第3段階は、王城入城と正式な戴冠式の実施。
「第1段階には、やるべき事が3つある」
1つ目、アムートの軍を編成する。
2つ目、公表の方法と準備。
3つ目、決行前日までのミーナの救出。
「軍の編成に関しては、アムート殿のクラウゼン領軍に、私の騎士を少々、そして、アムート殿に賛同する諸侯からの増援で編成する」
「ありがたくお借りします」
公表の方法としては、大公直属の騎士と公都の上位冒険者達に商人の護衛の偽装をしてもらって、エンデランス王国の各都市に潜入。
同日同時刻に公表する。公都の商会にも協力を取りつけてある。
「公表内容は、アムート殿の出自に加えて、フリスの悪政の糾弾と退位を要求する旨。かな」
「これについては、拒否される事は織り込み済みです。同意されても困りますが……」
「そして、3つ目のミーナ様の救出。これが最も難しい」
「未だにどこに囚われているか分かっていないのですから」
「何としてもお救いしたいが、最悪の場合……」
救えなくても、計画自体は決行といったところか。
キースにしても、王国内の内通者・協力者の数には限りがあるし、危ない橋を渡らせるわけにはいかないのだろう。
「時間さえ許せば、捜索や救出は俺達が受け持ってもいいぞ。どうせ俺達は自分らの見た目や、手配されているかもしれない中で、都市に潜入するのも面倒だし、いっそのこと王都に入った方が楽かもしれないしな」
「頼めるかい?」
「決行日さえわかれば、それを期限にやれるだけやるさ。俺達は全員探知に長けているからな、一番可能性が高いだろ?」
俺は、今日のこの会談での最終決定を各国に伝達する役目を終えれば、ある程度自由に動けるようになる。
「第2段階だが、――――」
計画の詳細を詰めて、決行日も6日後に決定した。
遠方のドワーフ国や小国家連合にとっては距離的にギリギリの日程だが、何よりもスピード重視で事を成さねばならないから、頑張ってもらう他ない。
俺が改めてキースとアムートの書状を各国に届ける。それぞれの場所も覚えたので、今日中には全て回る事ができるだろう。
「では、頼んだぞ。ユウト殿」
「ああ、明日からは王都に潜入するつもりだけど、何かあったらここに転移して報告するから」
シュンッ!
******商業国家オーサク
まずは、オーサクだ。傭兵国キタクルスの傭兵を雇うのだから、日程的に一番苦しいだろう。最優先だ。
エティゴーヤの屋敷前に直接転移した。
門番に取り次ぎを頼むと、すぐに案内してくれた。
相変わらず、敷地内には多くの使用人がいて、あわただしく働いている。
前回と唯一違うのは、扱っている品物に武器防具が目立つということだ。
応接室で待っていると、ホクホク顔のエティゴーヤが入ってきた。
「決まらはったんですな?」
「ええ、ですが、日程的にキツイんだが……」
「心配あらへん! そこはこのエティゴーヤ、抜かりありまへん! 既に傭兵達をディステ国境に待機させておます。ワテも間に合うように行きまっさかい、安心しとってください」
書状を確認し、自信を持って言ってくれた。さすが優秀な商人だ。
「では、6日後」
「まかせてんか!」
******ドワーフ国
オーサクの次に遠いのがドワーフの国だ。
ドワーフ達が、また俺の服装に興味を持っても面倒なので、『大工房塔』のゴダンの執務室に直接転移した。
……やっぱりいないか。
1階下の工房に行くと、案の定いた。作業に集中していて、俺に気づいていない。
「ゴダン、来たぞ。……ゴダン? ゴダンッ! ……ゴーッダーッンッ!!」
「む? ――おう! ユウトか! よく来たのである! ちょうどいい、これを見るである」
俺が渡したスライサー、もう試作品を作っている。
「おお! 凄いな」
「う~む。であるが、刃物はいいのであるが、この調整部分が難しいのである」
「あ~、それな~。野菜によって大きさが――って違う違う! 別件だよ、別件」
ゴダンに書状を渡すと、作業したそうにしながらも、目を通してくれた。
「日程的にキツイが、何とか頼む!」
「な~に、大丈夫である。休みなく走れば、明日の朝出発しても余裕である」
休みなく走る? ドワーフってそんなこと出来るんだ……
「じ、じゃあ6日後」
「任せるのである!」
******獣人領
ライゼルの屋敷に直接転移したら、ちょうどライゼルとライアーン、ティグリスがいた。
ティグリスは、俺を見つけると「ひぃ!」と言って、ライゼルの後ろに隠れた。
「おう! ユウト! 人ん家に転移たぁ、カチコミか? ガッハッハァ!」
「外に転移すると、また絡まれると思ってな」
「そりゃそうだな! ガッハッハ」
ライゼルは、キース達からの書状を確認すると、「おう! 任せとけや!」で、終わった。
“英雄”ティグリスは、相変わらずライゼルの後ろに隠れている。
「ティグリスはどうだ? まじめにやってるか? なんなら俺が稽古を付けてやるか?」
「けけけけ、結構です!」
ティグリスは、心を入れ替えて鍛練に励んでいるそうだ。
ライゼルは今回、ティグリスも連れて参戦してくれるらしい。
「じゃあ6日後」
「おう! 任せろ!」
******エルフ族領
リーファの屋敷についた。
「さて、リーファはどこだ?」
「ューゥートちゃ~~~~ん!!」
遠くからリーファの声が近づいてくる。
正確に俺の位置を特定し、迷うことなくやってきて、俺に飛び込んできた。
「会いに来てくれたの~? リーファ嬉しい♪ チュ~――ぶっ」
リーファにチューされないように押さえる。
「先日の件、詳細が決まったので来ました。確認してください」
「んもうっ! 他人行儀なんだから~。リーファって呼んでぇ~」
あなたが面倒だから、敢えてそういう言葉使いにしてるんですが?
書状を確認してもらい、了解したのを確認したら、逃げるように転移する。
「あ~~~~ん! ユウトちゃ~~~~ん」
******宗教国家ディステ
大聖堂に転移し、大司教のお爺さんにローレッタへの取り次ぎを頼む。
前回同様、ローレッタが小走りでやって来て、また俺のズボンに向かって祈りを捧げる。
スマホは前ポケットから後ろポケットに移し替えたけど、やっぱりわかるのか。
「よくお越し下さいましたディス――ユウト様」
「は、はい。今日は詳細をお伝えに参りました」
「このような所ではなんですので、応接室へ参りましょう」
大司教の先導で応接室に向かっていたら、お尻の方に変な感触がしたので、振り向いたら、いました痴女が!
スマホを入れてあるポケット辺りを、逝っちゃってる顔つきで触ってるローレッタが!
「あ、あの~」
「――はっ! 私ったら、申し訳ありません。ユウト様」
身の危険を感じたので、応接室で書状を渡し、確認してもらったら、すぐ転移する。
「では6日後」
「あーーーーー! お待ちをーーー」
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