俺と最強白狐娘の異世界“ながら”侵攻記~スマホの『魔法大全』アプリを持って、保護した姉妹を育成しながら異世界魔王にカウンター食らわせる!~

柳生潤兵衛

文字の大きさ
上 下
69 / 121
第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第68話 宮殿の昼餐。そして、ミケ達の決断。

しおりを挟む

 アムートがエンデランス王国の王権奪還の決意を固め、俺もキースも協力をすることが決まった。

 大まかな流れが定まったところで、3人だけでの昼食会が開かれた。
 部屋もそのまま“女神の間”で、給仕も先程のメイド1人、扉番も同じ騎士達。
 キースはこの会談をごく少数にしか関わらせず、秘匿しているようだ。

「そうだね。何処にエンデランスの耳や目があるか分からないからね。用心に越した事はないよ」

 気が気でなかった今日の朝までとは違い、今回はしっかり味わう事ができる。
 コンソメスープの様に黄金色で透き通っているが、味がミントに近い香草スープ。味自体は青臭さを取り除いていて美味しいが、視覚情報と味覚の違いに頭が混乱している。
 次に薬草と香草、ダンジョン産の果物のスライスにカシューナッツ? みたいな豆系オイルがかけられたサラダ。これが絶妙のハーモニーで美味いの何の!

「あ、この果物、ダンジョンで食べてたやつだ!」
「何!?  それはダンジョンでも20階層以降の森型ダンジョンで採れる果物だぞ? 中級以上のダンジョンだ」
「は? それはないだろう。20層なんてモンスターがヘビだの鳥だの、捉えにくい奴なだけじゃないか」
「「…………」」

 キースとアムートは何故絶句しているのだろう? 

「20階層って確か、連れが毒蛇に噛まれて倒れたり、ジャイアントオークに朝一で叩き起こされたりしたくらいかな? 印象に残っているのは」
「ポイズンスネークに噛まれて生きているのか? それにジャイアントオーク!」
「何言ってんだ? 解毒すればなんてことないだろ? それより、この果物だろ?」

 ストレージから白いリンゴの様な果実を取り出して見せる。

「まあ! 立派だこと!」

 給仕のメイドが思わず感嘆の声を上げた。

「し、失礼致しました!」
「いや、これほどの大きさには余程魔力濃度が高くなければならないはずだ……。それも極僅かな量が」

 メイドもキースも何を言っているんだ? いっぱい生ってたぞ?


 次の料理は魚だ。生魚のスライスに塩と香辛料、ワインビネガーみたいな酢がかかったシンプルな料理。シンプルだからこそ美味かった。
 メインは肉料理。ワイバーン肉のステーキ。肉自体の味も焼き加減も抜群だ。
 魚には魚に合った木の実が入ったパン、肉には肉やソースに合うパンが出された。どちらも柔らかくて美味かった。

「このワイバーンは、一昨日冒険者ギルドに持ち込まれた過去最大級のワイバーンを仕入れたらしいぞ」
「ほう! そのような物、余程の高ランクパーティーが複数であたったのでしょうな?」

 今度はキースがイタズラっぽくウィンクしてきた。アムートを驚かせたいらしい。

「一昨日ってことは、確か、遠くの村にワイバーンの巣を駆除に行ったな。俺は何もやってないが」
「何パーティーで戦ったんだい?」
「パーティーも何も3人でやってたぞ? 6体かな?」

「なっ!?  3人ですと?」
「3人って、あの12歳のアニタちゃんも戦ったのかい?」

 キースも驚きのあまりに発言し、手で7を作って聞いてくる。

「もちろんだ。アニタはすばしっこくて攻撃も強いぞ」
「12歳!? 登録してたての新米ではないですか?」

 アムートは驚きっぱなしだ。

 デザートは、こちらの世界に来て初めて、ケーキに近い物が出た。揚げパンとかではなく、スポンジ生地に生の果実とシロップ漬けの果実を交互に何層も重ねて透明な薄い飴で包んでいる。
 薄い飴のパリパリと、生果実のしゃきしゃき、シロップ漬け果実のしゃりしゃりした食感がマッチして、とても美味かった。

 宿の料理も美味しいが、流石宮中料理と言ったところだな。

「あ! そう言えば、お菓子とかデザートをお土産で貰って来いって言われてたんだ! 今のまだあります?」
「ああ、お土産に包ませよう。他にお菓子もね!」

 キースがメイドに合図を送り、お土産の用意を頼んだ。

「その代わり、これを貰っていいかい?」

 出しっ放しにしていた果実を差して聞いてくる。

「それでいいのならどうぞ?」

 アムートに何もなしは可哀そうなので、同じのを取り出して渡した。

「なっ! これほど立派なのを2つもお持ちだったか! これほど貴重な物……ありがたく頂く」

 だから、いっぱい生ってたって!


 午後は、アムートの出自公表の時期や方法の検討や、俺を通じて各国に送付する書状の準備などに当たるそうだ。
 各国には明日の朝出立する事に決まった。今日はもう俺の出番はない様なので、お土産をもらってとっとと退散する。

 宿について一息つく。
 今日はまだ半日しか経ってないが、気疲れしたな。


 小一時間ほど昼寝をして精神も回復したので、ミケ達を待つ為に冒険者ギルドに行こうとしていたら、ミケ達が帰ってきた。

「おかえり。みんなお疲れさん」
「おお、ユウトも戻っておったか?」
「ユウトさんもお疲れ様です」
「ただいま~、おかえり~」

「ミケ達も早かったな」
「ま、まあのぅ。大した依頼が無くてのぉ~」
「……」「バーっとおわちゃった~」

 嫌な予感がする。この場合、アニカの反応を信じるべきだが……、信じたくない!

 夕食まではまだ時間があるので、今日宮殿であった事を伝える。

「でな? 急なんだけど明日から5~6日かけて、時計回りに獣人国・ドワーフ国・小国家連合の商業国家オーサク・真ん中のエルフ大森林・最後に南の宗教国家ディステの順で、お遣いに行くことになったんだ」
「「「ええ~!」」」

「移動しては偉い人と話して、また移動しての繰り返しだけど……、どうする?」
「「「ええ~!」」」

「ミケ達はここに残った方が、暇にならなくて済むと思うぞ?」
「う~む。……ちょっと待っておれ」

 3人は部屋の端に移動して、何やらヒソヒソと話し合っている。
 ……10分ほどかけて話し合われた。

「仕方ないのぉ、我らは留守番じゃ。ここに残って依頼をこなしておこうかの」

 アニカとアニタも頷く。

「――じゃが! するでないぞ?」
「するでない? ……何を? 浮気とか?」
「はぁ? 浮気しないなど当然の事じゃろっ! 観光じゃ、観光!」
「へ? 観光?」
「そうじゃ! そう言うのは、我と――ウヴン! 我らと揃ってするものじゃ! わき目もふらずに仕事だけして帰ってくるのじゃ!」

 アニカとアニタもうんうんと頷いている。

「あ、ああ」
「――それから!」

 まだあるの?

「今日は夕飯を食べたら、外に泊まるぞ!」
「そと?」
「巣じゃ“巣”! 後、風呂も作るのじゃ!」


 夕食後は、ご要望通りに公都近郊の断崖を探して“巣”を設置し、みんなで風呂にも入った。
 キースから貰ったお土産でお菓子パーティーを開催して、満足してから眠りにつく。
 久し振りに“巣”に泊まったが、何だかいつもよりみんなが密集している気がする。
 まあ、期限付きとはいえ、しばらく一緒にいられないからな。
 ……こんな密集もたまにはいいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

若き天才国王の苦悩

べちてん
ファンタジー
 大陸の半分近くを支配するアインガルド王国、そんな大国に新たな国王が誕生した。名はレイフォース・アインガルド、齢14歳にして低、中、上、王、神級とある中の神級魔術を操る者。  国内外問わず人気の高い彼の王位継承に反対する者等存在しなかった。  ……本人以外は。  継がないと公言していたはずの王位、問題だらけのこの世界はどうなっていくのだろうか。  王位継承?冗談じゃない。国王なんて面倒なことをなぜ僕がやらないといけないんだ!!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...