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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第58話 冒険者登録と必要な買い物。

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「そういう民族だからだ」

 受付さんは、そう言い張る俺に愛想をつかして鑑定石を持ってきた。

「そのお嬢さんの手をかざして頂けますか?」

“アニタ? アニタのステータスは、ちゃんと偽装されたままか?”
“うん! だいじょうぶだよ~”

「アンニタ、手をかざして見せてあげなさい」
「うん!」

 アニタが鑑定石に手をかざすと、俺達サイドには見えないが、ステータスオープンしたのと同じように表示された様だ。
 それを見た受付さんは、姿勢を正して、胸に手を当てて軽く頭を下げてきた。

「たしかに12歳でした。失礼致しました。皆さんの冒険者登録を進めさせていただきます」

 俺達もアニタと同じように鑑定石に手をかざし、その情報に基づいて登録されていった。


「お待たせしました。こちらが皆さんの冒険者証です。再発行にはお金がかかりますから、無くさないように注意して下さいね」

 兵士が首から下げる認識票のような形で、紐を通す穴も空いている。
 どこかでチェーンか革紐を買えばいいんだな。

 冒険者証と一緒に規則冊子も付いてきて、俺とアニカがそれを見ながら説明を受けた。

 冒険者にはF~A・Sまでランクがあって、それをもとに受けられる依頼が分けられるとか、ランクアップの条件とかを説明されている。

 ミケとアニタは元から興味ないようで、ガラの悪い連中のいる打ち合わせスペースのテーブル席で休んでいる。
 アニタが冊子を見ながら熱心に聞いてくれているので、俺もほとんど聞き流している。


 ようやく説明が終わったようだ。

「基本的な事は以上です。何か質問はありますか?」
「ああ、魔石を売りたいんだが、ここで買い取ってくれるのか?」

 買い取りをしてくれるようで、ギルドの一角にある査定カウンターを教えてもらった。解体の受付の場所もあったから、ある程度ランクが上がったらオーガとか解体に出せばいいな。
 仏頂面の中年男、いや、担当者に、とりあえず様子見でゴブリンとウルフの魔石をひとつかみ分ジャラジャラと出して査定してもらう。

「ダンジョンゴブリンの魔石が34個で銀貨17枚、ダンジョンウルフの魔石が20個で銀貨13枚、合計で大銀貨3枚だな」

 ややこしい! えっと、銀貨30枚で大銀貨3枚だから、とりあえず銀貨10枚で大銀貨1枚。
 単価は――めんどくさい! やめやめ! あとでスマホの計算機でやりゃ済む! それよりお金の話をブレンダに聞きに行くか。

 とりあえず大銀貨1枚と銀貨20枚にしてもらう。露店とかだと大銀貨なんて使えないかもしれないからな。
 ミケ達の元に行くと、俺とアニカが査定している間に何があったかは知らないが、ミケとアニタがゆったりと座っている一方で、さっきまで幅を利かせていたガラ悪連中が隅っこで大人しくしている。

「……何があったかは聞かない。いくらかお金が出来たから、さっきのブレンダの店に行ってみようか」
「いいのぅ! 昼時じゃし、こちらの食べ物にも興味あるしの!」
「おなかすいた~」

 ミケが動き出すと、ガラ悪連中が全員、あからさまに目を逸らした。
 何があったかは聞かない。聞かない方がいいこともある。

 『花と火亭』はすぐに見つかって、食堂も開店している。
 込み合う時間帯前だったので、4人掛けのテーブルが空いていて良かった。

 メニューは2種類だよとのことで、各3人前ずつ計6人前を頼んだら「多くないかい?」と不思議がられたが、ちゃんと食べるからと言って持ってきてもらう。
 ニアの味見の分をこっそりタッパーに取り分けて、残りは4人でシェアして平らげた。
 肉の入ったスープか、焼いた肉の2種類で、何の肉かは分らなかったがまあまあ美味かった。パンはバサバサだったが……
 ブレンダに通貨の事を聞く。

「アンタ、そんな事も知らないのかい!?」と言いつつも、丁寧に教えてくれた。……いい人。

 最小通貨は銅貨で、それが20枚で銀貨1枚。
 銀貨10枚で大銀貨1枚、大銀貨10枚で金貨1枚、金貨20枚で白金貨1枚だそうだ。

「白金貨なんて滅多にお目にかかるもんじゃないさね」
「ここの値段は?」
「どっちも1つ銅貨10枚さ、うちは良心的な店さね。泊まりも晩と朝の食事付きで、1人銀貨5枚さ」

 ランチで銅貨10枚か、ワンコインランチとして500円。銅貨1枚50円かな?
 そうすると、……銅貨が50円、銀貨が千円、大銀貨が1万、金貨が十万、白金貨が2百万くらいって仮説が立つな。

 6人前分の銅貨60枚分、銀貨だと3枚。それに情報料として銀貨をもう1枚渡して店を出る。

「お兄さん、そういうところは気が利くじゃないかい! また来なよー」

 銀貨1枚で、アンタからお兄さんに格上げされて、情報も得られた。安いもんだ。
 出がけにブレンダに聞いたら、ギルド前の広場の露店街の方が路地の露店よりも安心だという事で、広場に戻って買い物をする。

 アニカにお金を渡して、ミケとアニタの3人で露店を見て回ってもらう。
 俺は冒険者ギルドの屋根の上に転移して、ニアの食事がてら休憩だ。



 しばらくして、荷物を抱えた3人も俺達を見つけて屋根に転移してきた。
 人前ではなるべくストレージを使うなと言っていたから、3人でそれなりの量を持っていた。

「冒険者登録証を首に下げる為の革紐と、いかにも冒険者に見えるようにダミーの荷物袋、ペットボトルを包み隠せるサイズの袋、後はアニカが必要と判断した物のはずだったな?」

「……はい」
「じゃあ、ミケとアニタが抱えているのは?」
「……お菓子とお人形です」
「お人形さんは1つだからしょうがないとして、お菓子は?」
「……」
「ユウトよ、そう責めるでない。アニカに任せたのじゃろ? アニカが必要と判断したんじゃ、仕方がなかろう」

 紙の包みいっぱいの揚げパンやプレッツェルみたいなお菓子を抱えながら言っている。

「他人事みたいに言ってるが、絶対お前がワガママを言ったんだろ? ミケ」
「な、何のことじゃ~?」
「まぁいいよ。別にアニカを怒っているわけじゃないからな? おつりは?」

 アニカがおずおずと差し出してきた。

「……銅貨2枚ね」

 大銀貨1枚と銀貨16枚、2万6千円相当全部渡しておつりが100円……

「よし! もう1回換金してから出発だ」

 アニタのお人形さんはいいとして、ミケが持ってるお菓子は全部俺のストレージに没収した。
 また小さい魔石を適当に換金して、所持金5万円分程度にして出発だ。


 ダイセンの街を出発して、マッカラン方面へ飛び始めたが、少し飛んだところで馬車の車列がモンスターに襲撃されている現場を発見した。
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