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第1章 突入! エベレストダンジョン!

第42話 70階層フロアボス戦。( 2/2 )

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 リッチの威圧感にのまれていたアニカとアニタを鼓舞して送り出すと、入れ替わりでミケが戻って来た。
 ミケがリッチの放ったモヤまみれで戻って来たので驚いたが、浄化と状態異常回復を掛けると綺麗になったので一安心。

「あれでよくピンピンしていたな?」
「まぁ、我じゃからな! それより……、あ奴ら、もう余裕が無くなってきておるぞ?」


 アニカとアニタは、リッチから伸びるモヤに直接触れられることは避けているが、身体を覆うライトフィルムが吸収されてしまう。

 その都度アニカが張り直すのだが、そのせいで《ピュリフィケーション》を放てないでいる。
 そして、浄化魔法の来ないリッチは、どんどんスケルトンナイトを呼び出し、その数はアニタの対応できる数を超えつつあった。

「……あれは行ってやった方がいいな」
「うむ」


「《ピュリフィケーション》!」

 俺はアニカ達の前に入り、ミケもアニタに代わってスケルトンナイトを潰していく。
 リッチがまた後ずさって、距離的な余裕が生まれた。

「ちょっと大変だったな?」
「ごめんなさい、ユウトさん。《ピュリフィケーション》を出す暇が無くって……」
「スケルトンナイトおおすぎる~~~!」

「気にしない気にしない。俺もミケも来たから、4人で無理せず戦っていこうな」
「「うん!」」

 アニタには、ミケと合流してアタッカーをしてもらう。
 アニカは、残りの魔力量に不安があるので高等魔法の《ピュリフィケーション》は使わず、防御魔法メインで補助役になってもらう。
 俺は、リッチに対して《ピュリフィケーション》を放ちつつ、スケルトンナイトも潰し、リッチに魔力を消費させていく。


 リッチの魔力量は膨大なので、かなり時間はかかったが大分魔力を削ることができた。
 今では開戦当初の半分ほどの大きさになっている。


 
 それは、俺の放った《ピュリフィケーション》がリッチを直撃した直後だった――

「コォォォーーーーーーーオオオオオオオ!」

 リッチの目が赤く光を放ち、これまで一言も声を発さなかったリッチが咆哮をあげた。

 リッチの纏うモヤがブワーッ、と一気に広がり、俺達にビリビリと威圧感が伝わる。
 アニカとアニタが、また怯えてしまうかもしれない。

「《ライトウォール》! 《ライトドーム》!」

 2人を安心させるために防御を展開し、2人には《リカバー》を掛ける。

「アニカ! アニタ! 大丈夫か?」
「は、はい! なんとか……」
「だいじょうぶっ! ちょっとひりひりする~」
「そうか! えらいぞ~2人とも!」

 2人が雰囲気にのまれていなくてよかった。

「よしっ! このままの調子でいくぞ?」
「「はいっ!」」

 リッチを引き付けてくれていたミケは、雷でリッチにダメージを与えているものの、自分に伸びてくるモヤを捌くのに一苦労している。

 ミケに取り付いたモヤを《ピュリフィケーション》で一掃し、《リカバー》で回復させる。

「防御と補助は任せたぞ? アニカ!」
「はい!」

 リッチは、モヤが増えただけでなく、攻撃パターンも変わった。
 スケルトンナイトを呼び出さなくなり、闇系統魔法を乱発するようになった。

 精神干渉系の《フィアー》《コンフュージョン》《ブレインウォッシング》のみならず、身体機能を制限する《ブラインド》《パラライズ》《スロウ》《スリープ》も併用してきた。

「ちっ! 厄介なことをしてくる! ……だが、今の俺達には通用しない! 《マジック・オブストラクション》!」

 リッチの魔力に干渉・阻害し、魔法を封じる。
 まだ1回あたりの効果時間は短いが、ミケ達の体勢を整えるには充分な時間だ。

 魔法攻撃の乱発には対処できたが、モヤは健在で、おびただしい本数のモヤが、触手の様に伸びてくる。
 しかし、アニカが頑張って防御魔法を張り直してくれるので、俺は《ピュリフィケーション》だけではなく、リッチへの直接攻撃もする余裕があった。


 リッチへの魔法封じが解けては掛け直し、モヤの触手に対応し、直接攻撃と浄化魔法を放つ。
 この流れを何度も繰り返し、リッチは目に見えて弱って来た。大きさもスケルトンナイト並みに小さくなった。

「4人で総攻撃を食らわせて、トドメを刺すぞ。ミケは合図したら、雷を頼む!」
「了解じゃ!」

 ガンダーとの戦いで、俺の“守り神”と認定した《ロックウォール》を発動させる。
 “面”で壁を作るというよりも、“点”で壁を作る。
 ロックウォールをリッチの直下から立ち上がらせ、神殿や城の円柱の様に伸ばしてリッチを巻き込み、押し上げながら天井に衝突させる。

 ズドォーーン!

 ロックウォールは天井に突き刺さった。

「《デリートマジック》!」

 ようやく使えるようになった魔法で、地面から天井に突き刺さったロックウォールを消すと、リッチが落ちてくる。

「ミケ、今だ!」
「うむ。くらえーぃ!」

 ズガガガガーーーーーーン!

 これまでに無く高威力の雷が炸裂し、リッチを覆っていたモヤが消し飛んだ。

「アニカ! アニタ! 今出せる最高威力の技を叩き込むんだ!」
「はい! アニタ、私から行くよ! 次はお願いね?」
「わかった!」

「トルネードショット!」
 
 アニカの技が、落下してきたリッチに直撃し、リッチを跳ね上げた。

「千手ざ~~~~ん!」

 二刀流のアニタの両手から繰り出される連撃のスピードが上がっていって、無数の斬撃がリッチに襲いかかり、リッチは力無く地面に転がる。

「《エンチャント・ピュリフィケーション》!」

 トドメに浄化魔法を付与した刀を、地面に転がるリッチに突き立てるだけだった。



 リッチの魔石は回収できた。
 だが、リッチが呼び出したスケルトンナイトは、サラサラと消えたにも関わらず、魔石は無かった。
 ニアに尋ねると、呼び出したのではなくリッチ自身の魔力で作り出していたのだろう、という事だった。……理屈が解らん。

 アニカとアニタは、地面にへたり込んでいる。無理もない、ありったけの力を出し切ったのだ。
 ミケも疲れた疲れた言っている。
 スマホで時間を確認すると、とっくにいつもの夕食の時間を過ぎていた。

「もうこんな時間だったのか! ……昼飯食べといて本当に良かったな」


 アニカが、70階層ここは怖くないから大丈夫という事で、ここで泊まることにした。

「今日は本当に頑張ったから、ホールケーキで!」

 ――という3人の総意の要求があり、受諾。盛大にケーキパーティーが執り行われた。
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