上 下
40 / 121
第1章 突入! エベレストダンジョン!

第40話 ここにきてアンデッド……

しおりを挟む

 アニタはギャン泣きで治まる気配がない。
 アニカはブルブル震えて俺の後ろに隠れていて、使い物にならない。
 ミケは鼻をつまんでそっぽを向いている。



 61階層からは一見普通の洞窟だった。
 また最初からか? 2周目か? とも思ったが、何か違った。
 マグマ地帯以外は適温だったのが、この階層はちょっと寒く、湿り気も多かった。
 それにちょっと臭う……というか、クサい!


 そして、みんなで歩いて行くと、出た。
 スケルトンとゴーストとゾンビ、3体1組で出た。

「キャーーーーー! お化けーーーー!!」

 アニカはゴーストを見た途端に俺の後ろに隠れてガクガクブルブル震えている。

「ぎゃーーーーーーーー! がいこつ怖い~~~~~!」

 アニタはお化けは平気だったが、骸骨が歩いているのを見てギャン泣きを始めた。

「なんじゃ! この臭いは! 耐えられんぞ! 汚らしいし!」

ミケはもう臭いがダメらしい……



 ……はぁー、どうしたものか。

「この中でまともなのは、ニアだけか?」
「ユウトさん! スマホ! スマホだけは絶対に仕舞っておいてくださいねっ! 出さないでください! 汚したらダメですからね! 私が隠れるんですから……ねっ?」
「…………」

 よし、俺がしっかりしないとなっ。

「アニカ、よく見ておけよ?」
「えぇえぇえぇ? ななあんででですか?」
    (え? なんですか?)

「光属性高等魔法 《ピュリフィケーション》」

 ふわーっと、清浄な光が3体を包むと、さらさらと消えて行った。

「これが浄化だ。アンデッドにはこれが効くそうだ。アニカも覚えたら何も怖くなくなるから、頑張って倒していこうな? 《フラッシュ》も効くんじゃないか?」
「浄化……。いいですね! それっ。早く使えるようになりたいです!」

 少しは前向きになってくれたかな。

「よし! その意気だ。まずは俺も含めて全員に《ライトシールド》を、そして、ミケ以外全員に《ライトフィルム》を張ってくれ」
「はい!」

「これで身体は覆われているし、前も盾で守られている。だから、アニタも大丈夫だぞ?」
「でも~、がいこつが~。グスッ」
「何言ってるんだ。アニタは骸骨より全然強いんだぞ? それに、お化けの怖いアニカだって頑張ってるんだ。お姉ちゃんとなら怖くないだろ?」
「グスン、う~~~~お姉ちゃ~ん」

 アニタが泣きやんで、アニカの元へ行ってしがみついた。

「アニカとアニタ、2人で組んでいれば怖いものなしだぞ!」

 あとは、ミケに《ウィンドフィルム》でいいな。

「ミケ、これで臭いも汚れもお前には付かなくなったぞ」
「う~む。じゃが触りたくは無いぞ?」
「ミケには雷があるだろ? 雷でも撃っとけ」
「……なんか、我だけ扱いが雑ではないか?」

 あ、これ対応間違ったら厄介になるパターンだな……

「何言ってるんだ、いいか? ミケは“特別”強いから、アニカ達と同じ訳にいかないだろ? “特別”なんだから」

 ミケの耳元でささやいてやる。

「特別? ……そうか特別か、そうじゃな! 特別な我じゃからしょうがないのぅ! ほれ、お主たち、ゆくぞ!」

 ……単純で良かった。けど、罪悪感が残るな、これ。

 進み始めた当初は、俺の浄化かミケの雷で倒していたが、徐々に慣れてきたアニカ達も参戦するようになった。

「ユウトさん! 《フラッシュ》も少しは効くみたいです! 次は《ライトバインド》とか《ヒール》も試してみます!」
「ユウトお兄ちゃん! がいこつ、弱かった~。もう怖くないよ~!」

 62階層を掃討したところでお昼の時間になったが……
 みんなここでは食べたくない、上に戻れと言うので仕方なく60階層へ戻った。
 俺の転移で戻れたので一瞬だったが、これ、夜もここに来るって言うよな、絶対……


「今日はもういいじゃろ? あんな臭い所」
「そうです! せっかく戻って来たんですからわざわざ行かなくても……」
「さんせ~い!」
「それじゃー何日も臭い所に通う事になるぞ? いいのか?」

 昼食後、あんまり乗り気でない3人をせっついて63階層へ向かう。
 そこからは新たに、剣を持ったスケルトンソルジャー、簡単な魔法を使ってくるレイス、少し知能を持ったグ―ルも出現するようになった。

 スケルトン系やゾンビ・グ―ルは、出来るだけ物理攻撃で倒し、ゴースト・レイスはアニカに光属性魔法で倒させていった。
 まあ、途中で臭いに痺れを切らしたミケが、雷で一掃する場面もあったが……

 66階層を掃討して今日は打ち止めという事で、60階層に舞い戻った。

「ほら! 今日頑張ったから、明日の午前中でこのアンデッドゾーンを抜けられそうだぞ?」
「……そんなことより風呂じゃ風呂! 臭いが染み付いていそうで気持ち悪いのじゃ」

 ミケ達が3人で寝床や夕食の準備をするからと、風呂の用意を催促された。

「ほれほれ、早う風呂の用意をするのじゃ! 頼むから」


 という事で、急いで風呂を作り、みんなで入浴を済ませてからの夕食。
 約束通りミケ達が夕食の用意をして、座って待っている俺に持って来てくれた。
 アニカとアニタが作ってくれたサラダとスープ、そしてパン。
 そして、ミケが担当したメイン料理。

 真黒に焦げた何かを……

「ミケさんや……これは?」
「うん? これか? これは我が焼いた牛肉の串焼きじゃ。塩を振ってあるから、何もつけなくて大丈夫じゃ」

 もう一度お皿に目をやる。
 ……やっぱり真黒い物体だ。とても牛肉には見えないぞ?
 アニカとアニタは気まずいのか、俺と目を合わせようとしない……

「ささっ! ユウトも今日は疲れたじゃろ? 風呂も作ってもらったしのぅ。早う食べるのじゃ」

 うっ! これを? ……えーい! 覚悟を決めろ! 俺! 男だろ!
 勇気を出して一口食べる。

 じゃりじゃり、じゃりじゃり。

 ……やっぱりな。牛肉の面影は無い。焦げの面影すら無い。炭だ。
 昼食後に無理矢理攻略に連れ出した俺への当てつけか? それとも本気で作ってこれなのか……

「よし、我も食べるとするか! いただきま~すなのじゃ」

 一口食べて、静かに黒い物質を皿に戻した。
 ワナワナと震え、両方の拳を握りしめて、急に立ち上がった。

「なんじゃーーーーー! この苦いだけの物体はーーーーー! 肉はどこに行ったのじゃーーー!」

 後者か……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

<完結>【R18】バレンタインデーに可愛い後輩ワンコを食べるつもりが、ドS狼に豹変されて美味しく食べられちゃいました♡

奏音 美都
恋愛
原田美緒は5年下の後輩の新人、柚木波瑠の教育係を担当している。可愛いワンコな柚木くんに癒され、萌えまくり、愛でる幸せな日々を堪能していた。 「柚木くんは美緒にとって、ただの可愛い後輩ワンコ?  それとも……恋愛対象入ってるの?」 「うーーん……可愛いし、愛しいし、触りたいし、抱き締めたいし、それ以上のこともしたいって思ってるけど。これって、恋愛対象?」 「なに逆に聞いてんのよ!  それ、ただの痴女じゃんっ!! こわいなぁ、年増の痴女……」 恋に臆病になってるアラサーと可愛い新人ワンコの可愛い恋のお話、と思いきや、いきなりワンコがドS狼に豹変して翻弄されるドキドキラブコメディー。

生真面目君主と、わけあり令嬢

たつみ
恋愛
公爵令嬢のジョゼフィーネは、生まれながらに「ざっくり」前世の記憶がある。 日本という国で「引きこもり」&「ハイパーネガティブ」な生き方をしていたのだ。 そんな彼女も、今世では、幼馴染みの王太子と、密かに婚姻を誓い合っている。 が、ある日、彼が、彼女を妃ではなく愛妾にしようと考えていると知ってしまう。 ハイパーネガティブに拍車がかかる中、彼女は、政略的な婚姻をすることに。 相手は、幼い頃から恐ろしい国だと聞かされていた隣国の次期国王! ひと回り以上も年上の次期国王は、彼女を見て、こう言った。 「今日から、お前は、俺の嫁だ」     ◇◇◇◇◇ 設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 それを踏まえて、お読み頂ければと思います、なにとぞ。 R-Kingdom_6 他サイトでも掲載しています。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

異世界の物流は俺に任せろ

北きつね
ファンタジー
 俺は、大木靖(おおきやすし)。  趣味は、”ドライブ!”だと、言っている。  隠れた趣味として、ラノベを読むが好きだ。それも、アニメやコミカライズされるような有名な物ではなく、書籍化未満の作品を読むのが好きだ。  職業は、トラックの運転手をしてる。この業界では珍しい”フリー”でやっている。電話一本で全国を飛び回っている。愛車のトラクタと、道路さえ繋がっていれば、どんな所にも出向いた。魔改造したトラクタで、トレーラを引っ張って、いろんな物を運んだ。ラッピングトレーラで、都内を走った事もある。  道?と思われる場所も走った事がある。  今後ろに積んでいる荷物は、よく見かける”グリフォン”だ。今日は生きたまま運んで欲しいと言われている。  え?”グリフォン”なんて、どこに居るのかって?  そんな事、俺が知るわけがない。俺は依頼された荷物を、依頼された場所に、依頼された日時までに運ぶのが仕事だ。  日本に居た時には、つまらない法令なんて物があったが、今では、なんでも運べる。  え?”日本”じゃないのかって?  拠点にしているのは、バッケスホーフ王国にある。ユーラットという港町だ。そこから、10kmくらい山に向かえば、俺の拠点がある。拠点に行けば、トラックの整備ができるからな。整備だけじゃなくて、改造もできる。  え?バッケスホーフ王国なんて知らない?  そう言われてもな。俺も、そういう物だと受け入れているだけだからな。  え?地球じゃないのかって?  言っていなかったか?俺が今居るのは、異世界だぞ。  俺は、異世界のトラック運転手だ!  なぜか俺が知っているトレーラを製造できる。万能工房。ガソリンが無くならない謎の状況。なぜか使えるナビシステム。そして、なぜか読める異世界の文字。何故か通じる日本語!  故障したりしても、止めて休ませれば、新品同然に直ってくる親切設計。  俺が望んだ装備が実装され続ける不思議なトラクタ。必要な備品が補充される謎設定。  ご都合主義てんこ盛りの世界だ。  そんな相棒とともに、制限速度がなく、俺以外トラックなんて持っていない。  俺は、異世界=レールテを気ままに爆走する。  レールテの物流は俺に任せろ! 注)作者が楽しむ為に書いています。   作者はトラック運転手ではありません。描写・名称などおかしな所があると思います。ご容赦下さい。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第、直していきますが、更新はまとめてになると思います。   誤字脱字、表現がおかしいなどのご指摘はすごく嬉しいです。   アルファポリスで先行(数話)で公開していきます。

シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜

ミコガミヒデカズ
ファンタジー
 気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。  以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。  とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、 「儂の味方になれば世界の半分をやろう」  そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。  瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり
ファンタジー
カクヨムでフォロワー5000人を超える作品に若干の加筆修正を行ったものです。 表紙はAIによる自動生成イラストを使用していますので、雰囲気だけで内容とは特にシンクロしていません。 申し訳ないですが、Ver.4以降も更新する予定でしたが今後の更新はありません。続きを読みたい方はカクヨムを利用してください。 Ver.1 あらすじ 親友に誘われ始めたGreenhorn-online ハルマはトッププレイヤーの証である魔王を目指す親友を生産職としてサポートしようと思っていた。 しかし、ストレスフリーにひとりを満喫しながら、マイペースに遊んでいただけなのに次から次に奇妙なNPCのお供が増えていく。 それどころか、本人のステータスは生産職向けに成長させているだけで少しも強くなっていないはずなのに、魔王として祭り上げられることになってしまう。 目立ちたくないハルマは仲間を前面に出しては戦いたくなかった。 生産職のDEX振りプレイヤーであるハルマは、いかにして戦うことになるのか!? 不落魔王と呼ばれるまでの、のんびりプレーが始まった。 ―― ささやかなお願い ―― ゲーム内の細かい数字に関しては、雰囲気を楽しむ小道具のひとつとしてとらえてくださいますようお願いします。 現実的ではないという指摘を時々いただきますが、こちらの作品のカテゴリーは「ファンタジー」です。 行間にかんして読みにくいと指摘されることもありますが、大事な演出方法のひとつと考えていますのでご容赦ください。 公開済みのパートも、随時修正が入る可能性があります。

処理中です...