30 / 121
第1章 突入! エベレストダンジョン!
第30話 また喧嘩してる……
しおりを挟む俺達は今、50階層。
魔王軍を警戒し、壁の高い位置にツバメの巣型のキャンプ地を作って泊まることにした。
俺とミケは夕飯の支度、アニカとアニタが寝床の用意をしている。
グリフォン戦で俺の人生史上最高の打ち込みができたことで、鼻歌が出る程とてもいい気分なのだが……
「アニタ! あなたまた選り好みしてるでしょ!」
「してないもん! ちゃんと言われたとおりにしてるも~ん」
「うそつき! 絶対してるくせに~」
なんだなんだ? アニカとアニタが揉めてるのか?
疲れているだろうに、元気だな。
何度か同じような言い合いを繰り返していると、ミケが痺れを切らした。
「こらー! お主ら、さっきから何事じゃ! 黙って聞いておれば延々と! 場所を考えぬか。大人しくしておれ!」
「あっ! 絶対ミケちゃんだよ~。私じゃないよ~お姉ちゃん!」
「んなっ? 何がじゃ! 我に濡れ衣を着せるつもりか? アニタ!」
まあ、ミケが入っても収まらないか。……前回の件もあるしな。
やれやれ、仕方ない。
「おいおい、何の騒ぎだ? アニカ、どうしたんだ?」
「ユウトさん、……あ、あの……、えっと……、ユウトさんから頂いた飴、ありますよね?」
「飴? ああ、缶にイチゴだのメロンだのブドウだの、色々な味の飴が入っているやつか」
確か、しっかり者のアニカに数缶持たせて管理してもらってたな。
「はい。みんなで同じくらいずつ食べるようにしてたんですけど……。誰かがハッカ味の飴を食べてなくて、いっぱい余ってだいたい私に当たるんです」
……そんな理由で騒いでたの? ……解らんでもないが。
「なんじゃ全く、お主らは子供か?」
子供ですが?
******アニカの心の中
私だって、いろんな味の中でハッカ味はそんなに好きじゃない。
最初の1回は取り替えちゃったけど、ユウトさんから任された大事なお仕事だから頑張って食べてるのに……
何回も違う味に取り替えてるなんて! こんなことするのはアニタに決まってるわ!
******アニタの心の中
だってスースーしてカライんだも~ん!
まだアニタだってばれてないから大丈夫!
それに、ミケちゃんだってとっかえっこしてるの見たもんね~。
******ミケの心の中
あのスースーしてカライやつか。
確かにあれが出たら他の飴に取り替えておったが、ばれてはおるまい。
疑われているアニタには悪いが、そのまま犠牲になってもらおうかの。
******現場
「いい加減に認めぬか、アニタ。1回謝れば済む話ではないか。我らは許すぞ、なぁアニカ?」
「そうよ。もう取り替えないって約束できるなら怒らないから」
「や~! アニタじゃないもーん!」
こういった問答を繰り返し、追い詰められたアニタは、“ツバメの巣”の端に追い詰められていた。
「こら! 降りなさいアニタ! あぶないよ!」
「いや~だ!」
危ないから降ろそうと、アニタの片手を引っ張るアニカ、降ろされまいと抵抗するアニタ。
「これこれ、いい加減にせぬか!」
ミケが参戦し、アニタのもう片方の手を引っ張る。
「いや~!」
叫びと共に《フィジカルアップ》を発動したアニタ。
「「あっ!!」」
アニタはグイッとミケとアニカを引っ張り、勢い余って3人とも“巣”から落ちた。
「危ない!」
「キャアアアアアァァァァ……」
俺はあわてて下を覗く。
「……ァァァァァアアアアアア」
まるでバンジージャンプや、録画の巻き戻しみたいに3人共戻ってきた。
あれ? アニタは《フライ》を使えるようになったのか?
「キャハハッ! おもしろ~い! もう1回やろ? えいっ」
「あっこら! キャーーーーーー」
アニカとアニタは、グリフォンで怖い目にあったばかりなのに、よく遊べるな……
まぁ、その方がリフレッシュできていいのかもな。
これまでの諍いなど忘れて、落ちては戻るという遊びをくりかえす3人を呼び止め、大人として注意する。
「お前たちは忘れちゃってるかも知れんが、そもそもの喧嘩の原因を解決しなければ、飴は没収するぞ」
「「「え~~!!」」」
「ハッカ味だって甘いぞ」
結局ミケとアニタが白状し、アニカに謝って収まった。
騒動も丸く収まって夕食を済ませた後に、アニタに聞く事があるのを思い出した。
「ところでアニタは《フライ》を使えるようになったのか?」
「うん! そ~だよ!」
そういうのは教えてくれてもいいと思うんだ、俺は。
「そうか~、良かったな。……ついでに皆のステータスも確認しておこうか。久しぶりだし」
名前 : ユウト ババ
レベル: 40
スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉
A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐ C・察知〈7〉
名前 : アニカ クマル
レベル: 40
スキル: A・言語理解 A・強靭〈6〉 C・槍技〈7〉 C・光属性魔法〈6〉
C・察知〈4〉
名前 : アニタ クマル
レベル: 40
スキル: A・言語理解 A・感知〈6〉 C・短剣技〈7〉 C・無属性魔法〈6〉
「あれ? ミケは?」
「わ、我はレベル41じゃ。他はほとんど変わらんから、見せんでも良いじゃろ?」
「まぁ、それもそうか。……皆だいぶレベルが上がったな。ニア、上がり過ぎな感じもするんだけど……」
「そんなことはありません。皆さんはダンジョンのモンスターだけではなく、魔人の軍団とも戦っていますから」
一理あるな。
「それもそうか。ところで、アニカ達はどんな魔法を使えるようになった?」
「私は、え~っと《ライトバインド》《ハイヒール》とかですね」
「アニタはね~、《フローティング》《フライ》、浮くのと飛ぶの! 《ストレージ》も広くなったよ!」
よしよし順調だな。武器の技も増えているはずだが、それはまた実戦で見せてもらおう。
「アニタ、ストレージにハッカ飴を隠すなよ?」
******グンダリデ隊
「グンダリデ様、ご報告に上がりました」
「申せ」
「塔のある部屋に獣人の幼子がいただと? ダンジョンのモンスターでは無く?」
「はい、こちらの存在に気付いているようでしたので、念の為その場を離れました」
その幼子がライノ3体を圧倒? どういうことだ?
「グンガルガは? 何か形跡はあったか?」
「直接の物は見当たりませんでしたが、地面にブラックウルフやオーガの死体が転がっておりました。ライノの餌となってしまいましたが……」
……やっぱり伝令が転落して報告が届いていないだけなの?
いや、その幼子に出会っていないはずは無いわ……
「よし、ではお前はこのまま兄者に報告に行け」
「はっ! グンダリデ様は待機という事でよろしいですか?」
「いや、私はこのまま兵を率いて進軍する。確かめたい事もあるのでな」
……グンガルガ、無事でいなさいよ。
0
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~
北きつね
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。
ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。
一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。
ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。
おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。
女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。
裏アカ男子
やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。
転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。
そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。
―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる