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第1章 突入! エベレストダンジョン!

第30話 また喧嘩してる……

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 俺達は今、50階層。
 魔王軍を警戒し、壁の高い位置にツバメの巣型のキャンプ地を作って泊まることにした。
 
 俺とミケは夕飯の支度、アニカとアニタが寝床の用意をしている。
 グリフォン戦で俺の人生史上最高の打ち込みができたことで、鼻歌が出る程とてもいい気分なのだが……


「アニタ! あなたまた選り好みしてるでしょ!」
「してないもん! ちゃんと言われたとおりにしてるも~ん」
「うそつき! 絶対してるくせに~」

 なんだなんだ? アニカとアニタが揉めてるのか?
 疲れているだろうに、元気だな。


 何度か同じような言い合いを繰り返していると、ミケが痺れを切らした。

「こらー! お主ら、さっきから何事じゃ! 黙って聞いておれば延々と! 場所を考えぬか。大人しくしておれ!」
「あっ! 絶対ミケちゃんだよ~。私じゃないよ~お姉ちゃん!」
「んなっ? 何がじゃ! 我に濡れ衣を着せるつもりか? アニタ!」

 まあ、ミケが入っても収まらないか。……前回の件もあるしな。
 やれやれ、仕方ない。

「おいおい、何の騒ぎだ? アニカ、どうしたんだ?」
「ユウトさん、……あ、あの……、えっと……、ユウトさんから頂いた飴、ありますよね?」
「飴? ああ、缶にイチゴだのメロンだのブドウだの、色々な味の飴が入っているやつか」

 確か、しっかり者のアニカに数缶持たせて管理してもらってたな。

「はい。みんなで同じくらいずつ食べるようにしてたんですけど……。誰かがハッカ味の飴を食べてなくて、いっぱい余ってだいたい私に当たるんです」

 ……そんな理由で騒いでたの? ……解らんでもないが。

「なんじゃ全く、お主らは子供か?」
 
 子供ですが?


******アニカの心の中


 私だって、いろんな味の中でハッカ味はそんなに好きじゃない。
 最初の1回は取り替えちゃったけど、ユウトさんから任された大事なお仕事だから頑張って食べてるのに……
 何回も違う味に取り替えてるなんて! こんなことするのはアニタに決まってるわ!


******アニタの心の中


 だってスースーしてカライんだも~ん!
 まだアニタだってばれてないから大丈夫!
 それに、ミケちゃんだってとっかえっこしてるの見たもんね~。


******ミケの心の中


 あのスースーしてカライやつか。
 確かにあれが出たら他の飴に取り替えておったが、ばれてはおるまい。
 疑われているアニタには悪いが、そのまま犠牲になってもらおうかの。


******現場


「いい加減に認めぬか、アニタ。1回謝れば済む話ではないか。我らは許すぞ、なぁアニカ?」
「そうよ。もう取り替えないって約束できるなら怒らないから」
「や~! アニタじゃないもーん!」

 こういった問答を繰り返し、追い詰められたアニタは、“ツバメの巣”の端に追い詰められていた。

「こら! 降りなさいアニタ! あぶないよ!」
「いや~だ!」

 危ないから降ろそうと、アニタの片手を引っ張るアニカ、降ろされまいと抵抗するアニタ。

「これこれ、いい加減にせぬか!」

 ミケが参戦し、アニタのもう片方の手を引っ張る。

「いや~!」

 叫びと共に《フィジカルアップ》を発動したアニタ。

「「あっ!!」」

 アニタはグイッとミケとアニカを引っ張り、勢い余って3人とも“巣”から落ちた。

「危ない!」


「キャアアアアアァァァァ……」

 俺はあわてて下を覗く。

「……ァァァァァアアアアアア」

 まるでバンジージャンプや、録画の巻き戻しみたいに3人共戻ってきた。
 あれ? アニタは《フライ》を使えるようになったのか?

「キャハハッ! おもしろ~い! もう1回やろ? えいっ」
「あっこら! キャーーーーーー」

 アニカとアニタは、グリフォンで怖い目にあったばかりなのに、よく遊べるな……
 まぁ、その方がリフレッシュできていいのかもな。

 
 これまでのいさかいなど忘れて、落ちては戻るという遊びをくりかえす3人を呼び止め、大人として注意する。

「お前たちは忘れちゃってるかも知れんが、そもそもの喧嘩の原因を解決しなければ、飴は没収するぞ」
「「「え~~!!」」」
「ハッカ味だって甘いぞ」

 結局ミケとアニタが白状し、アニカに謝って収まった。


 騒動も丸く収まって夕食を済ませた後に、アニタに聞く事があるのを思い出した。

「ところでアニタは《フライ》を使えるようになったのか?」
「うん! そ~だよ!」

 そういうのは教えてくれてもいいと思うんだ、俺は。

「そうか~、良かったな。……ついでに皆のステータスも確認しておこうか。久しぶりだし」

 名前 : ユウト ババ
 レベル: 40
 スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉
      A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐ C・察知〈7〉 

 名前 : アニカ クマル
 レベル: 40
 スキル: A・言語理解 A・強靭〈6〉 C・槍技〈7〉 C・光属性魔法〈6〉
      C・察知〈4〉
              
 名前 : アニタ クマル
 レベル: 40
 スキル: A・言語理解 A・感知〈6〉 C・短剣技〈7〉 C・無属性魔法〈6〉


「あれ? ミケは?」
「わ、我はレベル41じゃ。他はほとんど変わらんから、見せんでも良いじゃろ?」
「まぁ、それもそうか。……皆だいぶレベルが上がったな。ニア、上がり過ぎな感じもするんだけど……」
「そんなことはありません。皆さんはダンジョンのモンスターだけではなく、魔人の軍団とも戦っていますから」

 一理あるな。

「それもそうか。ところで、アニカ達はどんな魔法を使えるようになった?」
「私は、え~っと《ライトバインド》《ハイヒール》とかですね」
「アニタはね~、《フローティング》《フライ》、浮くのと飛ぶの! 《ストレージ》も広くなったよ!」

 よしよし順調だな。武器の技も増えているはずだが、それはまた実戦で見せてもらおう。

「アニタ、ストレージにハッカ飴を隠すなよ?」


******グンダリデ隊


「グンダリデ様、ご報告に上がりました」
「申せ」


「塔のある部屋に獣人の幼子がいただと? ダンジョンのモンスターでは無く?」
「はい、こちらの存在に気付いているようでしたので、念の為その場を離れました」

 その幼子がライノ3体を圧倒? どういうことだ?

「グンガルガは? 何か形跡はあったか?」
「直接の物は見当たりませんでしたが、地面にブラックウルフやオーガの死体が転がっておりました。ライノの餌となってしまいましたが……」

 ……やっぱり伝令が転落して報告が届いていないだけなの?
 いや、その幼子に出会っていないはずは無いわ……

「よし、ではお前はこのまま兄者に報告に行け」
「はっ! グンダリデ様は待機という事でよろしいですか?」
「いや、私はこのまま兵を率いて進軍する。確かめたい事もあるのでな」

 ……グンガルガ、無事でいなさいよ。
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