20 / 121
第1章 突入! エベレストダンジョン!
第20話 ちょっとゆっくりする。-みそ汁と漫画本とお風呂-
しおりを挟む30階層でフロアボス――ゴブリンキングを倒した俺達は、ここで泊まることにした。
「今日の朝の件もあるし、油断禁物だ」
入り口も31階層への扉も閉まっているが、念の為しっかりと《ロックウォール》を張る。
SSランクスキル『魔法大全』のレベルが、8に上がって使えるようになった地属性魔法の《ロックドーム》。
防御系の魔法だが、キャンプでも使えるんじゃないかということで試してみる。
ゴッゴゴ、ゴゴゴゴゴッ!
テントがすっぽり入ってもまだ余裕があるくらいの広い“岩のドーム”が出来た。
「出入り口を作ったらカマクラみたいで最高じゃないか。テントも要らないかな。照明はアニカに任せるぞ」
「はい! ……かまくら? って何ですか?」
「ああ、雪をカチカチに固めて中をくり抜いたものだよ」
寝床の準備もそこそこに、俺は料理の用意をする。
日本を出て5日? 6日? どっちでもいいが、無性に味噌汁が食べたいのだ! 豆腐の!
これまでは味噌がアニカやアニタの口に合うか分からないから、パスタやシチュー等を作っていたが、彼女達にも食べてもらおう。
味噌汁ならば米も、ということで俺が1人で準備する。
ミケ、アニカ、アニタの3人はマットレスの上で漫画を読んでいる。
家の家電製品以外の殆どの家具を空間収納に入れているので、2日目以降は俺の小さな本棚を出している。
と言っても、ボクシング漫画と秦の始皇帝が天下統一を目指す漫画、ロードバイク競技の漫画しかない。
「でんぷし~ろーる」
「シュッシュッ! フリッカーなのじゃ!」
「蛙飛びー!」
今日はボクシング漫画の真似をして遊んでいる。
……女の子が読むような漫画や雑誌なんて持って無いしな。……買っときゃよかったかな。
しかし、こいつらはレベルが上がってるから身体能力も高くなってて、まるで本物のボクサーの様だな。それにしても、アニカの技のチョイスは何なんだ。
昼間はアニタが、隙あらばファルファルしようとしてたからな。止めたけど……
途中からミケとアニタの試合の声しか聞こえなくなったと思ったら、アニカが真っ赤な顔で俺の所へやってきた。
「あ、あの……私、私も大きくなったらこんな風になれるでしょうか?」
1冊の雑誌のページを開いて持ってきた。
――どれ?!!!!!!!!! 豊満なお胸のセクシー系の御本じゃないか!!!!!!!
「あーっ! これは見ちゃダメなヤツー!」
パッと奪い取り、バーベキューコンロの火に目をやる……燃やそうか迷ったが、空間収納に入れとくことにする。
本棚に入れっぱなしだったか?
「い、いっぱい食べて、いっぱい寝ると大きくなるよ。だから、本の事は内緒な? なっ!」
騒ぎを聞きつけたのか、ミケとアニタもやって来た。が、2人は匂いに釣られた様だ。
「さっきから美味しそうな匂いがするのじゃ。ユウトの家の料理と似た匂いじゃのう。今日はなんじゃ?」
「豚肉の生姜焼き定食だよ。あ、ミケが初めて家に来た日の料理だ!」
「おお!あれも美味かったのぉ~」
「初めての匂いです。日本の料理ですか?」
「いいにおい~」
「そうだよ。簡単なものだけどな。もうちょっとで出来るよ。皆で準備を手伝ってくれ」
「「「は~い!」」」
あ~うまい。久しぶりの味噌汁!
「熱いから気をつけて飲めよ~。豆腐も熱いからな」
「あちゅい!」
「アニタよ、慌てるでない。フーフーして食べるのじゃ」
「んんっ! おいしいです!」
「じゃろじゃろ? ユウトのご飯は美味しいのじゃ! エッヘン」
「ミケが自慢してどうするんだ? だいたいこっちでも晩御飯は俺が作ってただろ」
「「「アハハハハハ」」」
やっぱり、笑い声のする食卓っていいなぁ。
「ニア、味はどうだ?」
「はい。これも初めての味で、とても美味しいです」
ニアは別に食事を摂らなくても平気だが、皆と食卓を囲みたいのと、味に興味があるとのことで味見程度に食べている。
ただ、ニアのサイズに合う食器が無いので、小皿を使ったり、21階層以降は葉っぱで器を作ったりしている。
「さて、後はケーキじゃな」
「はいはい」
夕食を終え、片付けをアニカとアニタに任せて、俺はもう1つやるべき事がある。
そう、風呂だ!
昨日のミケ達の水浴びの時から風呂に入りたくて仕方なかった。
昨日は我慢できたが、1日で限界だ。
もう1つ《ロックドーム》を作って、その中で試行錯誤すること30分。
五右衛門風呂の釜でも、いやドラム缶でも買っておけば良かったと後悔しながら、岩を削り大人2、3人入れるサイズの湯船を完成させた。
湯船を綺麗にして湯を張って、久しぶりの風呂を堪能している。
「あ~、気持ちいいぃぃぃ。生き返るな~」
やっぱり《クリーン》だけとは気分が違うな、気分が。
「おい、こら! お主ら、待てぃ!」
一応見張りに立ってくれているミケの声がする。
「待たぬか! せめて巻けぇい!」
ん? この間みたいに喧嘩か?遊びか?
訝しんでいると、アニカとアニタがタオルを巻いて走って来る。
「おいおいおい、待ちなさい。順番に入らせてやるから待ちなさい!」
「お主らには負け~ん!」
ミケが見張りそっちのけで白狐の姿となって、走っているアニカとアニタの頭上を飛び越えて湯船にダイブして来た。
バッシャーン!
「うぇっぷ! ミケ! 飛び込むもんじゃ――あっ!?」
バシャン! バシャン! 2人も飛び込んで来ちゃった。
念の為にタオルを巻いてた俺の先見の明、グッジョブ!
「……あのさ、四角い風呂なんだからさ、角に入れば4人で丁度いいと思うんだけど、なんでくっついてるんだ?」
両サイドにアニカとアニタがいて、ミケは俺の懐にいる。
「良いではないか。我は定位置におるだけじゃ」
「いや、そういう事じゃないと思うが……」
「お嫌でしょうか? ユウトさん」
「いや、そういう事はないが……。あ、そうだ! 入浴剤があったはず、……あった!」
「あ~! しゅわしゅわ~」
「おいユウトよ、風呂にはずっとお主と入っておったが、これは初めてじゃぞ? 隠しておったな~? えいっ!」
「うわっ! こらミケ!」
「あはは~、え~い!」
「やったわねーアニタ! それ!」
お湯のぶっかけ合いが始まってしまった。
「は~、私は初めてですが、いいものですね、お風呂って」
いつの間にかニアが隣に入っていた。
「うわっ! ニア! いたの? ってかお風呂入れたんだ?」
「ええ。……見ます?」
「あ、いや、……興味はあるけど結構です。……溺れないようにな」
0
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる