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オッサン、兄と再会す。

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結局定時に仕事は終わり、いつも通りなら17時半頃に家に着く。

が、何故か少しだけ早く家に着いてしまった。
電車もホームに着いたらすぐに乗れた。
信号にも1度もかからなかった。
普段ならラッキーで済ますのに今日はなんだか嬉しいのか気まずいのか良くわからない。
きっと自分の中の煮え切らない感情がそう思わせているのに違いない。
一度小さく深呼吸をして、普通を装いながらも玄関に手をかけた。
「ただいまぁ………あ?」
「秀一さぁぁん」
いつもと変りなく玄関を開けると、目の前にはガムテープで両手両足をぐるぐる巻きにされて廊下に転がされ、その後ろに見た目は汚いが恰幅の良い髭面でよく知ってる懐かしい声と仕草。
すぐ上の兄の清一(せいいち)兄さん(三男)が『よ!久しぶり!』みたいな顔で胡坐をかいた状態で居た。

何年ぶりだろうか。
この男は世界中を転々として数年から3か月に一度フラリと家に帰ってくる。
見た目も厳ついし世界中歩いているので力もなかなかに強い。
レオン君はきっと軽くあしらわれ拘束されたのだろう。
なんとなく想像がついて少し笑いそうだった。
しかし、もう少し遅かったら本当に警察に出されるところだったかもしれないなと思ったら、今日の信号等にあたらず帰れたことが良かったと思った。
「あぁ…兄さん?帰って来たんだ…」
「あ、兄さん?じゃねぇよ!こいつ誰だよ!もう少しで警察に衝き出すところだったぞ。」
「秀一さん!この人滅茶苦茶強いぃ~!」
「あぁ…そういえば…でも、兄さんの連絡先知らないし」
「前に教えただろ!」
「は?…それ何年前の話だ!10年以上前の話だろ?あれから番号も変わってるみたいだし…携帯会社変えたんじゃないか?」
「そうだったのか?あー…そうか…そういえば、よく壊れたり失くして買い換えてるから覚えてねぇなぁ」
「で、そろそろレオン君を解放して欲しいんだけど?」
「おぉ!そうだ!こいつなんでここに住んでるんだ?」

相変わらずの適当ズボラな性格でがさつな兄だなと感心してしまう。
その場で説明をしようかとも考えたがとりあえず玄関で雑に寝転がされてるレオン君が可哀そうだし、おっさん二人で立ち話も何なので場所の移動をした。

手足のガムテを剥がして冷たい麦茶を用意して、ダイニングのソファに清一兄さんとその向かいに委縮しているレオン君と私も座る。
さて、どう説明して良いか…。

「秀の恋人か?」

全く想像もしてなかった第一声の言葉が清一兄さんから発言されて固まる。

「は?え?はぁ?」
「いや、お前らの様子からそうにしか…」
「え??」
おかしい…帰って1時間もしてないし普通にしていたと思うのだが…
「特にその隣のヤツな」
「あ。」
レオン君はしっかりと私の腕にしがみ付き寄り添うように座っていた。
ここの所毎日こんな感じでレオン君がいつの間にか私の隣に座って夜はのんびりしていることが多かった。
その為今の体制を気にもしていなかったが…
そうだ…これは…そう思うな…過剰なスキンシップに慣れてしまっている自分が怖い…
「あー…………そう思うよな。ははは」
「僕が押し掛け女房してます!」
「…………そうか。俺には偏見は無い!それだけは心配すんな。じゃあ…しばらく邪魔するが…俺の事は気にするな。」
「は?」
「俺は玄関横の自分の部屋に暫く居るが一週間程度でまた出る。あ、そうだ!これお土産。」
清一兄さんは特になにも気にするでもなくごくごく普通にいつも通りで、私に見た目だけでは全く意味の解らないちょっと不気味な人形のお土産を渡して麦茶をイッキ飲みして「じゃあ」といって部屋に入っていった。

「あれ?説明は?」
「レオン君………私が帰るまで何か話した?」
「あ…はぃ…」
「え?何を話したの?変な事じゃないよね」
何の話をしたのかとても気になるが、レオン君は少し考えた後に、
「それは途中でお話します!とりあえず行きましょう!」
私の手を取り自室へと向かい着替えを用意をしていたのか着替えさせられ、出かける用意をさせられた。
「デート行く約束だったでしょ?」
「………約束はしたが…」
「大丈夫です!あのお義兄さんにも今夜はデートだって言いましたし!」
「え?言ったの?」
「はい。秀一さんとの関係を話さないと警察突き出すとか言うので…」
「あ?あぁ………そうか…で、どんな風に説明を?」
着替えを急がされながらもちょこちょこと会話したりできる余裕は有るのでレオン君は兄に話したことを簡潔に教えてくれた。
お腹が空いて倒れていた所を拾われて、ごはんがとても美味しかったのと一目惚れで今後も一緒に食べ続けたいと猛アタックして同棲まで堕としたと説明したらしい。
インキュバスだとかは敢えて触れずに。
まぁ…嘘はついていない。
言葉が足りないだけだったので良いのだろう。

とりあえず出かける前に清一兄さんの所に少しだけ顔を出そうと思った。
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