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閑話 教会の夢魔3

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カタリは胸元にある神の象徴であるものに、触れた。

カタリは祭壇を見つめる。上段にあるいくつもの銀の棒が連なった神の象徴から、いや、この教会の全体から神の存在と、神の鼓動が聞こえる。

カタリのことを、この教会の神が薄目を開けてみている。

「カタリ」
ソニアの声が聞こえてきて、カタリは後ろを振り返る。
そこにはソニアが涼しい顔をして立っていた。

「この教会の神は異端である獣人には厳しいのに、相変わらず君は平気な顔をしていますね、ソニアさん」
カタリには白い神の手が、ソニア首に回されているのが見える。
神は強い思念願の塊でもある。それを敵にして、平然としているソニアは相当なのだろう。それ以上の想いがあるのか。

「カタリ」
「呼吸するのにもきついはずだよ、ソニア君。アル君はどうしました?」

カタリとソニアが出会ったのは、まだソニアが少年の面影が見えた時のころだ。ぼろぼろの様子で、それでも感情をなくしたような無表情だった。それは今も変わらないが、ソニアの瞳からは強い意志が見える。

「アルは外で待ってもらっている」
「私に何かはなしでしょうか?」
「アルに手を出すな」

ソニアの瞳が、琥珀色に異様に底光りする。なんという強い想いだろう?この教会の神が、身もだえしている。
神を食らう狼の話を、カタリは昔どこかで聞いたことを思い出す。

そんな凄まじい光景とは裏腹な、ソニアの言葉に、カタリは噴き出しそうになる。

「アル君に?」
「お前たちが何かしていることはわかっている。アルを巻き込むな」
「……そう」
にこにこカタリは、実直で無表情なソニアを見る。
「それはアル君を、愛しているから?」
「……アルは家族だからだ」
そう言うと、ソニアは去っていく。

そんなソニアの相変わらずの言葉に、カタリはため息を吐く。
「なんて、つまらない言葉なのだろうねぇ」
夢魔である自分には、ソニアの言葉はよくわからないが、何となく人を懐かしむ感じなのかはわかっている。
しかし、夢魔には人の下心は見えている。

くすりと、カタリは笑う。

また祭壇を見つめる。
神は魔力を喰われて、また深い眠りについている。
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