叶うのならば結ばれたい。

ろーる

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12.伝言を預かっています

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兄さんて、誰が誰の?今の会話の様子だと響が涼玖さんに兄さんと言ったんだから、響のお兄さんが涼玖さんということ??
頭に流れてくる情報の量と衝撃があまりにも大きすぎる....
 
「ちょっと、まって」
「響、兄さんって、涼玖さんが?」
「響のお兄さん?」
思わず2回聞き返す。
響と僕は、小学生の頃から仲良くしていて、何回も家にも行ってるのに...家に行ったときもお兄さんがいたなんて聞いたことがなかった。
 
「うん。年が8も離れてるけど、これ僕の兄さん」
そして、響は涼玖さんを指さした。

....あれ?もしかして仲悪い?なんか空気が重いような、、
そんな重苦しい空気の中、響は言葉を続けた。
「兄さんは僕が小学校に入る前に、家を出てここに住んでるから楓は会ったことないかな」
 
「響くん、あまり他人に話すような話じゃ...」
響が続きを話そうとしたところで、涼玖さんは気まずそうに話を遮る。
あまり聞かれたくない出来事なのかな。
響が居るときの涼玖さんは、申し訳なさそうにしていて、少し元気がないように見える。
声のトーンも若干落ちてるし。
 
「は?別にいいでしょ。」
「楓は他人じゃないしそれなら兄さんの方がほぼ他人なんだけど?」
響の言葉の節々に棘が....
 
「あっあのちょっと、、、」
僕は二人の間を流れる空気がどんどん険しいものになっていくのを察知し思わず口を開いた。

この状況を見るに、響はお兄さんの涼玖さんのことを好きでは無さそう..何か理由があるんだろうけど....

一方、涼玖さんは響のことをどう思っているかは分からないけど、話しにくいといった感じだ。
 
「僕も楓がここに居るって言うから来たけど、なんでこんな事になってるかは聞かせてもらいたいんだけど。」

僕の居場所を響に伝えたのは涼玖さんだったんだ。
だから響はここまで来れたのか...
もしかして父さんと母さんも知ってるのかな...

僕がいろいろと考え始めると、響が耳打ちで「大丈夫!おじさんとおばさんには話して来たから!」
「そこら辺は心配しないで」
と小声で言った。
.....そっか父さんと母さんは僕が受験を投げ出した事をもう完全に分かってるんだ...でも当たり前か...
電話何件も無視して、家にも帰らないで、こんなに騒がせてるし。
すると響はまた耳打ちで、「あとでゆっくり話そ」と付け加えた。

そっか...響は僕が不安に思っていることはもう分かってくれていたんだ。
「...響、ありがと」
僕は目を見ながらしっかりと伝えた。
今響が居なかったら大変な事になってたし、本当に助けられてばかりだな...

そして僕たち2人は話を一旦終わらせ、それ以上話すことはなく、再び涼玖さんに視線を移す。

僕たちの視線が自分に向いたことに気付くと、涼玖さんは口を開いた。
「ここの事情に関しては、白明様から教えるようにと伝言を預かっています」
 
「え?白明から?」
伝言って....白明...なんで来ないんだろう...?
直接話してくれてもいいのに....

そうして、涼玖さんは響の斜め後ろに座り、僕に向き直って、いつもの柔らかい表情を封印した。

少し息を吸ったあと、真剣な顔で話し始める。
「ここは守護霊が住む神社です。」
「この神社には4人の守護霊がいるのですが、その1人が白明様です。」
「信じられないかもしれませんが、楓様。
白明様は人間ではなく霊なんです。」
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