叶うのならば結ばれたい。

ろーる

文字の大きさ
上 下
11 / 12

11.元気でよかったよ

しおりを挟む
受け入れていけるかもなんて僕も呑気なもんだなぁ...
受験拒否して、白明に助けてもらって、考えないといけないことが山積みすぎて、思考回路がおかしくなったのかな...

ドーナツを食べ終えてしばらく経ち、そんなことを考えていた時、、、




......あれ....?急にフワフワしてきた..ような..
視界に入る地面が歪む...
頭がいたい...

「...う..頭、、、われそ、、」

「楓?」
「大丈夫?!」
「楓!?」

白明の声が聞こえたけど、回る視界と激しい頭痛で答えることができない。
「うっ」
「いた..い..」
あまりの突然の頭痛に呻き声を上げる事しかできなかった。

白明が背中に手を回して僕の身体を支え、白明の長い髪が顔に当たる。今は、そのこそばゆさも頭痛にすべてもっていかれている。
白明もかなり慌てているようで、僕の額や頬を触りながら「楓?」「楓!」とずっと僕の名前を呼んでいるのがが聞こえた。
そして再び激しいキーンとした頭痛が襲ってきて、そのまま僕は意識を飛ばしてしまった。











..........       .......
「...ん...」
目を少し開けると室内光の明るさに目が眩んだ。広い和室と、その部屋にある窓からうっすらと見える景色は暗く、外の光より室内光の明るさが勝っていて、今が夜だということが分かった。
あれ....?さっきまで白明と話して、それで、どうしてたんだっけ...
そんなことをぼんやりと考えながら体を起こす。

「....は、くめ、い?」
目覚めたばかりの呂律の回らない口で呼んでみたものの、その返答は思いがけない人からのものだった。

「あっ!かえで!かえで!大丈夫か?」
「目覚めた?」

目の前が急に真っ暗になって数秒後、自分が抱きしめられていたことに気が付き、まだぼやっとしていた思考が緊張するのを感じる。

「ひ、、ひびき?!」
抱きしめられて肩に顔を埋めたままぐぐもった声でその名前を呼んだ。
目が覚めて目の前に居たのは白明ではなく親友の響だった。

「よかったぁ~」
響とは電車に乗る前に電話で会話したきりだ。あの時は受験に受かったら響の家のコロッケを食べる約束をしたんだっけ。

「ご、、ごめん」
そして僕は、響の肩を両手でそっと自分から離しながら呟くように言った。
なんて言い訳していいか分からず、ごめんしか出てこない。
心配して何件も電話もらってたのに全部無視したんだよな、、

「いいから!ほら病人は絶対安静!寝てなさい!」

「ありがと。」
「でも大丈夫。体はもうなんともないから。」

「....元気でよかったよ」
そう言って響は笑う。
本当にどこまでも優しいな響は。
そんな響だから辛いとき相談して、元気になれるんだけど。

すると、襖を開ける音が聞こえ、誰かが入ってくるのが見えた。
「あ!はく、、め
言いかけたところで、その名前の最後の一文字は口から出ることはなかった。
ん?あれ?さっきからなんで白明を待ってるんだ僕は。

「楓、はくめ、、って誰?」「あっ!涼玖さん!」

響と僕は同時に話したらしく、お互い顔を見合わせる。

「え?響なんか言った?」

「あっ!いや!なんでもない!」
「気にしないで」
そう言いながら響は手を横に振り、襖に立っている涼玖さんの方に視線を向けたので、僕はそれ以上追求する事はしなかった。

そして涼玖さんは少し微笑み、
「よかった。楓様、目が覚めたようで。」と安心した表情をみせ、襖をそっと閉める。
湯呑みを盆にのせて手に持っていたので、響にお茶を持って来たんだと分かった。

僕が涼玖さんに謝ろうとしたその時、響が先に口を開く。

「兄さん。」
「別に来なくていいのに。」

響がその単語を発した瞬間、僕の思考は一旦止まった。

...え?今「兄さん」って言った?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

余四郎さまの言うことにゃ

かずえ
BL
 太平の世。国を治める将軍家の、初代様の孫にあたる香山藩の藩主には四人の息子がいた。ある日、藩主の座を狙う弟とのやり取りに疲れた藩主、玉乃川時成は宣言する。「これ以上の種はいらぬ。梅千代と余四郎は男を娶れ」と。  これは、そんなこんなで藩主の四男、余四郎の許婚となった伊之助の物語。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

もういいや

ちゃんちゃん
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが…… まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん! しかも男子校かよ……… ーーーーーーーー 亀更新です☆期待しないでください☆

ヤンデレでも好きだよ!

はな
BL
春山玲にはヤンデレの恋人がいる。だが、その恋人のヤンデレは自分には発動しないようで…? 他の女の子にヤンデレを発揮する恋人に玲は限界を感じていた。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...