叶うのならば結ばれたい。

ろーる

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7.妬けるなぁ

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恋人って...まだ理解が追いついていないのに
....キスって....
それから、僕も涼玖さんも、この2人の思いがけない言動と行動に、呆気にとられて何も話せずにいた。

「あ?なんだよ。」
なんだよってキスしたからこんな空気が...
僕は居候みたいなもので、こんな事を思ってしまうのは失礼極まりないと分かっているけど、とりあえずこの2人には退散願いたい。これ以上空気が凍りついたら、耐えられそうにない。

少しの間沈黙が流れたけど、
「あー!今日僕買い出しあるんだった!」
「ねぇみずきも一緒にいこ?」
紅月さん、ナイス。
今は、この沈黙した空間に、誰かが話をしてくれるだけで救われる。

「あぁ。いいけど」
「じゃ行くか?」
空気を感じとったのか、たまたまかは分からないけど、助かった。
どうやら、2人で、買い物に行くらしい。

「うん!!」
「いこいこ!」
「じゃあね~!おにいさんとりく!」
「おにいさんは今度名前教えてね~!」

「いっ...いってらっしゃい...。」
と、涼玖さん。

僕は頭を下げた。 
よかった。買い出し行ってくれて...

2人が買い出しに行くと言ってここを後にしてすぐ涼玖さんが口を開いた。
「楓様。2人がすみません。」
「話すととてもいいところのある人ですが...」
「2人で居ると周りが見えなくなってしまう様です....」
涼玖さん必死のフォロー。に対して僕は、
「....そうなんですね....」
と返すしかなかった。
次、会った時は今日よりあの2人と会話できる様に努力しよう。

「ちょっとびっくりしたけど」
「2人に会えてよかったです。」
会えてよかったというより、僕1人の時に会わなくてよかった...涼玖さんが居てくれてよかったと心底思った。

「かなり衝撃的でしたよね...」
そう言って涼玖さんは苦笑していた。
「でも、これで楓様が会っていないのはあと1人になりましたね。」

そうか、白明はくめい涼玖りくさん、紅月こうづきさんに、水旗みずきさん。もう4人に会ってるんだなぁ。
あと1人。怖い人じゃなければいいなと思った。
「あとの1人はどんな人ですか?」

「とても、しっかりした人です。」
蒼天そうてん様という方ですよ。」
「ここの事務的な作業はすべて、蒼天様が1人でしてくれています。」

「すごい...」
「1人で....」
涼玖さんの話では、すごく賢い人が想像される。

「私も真似できません。」
「この少ない人数で、回っているのも蒼天様いてこそです。」
蒼天さんって人が事務作業なら白明は何を任されているんだろう?
ふと思った時...

「涼玖と何話してたの?楓?」
聞き慣れた声が聞こえて後ろを振り向いた。

「わっ!!」
「はっ白明?」
「びっくりした。」

涼玖さんも、僕に少し遅れて、白明に気付いた。
「戻られてましたか。」
「白明様。おかえりなさい。」
「そういえば昨日からお会いしてませんでしたね。」

「確かにそうだね。」
「ただいま。」
昨日から会ってないってことは、白明は、誰にも会わずに、一晩僕に付き添ってくれていたんだ。

「楓。さっきは急に居なくなるから探したよ?」
「そんなに恥ずかしがらなくて.....ん!?」

僕は白明が言おうとした言葉を遮って、白明の口を手で塞いだ。
白明との背の差がありすぎて、全力で背伸びをする。
そして、
「白明!ちょっとストップ!」
「その話やめて!」
と小さな声で言った。

白明が、話そうとしていた言葉を飲み込んだのが分かって、ゆっくり口を塞いでいた手を離す。
恥ずかしがらなくてもって、恥ずかしいし、涼玖さんに、何があったのか聞かれてもあんな事...言える訳がないし。
そんな僕の表情を察したのか、白明は小さな声で、僕に「分かったよ。」と言って頭を撫でた。

「ふふっ」
「仲が良さそうで何よりです。」
と涼玖さんに笑われてしまった。

「そうだよ。」
「楓と私の仲だからね?」 
楓と私の仲?ってどんな仲?

でも、涼玖さんもいてくれるお陰か、白明と顔を合わせても、割と普通に話せてるかも。
白明とあんな事をしてしまって、これから先普通に話せるか不安だったけど、ちょっと頭が冷えたみたい。よかった。

「すみません、」
と涼玖さんが申し訳なさそうな表情。

「どうしたの?涼玖?」
「何か用事?」
白明がそう聞くと、

「私、もう仕事に行かなければいけません。」
「楓様とも、もう少しお話できたらよかったですね。」

「え?そうだったんですか!」
「ごめんなさい!僕と話していて抜けられなかったですよね。」
涼玖さんに悪い事したな。

「いえ。私は楽しかったです。」 
「また、お話ししましょうね。楓様。」

「はい!」
「こちらこそ!」
「仕事頑張ってください!」

「では、楓様、白明様、私はこれで、」
そう言って涼玖さんは、仕事に出かけて行った。
涼玖さんに、いろいろここの事を聞けたらと思ったけど、仕事行っちゃったし、白明に教えてもらうしかないな。

「白明聞きたいことあるんだけど....って」
「あれ?何かあった?」
白明がなんともいえない表情をしていたから、僕は顔を覗き込んだ。

そのすぐ後、白明は僕の腕を掴んだ。
そして、僕の目を一瞬みて、目を逸らした。
本当にどうしたんだろう?
「白明?」

「妬けるなぁ」

「えっ?」
そして、腕を掴む白明の手に力が強くなる。
妬けるって何に?言葉の意味がわからない。
白明が辛そうな顔をしているのはなんでだろう...
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