1 / 12
1.逃げよう。すべてから。
しおりを挟む
今日は、大学受験当日
きっとこれが自分の人生を決める日。
自分にとって今日が分岐点だ。
僕、国見 楓は、緊張とも不安とも違うような複雑だけどやっぱり緊張と不安にいちばん近い感情を抱えながら家を後にした。
みんなに期待してもらってるし、
ここで、こける訳にはいかない。
絶対に受からないと。
みんなの期待に応えたい。
これまで頑張ってきたから。
「受験票もった、筆箱もった、お昼ご飯もってる。」
「よし。」
受験に必要なものの確認を済ませ、ようやく歩き出した。
少し出るのが遅かったかな?
そう思ってスマホの時間を確認する。
大丈夫。まだ全然間に合う。
そうして、すこし離れた駅に行くため、近くのバス停からバスに乗った。
バスの中は割と空いていて座ることができたけど、寒さでガラスは曇っていて外の様子を見ることはできない。
大学受験。この時のために僕は、高校1年頃から必死に勉強した。まわりのみんなに受験する大学の名前を聞かれて、答えると、みんな口を揃えて「すごい!」と褒めてくれたし、「がんばれ!」と応援してくれた。
すごく田舎に住んでいることもあって、近所にもすぐ僕の大学受験の話は広まって、昨日は隣のおばさんが、「楓くん期待してるよ~」とカツを持って来てくれた。
がんばらないとなぁ。もっともっと。
すべてこれからだから。
そんな事を考えてバスに揺られる。
駅に着いた頃、スマホの着信を知らせる音が鳴った。
「もしもし?楓?」
「おはよ。」
「今日受験でしょ。応援してるよ。」
電話は親友の響からだ。
「ありがと、がんばるよ。」
「受かったら響の家のコロッケいっぱい食べていい?」
「ははっ」
「わかった。いいよ。うちのコロッケでいいなら。」
「うん。ありがと」
「それだけ伝えようと思って。」
「落ち着いてがんばって。」
「わかった。」
「うん。じゃあね。」
「うん。じゃあまた。」
響とは小学生の頃から仲が良くて、親同士も仲がいい。家はコロッケ屋をやっていて、親が仕事で居ないときよく夜ご飯を食べに行っていたっけ。
牛肉コロッケがすごくおいしかったなぁ。
あの時は大学受験がこんなに大変なものだなんて考えてなかった。
もし落ちたら....
あぁ、受験会場行きたくなくなってきた。
そんなことを考えながら電車に乗ろうとしたとき。
あれ...?
電車まで約2メートル。足が進まない。
「受験、落ちたらどうしよう。」
落ちたら隣のおばさんも、母さんも父さんも、響も、近所の人たちも学校の先生も、塾の先生もどんな反応をするのかな。
「行きたくない」
急に、身体にどろどろしたものが纏わりついたみたいな感覚を覚えた。
......「逃げてしまいたい。」
ふと。思った。
電車が発車するまであと5分。
すでに、足は反対方向に動き出していた。
走って今まで来た道を戻っている。
ホームの階段を降りて階段に続くカーブの通路、また階段を走りあっという間に駅を抜けた。
電車に乗って、大学に行けば、受験なのに。
何してるんだ僕は...
もう無理かも。戻ったところで間に合わない。
ここからまた電車のホームまでは走っても3分はかかる。
あと発車まで1分...あぁもう無理だ。
あと、30秒....25....20..17......10.9.8....3.2.1
...0..
線路と電車の車輪が擦れる音も聞こえる。
たぶん出発したって事だろう。
本当に僕は逃げたのか?
スマホには母さんから
「電車でリラックスして!」「楓ならできる!」とメッセージが来ていた。
電車に乗った前提のメッセージだなぁ。
それもそうか...
受験がいやで電車に乗れなかったと言って家に帰ったら母さんは、悲しむかな。
父さんに一発叩かれるだろうか。
響は理由を聞いてなぐさめてくれる?かな。
でも.....
もういいや。全てから逃げよう。
母さんからも父さんからも、応援してるって言ってくれた響からも。
逃げてしまおう。
きっとこれが自分の人生を決める日。
自分にとって今日が分岐点だ。
僕、国見 楓は、緊張とも不安とも違うような複雑だけどやっぱり緊張と不安にいちばん近い感情を抱えながら家を後にした。
みんなに期待してもらってるし、
ここで、こける訳にはいかない。
絶対に受からないと。
みんなの期待に応えたい。
これまで頑張ってきたから。
「受験票もった、筆箱もった、お昼ご飯もってる。」
「よし。」
受験に必要なものの確認を済ませ、ようやく歩き出した。
少し出るのが遅かったかな?
そう思ってスマホの時間を確認する。
大丈夫。まだ全然間に合う。
そうして、すこし離れた駅に行くため、近くのバス停からバスに乗った。
バスの中は割と空いていて座ることができたけど、寒さでガラスは曇っていて外の様子を見ることはできない。
大学受験。この時のために僕は、高校1年頃から必死に勉強した。まわりのみんなに受験する大学の名前を聞かれて、答えると、みんな口を揃えて「すごい!」と褒めてくれたし、「がんばれ!」と応援してくれた。
すごく田舎に住んでいることもあって、近所にもすぐ僕の大学受験の話は広まって、昨日は隣のおばさんが、「楓くん期待してるよ~」とカツを持って来てくれた。
がんばらないとなぁ。もっともっと。
すべてこれからだから。
そんな事を考えてバスに揺られる。
駅に着いた頃、スマホの着信を知らせる音が鳴った。
「もしもし?楓?」
「おはよ。」
「今日受験でしょ。応援してるよ。」
電話は親友の響からだ。
「ありがと、がんばるよ。」
「受かったら響の家のコロッケいっぱい食べていい?」
「ははっ」
「わかった。いいよ。うちのコロッケでいいなら。」
「うん。ありがと」
「それだけ伝えようと思って。」
「落ち着いてがんばって。」
「わかった。」
「うん。じゃあね。」
「うん。じゃあまた。」
響とは小学生の頃から仲が良くて、親同士も仲がいい。家はコロッケ屋をやっていて、親が仕事で居ないときよく夜ご飯を食べに行っていたっけ。
牛肉コロッケがすごくおいしかったなぁ。
あの時は大学受験がこんなに大変なものだなんて考えてなかった。
もし落ちたら....
あぁ、受験会場行きたくなくなってきた。
そんなことを考えながら電車に乗ろうとしたとき。
あれ...?
電車まで約2メートル。足が進まない。
「受験、落ちたらどうしよう。」
落ちたら隣のおばさんも、母さんも父さんも、響も、近所の人たちも学校の先生も、塾の先生もどんな反応をするのかな。
「行きたくない」
急に、身体にどろどろしたものが纏わりついたみたいな感覚を覚えた。
......「逃げてしまいたい。」
ふと。思った。
電車が発車するまであと5分。
すでに、足は反対方向に動き出していた。
走って今まで来た道を戻っている。
ホームの階段を降りて階段に続くカーブの通路、また階段を走りあっという間に駅を抜けた。
電車に乗って、大学に行けば、受験なのに。
何してるんだ僕は...
もう無理かも。戻ったところで間に合わない。
ここからまた電車のホームまでは走っても3分はかかる。
あと発車まで1分...あぁもう無理だ。
あと、30秒....25....20..17......10.9.8....3.2.1
...0..
線路と電車の車輪が擦れる音も聞こえる。
たぶん出発したって事だろう。
本当に僕は逃げたのか?
スマホには母さんから
「電車でリラックスして!」「楓ならできる!」とメッセージが来ていた。
電車に乗った前提のメッセージだなぁ。
それもそうか...
受験がいやで電車に乗れなかったと言って家に帰ったら母さんは、悲しむかな。
父さんに一発叩かれるだろうか。
響は理由を聞いてなぐさめてくれる?かな。
でも.....
もういいや。全てから逃げよう。
母さんからも父さんからも、応援してるって言ってくれた響からも。
逃げてしまおう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる