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2.令嬢警視
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王立警察は、国王の肝いりで設立された。
もともとわが国はのんびりとした農業国であったが、先代国王の代から国策として商業に力をいれるようになった。その政策が国中に行き渡ると、農村で土地にも仕事にあぶれていた人々が一旗あげようと働き口がある王都リンデンに大量に流入した。しかし、その全員が成功できるわけもない。あっという間に貧富の差が増大し、一気に街の治安が悪化した。
持たざるものは徒党を組み、すきあらば持てるものから暴力で強奪しようする。また持てるものもさらなる富を目指して、持たざるものから不当に搾取し、互いに騙し合い、潰し合うことも珍しくなくなっていた。
もともとリンデンの治安維持は王立軍が担当していたが、根っからの軍人である彼らにとって市民のいざこざの収集なんてものは、本来の任務である国境警備や戦闘訓練の合間に押し付けられる面倒な仕事という位置づけで、軍人たちのモチベーションはすこぶる低かったことも治安低下の一因だろう。
この状況についに国王がキレた。軍人でダメなら王都の治安維持を専門とする組織を作ってしまおうということで、国王直下の組織として王立警察が設立されたのだ。
初代総監には、真面目一徹な性格で知られる宰相の義弟であるスパルダ伯チャールズが就任し、早速王都リンデンを守る法の執行人を募集した。
ただその時の募集要項には、性別を限定する文言は含まれていなかった。
それが「令嬢警視」誕生のきっかけになったのである。
─┘─┘─┘─┘─┘
単純に女性の応募、ましてや貴族令嬢の応募など想定外だったのだと思う。
けれど、それにウィロウ伯爵家の長女であるわたしは飛びついた。
総監をはじめとする王立警察設立メンバーはわたしの応募を必死に断ったが、名門女子校を卒業後、法学の大家であるサイプレス博士に個人教授をうけ、斬新なテーマの論文を書き上げて法学修士の位を持つこのわたし。このバックグランドは警察組織にとって喉から手がでるくらいほしい人材であるのはわかっていた。女という点以外において。
当然、想定はしていたけれど、頭の固い官僚たちや王立警察を新たな利権と考えた法服貴族の男たちは「女性には危険だから」「女の出る幕ではない」といった幼稚で、雑な意見で男たちの意見で反対してきた。しかし博士のもとで弁論技術も磨いてきたわたしにそんなもの通用するはずがない。次々に論破していたら、最終的にはその問答を面白がった国王の裁定でわたしはあっさり警視の地位を得ることができた。
実際に王立警察が稼働し始めると、「令嬢警視ヘレナ」は欠かせない存在となった。
手前味噌ながら、王都での事件は貴族や富裕市民がかかわることが多く、そういったときに貴族であり、かつ女性であるわたしがいると捜査がスムーズに進むのだ。事件に遭遇してショックを受けている夫人や令嬢をなだめながら、証言をとることもできる。
わたし自身、男も嫌がる惨たらしい現場でも悲鳴をあげることはなかったし、仕事として遺体を検分することも厭わなかった。犯罪に対する怒りや被害者への同情も強く湧いたが、なぜか現場ではなぜか感情的なって泣くことも、取り乱すこともなかった。そういったことから、わたしは自分が天職についたと感じていた。
そんなわたしが忙しくもやり甲斐を感じて働いていたある日、その事件は起こった。
もともとわが国はのんびりとした農業国であったが、先代国王の代から国策として商業に力をいれるようになった。その政策が国中に行き渡ると、農村で土地にも仕事にあぶれていた人々が一旗あげようと働き口がある王都リンデンに大量に流入した。しかし、その全員が成功できるわけもない。あっという間に貧富の差が増大し、一気に街の治安が悪化した。
持たざるものは徒党を組み、すきあらば持てるものから暴力で強奪しようする。また持てるものもさらなる富を目指して、持たざるものから不当に搾取し、互いに騙し合い、潰し合うことも珍しくなくなっていた。
もともとリンデンの治安維持は王立軍が担当していたが、根っからの軍人である彼らにとって市民のいざこざの収集なんてものは、本来の任務である国境警備や戦闘訓練の合間に押し付けられる面倒な仕事という位置づけで、軍人たちのモチベーションはすこぶる低かったことも治安低下の一因だろう。
この状況についに国王がキレた。軍人でダメなら王都の治安維持を専門とする組織を作ってしまおうということで、国王直下の組織として王立警察が設立されたのだ。
初代総監には、真面目一徹な性格で知られる宰相の義弟であるスパルダ伯チャールズが就任し、早速王都リンデンを守る法の執行人を募集した。
ただその時の募集要項には、性別を限定する文言は含まれていなかった。
それが「令嬢警視」誕生のきっかけになったのである。
─┘─┘─┘─┘─┘
単純に女性の応募、ましてや貴族令嬢の応募など想定外だったのだと思う。
けれど、それにウィロウ伯爵家の長女であるわたしは飛びついた。
総監をはじめとする王立警察設立メンバーはわたしの応募を必死に断ったが、名門女子校を卒業後、法学の大家であるサイプレス博士に個人教授をうけ、斬新なテーマの論文を書き上げて法学修士の位を持つこのわたし。このバックグランドは警察組織にとって喉から手がでるくらいほしい人材であるのはわかっていた。女という点以外において。
当然、想定はしていたけれど、頭の固い官僚たちや王立警察を新たな利権と考えた法服貴族の男たちは「女性には危険だから」「女の出る幕ではない」といった幼稚で、雑な意見で男たちの意見で反対してきた。しかし博士のもとで弁論技術も磨いてきたわたしにそんなもの通用するはずがない。次々に論破していたら、最終的にはその問答を面白がった国王の裁定でわたしはあっさり警視の地位を得ることができた。
実際に王立警察が稼働し始めると、「令嬢警視ヘレナ」は欠かせない存在となった。
手前味噌ながら、王都での事件は貴族や富裕市民がかかわることが多く、そういったときに貴族であり、かつ女性であるわたしがいると捜査がスムーズに進むのだ。事件に遭遇してショックを受けている夫人や令嬢をなだめながら、証言をとることもできる。
わたし自身、男も嫌がる惨たらしい現場でも悲鳴をあげることはなかったし、仕事として遺体を検分することも厭わなかった。犯罪に対する怒りや被害者への同情も強く湧いたが、なぜか現場ではなぜか感情的なって泣くことも、取り乱すこともなかった。そういったことから、わたしは自分が天職についたと感じていた。
そんなわたしが忙しくもやり甲斐を感じて働いていたある日、その事件は起こった。
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