ある勘違い女の末路

Helena

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それぞれの判決

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その後、裁判は1週間続いた。

初日と二日目ほどの大きな波乱はなかったからか、上流階級が舞台の事件に世の中の注目は集まりつづけるかとおもわれた裁判も徐々に傍聴人の数も減り、人々の口の端にのぼることも減っていった。

実際、被告であるテイラー子爵、さらには担当弁護士も抗戦する気力もなく、メーガンに至っては虚脱状態にあり質問されたことに素直に答えていったのも、物見高い人たちには「退屈」だと思われたのかもしれない。

この世間のあからさまな反応にわたしは恐ろしさを感じずにいられなかった。

わたしとしては、メーガンが以前のように場所柄をわきまえず、被告席からウィリアムに言い寄ったりするんではないかとハラハラしていた。しかし母であるカトリーヌが恐ろしい正体を現して以降、メーガンはなにかが変わってしまったようだった。検事補として詰問するウィリアムを見上げる目は昏く、うつろな表情のまま「はい」「いいえ」など単純な答えを繰り返すだけであった。

そんなメーガンに判決が下った。

罪状は、まず不敬罪。これは王家の離宮に不法に侵入し、王家の賓客である他国の王族を害したことで有罪となった。それに加えて強制強姦罪も成立し有罪。女性に用いられることはめったにない罪だが、当然である。

テイラー子爵もメーガンと同様に不敬罪ほか複数の罪で有罪の判決が下った。シャルル王子への強姦教唆、不法薬物の密造、販売の罪などシャルル王子に娘にあてがい愛妾にするという目的に邁進し、様々な罪を犯した。

判決が下ったときもテイラー親子は、無表情でうつむいたままだった。

続いて刑罰が言い渡された。

テイラー子爵は当然、爵位を剥奪され、財産も没収された上で、牢獄へ収監となった。刑期は累積で百年以上にもなり、生きて出所してくることはないだろう。厳しいことで有名な牢獄で死ぬまで労役にあたることになった。

つづいてメーガンは枷をつけたまま一旦王家が運営する病院に収容することなったという。子どもの頃から母親の薬物の実験台になっており、心身に大きな影響がでているという。毒薬夫人・カトリーヌが世に放った薬物の実態を知るためにもメーガンはその身体で”生き証人”となることで罪のつぐないをさせられることになるようだ。

そして法廷不在の毒薬夫人・カトリーヌは、不法薬物の密造の罪で有罪。刑罰は牢獄への収監と決まったが、その直後我が国とヴァロア王国との取り決めによってその身柄は引き渡しされることになった。

こうしてガーデンパーティでの事件から1年あまりで一応事態は収束した。




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