パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae

文字の大きさ
上 下
5 / 24

第5話 付与術師、馬車の代金を返却される

しおりを挟む
 そして……ようやく俺たちは、街に到着した。

 俺たちが到着したのは、マイゼリアという名前の街。
 王都より規模感は小さいものの、活気のありそうな街だった。

 街に入る時、門番には馬車の後ろを馬がついて走る光景についてさんざん質問されそうになったが……マリーさんが顔を出し「通してあげなさい」と言うと、途端に表情を変えてすんなりと通してくれた。

 車内ではどうでもいい話で盛り上がっていたので、マリーさんの素性を聞くのは完全に忘れていたのだが……もしかして、かなり権力を持っている人なのだろうか。
 疑問には思ったが、ありがたいという思いが先行したので、結局深くは聞かなかった。

 マリーさん一行はここが目的地だったらしく、門を過ぎると、俺は彼女らと別れることになった。

「この度は本当にお世話になりました。お礼の印として、まずはこちらをお受け取りください」

 マリーさんはそう言って、俺にずっしりと重さのある袋を渡した。
 中身を見ると……そこに入っていたのは、金貨の山。
 おそらく五十万ジャーチ相当は有るであろう大金を、俺は受け取ってしまった。

「こんなにいいんですか?」

「もちろんです。今は手持ちが少ないので、このくらいしか渡せませんが……後日改めて、正式なお礼をしたいと思っています」

 しかもマリーさんは、今後更に多くのお礼の品を俺に渡すつもりのようだった。
 マリーさんは、こう続けた。

「ですから……もしロイルさんさえ良かったら、数日この街に滞在してはもらえないでしょうか? その間に、急ぎお礼の場を設けようと思いますので」

 それに対し、俺はこう答えた。

「問題ないですよ。俺、しばらくはここを拠点に冒険者活動をしようと思いますので」

 別に、俺には決まった行くあてがあったわけじゃあない。
 王都や前線都市でさえなければ、活動拠点にする街はどこでも構わないのだ。
 来ようと思って来たわけではないものの、ここマイゼリアは雰囲気も良さそうで、住みやすそうな街だとは思っている。
 そこにそんな理由も加わるなら……この街を拠点にしない理由は、どこにもない。

 というわけで、俺はマリーさんの問いにそう返答した。

「助かります! では後日、またお会いしましょう!」

 マリーさんはそう言って、ナナさんと馬と共に路地に消えていった。
 命を助けたことを思えば、決して高くはないのだろうが……思わぬ大金を手に入れてしまったな。
 そんなことを思いつつ、俺はまず馬車を返却しに、この街の馬車貸出所を目指すことにした。


 ◇


 しばらく馬車を徐行運転させていると……「馬車貸出所 マイゼリア支部」という看板がかかった建物が見つかった。
 建物入り口前に馬車を停め、受付に向かう。

「すみません。馬車の返却に来ました」

「分かりました。車庫の管理人に案内させますので、少々お待ちください」

 受付嬢にそう言われ、しばらく待っていると……奥の部屋から男が一人出てきて、俺はその人に案内してもらうことになった。

「私がここの車庫管理人のマリュウだ。馬車は……外か?」

「はい。すぐそこにつけてます」

 車庫に向かうため、マリュウと名乗る男と共に貸出所を出る。
 マリュウさんは俺の馬車を目にすると……男は訝しげな表情をして、俺にこう聞いてきた。

「あの……馬はどこへ?」

 マリュウさんは、馬車に馬が繋がれていないことを疑問に思ったようだった。

「借りてませんよ」

 そう言って、俺は王都の貸出所で受け取っていた領収書を見せた。
 領収書には、王都の貸出所で押してもらった印が付いている。
 これを見せれば……俺が馬を失くしたのを隠そうとしていると誤解されることはないだろう。

「……む、これは本部の領収印だな。ということは、本当に馬を借りていないのか。……って、じゃあどうやってここまで来たんだ!?」

 マリュウさんは一瞬納得しかけたが……次の瞬間表情を変え、目を白黒させながらそう聞いてきた。

「念じれば動く付与をかけて走らせてきたんですよ。一応私、付与術を心得ておりますので」

 そう返事しつつ、俺は王都で見せたように手放しで馬車を前後させた。

「な、なんじゃこりゃ……」

 マリュウさんは絶句して、その場で固まってしまった。

「試しに車庫まで乗っていきますか?」

「お、おう……」

 呆然としたままのマリュウさんを馬車に乗せ、馬車を徐行させる。
 マリュウさんが示す方向に運転していって、俺たちは車庫の前に到着した。

「付与術でこんなことができてしまうなんて、アンタ一体何者なんだ……」

 馬車を降りると、マリュウさんは開口一番そう呟いた。

「ただの付与術師ですよ」

「こんなことができる男が、ただの付与術師の訳ないだろ……」

 本当にただの付与術師になってしまった・・・・・・・んだがな。
 まあそんなことを言ってもしょうがないので、俺はさっさと納入を済ませてもらうことにした。


「ちなみに……この馬車、お前が念じないと動かないのか?」

 車庫の鍵を開けながら、マリュウさんはそんな事を聞いてきた。

「そうですね。『念動運転』は、付与した本人だけが馬車を動かせる仕様ですので……」

「そうか……」

 答えると、マリュウさんは若干残念そうな顔をした。
 その表情は、「誰でも動かせたら馬車の商品価値が上がったのに」とでも言いたげだった。

 ……商品価値といえば、この馬車、ボアヴァルカンとの衝突でどこか傷んでるかもしれないんだよな。
 今は正常に動いているとはいえ、このまま黙って返却するのもアレだし……何かしらの付与をして、せめてものケアをしておくか。

「良かったら、何かこの馬車に有用な付与かけておきましょうか?」

 そんな風に、提案をしてみる。

「……いいのかい? アンタの付与なら大歓迎だよ」

 すると、マリュウさんの表情はさっきとは打って変わって明るくなった。

「……では。『念動運転』解除、『構造強化』『反重力』付与」

 俺は馬車に手を当て、『念動運転』の代わりに二つの付与を施した。

『構造強化』は文字通り、馬車の耐久性を上げる付与。
 これをかけておけば、ボアヴァルカンとの衝突を考慮しても、耐用年数は差し引きプラスになるだろう。
 そして『反重力』は、馬車そしてその内部に入れたものの重量を軽減する付与効果。
 これがあれば、馬の負担は大幅に軽減される。

「付与が終わりました、ちょっと押してみてください」

「……軽っ!」

 マリュウさんが馬車を押すと、大した力を入れずとも馬車はスーッと動いた。
 馬車を車庫内の定位置まで移動させたマリュウさんは、驚いた顔でこちらに向かってきた。

「今回は、馬車の耐久性を上げる付与と馬車を軽くする付与をかけておきました。より少ない馬の頭数で引けるようになっているので、馬一頭分価格を上げるなり自由にやってください」

「あ、ありがてえ!」

 付与効果を説明すると、マリュウさんは満面の笑みで喜んでくれた。

「最後にちょっと点検するから、それが終わるまで貸出所で待っててくれ」

 そしてマリュウさんはそう言いつつ、馬車を点検しに車庫に戻っていった。

 ナナさんの剣の時もそうだったが、自分の付与を他人に喜んでもらえるのはやはり良いもんだな。
 そんなことを考えつつ、俺は貸出所に戻って待つことにした。


 ◇


 十分ほどして、俺は再び受付に呼ばれた。
 点検の結果、特に問題はなかったようで、俺はそのまま帰っていいことになった。
 内部の部品が故障しかけていたりしないかと心配だったが、杞憂だったようだな。
 そう安心して帰ろうとした時……俺は受付嬢に呼び止められた。

「あの……十万ジャーチ、還元します」

 受付嬢はそう言って、俺に金貨数枚を手渡した。

「……なぜです?」

「管理人から、なんか馬車に物凄い付与をしてくださったと聞いたもので。お礼に、今回の利用のお代は頂かないことにしたのです」

 なんと……弁償費用が発生するどころか、キャッシュバックが発生していたのだ。

「……本当ですか? ありがとうございます」

 俺は一礼して、十万ジャーチを受け取った。
 まさか、こんなことになるとはな。

「いえいえ。またのご来店、お待ちしております」

 そう笑顔で手を振ってくれる受付嬢に見送られつつ、俺は貸出所を後にしたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

その無能、実は世界最強の魔法使い 〜無能と蔑まれ、貴族家から追い出されたが、ギフト《転生者》が覚醒して前世の能力が蘇った〜

蒼乃白兎
ファンタジー
15歳になると、人々は女神様からギフトを授かる。  しかし、アルマはギフトを何も授かることは出来ず、実家の伯爵家から無能と蔑まれ、追い出されてしまう。  だが実はアルマはギフトを授からなかった訳では無かった。  アルマは既にギフト《転生者》を所持していたのだ──。  実家から追い出された直後にギフト《転生者》が発動し、アルマは前世の能力を取り戻す。  その能力はあまりにも大きく、アルマは一瞬にして世界最強の魔法使いになってしまった。  なにせアルマはギフト《転生者》の能力を最大限に発揮するために、一度目の人生を全て魔法の探究に捧げていたのだから。  無能と蔑まれた男の大逆転が今、始まる。  アルマは前世で極めた魔法を利用し、実家を超える大貴族へと成り上がっていくのだった。

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

処理中です...