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最後の選択肢
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キッチンに包丁を取りに向かう私に対して、追うように向かってくる小田真紀。そして瑠二君は小田真紀の方へと動き出した。
──えっ!?
私がキッチンに足を踏み入れ包丁に手をかけた頃、瑠二君は小田真紀の腕を掴み強引に玄関の方へと引っ張り込んでいた。
「真紀ちゃんこっちだ! そんな事をしても意味無いよ!」
「先輩ッ!!」
流石に男の子の瑠二君。小田真紀を無理やり引っ張り、2人は玄関を開けて外に出ようかという所。
しまった! 逃がさないわッ!
慌てて方向を切り替え、玄関に向かい2人を追うも、自分の服装を見てこれ以上は追えないと悟った。何故なら今の私は上着1枚に下は何も身に付けていなかったからだ。このまま外に飛び出れば、即通報、即職務質問が待っていることだろう。それに何より防犯ベルのお陰で、マンションの外には大勢の人が居るに違いなく、そんな場所でこの握った包丁を振り回すわけにはいかない。
頭のいい男は好きだが、頭がキレすぎるのも考え物だ。私は完全に2人を取り逃してしまった。今から着替えて追っても、街中で2人を捕まえる事は不可能だろう。
「クッソォォォォォォッッ!!」
私はテーブルに手を叩きつけ、激しく後悔した。
ダンッ! ダンッ! ダンッ! と、激しくテーブルに手を打ちつける度に、熊五郎がピョコンと飛び上がる。
もうお終いだ。
この瞬間、全てが終わったのだ。
最早瑠二君と私をつなぎ止めておく物は無く、間違いなく2人は警察に証言するだろう。
そして私が最も許せなかったのが、瑠二君が小田真紀の手を握ってここから去った事だ。
私以外の女と手を繋ぐなんて許せない。この先私が拘留されれば、私の目の届かない所で名前も知らない女と……くッ────
「アアアアアアアァァァァッッ!!」
他の女と繋ぐ手なんて必要ない。
他の女に会いに行く脚なんて要らない。
私以外を見詰める目なんて────
彼が他の女の物になるなんて私には耐えられないッッッ!!
もう…………
「──────、殺すしか無いわ」
殺して、最後の思い出を私にするのよ。
ふふふっ…………そうよ。
あなたが最後に愛し合ったのは私。
あなたが最後に見るのは私。
あなたが最後に触れるのも私。
そう、あるべきなのよ。
私は熊五郎の頭に手を乗せ、最後の挨拶をする。私の中で、既に覚悟は出来ていた。
「ごめんね……熊五郎。もうここには帰って来れないわ。寂しい思いをさせてしまうわね。今まで仲良くしてくれて、本当に……本当にありがとう」
さぁ──、行くわ。
──瑠二君を永遠に私の物にする為に──
■■■■
すぐに着替えを済ませ、伊達眼鏡をかけて出発する。
携帯電話とはここでお別れだ。
便利だが、便利すぎるが故にこんな時は使えない。
今日は夜も更けた為、私はインターネットカフェに来ていた。ここを選んだのには理由があった。初めて瑠二君の家に忍び込んだ時に見つけたIDコード。あれはスマホのアプリを落とす為のパスワードだと私は気づいていた。そして密かに彼のスマホに、追跡アプリを仕込んでおいたのだ。
パソコンの画面を眺めながら、彼の位置情報を監視するも、一向に動く気配がない。
スマホを取りに行かなかったのか?
それとも家に帰ってそこで寝ているのか?
何れにせよ、勝負は明日だ。
今日は色々あって疲れたので、私はパソコンを閉じたあと、静かに目を閉じた────
■■■■
翌朝目を覚ました私は、早速パソコンを開いた。
時計を確認すると、なんと時刻は13時。
気付かぬうちに大分寝てしまったようで、慌ててサイトにアクセスし、瑠二君の携帯の場所を確認する──、
「……動き出したようね」
追跡アプリの情報によると、今瑠二君の居る場所は 『A病院』
ここには覚えがある。
ここは伊奈絵が入院している病院だ。
きっと様子を見に行っているのだろう。当然と言えばそうなのだが、今の私にはそれすらも許せなかった。
バッグに忍ばせた包丁を確認し、私はインターネットカフェを後にした。
本当に殺すのか──、
私が?
愛する人を──
──えっ!?
私がキッチンに足を踏み入れ包丁に手をかけた頃、瑠二君は小田真紀の腕を掴み強引に玄関の方へと引っ張り込んでいた。
「真紀ちゃんこっちだ! そんな事をしても意味無いよ!」
「先輩ッ!!」
流石に男の子の瑠二君。小田真紀を無理やり引っ張り、2人は玄関を開けて外に出ようかという所。
しまった! 逃がさないわッ!
慌てて方向を切り替え、玄関に向かい2人を追うも、自分の服装を見てこれ以上は追えないと悟った。何故なら今の私は上着1枚に下は何も身に付けていなかったからだ。このまま外に飛び出れば、即通報、即職務質問が待っていることだろう。それに何より防犯ベルのお陰で、マンションの外には大勢の人が居るに違いなく、そんな場所でこの握った包丁を振り回すわけにはいかない。
頭のいい男は好きだが、頭がキレすぎるのも考え物だ。私は完全に2人を取り逃してしまった。今から着替えて追っても、街中で2人を捕まえる事は不可能だろう。
「クッソォォォォォォッッ!!」
私はテーブルに手を叩きつけ、激しく後悔した。
ダンッ! ダンッ! ダンッ! と、激しくテーブルに手を打ちつける度に、熊五郎がピョコンと飛び上がる。
もうお終いだ。
この瞬間、全てが終わったのだ。
最早瑠二君と私をつなぎ止めておく物は無く、間違いなく2人は警察に証言するだろう。
そして私が最も許せなかったのが、瑠二君が小田真紀の手を握ってここから去った事だ。
私以外の女と手を繋ぐなんて許せない。この先私が拘留されれば、私の目の届かない所で名前も知らない女と……くッ────
「アアアアアアアァァァァッッ!!」
他の女と繋ぐ手なんて必要ない。
他の女に会いに行く脚なんて要らない。
私以外を見詰める目なんて────
彼が他の女の物になるなんて私には耐えられないッッッ!!
もう…………
「──────、殺すしか無いわ」
殺して、最後の思い出を私にするのよ。
ふふふっ…………そうよ。
あなたが最後に愛し合ったのは私。
あなたが最後に見るのは私。
あなたが最後に触れるのも私。
そう、あるべきなのよ。
私は熊五郎の頭に手を乗せ、最後の挨拶をする。私の中で、既に覚悟は出来ていた。
「ごめんね……熊五郎。もうここには帰って来れないわ。寂しい思いをさせてしまうわね。今まで仲良くしてくれて、本当に……本当にありがとう」
さぁ──、行くわ。
──瑠二君を永遠に私の物にする為に──
■■■■
すぐに着替えを済ませ、伊達眼鏡をかけて出発する。
携帯電話とはここでお別れだ。
便利だが、便利すぎるが故にこんな時は使えない。
今日は夜も更けた為、私はインターネットカフェに来ていた。ここを選んだのには理由があった。初めて瑠二君の家に忍び込んだ時に見つけたIDコード。あれはスマホのアプリを落とす為のパスワードだと私は気づいていた。そして密かに彼のスマホに、追跡アプリを仕込んでおいたのだ。
パソコンの画面を眺めながら、彼の位置情報を監視するも、一向に動く気配がない。
スマホを取りに行かなかったのか?
それとも家に帰ってそこで寝ているのか?
何れにせよ、勝負は明日だ。
今日は色々あって疲れたので、私はパソコンを閉じたあと、静かに目を閉じた────
■■■■
翌朝目を覚ました私は、早速パソコンを開いた。
時計を確認すると、なんと時刻は13時。
気付かぬうちに大分寝てしまったようで、慌ててサイトにアクセスし、瑠二君の携帯の場所を確認する──、
「……動き出したようね」
追跡アプリの情報によると、今瑠二君の居る場所は 『A病院』
ここには覚えがある。
ここは伊奈絵が入院している病院だ。
きっと様子を見に行っているのだろう。当然と言えばそうなのだが、今の私にはそれすらも許せなかった。
バッグに忍ばせた包丁を確認し、私はインターネットカフェを後にした。
本当に殺すのか──、
私が?
愛する人を──
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