ラブイズホラー ~痛めて菜抽子さん~

風浦らの

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同じ動物

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 ■■■■

    あれから瑠二君は笑わなくなった。彼から笑顔を奪ったのはこの私。でも、もう1度彼の笑顔が見たい。どうしても見たかった。

 私の傍に来てくれさえすれば、彼を笑顔にする自信があった。

 ただ、どうやって彼を振り向かせるか。それが未だにわからなかった。見た目、性格、学歴、お金、どれをとっても不満などない筈。いったいどうしたらいいのか、答えを求めて考える日々。

 街を歩きながらも考える。
    すれ違うカップルを見て、あの2人はお互いの何に惹かれているのだろうか?どのようにして結ばれたのだろうか?と、想像を膨らませる。

 分からない。せめて彼の気をもう少しでも引けたなら……

 ふとペットショップの前で足が止まる。動物が大好きな私は、日々の疲れを癒すが如く、ガラス越しに子猫達とじゃれ合った。
    全てを忘れる程の癒しのひと時だった。

 なんて……可愛いのかしら……
    そんな目で見詰められたら、誰しもが買って帰りたくなるわね。まるで生まれながら愛される術を持っている様……羨ましいわ……本当に……

 …………………………………………。


 こ、────────ッッ!


 これだわッッ!
 これよ、これこれ!! こんな簡単な事に、なぜ今まで気づかなかったのかしら。これなら絶対に上手くいくんだから!!


 ■■■■


 私は家に帰り、早速準備を始めるた。
    瑠二君の家のポストから得た情報を元に偽物の手紙を作成し、そしてすぐさま瑠二君の家に向かいその手紙を投函する。

 この位はいいわよね?    だって瑠二君、私と結婚したらもう働かなくてもいいんですもの。お金なら幾らでもあるんだし。

 果たしてこのネット社会に置いて、この手口で成功するだろうか?正直不安は残る。が、試す価値は十分にあった。


 期待と不安を胸に、私は再び家に帰り、次なる準備を進めるためにパソコンの前に座り込む。
    こんな事をするのは私自身初めてなので、ある程度は情報収集をしなければならなかった。そして、必要なものをリストアップし買い物に出かける。

 足取りは軽い。成功した時の事を考えると心が弾んだ。もうすぐ彼が私のモノになる。
    そう信じて疑わなかった。


 ■■■■


 そして翌日。

 静まり返った部屋に、ピンポーンと家のベルが鳴る。


 来たわね。


 ガチャりとドアを開けると、そこには狙い通りに瑠二君が立っていた。

「え?え?菜抽子さんがなんで……」
「いらっしゃい瑠二君」

 グイッと手を引き、瑠二君を玄関に引きずり込み、すぐさまドアを閉める。

「ちょ、ちょっと!    どういう事ですか?    菜抽子さん!」
「ごめんなさいね、瑠二君。ちょっと企業からの手紙に細工をしたのよ」

 実は瑠二君が就職活動をしているのを知っていた私は、企業から届いた封書に細工をし、日付と場所が変わったと記していたのだ。

    『日付は今日』『場所はココ』

 何が起きてるのか理解が追いついてない様子の瑠二君。

「な、なんでそんな事したんですか!?」
「勿論これから一緒にここで暮らす為よ」

 更に理解を置き去りにした様子の瑠二君の表情は強ばっていく。

「一緒に暮らす訳ないでしょ!」
「いいえ、暮らすわ。あなた自らお願いしてね」

 瑠二君を説得する為、私はポケットからスマホを取り出し動画を再生して見せた。

「これを見て頂戴」

 そこに映し出された映像は、瑠二君の妹、つまり伊奈絵のレイプされている動画である。

「な……なんだよ……これ」
「見ての通りよ」
「だ、誰がこんな事を……」
「さあ?    知らないわ」
「お前がやったのかよッ!!」

 流石に語気が強まったわね。意外と男らしい声も出せるみたい。セクシーだわ。

 彼は私からスマホを奪い取り、「警察に行く」と言い放ち家を出ようとするが、私の一言によりその行動は阻止される。

「逃げたらこの動画を世界中に拡散するわ」
「え……」
「もしも私に何かあった時も同様、私の知人によって拡散される事になっているわ。下手な気は起こさないで頂戴ね」

 さっきまでの威勢はどこへやら、瑠二君は急に黙ってしまった。

「この動画が流れたら、妹さんどうなっちゃうのかしらね?    ひょっとしたら『自殺』しちゃうかもしれないわよね」

「このぉ!」

   私は瑠二君に腕を強く掴まれ、壁に押し当てられた。

「ま、まだ分かっていないみたいね。私は、監禁なんてしたくないの。あなたの意思で、あなたが望んだうえでここに居て欲しいの。わかるでしょ?」

 少し意地悪だったかも知れない。監禁したくないのは本当だが、実質軟禁するのだ。それもこれも全ては瑠二君の為。

「俺の心を奪うためか?」
「ええ、そうね。ついでに体も奪うつもりだけど」
「こんな事して心が奪える訳ねぇだろッッ!!」


 ──それが出来るのよ──


「瑠二君、私わかったの。街で売られているペットを見て気づいたの。彼等は初めは懐いていないかもしれない。でもね。エサを与え、愛情を持って接してあげれば、いずれは懐いてくれるものなのよ?    人間も同じでしょ?    同じ動物なんですもの」

 今度は私が瑠二君の腕を握り、更に家の奥へと連れ込んで行く。


「今日からここが、あなたの家よ」



 さぁ──、
    始めましょう。

    愛を育む同棲生活を!!


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