ラブイズホラー ~痛めて菜抽子さん~

風浦らの

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私の裸を見せましょう

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 2度目となる部屋への侵入。
    私の心は前回と比べやや落ち着いている。心地よい興奮が全身を包み込み、女の子だというのに鼻息が荒くなっていた。

 瑠二君が帰ってくる迄はまだまだ時間があるわ。さぁ可能な限り物色しましょう。

 私は片っ端から引き出しを開けて回った。
    次に部屋に侵入できる保証はどこにも無い。そう考えれば今のうちに知るべき事は全て知っておきたかった。恋する乙女ならば、自然の流れだろう。

 机の引き出しの中身を順に出していくと、1枚の写真が出てきた。そこに写っているのは、笑顔の瑠二君と1人の女の子……

 こ……この女、確か合鍵を持ってた女だわ!    間違いない!    仲良くツーショットですって!?    未来の彼女である私でさえまだなのに、なんなのこの女?    憎い……憎いわ!

 私は写真をグシャッと握り潰し台所へと持っていく。この女には然るべき罰を与えねばならない。そう思った。隣に居るべきは『私』であり、コイツではない。何故なら、それが瑠二君にとって1番幸せだからだ。

 まな板の上に写真を載せ、その女を包丁で滅多刺しにしてやった!

「この!    瑠二君に寄生するダニがぁ!許さない!    こうしてやる!    このッこのッこのッッ!!」

 く……くく……うふふ、あははははははははッッッ!!

 こんな事をしてもなんの意味もない。それでも、クシャクシャで穴だらけになった女を見ると、心がスッとした。

 痛めつけるだけではまだ足りない。
    今度はフライパンに油を落とし、コンロで炒めつけてやるわ。

     最後にガスコンロに火を付け写真をフライパンに投げ込むと、黒い煙をあげ写真はあっという間に燃え尽きた。

 いい気味だわ。私の瑠二君に近づくからこうなるのよ。


 さてと──、


 本題はこれからだ。
    私は瑠二君の部屋に戻り、服を脱ぎ始め、最後に下着を脱ぎ、ベッドの上に衣服を置く。
    そして憧れの人の部屋で全裸になった自分の体をスマホのカメラで撮影した。

 胸、腰、足、さらには陰部に至るまで、あらゆる角度、構図で撮影した。写真を確認し、納得した後再び衣服を身につける。

 これでよし、準備は出来たわ。果たして上手くいくかしら?    もし悲惨な結果になったらどうしよう……そんな事になったら、性行為はお互いに我慢しなきゃね。体が目的では無いもの。できるわよね。大丈夫、大丈夫よ。

 余った時間で台所、お風呂場、リビングと掃除した。そして今回の目的を果たすため、この部屋に身を潜めて瑠二君の帰りを待つ事に。

 隠れる場所は予め想定してある。それは『ベッドの下』だ。そんなに隙間は無いが、細身の私なら十分可能だろう。それに、家に帰ってベッドの下を覗く人がどれ程いるだろうか?    ここなら大丈夫。絶対にバレない自信があった。


 私は入ってきた痕跡を念入りに消し、ベッドの下を掃除した後、体を滑り込ませ瑠二君の帰りを待った。ドキドキがまた蘇ってくる。
    もうすぐ瑠二君の私生活を覗くことができる。
    目を閉じ妄想を繰り広げること約1時間。

    遂にその時が訪れた。


 ガチャガチャとドアノブに鍵を差し込む音、その後に開かれるドアの音。
    蛇口を捻る音、手を洗っているのだろうか?
    近づく足音、そして聞こえてきた瑠二君の声。

「え……?」と誰も居ないはずの自分の部屋でこぼれたその声は何か違和感を感じているのだろうか?

 私の目線からは、部屋を歩き、お風呂場、トイレへと動き回る足だけが見えている。

    大丈夫……絶対に大丈夫。

    瑠二君は再び部屋に戻って来ると「うーん疲れたぁ……」と独り言を言いながら、ベッドにドカッと腰を下ろす。その衝撃で僅かにベッドが軋んだ。

 ふぅ。どうやらバレてはいないみたいね。ではそろそろ作戦開始よ。

 私はポケットから携帯を取りだし、先程自ら撮影した『自分の裸体』を添付したメールを瑠二君に送った。

 メール着信音が聞こえ間もなく「な……何これ」と、頭上で声だけが聞こえてくる。
    今、確実にメールを見た筈だ。

 どう瑠二君。これが私の裸よ?    興奮するでしょ?    私とセックス、したくなった?    うふふ。

 暫く沈黙が続いたが、僅かにキシキシと小刻みにベッドが軋みだした。そしてかすかに聞こえる、スッスッとティッシュ箱から紙を抜き取る音。

    こ……これは……

    間違いない……

 瑠二君が私の裸を見て興奮している!



 今ッ!



 まさに私の目の前でッッ!!




 自慰行為をしているッッッ!!!



 暫くベッドの揺れが続いたあと、「んんっ」と言う声と共に軋み音が止み、更に引き抜かれるティッシュの音。


 イッた……




 イッた、イッた!!






 イッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたイッたぁぁぁぁぁぁ!!!




 私の体で興奮し、瑠二君がイッた!!紛れもない事実!
《私の体は彼に受け入れられた!》
    安堵、幸福、興奮、感動、歓喜!!

    言い知れぬこの気持ち。最っ高に幸せだわ……

 私の画像を見ながらやったかは確認出来なかったが、その画像に欲情した事は確か。疑いようがない現実。

 続け様に更に私は、瑠二君に『私とお友達になりませんか』とメールを送った。あわよくばメル友になり、裸が私のものだと打ち明け、そして彼女に──、

 メール音が鳴り、暫く沈黙のあと「なれる訳ないよ」と言葉が聞こえた。

 少し残念な気もするけど、まぁ合格よ瑠二君。どこの馬の骨とも知らない女にメールを返すなんて、私が許さないもの。ふふふっ。

 しかしこの幸せな時間は長くは続かなかった。

 ピンポーンと突然玄関のチャイムが響く。このタイミングで来客とはタイミングが悪い。一体誰が……


 ベッドを離れ戻ってきた瑠二君の足。
    それとは別の、リボンの付いた愛らしい靴下に細い足。


 それは明らかに女の子の足だった。







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