ラブイズホラー ～痛めて菜抽子さん～

ごめんね熊五郎

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    私は自分の家に帰ってきていた。今日はなんだか疲れたし、収穫の多さに満足していたからだ。しかしながら、やはり気になるのは、謎の女の正体だ。
   私は、机の上に置かれた熊のぬいぐるみに向かって話しかける。

「ねぇ、熊五郎。あの女は何者なのかな？     まさか、彼女……じゃないわよね」

「…………」

　熊五郎は何も答えてはくれない。

「ねぇ、熊五郎。瑠二君は、私の事嫌いじゃないわよね？    恥ずかしがってるだけよね？」

「………………」

「ねぇ熊五郎。あの子より私の方が、可愛いわよね？    魅力的だよね？」

「………………」

「何とか言いなさいよぉぉぉッッ！！！」

　私は思わず熊五郎を手で弾き飛ばした。床に落ち、ポンポンポーンと転がっていく熊五郎。最後はポテッとうつ伏せに倒れた。

「クソッあんな小娘に瑠二君を渡してたまるもんですか！」

　私の心の中はグラグラと煮えくり返っていた。この気持ち、どうやったら治まるのか。

　──ッそうだわ！

　私はバックの中から丸められ、カチカチになったティッシュを取り出した。そしてそのティッシュを鼻に押し当て、クンクンと匂いを嗅いでみた。

　あぁ……瑠二君。瑠二君を感じるわ……待ってて瑠二君。すぐに取り戻してあげるからね。

　落ち着いたところで、熊五郎を拾い上げ元居た場所に置いてあげる。そして、頭をポンポンと叩き優しく撫でる。

「ごめんね、熊五郎。殴るつもりは無かったの。許して。本当は大好きよ」

　私は熊五郎に軽くキスをすると、今度は買い物に出かける準備を始めた。瑠二君は菓子パン等を食べて生活しているらしかったので、お弁当を作って届けてあげようと考えたのだ。男の胃袋を掴むというやつだ。

　実は料理には自信がある。小さい頃から家の家事を手伝い今も尚自炊している為、それなりのスキルを持っている。大学生の時は毎日自分でお弁当を作っていたし、キャラ弁だってお手の物。川井菜抽子に欠点など存在しないのだ。

    この作戦で、瑠二君のハートと胃袋を鷲掴みよ！！


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　一通り買い物を済ませ家に戻ると、早速下ごしらえをし、早めに寝る準備を整えた。

    明日はいつもより早く起きなきゃ。

　寝る前に熊五郎をテーブルから拾い上げ、ぎゅっと抱きしめる。

「熊五郎、今日は一緒に寝ましょうね」

「………………」

　熊五郎は何も答えてはくれない。

「まさかあなたも拒否するの？」

「………………」

「黙ってないでなんとか言いなさいよぉぉぉ！」

　私は黙り込む熊五郎に怒りを覚え、壁に向かって投げつけた。

　ポーンと壁に跳ね返り、ポテッと床に落ちる熊五郎。

「はぁはぁ……本当に世話のかかる子ね。でもまぁ、そんな所も愛おしいのだけれど」

　床に落ちた熊五郎を拾い上げ、ベッドに運ぶ。そして私は熊五郎の頭を撫でながら、深い眠りにつくのだった。

「ごめんね、熊五郎。大好きよ……」