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第二章【闇の中の光】
目指した先
しおりを挟む「───っ結構歩いたな。まだつかないのか?」
「いや、もう少しの筈なんだけどね……地形があまりにも変わりすぎてて、私も不安になるよ」
「こんなに滅茶苦茶になってるなんてな……やっぱあの時の地震の影響が大きいのかね?」
道があったであろう場所は地面がせり上がり、至る所で地割れのあとが見受けられ、崩れ落ちた瓦礫が山積みになってる等、グリードやノイが知る景色は今はもう無い──
「たどり着けるのだろうか…………」
星を頼りに道無き道を進み、時間の感覚も無く突き進む四人は次第に疲弊していった。
特に疲れの色が濃く現れたのは、最も煌度の高いグリードだった。
グリードは度重なる危機を幾度となく救い、その度に能力を使ってきた為、人知れず肉体的にも精神的にも限界が近づいていた。
「なあ、そろそろ休まないか?」
結果、こう口にする事も増えた。
「そうだね。疲れているならそうしようか」
「いや、もう少し進もう。さっき休んだばっかりだし、俺は一秒でも早く燕の所に行きたい」
だが、徳はここで休む事を拒否した。
夜のせいで、時間の感覚も無く歩き続け、もう何日経ったかも分からない。
燕を思う気持ちから焦りが生まれていた。
「徳、気持ちは分かるけど、疲れた体のままだと、いざと言う時危険度が増すからね。ここは少しでも休んだ方が──」
「まだまだ疲れていないし、まだいけるよ! 俺は、今は一刻も早く進むべきだと思う。ラフルに行くのがゴールじゃないんだ! みんなは燕の事が心配じゃないの!?」
「───────、うるさい」
グリードの言葉に全員が耳を疑った。
「え……?」
「うるさいって言ったんだよ! 俺っちは疲れてるんだ! 能力も使いっぱなしで、ヘトヘトなんだよ!」
「そ、そんな心構えなら初めから来なければ良かったんだ! 元々君は反対だったじゃないか。とにかく今は先を急ぐべきで、そんなことを言ってる場合じゃ……!」
「いいや言うね! 俺っちが居なけりゃここまで来れてさえいないんだ! 少しは感謝しやがれってんだ! 休みたいって言ったんだから、そうしろよ! マスターが心配じゃないのかって? そりゃ心配は心配さ! でもな、自分達が終わったらそこで旅は終わりなんだよ! 俺っち達は人間じゃないから、そんな綺麗な感情だけで動いたりしないんだよ! カラクターだからな! 欠陥品なんだよ! 特化した特性はあっても、他の感情は希薄なんだよ! 人間様には分からねぇだろうけどな──ッ!」
その言葉に徳は絶句した。
そんな事を言わせるつもりは無かった。ただ、燕の事を心配するあまり、周りの気持ちを察してあげることが出来なかった。
「グリード! 言い過ぎだよ。徳に謝りな」
「徳もグリードの事を考えてやるんだ。グリードは戦闘以外でも食事を作ってくれたりしてるんだ。疲れて当然だろう。とりあえず謝るんだな」
言い争っていた二人は、自分よりも幼い姿の二人によって征された。
「……………………ちっ」
「……………………ふん」
全くもって子供な二人に、ノイとパティークは頭を抑えた。
「とりあえず形だけでも仲直りしておきなよ。気持ちは後からでいいからさ」
ノイの提案に渋々のった二人は、手を取り謝罪の言葉を口にした。
「……その、悪かったな。言いすぎた……」
「俺の方こそ、グリードの負担が大きいの分かってたのに。ごめん……」
──と、この場は治まったものの、皆の疲労と焦りはピークを迎えようとしているのは確かである。
急ぐのも大事だが、休むのも大事だ。
その舵取りを上手く行わなければ、再びこのパーティは崩壊の危機を迎えることとなりそうだ────
少しの休憩を挟み、再びラフル目指して歩き出した四人。
ギクシャクした空気の流れる中、四人の間を取り持つこととなったのが、一つの目印だった。
目の前にそびえ立つ、ピラミッドのような形の大きな一枚岩。これが見えたと言うことは、ラフル迄はもう目の前だ。
「三角岩だね。皆、ついに来たよ」
「おお! もうすぐじゃないか!」
グリードは喜びを隠しきれなかった。
当面の目的は達成され、これで安心して休む事が出来る────
「この岩が目印なの?」
「そうだね。明るければ、ここからラフルが見えるくらいには近いよ────、いや待てよ……」
この時ノイの頭の中で一つの疑問が生まれていた。暗ければラフルは見えないのか────と。
町の明かりはついていないのか?
夜ならば逆にその灯りが目立つはずだ。
「どうしたノイ?」
「いいや、考えすぎかもね。なんでもないよ、さあ急ごうか」
もしかしたら敵襲を警戒し町の灯りを消しているのかもしれないし、今は丁度寝ているタイミングなのかもしれない。
いづれにしてもラフルに着きさえすれば全てが分かる話なのだ。今は考えるより進むべきだと言い聞かせ、ノイは先を急いだ────
そこから数百メートル程進んだ所。
遂に彼等はラフルに辿り着き、長かった旅がようやく終わりを迎えようとしていたのだが、この旅の終着点はノイ達の予想の遥か上を行く結末で幕を下ろした。
「─────、なんだよ…………ここ…………どこだよ……?」
「ここはラフルじゃないのか────!?」
「こんな場所、私は知らないぞ」
カラクター三人の言葉通りだ。
ラフルを目指してここまで旅して来た筈が、辿り着いたのは見たことも無い村だった。
ラフルとは、ゼルプストで一番大きいと言われている町だったはず。
しかし目の前に広がっている景色はは、民家が数件立っているだけで、町と呼ぶには無理がある。
リーヤ村と同規模の村。そんな表現がピッタリだった。
「いったいどうなってやがる!?」
「分からない…………どういうことだ……たった数日でこうなるものなのか??」
「ここで考えていても答えは出ないだろう。民家に入って誰かに話を聞けば何か分かるかもしれん」
パティークの言う通りだ。
考えても分からない。それほど今の状況はラフルを知っている者からすれば信じ難いものだった。
「そうだね。行くしかないよ────、グリード、もしもの時に備えておいて」
「もしも?」
「住んでいるのが煌光のカラクターとは、限らないだろう?」
「────っ、休ませてくれよなぁ」
四人は一つの民家に目星を付けて、その家の扉をノックした─────
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